231 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 序の一投稿日:2006/12/21(木) 02:00:16 ID:???
夜の静寂に、サイレンが鳴り響く――
「カレン、サンダース! 部隊の展開を急げ! もうすぐ予告時間だ!」
『了解!』
「でも警部、本当に来るんですか? 今のご時世に『怪盗』なんて」
「気を抜くなミケル! 頭を切り替えろ、取り逃がすぞ!」
「は~い」
「警部、来ました! 二時の方角! ……識別コード不明!」
「何っ!? 警察に公表されてないコードだと!?」
「どこかのジャンク屋が作ったんじゃないですか? ほら、あのゲゼみたいに」
「ミケル、お前の頭ん中はお花畑か? こんなスピードがジャンクの寄せ集めで出せるかよ!」
「す、すみませんエレドアさん」
「しかしなんだ、この音、どこかで聞いたんだ…どこかで…!」
『デカ長、視認できました! 映像送ります!』
サンダースから送られてきた映像。
白と黒の体躯。陸ガンより若干小型、特徴的な背部の十字ブースター。なにより目をひくのは、海賊が身に着けていたようなマントと――額のドクロ。
「か、海賊!?」
「CROSS-BONESとはよく言ったものだ…キンケドゥ=ナウ!
陸ガン部隊、一斉射撃! 銃身が焼きつくまで撃ち続けろっ!」
『了解!』
だが陸ガンの銃弾は背部スラスターの加速にかわされ、当たってもマントに弾かれる。あっさりと骨
ガンダムは屋敷に近づき…コクピットからパイロットが飛び出した。
青い髪。白い覆面。黒いノーマルスーツ。
パイロット――おそらく予告状を出した『怪盗』キンケドゥ=ナウその人であろう――は足元からアポジモーターの噴射光を出しつつ、警備員を蹴り飛ばしながら屋敷に入っていく。
232 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 序の二投稿日:2006/12/21(木) 02:01:17 ID:???
「内部班! 奴は中に侵入した! 警察の威信にかけても宝石を死守しろ!」
『了解!』
「俺達は外だ! 誰一人中から出すなよ!」
『はっ!』
指令を出しつつ、シローは歯噛みした。予告を受けていながら、みすみす賊の侵入を許すとは。
そこに声をかけてくるのは屋敷の主人だ。
「どういうことかアマダ警部。絶対に安心、ではなかったのですか」
「は、すみません…」
「すみませんで済んだらあなたがたはいらないでしょう。全く、警察がこんなものと知っていれば、サーペントテールに頼むべきでしたな」
「お言葉ですけどねぇクリューガーさん? あの予告状は俺達の所にも来てんですよ。あんたが頼まなくたってこっちから来てたっての!」
「やめろエレドア! 口論してる場合じゃない!」
「…警部ったら相変わらずで」
「でしたらどうぞ、ご勝手に警備してください。私は中であれを守ります」
言い捨てて、肩を怒らせながら屋敷に入るクリューガー氏。
「だったら最初ッからそうしとけばいいじゃん」
「エレドアさん、今日は一段とささくれ立ってますよ。落ち着きましょうよ」
「お・ま・え・は、一応銃を撃ったからそんなこと言えるんだよ! 何だよ識別コード不明って! 馬鹿にしてんのか!?」
「エレドア、それは相手の方が上手だっただけだ。まさかあんなMSを持ち出してくるとは思わなかったんだから」
「そりゃ警部のミスですよ! 俺は…あの駆動音、どっかで聞いたと思ったんだ! そうだよ、サナリィのフォーミュラシリーズにそっくりなんだ!」
「何!?」
「それが分かりゃ、小型で高速で単独飛行するってところまで予想できたんですよ! なのに…くそっ、音は分かったのに!」
「……エレドア、気持ちは分かるが、もう過ぎたことだ」
シローが空を見れば、白黒ガンダムはどこかへ飛び去っていくところだ。オートでプログラムがしてあったのだろう。
あの速さには陸ガンではついていけない。空さえ飛べないのだから。
「俺達はあのパイロットを――キンケドゥを必ず捕まえるんだ! お前の耳が頼りだ、どこから出てくるか! サポート頼むぞ!」
「っ…了解!」
しかし、08署の面々がキンケドゥを捕らえることは出来なかった。
屋上から飛び立ったキンケドゥは、銃の狙いをつけようがないほど天高く飛び、そのまま行方をくらましてしまったのだ。
見事に宝石は盗まれていた。ついでに裏帳簿と見られる書類が屋敷に散乱していた。
クリューガー氏は呆けたように、キンケドゥが飛び去った空を見上げていた。
警察はキンケドゥを捕らえることは出来なかった。代わりにと言っては何だが、裏帳簿からクリューガー氏の裏金脱税
その他が判明し、氏は書類送検された。
233 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 序の三投稿日:2006/12/21(木) 02:02:25 ID:???
後日、08署にて、
「キンケドゥ、これを狙ってたんじゃ…」
「ミケル、冗談でもそれは言うな。こんな手段に出た以上、あいつも犯罪者なんだ。デカ長がいつも言っているだろう」
「あーサンダース巡査、テレビ消さないでくださいよ。せっかくワイドショーであの事件やってたのに」
「全くお前は…少しは警察の自覚を持て」
ワイドショーで義賊やら英雄やらと持ち上げられるキンケドゥ。
部下達のやりとりを聞き流しながら、シローは自分のデスクで、ぎりっと奥歯をかみ締めていた。
(キンケドゥ=ナウ――俺がこの手で!)
それが始まりだった。
あれから何度俺達は戦ったことか。今度こそ、今度こそと念じながら、いつもいつも裏をかかれ取り逃がしてしまう。
警察に内通者がいるのかと疑ったこともあった。新聞記者に弟の友人たちを疑われたこともあった。どれも違った。
だが、予感がある。
もうすぐ俺達の戦いが山を迎えるのだろう、と。
そのとき、俺は何を思う?
234 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 序の四投稿日:2006/12/21(木) 02:04:01 ID:???
――怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編――
これは、譲れぬ目的を掲げ裏の世界に身を投じた、熱き少年達の物語である!
尚、番組の内容は予告と変更される場合がございます。ご了承下さい
最終更新:2019年03月22日 20:58