まず、予備知識を頭に入れておくと、お話が理解しやすくなります。
兄弟が住んでいる地域の、中学校に相当する学校は四校あって、以下の通り。
私立
ジオン専用学校と、ディアナカウンター学園(中等部まで。高等部はない)
国公立
ネオジャパン体育大付属中学と、兄弟が通っている学園(中等部)
では、本編。
アル「バーニィの通っている学校に行きたい!!」
ロラン「駄目です」
アル「行きたい!」
アムロ「どうしたんだ?ロラン」
ロラン「兄さん、アルが再来年に、私立のジオン専用学校に行きたいと言っているんです」
アムロ「私立は駄目だ。学費が高い」
ロラン「でも、どうしても、と駄々をこねて」
アムロ「今、通っている学園には中等部があるだろう。どうして、そこへ進まないんだ?アル」
アル「ジオン専用学校の方がいいんだ。授業にザクの運転講習とかあるし、バーニィも通っているし」
アムロ「そんなに行きたいのか?」
アル「うん!」
アムロ「そんなに行きたいなら、勉強を頑張れば、なんとかしてやる」
アル「やった」
ロラン「……兄さん、ほんとうにアルには弱いですね。」
アムロ「?」
ロラン「弟の僕たちが、私立ディアナカウンター学園に行きたがっても、許してくれなかったじゃありませんか」
アムロ「当然。あそこは上流階級の学校だ。
それに、ヒイロのときは許しただろ」
ロラン「ヒイロは、あしながおじさんJが学費を下さるから、私立に行けたんです。アルとは違います」
アムロ「そういえば、カミーユも、ディアナカウンター学園の試験は受けたんだがな。
そのとき、となりの奴を殴ったけど」
ロラン「ジェリドさんも哀れですよね。乱闘騒ぎになり、一緒に落とされるなんて。……って、話をそらさないでください」
アムロ「まあ、その話は置いといて、ところで、ジオン専用学校とは聞いたこと無いな。新しくできたところか?」
ロラン「以前、僕たち兄弟が通った学園の校長に、ギレンさんという方がいらしゃったでしょう」
アムロ「ああ、顔が恐い奴な」
ロラン「その方が、理事長の父とけんかして、新しく独立して作ったのがジオン専用学校なんです。今度、オープンキャパスがありますから、ご自分で見学してみたらどうですか?僕は行きませんけど」
アムロ「(ピキーン)ろ、ロランの冷たい心がなだれ込んでくる……」
さっそく、アムロは休みを取って、ジオン専用学校を見学することにした。
その日は、平日であり、普通に授業が行われていた。
アムロ「ほう、教室で国語の授業か。意外と、普通の授業をやっているんだな。ちょっと、見ていこう」
ランバラル「これが『争い』(たたかい)という漢字だ!分かったか、ヒヨッ子ども」
二等兵「先生、漢字間違えていますよ」
ランバラル「うん?どういう漢字だったかな?ぬぅうおお、このランバラル、授業中で戦いを忘れた……君たちは立派に学習した!だが教師の定めがどういうものか、よく‥見ておくのだな」
ちゅどーん!!!
アムロ「な、なんだ?自爆した?」
ハモン「ランバラル先生が漢字を忘れた責任をとって亡くなったので、妻の私が後を継ぎます。教科書はさっきの所からよ(あなた、守ってくださいましね)」
アムロ「これが
日常茶飯事なのか?すごい学校だな……」
校内放送「オープンキャパス見学者各員に通達。マル十マル五、体育館で説明大会が行われる。参加されよ!!ジークジオン!」
アムロ「おっと、説明会には参加しておかないとな。この学校に入れるって、アルと約束したしな」
ジオン専用体育館にて。
アムロ「あれは、ロランにつきまとっている御曹司じゃないか?シャアまでいる……」
御曹司のグエンは、体育館にあるステージの上に立って、マイクを持っていた。
グエン「皆さま、今日はようこそいらっしゃいました。私、ジオン専用学校に出資しているグエンと言うものです。今日は司会を務めさせてもらいます。
まず、ご紹介をさせていただきます。右から、
経営者であらせられるギレン閣下、校長であらせられるギンガナム御大将、
合資者のザンスカール社副社長クロノクル様、おなじくザフト社社長ザラ様、
ゼクス様、シャア様、シロッコ様、マスターアジア様であります。
説明大会に際し、各々方から、何か、
コメントを頂きとう存じます。では、ギレン閣下から」
ざわざわ
しーん
ギレン「我が忠勇なるジオン受験生と親達よ。
今や他校教師の半数が我がソーラ・レイによって宇宙に消えた。
この輝きこそ我らジオンの正義の証である。
決定的打撃を受けた学校にいかほどの学力が残っていようと、それはすでに形骸である。
あえて言おう、カスであると!
それら軟弱の集団の偏差値がこのジオン専用学校を抜くことはできないと私は断言する。
人類は、我ら選ばれた優良種たるジオン学生に管理・運営されてはじめて永久に生き延びることができる。
これ以上戦いつづけては人類そのものの危機である。お受験エリートの無能なる者どもに思い知らせてやらねばならん、今こそ人類は明日の未来に向かって立たねばならぬ時である、と
ジークジオーン!!」
全員「ジークジオン!!」
アムロ「こ、これが学校?」
このあと、さらに熱い演説がアムロを待ち受けていたが、それは割愛。
とにかく、よろよろになりならがらもアムロは帰路についた。
アムロが帰宅したときには、もう夕方になっていた。
ロラン「どうでした?ジオン専用学校は?」
アムロ「一流有名校の重力に魂を引かれた古い学生が神聖な教育を汚しているから、その学校ごと滅ぼそうと言うのが、あの学校の考えらしいな」
ロラン「はあ。よく分かりませんけど、かなり思想が偏っているということですか」
アムロ「そうだな。……アルには、あきらめてもらうしかない。アルを呼んでこい」
アムロはアルを説得したが、すこしも耳を傾けようとしない。
他の兄弟達も、説得に参加し始めた。
ジュドー「いいか。兄ちゃん達は、
お前に学校に行ってもらいたいんだ。でもな、学費は自分で稼がなくちゃならないんで、
兄ちゃん達は、苦労しながら学校にいったんだ」
ガロード「俺なんか、
ガンダムを売って学費を稼いだんだぞ」
ジュドー「公立なら兄貴達の稼ぎで何とかなるけど、
私立に行くとなると、自分で足りない学費を稼ぐ必要がある。できるのか?アル?」
アル「ガロード、ジュドー兄ちゃんのように他人のMSパーツを盗んで売ってでもやるよ!!」
アムロ「そんなことをしていたのか?お前達?」
カミーユ「ともかく、ジオン専用学校に行かなくてもいいでしょ。アル。ザクやドムの講習は、他校でもやっているんだ」
アル「授業中に、オルテガさんとマッシュさんとジェットストリームアタック訓練を一緒にできるのは、ジオン専用学校だけなんだよ!」
カミーユ「同じ私立の、ディアナカウンター学園は駄目なのか?
女子の割合が高くて、お嬢様ばかりだから、かなりいい」
ドモン「ネオジャパン体育大付属中もありだ!!あそこは心身を鍛えてくれるぞ」
アムロ「よし、そうだな。見聞を広めるいい機会だから、アルは他の学校も見学してみろ。考えも変わるさ。」
結局、アルは他の学校を見て回ることになった。
アルは、ディアナカウンター学園を見学することにしたが、関係者以外、立入禁止であったので、ロランとヒイロのコネを使って、許可を得ることに成功した。
さて、ロールスロイスの車の中。
ヒイロ「……」
アル「……」
リリーナ「ちょうど良かったですわ。今日は私のような卒業生を集めて大同窓会パーティーがありますの。ディアナ様にお会いできるのも、何カ月ぶりかしら……」
アル「ロラン兄ちゃんが、ディアナ様によろしく伝えるようにと言ってました」
リリーナ「お兄様が?来られないんですの?」
アル「はい、なんでも今朝から腹が痛いとか」
リリーナ「それは残念ですわ。あ、着きましたわ。母校へ」
ディアナカウンター学園。
幼等部、初等部、中等部とあって、規模は小さいが、名門中の名門校であった。今日は、一年に一回、色んな時代の卒業生が集まる大同窓会が行われる日だった。
車から降りたアル達は、大同窓会パーティー会場へと向かった。
ヒイロは無表情だったが、額に汗を浮かべていた。
ヒイロ「アル、……おしゃべりに気を付けろ」
アル「おしゃべりって?お兄ちゃん」
リリーナ「見えましたわ。あれがパーティー会場となる大ホールです」
ドロシー「リリーナお姉さまに、ヒイロお兄様!!」
リリーナ「ドロシーではありませんか」
ドロシー「お久しぶりでございます。ドロシーはお姉さまにお会いしたくて、うずうずしておりましたわ。さあ、どうぞ、会場の中へ」
ディアナカウンター学園の大ホールにて。
セイラ「まあ、リリーナ様」
リリーナ「様は恥ずかしいですわ。セイラさん。お久しゅうございます」
セイラ「歴代の卒業生の皆で、あなたの噂をしていたのよ」
リリーナ「カテジナさん、ハマーンさん、フレイさん、それに、リリ先生も!」
カテジナ「お久しぶりです」ハマーン「久しいな」フレイ「こんにちは」リリ「久しぶりだわー」
リリーナ「先輩方や先生にお会いできるとは、なんという幸運でしょう。去年の大同窓会以来ですわね。ヒイロ、こっちにいらっしゃーい」
ビビ「あら、ボーイフレンドかしら?」
リリーナ「紹介いたしますわ。元中等部で、今は、となりの学園に転学したヒイロです」
ヒイロ「……」
ハマーン「貴様、どこかで見た顔だな。たしか、ジュドーの弟か?」
リリーナ「その通りですわ。お姉さま。あ、理事長のディアナ様がいらっしゃったわ」
ディアナ「まあ、リリーナさん。よしなに。……そちらの方が、この学園に入りたい方なのですね」
リリーナ「いえ、ヒイロじゃありませんわ。こちらのアルフレッド君です」
アル「あ、あの、僕、まだ、決めかねてて。でも、こんなに素晴らしいお姉さま方がいるような学園に入れたらいいなと思っています」
ハマーン「ふ、俗物が!(笑顔で)」
カテジナ「トチ狂ってお友達にでもなりに来たのかい!?(笑顔で)」
フレイ「ちょっとぉー、コーディネーターの弟のくせになれなれしくしないでよね!(ばい菌を見るような目つきで)」
アル「!!?」
ヒイロが弟の側に近寄って、耳打ちをする。
ヒイロ「……照れ隠しだ」
アル「(小声で)ええ!?」
ヒイロ「お世辞でも何でも、うかつに喋らない方がいい。会話の次元が違うからな」
アルはディアナカウンター学園に来てみて、一つ、分かったことがあった。
兄のヒイロが無口なのは、恐らく、この学園にいたからではないだろうか。
誰と話しても会話が成り立たないアルは、会場の隅にいる少女を見つけた。
以前、会ったことがある少女だった。
アル「君は、ミネバちゃん?」
ミネバ「そなた、アルか?随分と久しぶりだな」
アル「君はここの生徒だったの?」
ミネバ「いや、今日はハマーンに連れてこられたのだ。見学して、ジオン専用学校か、この学園か、どちらかを選んで
転入しなさいと言われてな。…私、本当は、どちらも嫌なのに(ぼそっ)」
アル「他の学校は受験しないの?」
ミネバ「お父様もハマーンも駄目だと言う。みんな、私のわがままを普段聞いてくれるけど、私の本当の気持ちは、誰も分かってはいないのだ!友達がたくさんいる学校の方がいいのだがな。そなたはここを受験するのか?」
アル「……僕、ジオン専用学校に行きたかったんだ」
ミネバ「ここもジオン専用学校も、規律が厳しいし、友達ができにくいのではないか」
アル「……そうだね。僕、間違ってた」
ミネバ「もう一度、考え直せ」
アル「うん。ありがとう。ミネバちゃん」
一方、自宅では、緊急の
家族会議が行われていた。
ロラン「今日のテーマは、どうやってアルをそのまま中等部に進学するよう説得するかです」
アムロ「仲の良いバーニィかクリスに説得してもらえればいいんじゃないのか」
カミーユ「あ、悪い。バーニィなら、この前、
ミンチにした」
ロラン「クリスさんは供養の旅に出たそうですね」
ガロード「そうだ!キラえもんに頼んで、バーニィのにせ遺言テープを合成してもらったらどうだ」
ウッソ「キラえもん?」
ガロード「キラレツ大百科じゃ、ゴロが悪いだろ」
アムロ「そんな問題なのか?それはともかく、にせ遺言テープを作ってもらおうじゃないか」
できた。
バーニィ(テープ再生)「アル、よく聞いてくれ。おまえがこのビデオを観るころ俺は多分この世にはいない。これはアル伍長への最後の命令だ。そのまま中等部に進学しろ」
アムロ「いい出来だ。しかし、もう一押し欲しいな」
カミーユ「ローラに女装させて、アルに懇願する色気作戦というのはどう……うわわあぁぁー!!」
カミーユの座っていた床が消えて、カミーユは穴に落ちていった。ぐしゃ!という音が穴から鳴り響いた。
ロラン「ニュータイプですら察知できない落とし穴をあちこちに作ったので、注意してくださいね」とにこりと笑う。
ウッソ「兄さん達、アルが帰ってきたよ!」
アル「ただいまー」
アムロ「どうだった?」
アル「僕は今の学園の中等部に進むよ」
アムロ「……なんて言った?」
アル「だから、私立には行かないよ」
兄弟達「そうか、よかった」
カミーユ(奈落の底から)「暗いなあ…おーい、ここから出してくださいよぉ」
(後日談に続く)
592 名前:これが僕の生きる道 外伝投稿日:04/03/23 21:24 ID:???
後日談その1
ドモン「ところで、…俺が卒業した体育大付属中は駄目なのか?」
アル「だめ。校則第一条に『校内がリングだ』なんて書いてある、格闘バカ校なんだよ?バカになるから、だめだめ」
ドモン「……」
ジュドー「うわ!ドモン兄ちゃんが暴れ始めたぞ!!ぐは」
アムロ「明鏡止水だ!ドモン!ぐえ!」
この日、被害総額は3000万円にのぼったという。
後日談その2
ヒイロは、同窓会の3次会まで拉致された。
徹夜で、男の愚痴を女性陣から聞かされたという。
後日談その3
ジオン専用学校の受験倍率は3倍に膨れあがった。
しかし、ギンガナム校長の朝食盗み食い事件が発覚。
弁明となるはずの記者会見で、「ディアナはただの猿と見たな、小生は!!」と、
ディアナの留学生受け入れを批判し、刀を振り回して、マイナスイメージが広がった。
おかげで、受験生の数が減ったという。
(終わり)
最終更新:2018年12月07日 17:38