70 名前:シンの風紀委員体験 初等部編1 1/4 :2015/06/18(木) 22:36:48.53 ID:GgWlXlKD0
なんか長くなりそうなので、小分けにしてちょっとずつ投下することにします。
風紀委員一日目。まずは慣らしということで、シンは初等部の見回りを行うことになった。
初等部の校舎は他の校舎と比べて小さい。中等部や高等部と違ってMSやMAの駐機場が必要ないというのが最大の理由だ。
それでも普通の学校に比べればよほど大きく頑丈なのだろうとシンは思っている。
外壁には流れ弾や爆風防止用にガンダリウム合金をふんだんに使用し、他にもGN粒子やミノフスキー粒子といったよくわからないエネルギーで云々かんぬん。つまり、とにかく頑丈ですぐに直せるすごい校舎なのだとか。
おそらく学園の中でも一番平和な校舎だ。少々の悪戯や喧嘩はあっても問題生徒の数は少ないし、中等部や高等部と違って喧嘩にMSを持ち出したり、授業中の諍いで教室が吹っ飛んだりすることもない。
教師が暴走して生徒を襲ったり首狩りの歴史を教えようとしたり生徒と一緒に覗き行為を働いたりすることもない。
実に平和だ。中等部、高等部とのあまりのギャップに涙が出てきたが、すぐにふき取った。
想いを馳せるのは後だ。今はとにかく、風紀委員の活動をするのだ。アスランの代わりとして職務を全うしなければ。
とはいえ
シン(こんな平和な初等部で、風紀に反することする奴なんているのかよ…)
こう思うのもまた事実。この年の子供は喧嘩するのが当たり前だ。多数の弟がいるシンもそれを知っている。あまりに酷ければ仲裁に入るが、そうでないなら干渉するのもどうかと思うのだ。
今日の活動は何もなく済むだろう――そう思いながら廊下の角を曲がった時だった。
アドウ「やっと見つけたぜアルフレッドにシュウト!」
チェイ「ひ、人違いだよ!」
アドウ「バカを言え! あの時貴様らに受けた屈辱の記憶、決して忘れてはいない! どこからどう見てもあの時のガキどもだ!」
テルコット「俺たちじゃないよ! 助けてえ!」
いかにも"私は悪人です"と全力で主張している人相の男が少年二人を追い回していた。
シン「やめねーかああああああ!」
アドウ「うおっ!?」
シンが刹那謹製GNハリセンを男に叩き込むと、男はすぐに体を逸らして回避した。
72 名前:シンの風紀委員体験 初等部編1 2/4 :2015/06/18(木) 22:38:38.04 ID:GgWlXlKD0
シン「初等部の生徒相手に何やってんだあんたは! 警察呼ぶぞ! おい、お前らは職員室に逃げろ!」
チェイ「は、はいぃ!」
アドウ「き、貴様は…」
シンを見て、男が驚愕に目を見開いた。
シン「な、なんだよ」
アドウ「馬鹿な、アルフレッドが二人…!?」
シン「は?」
アドウ「兄のドモン・カッシュから分身殺法・ゴッドシャドーを教わったのか! なんて羨まもとい卑劣な奴だ!
――いいぜ、二人だろうと三人だろうとまとめて叩きのめして」
シン「落ち着けよ」
ぺしん、とシンの張り手が男の頬を叩いた。
アドウ「ぐおっ。………ン? 誰だお前は。今アルフレッドがここに…」
シン「だからいねーっての。他校生のはずのアンタがなんでここにいるんだよ」
そう、シンはこの男を知っていた。この男がシンを知っているかは定かではないが――弟のセカイと
ガンプラバトルで戦った男、アドウ・サガだ。
アドウ「アルフレッドとシュウトを探しに来た」
シン「
アルとシュウトを? 何のために…」
アドウ「リベンジのためだ」
実はこの男、以前アルとシュウトのコンビとガンプラバトルで戦って負けているのだ。
シン「ガンプラバトルに限っちゃ、あいつらには勝てないと思うけどな」
小さいころからエース級のパイロット同士の戦いをいつも間近で見て、たびたびシミュレーターをオモチャ代わりにして遊んでいるアルとシュウト。
ただの小学生とはわけが違うのだ。
アドウ「素人だからそんなことが言える! 仮にもガンプラ学園代表の俺が負けるなんてあっちゃならねえんだよ!」
アドウとしてみれば、学園代表の自分が無名の小学生に負けたのである。プライドが許さないのだろう。
73 名前:シンの風紀委員体験 初等部編1 3/4 :2015/06/18(木) 22:40:52.30 ID:GgWlXlKD
0シン「ところで、さっきはどうしたんだ? 様子がおかしかったけど」
アドウ「俺もよくわからん。そこらにいた女生徒にアルフレッド達の居場所を聞いてたと思ったら気が遠くなって…」
シン「………」
先ほどのアドウの症状にはシンも覚えがあった。二度と思い出したくない悪夢の記憶だったが、今回はそれが役に立ちそうだった。
犯人であろうその女生徒――シャクティを見つけたのは、それから少ししてからのことだった。
マユ「あ、さっきの変な人!」
シャクティの隣にいたマユがアドウを指差して言った。
アドウ「誰が変な人だ!」
シン「やめろ。なあシャクティ、さっきこいつに何かしなかったか?」
シャクティ「男性が全部アルとシュウトに見える暗示をかけましたけど、それが?」
予感的中である。
昔キラとシンはシャクティを怒らせたことがあり、その時に似たような暗示をかけられたのである。
アドウ「"それが?"じゃねえだろ! おかげで――」
シン「落ち着けっての。なんでそんなことしたんだ?」
激昂するアドウをおさえながらシンが聞いた。
シャクティ「いきなりやって来てマユに掴みかかってきたからですが」
シン「………へえ?」
妹のように可愛がっているマユに掴みかかったと聞き、シンは怒気を放ちながらアドウを睨んだ。
アドウ「お、俺はアルフレッド達の居場所を聞こうとしただけだ!」
シン「…居場所を聞こうとしただけ、ねえ。本当かよ」
アドウ「本当だ! ドモン・カッシュに誓ってもいい!」
シン「どう思う、シャクティ」
シンとしては嘘をついているように見えなかったが、念のためシャクティに聞く。
ニュータイプ(アムロとウッソ曰くサイキッカーに近いらしいが)の彼女の感性を参考にしたかった。
シャクティ「嘘はついていないと思います」
アドウ「当たり前だ」
74 名前:シンの風紀委員体験 初等部編1 4/4 :2015/06/18(木) 22:46:45.94 ID:GgWlXlKD0
シャクティ「勘違いして申し訳ありませんでした。とんだご迷惑を…」
アドウ「謝るなら、別に構わねえよ。子供脅してどうなるってんだ」
どうにか、丸く収まったようだ。安堵して、シンが口を開いた。
シン「とりあえず、今日はもう帰ったらどうだ?」
アドウ「成果もなく帰れって言うのか」
シン「あんまり言いたくないけど…周り見てみろよ」
見渡せば、アドウたちに周囲の好奇と怯えの視線が集中していた。さんざん騒いだのだから当然だ。
アドウ「くっ…わかったよ、今回は退いてやる。――だが俺は諦めねえからな!」
さすがに耐えきれなかったか、アドウは捨て台詞を残して出て行った。
その後ろ姿を見ながら、シンは大きく嘆息する。
シン(せっかく平穏無事に終われると思ったのに…)
比較的平和だと思った初等部でもトラブルからは逃れられないのか。シンは気を引き締め、校内の見回りを再開した。
ちなみにアドウは、チェイとテルコットの話を聞いたドーデモ教諭が呼んだ警官と鉢合わせして連行されてしまったのだが
シンがそれを知るのはもっと後のことであった。
初等部編2に続く。まだ完成してないからまたしばらく時間を置くと思う
最終更新:2016年05月02日 06:38