281 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 九の一投稿日:2006/12/23(土) 03:04:41 ID:???
そのころラインフォード邸には、毎度おなじみ陸ガン部隊が展開していた。
「絶対にキンケドゥを捕まえる! そして背後関係を吐かせるんだ! いいなっ!!」
『了解!!』
今日のシローには気合が入っている。弟を疑ったこと、
カロッゾパンやドンキーへの疑惑によって弟達の友人が憔悴していること。それらがシローの心を燃え上がらせているのだ。
「デカ長、来ました! あいつらです!」
「さっそくお出ましかっ!」
サンダースの声に空を振り仰ぐ。月をバックに、二機の
ガンダムがプリティでキュアキュアなポーズを…
「ん?」
「じ、爺さん、これ凄く難しいんだけどっ!?」
「なんじゃ、ポーズの練習もしとらんのか。ちっとはザビーネを見習え」
「夜な夜な鏡の前でポーズ付けろってんですかぁ!? ギルの奴に笑われますよっ!!」
出現したのは、白ガンダムと黒ガンダム。だが、黒ガンダムの細部が違う。
「新型か…? おい、エレドア!」
「反応酷似…ジェネレーター音も似てますが、ちょいと部分的に低いですね! おそらくカスタム機ですが、武装を変えたくらいでしょう」
「分かった。各員、黒に気をつけろ、何が飛んでくるか分からんぞ!」
「よし、行くぞトビア! キンケドゥ・ルミナスの初お披露目じゃ!」
「黒ペンキで塗りつぶしといてルミナスも何も…その前にやっぱコードネームつくんですか」
そして戦いが始まった!
282 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 九の二投稿日:2006/12/23(土) 03:06:34 ID:???
「いいよ、ベラ。着艦した」
「分かったわ、シーブック」
セシリー=フェアチャイルド――ベラ=ロナは、シートから立ち上がり、宣言した。
「マザー・バンガード、発進準備! 目標、コロニーのジュピター本社!!」
『了解!!』
『ただいま入ってきたニュースです! ラインフォード邸にキンケドゥが現れました! 08署の部隊が迎撃に出ています、日昇町パン連盟との関係は一体…
あ、あれ? えー、さらに入ってきた情報です! カロッゾパン駐車場地下から、戦艦が現れました! お、大きい…何百メートルあるんだこれ!? それもやけに派手…え、施設まで!?』
と、混乱しまくってるキャスターだが、日昇町の人々はニュースで見るよりも自分の目で見た方が早かったし、純粋に感動すら覚えられた。
何しろ儀礼用としか思えない派手な船が、地面の下から現れたのである。しかも打ち上げ施設付きで!
「ン見ぃぃぃたぁかぁぁぁぁぁぁ!! あれぞ我がロナ家の誇る儀礼船マザー・バンガードッ!!
年に一度開かれる日昇町パン連盟・パントーナメントの会場であるが!
もしものときはロナ家に伝わるパスコード入力により通常運行も可ッ能ッ!!
ちなみに現在の船首女神像のモデルはナディアだッ!! ふはははは! どうだ美しかろう!!」
「ナディアって誰です?」
「私の妻だ!」
「見たことがありませんが…」
「そうも物事をはっきりと言う!」
「す、すみません」
「ナディアにはなぁ! しばらく前に逃げられたのだぁぁ!!
うおぉぉぉん! 帰ってきてくれナディアぁぁぁ!!」
(姉さん…助けてよ姉さん…)
283 名前:怪盗キンケドゥ・クリスマス決戦編 九の三投稿日:2006/12/23(土) 03:08:18 ID:???
その光景はラインフォード邸の面々も目撃していた。
「えっと…あれ、キンケドゥはここにいて…あれはカロッゾパンの…あれ?」
「落ち着けミケル! 頭を切り替えろ!」
やはり混乱しているところに、通信が届く。
『シロー兄さん!』
「シーブック!? お前、どこに!?」
『マザー・バンガードの中だよ!』
「警部、通信元特定しました! あの戦艦からです!」
「戦艦…!」
キンケドゥはここにいる。自分たちと戦っている。だが弟はあの戦艦の中にいる――
シローの表情が見る見るうちに明るくなっていく。
「は、ははっ… これではっきりした! カロッゾパンは、シーブックはキンケドゥとは関係ないんだ!」
『兄さん、まだ疑ってたのかよ…』
「世論の話だよ! だが、お前を一時でも疑っちまったのは事実だけどな…悪かった」
『いいよ。誤解が解けたんなら』
「それでお前、どこに行く気だ?」
『パン屋として、勝負に』
「暴力沙汰じゃないな?」
『当然!』
「なら…行って来い! アムロ兄さんには俺からも言っといてやる!」
『ありがとう、兄さん!』
通信が切れる。
「ベラ、終わったよ」
「分かったわ…シーブック?」
「うん?」
「なんだか、晴れ晴れとした顔ね」
「そうかな」
「そうよ」
「カウントダウン! 3,2,1、0!!」
凄まじい爆音と共に、戦艦マザー・バンガードは宇宙へと飛び立っていった。
「ふふっ…あははははははは!!」
シローは笑った。心の底から笑った。
ディスプレイの向こうの弟は、憑き物の落ちたような清々しい顔をしていた。
そしてそれは、シロー自身も同じだったのである。
上司がついに壊れたか、と心配する08署メンバーを尻目に、シローは顔を引き締め、前線に躍り出た。
(弟はパン屋の意地をかけ、飛び立った。ならば!)
「キンケドゥ! 警察の意地をかけて、俺も勝負を申し込む!!」
最終更新:2019年03月22日 21:20