981 名前:1 :2013/03/28(木) 20:33:31.26 ID:???
ハロ長官「それじゃあ、来月からはビシディアンの対策に力を入れるという事で良いね?」
リョウ「ああ。それでやってください」
ハロ長官「ビシディアン……略奪される側と組んで、火星圏に物資を流してるって噂もあるね……」
サンダース「火星圏ですか……確かこの前、火星の議会で輸出入規制の緩和が見送られましたね」
ハロ長官「うん。保護産業の成長が鈍化したっていうのが理由だったと思うけど……
     それを当てにしていた人は大変だよ」
シロー「だからといって海賊行為と密輸が許される筈がありません」
ハロ長官「その通りだ。これからは地上の部隊を回す事も出てくる。皆の負担が大きくなるけど、頼んだよ」


 それから…
アセム「拠点の廃棄完了……この宙域はもう使えないな」
アセム「俺達は法律にも、火星圏の保護政策にも逆らっている。
    それでも、火星に届けないといけないものはたくさんあるんだ……」
アセム「さあ、あとは離脱して……」
 そう言い残し、アセムはダークハウンドに乗り込み拠点を離れる。だが……

アリー「よう、警察官のアリーだ。悪者の拠点がこの辺にあるってんで探してるんだけどな。何か知らないか?」
アセム「さあ、僕には分かりません」
 今、ダークハウンドはドクロマークを消した「ただの黒いガンダムタイプ」に偽装されている。
 だが、通信相手の口振りがアセムを疑っている事は明白だった。
アリー「だよなあ。もう片付けちまって、今頃帰り道だよなあ……」
アセム「!?」
 通信で息遣いが聞こえるのだろうか、その反応を待ってたとばかりに、アリーが声を荒げた。
アリー「そうだろ、ええ?ビシなんたらのガンダムさんよ!?」
アセム「くっ……!」
 アセムが戦闘を覚悟し、ボタンを押す。一瞬で黒いガンダムがダークハウンドへと姿を変えた。

982 名前:2 :2013/03/28(木) 20:34:18.07 ID:???
アリー「ハハッ、巣の場所と撤退時期をピンポイントで当てるとは、さすが長官の読みだな。
    さあ、取調べを始めようか!ファング!」
 アルケーガンダムからファングが2つ射出される。
アセム「(俺の技量を測っている?なら!)」
 ダークハウンドの胸部から強烈な光が放たれる。
アリー「くっ!」
 アセムは一瞬動きの止まったファングを素早く打ち抜くと、アルケーの右腕を目掛けてアンカーを飛ばした。
アセム「手ごたえが……無い!?うわっ!?」
 アンカーをアルケーに掴まれ、振り回される。そしてそのままデブリへと投げられた。

アリー「ったく、10代後半のガキの癖に妙な武器使いやがって……!」
アセム「(俺の年齢を……ブラフか?)」
アリー「黙っても無駄だ。戦い方で分かるんだよ」
アセム「(フラッシュアイで動きは止められる。だけど次の手は読まれてた……逃げられるか?)」
アリー「ああ。言い忘れたけどな、仲間の為にも逃げようなんて思わない方がいいぜ」
アセム「!?」
アリー「図星だな」
アセム「(機体越しで……何故分かるんだ!?まさか、Xラウンダー!?)」
アリー「別にニュータイプでもイノベイターでもねえよ。
    こちとら長年ガキ相手に警察やってんだ。ガキの考えてる事くらい分かるんだよ!」
 そう言うと、アルケーが突撃を仕掛けてくる。
アセム「(落ち着け!俺の全てが読まれているわけじゃない!)」
 アセムはアルケーのバスターソードをドッズランサーでいなすと、そのまま左手でサーベルを引き抜き、体勢の崩れたアルケーを斬り払う。
 しかし、その一撃は足サーベルによって防がれ、更にファングの嵐が押し寄せる。
アセム「くそっ……!」
 攻撃が失敗したアセムはファングを回避しつつ、距離を取った。
アリー「あれで無傷だと?とんでもねえ反応だな」
アセム「……どうも」

983 名前:3 :2013/03/28(木) 20:35:17.92 ID:???
アリー「ま、テメエの弱点は分かったけどな」
 アリーの舌なめずりを合図に、再び突撃を行うアルケー。
アセム「(とにかく、あのファングの手数をどうにかしない事には……)」
 ダークハウンドに急接近したところで、ファングが放たれる。
 アセムはその方向を一瞬目で追う。だが…
アセム「いない!?」
 目線を戻した時にはアルケーの姿が消えていた。後ろを振り返ろうとした時、背後を衝撃が襲う。
アセム「うわっ!」
 バスターソードの一撃を何とかドッズランサーで受け止める。
アセム「逃がすか……!」
 アセムは左肩のアンカーを放ちアルケーを捕らえようとするが、再び射出されたファングを警戒し、一瞬アンカーが遅れる。
 アンカーは回避され、その動きのまま左腕が足サーベルで切断された。その腕を掴んでアリーが言う。
アリー「ははっ、コイツを持ち帰れば良い証拠になるぜ」
アセム「させるか!」
 言葉の勢いと裏腹にダークハウンドがバスターソードと足のサーベルで押し込まれる。
アセム「くっ……反撃しようとしたらファングに邪魔される……違う、俺が反応しすぎている!」
アリー「そうさ、テメエは視界を外れるどんなものにも反応しちまう犬みてえなもんだ!それにな……」
 言葉を遮る様に放たれたダークハウンドのフラッシュアイ。
 しかしアルケーは何事も無かったかのように、距離を取ろうとするダークハウンドに詰め寄る。
アセム「効かない!?」
アリー「ガキとは経験が違うんだよ!」
 アルケーの息も付かせぬ攻撃をアセムは反射神経でいなしていく。
 ふと、機体の後ろに衝撃が走る。アルケーの攻撃に紛れて放たれたファングだ。
アセム「いつの間に……!」
アリー「ハハハ、ちゃんと全部見てりゃあ気付いたのかも知れねえけどな!」
 ダークハウンドの体勢が崩れる。アセムは立て直そうとするが、アルケーの猛攻を防ぐのが精一杯だ。
アセム「まさか……それを狙って俺に喋ったのか!?」
アリー「そうよ、そのまさかよ!」
 バスターソードが直撃し、ダークハウンドはMS大のデブリに叩きつけられた。

984 名前:4 :2013/03/28(木) 20:35:53.51 ID:???
 黒いガンダムを、異形のガンダムが見下ろしている。
アリー「どうした?宇宙海賊もお陀仏か?」
アセム「(機体は……まだ動く)」
アセム「(反応しすぎ、か。ウルフ隊長みたいに経験を積めば、ファングを見つつ本体を警戒する事も出来たかもしれない……)」
アセム「(だけど……俺は俺だ。俺の、今ある力で勝つ!)」
 ダークハウンドがゆっくりと立ち上がる。そして、アルケーへと向かってゆく。
アセム「(経験と戦術は間違いなくアリーさんが上だ。俺はその勝負に持ち込まれていた)」
アリー「いいねえ、そうでなけりゃあ面白くねえな!」
 アルケーもそれに応じ、ダークハウンドに向ってゆく。
アセム「(だから、今度は俺が反応速度の戦いに持ち込む!作戦も考えも無い戦い方で!)」
アリー「ファング!」
 ファングが動き始める。その瞬間、アセムはファングに狙いを定め攻撃を仕掛ける。
アリー「囮に食いつくのか!?活きの良いガキだ!」
 アルケーは足のサーベルでファングに向かうアセムを斬り付ける。
 しかしアセムはサーベルを展開し防ぐと、今度はアルケー本体を狙ってドッズランサーを突き出す。
アリー「あんだあ、この攻撃は!?何考えてやがる」
アセム「お前を倒す……それだけだ!」

 目の前の動きに反応し、それに対し攻撃を仕掛けるダークハウンド。
 普通なら囮で簡単に崩せるが、恐るべき速度で対応し続けるアセムの反射神経がそれを困難にしていた。
アリー「動きが読めねえ……反射神経だけでやってるってのか!?」
アセム「考えるから反応が遅れる……考えるから視界が狭まる……
    俺はスーパーパイロットだ!その感性を信じてみろ、この俺を!」
 アルケーが蹴りを入れようとすれば、その膝へと蹴りを繰り出す。
 ファングは空を舞う前にドッズランサーのドッズガンとアンカーで破壊する。
 先読みではなく、今その瞬間を支配する戦い方が行われていた。

985 名前:5 :2013/03/28(木) 20:36:28.79 ID:???
アリー「くそっ……!」
 既にファングは全て壊され、大振りのバスターソードでは捉えきれないと悟ったアリーは、バスターソードをライフル形態へと移行させる。
 その隙をアセムが見逃す筈も無く、ドッズランサーがアルケーの右腕に突き刺さり、同時にアンカーが左腕に巻き付く。
アリー「何っ……ぐあっ!?」
 アンカーから僅かな時間に流された電撃が、アルケーの反撃を阻む。
 アセムは刺さったままのドッズランサーを手放し後ろに回りこむと、ビームサーベルで左腕を切断した。
アセム「お宝は返してもらうぞ!」
アリー「くっ……!」
 アルケーの後ろ蹴り。しかし、ビームサーベルの投擲が足首に刺さり足のビームサーベルが停止する。
 アセムはそのまま右腕に刺さっていたランサーを引き抜く。そして……
 ドッズランサーが、アルケーを深々と貫いたのだった。


アングラッゾ「それで、ダークハウンドをこんなにボロボロにして帰ってきたのか」
ウィービック「無茶な機動をしたんだな、中もオーバーロード寸前だぜ」
アセム「本当だ。よく帰ってこれたな、俺……」
アングラッゾ「これは相当修理代が掛かるな。アセム、しばらく貧乏になるぞ」
アセム「はあ……了解……」

アリー「ったく、ボーナスどころかコアファイターだけになって逃げ帰ってくるなんてなあ……」
シロー「ミンチにならなかっただけでも儲けものですよ」
アリー「ま、そりゃそうだけどよ。痛てて……」
カレン「大の男が痛いなんて情けないね」
アリー「ああん?テメエの薬の付け方が悪いんだろ!?
    つーかこの警察署には医療班はいないのかよ!」
シロー「今日は全員休みですよ、だから怪我に気を付けてって朝礼で言ってたじゃないですか」
カレン「そうそう、だから付け方が悪くても我慢しろよ!」
 そう言うと、カレンは消毒液をアリーにぶっ掛けた。
アリー「痛てええええ!!畜生、あのガキ覚えてろよー!!」

 おわり

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2015年12月30日 22:09