相変わらず、教室の中は落ち着きが無い。
正確にはガロードを中心として、騒ぎが広がっている。
何時もなら、蚊帳の外の生徒たちはハマーンの激高を恐れ、
ビクビクとしているのだが、今日だけは様子が違った。
そう、彼女のお気に入りと噂されるジュドーがいないにも関わらず。
「いやー、まさかリリーナさんの料理があそこまでとはねぇ」
「……そんなに、酷かったのですか?」
「それで、ロラン兄貴が料理を教えるって、聞かないんだわ」
「ガロード……私も教えて欲しい」
後でガロードが聞いた話だと、何時もの様に注意する為に、
チョークを持ち振り上げたハマーンの手が停止ボタンを押したように止まったそうだ。
「ああ、いいぜ。ティファならロラン兄貴も大歓迎だろうな」
内心、ティファの手料理が食べられると、歓喜の頂点に立っていたが、
次の瞬間に、
「ガロード・ラン、私も丁度料理を習いたいと思っていたところだ」
教室の空気が極一部の例外を除き、止まった。
「ハマーン先生も同じ……」
ティファの呟きに、頬を若干朱を注した女教師。
「い、いや、そうではない、あくまでも嗜みとしてだな……」
その後の事はガロードも憶えていない。
ただ、これから起きるであろう騒動に対して、如何に恋人の安全を保つか、
同い年の兄弟への同情を若干抱きつつも、
手料理と言う誘惑に比較に対し、それは丁重に心の棚に置かれてしまった。
135 名前:ロランの料理教室(序)投稿日:03/10/17 05:20 ID:???
お姫様二人~張本人とシンデレラの場合~
ここは一家のリビング。リリーナとロランの二人が、午後の紅茶を楽しんでいた。
ヒイロはぶり返しで寝込み、そのお見舞いにリリーナは訪れていた。
「ええ、でもヒイロは大丈夫だと……でも」
リリーナの瞳はまだ少しだけ赤い。
「気に病むことは無いですよ、これから上手くなっていけば」
「でも、本当に上達できるの…ですか?」
「ヒイロに「美味しい」って、言ってくれるように手助けしますから」
何とも無い一言であったが、リリーナの顔が真っ赤に染まる。
(リリーナ……美味しい料理だ……)
何故か、薔薇のフレーム+光るヒイロの歯。
(それから、それから、私達は……ヒイロ、そんなに急がなくても)
ロランは漏れてくる呟きに、顔を赤らめながらキッチンへと逃避した。
「ただいまー」
「お邪魔します」
カミーユとフォウが帰ってきたのは、
リリーナの脳内で子供の名前を決めている時であった。
「あ、リリーナさん」
「(ハッ)……んっ、ご機嫌いかがですか? こちらのお方は?」
フォウはリリーナの切り替えの早さに、
後頭部に水滴を浮かべながらも、
「私はフォウ・ムラサメ、あなたがリリーナさんね。」
「フォウも料理が下手だからさ、ロランに教えに来て貰ったんだ」
「恋人の前で、随分言ってくれるわね」
「あ……あはは」
「ふふ……」
最終更新:2018年11月29日 13:21