251 名前:劇場版機動ライダーステイメン(前) :2012/12/01(土) 22:04:22.66 ID:???
 街の雑踏を歩くコウ。黄色信号に歩みを止める。帽子を被った1人の少女が信号の向こう側から走ってくる。
 少女はコウの脇をその勢いのまま早足で駆け抜けていった。コウはふと、彼女の方を振り向いた。

 劇場版機動ライダーステイメン―Girl of Destiny―
(主題歌)

―優しさを忘れた現代、街行く人々は他人を思いやる心を失っていた。だが、そんな時代に生きる1人の若者がいた!―

喫茶『リリー』
シーマ「コウ。コンサートのチケットを貰ったんだけど、いるかい?隣のお兄ちゃんでもいいんだけどさ」
コウ「誰のですか?」
シーマ「ラクス・クライン。場所は……市民会館だね」
コウ「超人気アイドルじゃないですか!?そんな凄いアイドルが、市民会館なんかに?」
キース「コウ、凄いって言ったってブレイクしたのは2年前だぞ?
    今じゃすっかり落ち目の、小さな市民会館が似合うアイドルさ」
コウ「やけに詳しいな」
キース「戦況は絶えず変化するんだ。まごまごしてると時代遅れになっちまうぞ~!」
コウ「う……」
シーマ「ま、そういうことさね。でなきゃ、場末の喫茶店になんかチケットは回ってこないよ」

252 名前:劇場版機動ライダーステイメン(前) :2012/12/01(土) 22:05:27.28 ID:???
 場面は変わり、日も暮れた頃、とある安ホテルの一室。そこでDVDを見ていたのは、コウとすれ違った少女だった。
ラクス「2年前は外も歩けなかったのに、今じゃ誰も気付きませんわ……
    あの男の人だって、ぶつかりそうになったから振り向いただけかもしれませんし……」
バルトフェルド「失礼する」ガチャ
ラクス「マネージャー」
バルトフェルド「……また昔のお前のDVDを見ているのか。
    ラクス。あの人気は何もかもが異常だったんだ。早く忘れた方が良い」
ラクス「……そんな事ありません。私は、あの時の私が本当の私だと信じていますわ」
バルトフェルド「お前はもうスターじゃないし、お前が本当に輝く場所はライトに照らされたステージの上じゃないんだ。
       分かってくれ、今ならまだやり直せるんだ」
ラクス「……その言葉は何度目ですか?出て行ってください」
バルトフェルド「……すまないな、言い過ぎた。明日の朝までには、機嫌を直してくれよ」バタン

ラクス「私は小さな市民会館を回るようなアイドルではありません……煌びやかな衣装と舞台で輝いてこそ私」
??「ああ。俺だってそう思うよ」
ラクス「誰!?」
 ラクスが声の方を向くと、濃いグレーの仮面を被った男が立っていた。
ラクス「通報しますよ!」
仮面の男「おいおい、いきなりだねえ。確かに俺は怪しい男だが、君にお守りを持ってきたんだ」
ラクス「……お守り?」
仮面の男「その目は信用してないな?ここに置いておくから、良かったら肌身離さず持って使ってくれ。
   要らないなら、ゴミ箱にでも放り込んでおけばいい」
 ラクスはズボンプレッサーに置かれたお守りに目をやる。そして瞬きをすると、男は消えていた。
ラクス「あっ……変な人」

 ラクスは立ち上がり、お守りの方へ歩く。そして、黒色と緑色に光る宝石を使ったお守りを手に取った。
ラクス「綺麗……せっかくだから、明日使ってみましょう」

253 名前:劇場版機動ライダーステイメン(前) :2012/12/01(土) 22:06:50.26 ID:???
 翌日…ラクスのライブ会場…
ガトー「フッ、男2人でアイドルのコンサートとは物悲しいな」
コウ「ああ。俺だってそう思うよ」
ガトー「それにしても、この異様な熱気……熱狂的なファンが詰め掛けているのか?」
コウ「それだけなら良いんだけどな……ラクスちゃんに、黒い光が見える」
ガトー「なるほど、この違和感の居場所はステージか。だが、それだけではこうもなるまい」
コウ「ああ。光自体も、ブライトやアムロと戦った時の様な感じがする……調べる必要があるな」
コウ「(あの光……昨日すれ違った女の子はラクスちゃんだったのか。
   だが、黒い光って1日でこんなに育つものなのか!?)」
ラクス「(この会場の空気……私の望んでいたものはこれだったんですわ……!)」

 ステージが終わり、ラクスは楽屋で独り、大成功のライブの余韻に浸っていた。
ラクス「もし今日の熱気がこのお守りの力なら……凄い事ですわ……!」
仮面の男「ライブを見ていた、さすがトップアイドルだな」
ラクス「また!?どこから……いえ、ありがとうございます」
仮面の男「礼なら要らないぜ。俺の力でもお守りの力でも無いしな」
ラクス「そんな事ありません。この石があると、自分に力が湧いてくる気がします」
仮面の男「それはプラシーボって奴だな。君は安心できる人を失っていた。
     そのお守りはただの綺麗な石だが、信じてみる事で君はリラックスし、本来の力を発揮できたんだ」
ラクス「ただの石……それでも、私にとって意味があるなら本物ですわ。
    ……あの、これ、もう少し借りていてもよろしいですか?」
仮面の男「勿論さ。何ならプレゼントしよう」
ラクス「ありがとうございます!それともう一つ、貴方は一体誰で、何の為にこんな事をして下さるのですか?」
仮面の男「俺はネオ・ロアノーク。夢追う子猫ちゃんを応援する男だ……」
 そう言うと、仮面の男の姿は消えていた。

254 名前:劇場版機動ライダーステイメン(前) :2012/12/01(土) 22:08:56.09 ID:???
 それから…
 新聞「ラクス・クライン復活!」
 新聞「歌姫ラクス、再びチャートを席巻!!」
 新聞「歌姫ラクス、雌伏の時を経て更なる飛翔へ!!」

 連日の様に流されるニュースを、一流ホテルの部屋で眺めるラクス。
ラクス「今でも信じられない……これが私……」
??『そう、ステージの上でライトを浴びる姿こそ本当の貴女』
ラクス「誰!?」
??『私は貴女の中のもう1人の私。ライトに照らされた貴女が白なら、影から見守る私は黒』
ラクス「黒の……私……」
黒ラクス『歌いなさい……そして更に輝くのです。それは正しい事なのですから……』
ラクス「……分かっています。輝く事。それは私の権利……」

 喫茶『リリー』
キース「いやあ、凄いね。俺なんかCDを全部買い直しちゃったよ」
コウ「すっかり落ち目って言ったのは誰だよ……」
キース「それこそ戦況の変化だぜ?」
カイ「よう、ここでもアイドルの話題で持ちきりだな」
コウ「カイさん」
カイ「コウ、アイドルかぶれは放っておいて、少し話があるんだ」
コウ「はい、分かりました。キース、ごめん。ちょっと用事が出来た」
キース「ちぇっ、友達よりしけたオッサンか」
カイ「ハハ、友達を奪っちまって悪いな」

カイ「コウ、頼まれていたラクスの件だが……」
コウ「何か分かったんですか?」
カイ「ああ。まず、ラクスの最初のブレイクだが、どうやら事務所すら予想していなかったらしい」
コウ「事務所すら?」
カイ「ああ。元々ファン密着路線で細く長く売るつもりだったんだそうだ。
   だが、フリーの仕掛け人が目を付けて一気にブレイクした」
コウ「そうだったんですか」
カイ「だが、想定外の人気を事務所が支えられる筈が無い。案の定、人気のバブルは一気に弾けちまったのさ。
   それで、ラクスも人気が落ちるのを黙って見過ごしてたって事務所に不信感を持っているらしいぜ」
コウ「そんな秘密があったなんて……」

255 名前:劇場版機動ライダーステイメン(前) :2012/12/01(土) 22:10:03.33 ID:???
女性「キャーッ!?」
コウ「この悲鳴は!?」
カイ「コウ、外だ!」
 コウ達が外に飛び出すと、女性がフリーダム(フルバーストモード)っぽい怪人に襲われている!
コウ「俺の戦いは終わらない、か。だが、俺はこの運命を受け入れる!変身!!」
 コウは変身ポーズを取り、掲げた掌に現れたコアファイターをベルトのバックルにはめ込む!
ベルト(CV:デュオ)「機動RIDER STAMEN Sortie!!」
 説明しよう!コウの人々を守りたいという気持ちが心の光の真の力を引き出し、コウに戦う力を与えるのだ!!

 ステイメンはフリーダムに向かって得意のタックルを叩き込む!
 吹き飛んだフリーダムは体勢を立て直し、フルバーストで応戦する!
コウ「あの黒い光の量でただ撃っているだけの攻撃……あの怪人、戦いに慣れていない!?」
 コウはビームを掻い潜り、フリーダムに強烈なコンボ攻撃を行う!
コウ「なら……貴様が真の怪人となる前に、倒す!!」
 コウの右足にオーラが溜まってゆく!しかし!!
フリーダム「せっかく集めた黒い光も、このままでは……」
 フリーダムは急に羽を畳み、大きな翼にすると、猛スピードで去っていった。
コウ「くっ、あのスピードじゃオーキスでも追えない!しかし、いったいどこへ……?」

 その頃…窓から外を眺めていたラクスに、黒い翼の影が近付く。
 ラクスが影に向かい手を伸ばすと、影が指先に止まる。
ラクス「黒さん、どこへ行っていたの?」
黒ラクス『秘密の場所よ』
ラクス「それがどこか知りたいですわ」
黒ラクス『もう1人の私、貴女の味方……秘密は誰にでもあるものですわ』
ラクス「そうですわね……ネオさんも、あるのは秘密ばかり……」
 いつの間にか、影は、羽の生えたラクスの形になっていた。
 ラクスの首に飾られたお守りの石が怪しく光る。そして影はラクスに唇を重ね……

中編に続く

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最終更新:2015年01月29日 20:34