91 名前:シンの風紀委員体験 初等部編2 1/4 :2015/06/21(日) 20:38:33.98 ID:L2nGCW3Z0
シャクティたちを見送って見回りを再開したシン。
初等部においては部外者であろうとなかろうと大人の存在というのは非常に目立つ。
ゆえに、ハンディカメラを片手に死角からアルを撮影しているスメラギの姿を見つけるのにさほど時間はかからなかった。

シン「こんなところまで来て何してんだあんた」
スメラギ「言葉に気を付けなさいシンくん。今の私は新任教師のスメラギ先生よ」
シン「スメラギ先生ぃ? あんた教師だったのか」
スメラギ「ヴェーダの力をもってすればデータ改竄で教師に成りすますなんて楽勝よ!」
シン「威張るなよ! ていうか教師が盗撮なんてするな!」
スメラギ「失礼な! これは別に盗撮とかそういうのじゃなくて、生徒の成長を記録する神聖な行為よ!」
シン「何が神聖だぁぁぁぁ!」
カトック「どうしたんだ、シン。そんなに騒いで」
シン「カトック先生にファラ先生…なんでここに」
ファラ「そこにいる先生に用事があってね」
スメラギ「私に?」
カトック「スメラギ先生、頼んだ仕事はどうなってるんです?」
スメラギ「え? な、何を言ってるんですか。私はあなたたちには会ったことも――」
ファラ「何言ってんだってのはこっちの台詞だよ。あんたは元々、うちの学校の非常勤講師だったじゃないか
    寝ぼけてないで、さっさと行くよ」

92 名前:シンの風紀委員体験 初等部編2 2/4 :2015/06/21(日) 20:42:07.03 ID:L2nGCW3Z0
スメラギ「え。な、何言ってちょ引きずらないでアッー!」
ファラにずりずりと引きずられていくスメラギの姿をため息をつきながら見送るシンの視界に、一人の少年が現れた。
アル「何してんの、スメラギ姉ちゃん」
アルだった。これだけ騒げば気付かれるのも当然である。
スメラギ「ああ、アル様! 私を助けて!」
乞われたアルはスメラギとそれを捕まえている教師ふたり、それにシンを交互に見る。そのあと少し悩んで
アル「そっとしておこう…」
きわめて賢明な判断を下し、その場を立ち去った。
ファラ「良い子だ。さ、行くよスメラギ先生」
スメラギ「いいいいいやあああああ…」
哀れ見捨てられたスメラギ、ファラに引きずられてフェードアウトした。
シン「あの」
カトック「なんだ?」
シン「スメラギ…先生って本当に教師だったんですか?」
カトック「そんなわけないだろ」
シン「え」
カトック「そろそろ職員を増やそうと話してたところに、書類上で見覚えのない人間が教師ってことになってたもんでな
     こりゃちょうどいいってことで本当に教師にすることになったんだよ。ま、担当は中等部か高等部になるだろうが」
シン「………」
いいのかそれで。そう考えた後こうでもないと持たないのかもしれないと考え直す。
十五年前に赴任したというが、それまでの間どれだけのトラブルがあったのだろう。
平然と立ち去るカトックの後ろ姿をシンはしばらく眺めていた。

93 名前:シンの風紀委員体験 初等部編2 3/4 :2015/06/21(日) 20:42:46.90 ID:L2nGCW3Z0
カトックの姿が見えなくなった後シンが再び校内を巡っていると、帰り支度を済ませたミネバに出会った。
ミネバ「誰かと思えば、シンではないか」
シン「ミネバ? あれ、今日はオードリーになってたんじゃ…」
ミネバとオードリーは同一人物である。オードリーが来ている日にミネバは来ないし、ミネバが来ている日にはオードリーが来ない。
今日はオードリーが出席していたはずなので、ここにミネバがいるはずがないのだが――
ミネバ「最近、用事が重なってしまうことが多くてな。それをマイに相談したら、分離させてもらったのだ!」
シン「分離って…もしかしてあの機械を使ったのか!?」
そこで思い出したのは昔兄のマイが趣味で製作した、入れたものを分離する謎の機械ヅダソールだ。
その装置に入ったアムロが大変なことになったことはシンの記憶に強烈に残っていた。
ミネバ「というわけで、今の私はミネバ姉妹の三女ミネバ・ラオ・ザビなのでよろしく頼む」
シン「三女?」
ミネバ「長女はメイファ・ギルボード、次女はオードリー・バーン、三女が私だ」
シン「ややこしいな、おい…」
ミネバ「マイの話では、効果はしばらく続くらしい。なので少なくとも今日は自由を満喫できる!
    今日はリリ達といっしょにラクロアで遊ぶ予定なのだ!」
シン「へえ、そりゃあよかったな」
デラーズ「なりませんぞミネバ様」
ミネバ「そ、その声はデラきゃあああああ!」
シン「どうしたんだよ、ミネbうわあああああ!?」
背後にいたのはデラーズだった。確かに人相は悪いが、シンもミネバもコワモテの相手は慣れている。
ならなぜ悲鳴を上げたかといえば――ブルマ姿だったからである。
しかもご丁寧に"0083年でらーずふりーと組 えぎーゆ・でらーず"などとプリントされていた。

94 名前:シンの風紀委員体験 初等部編2 4/4 :2015/06/21(日) 20:43:24.44 ID:L2nGCW3Z0
しかもサイズが合っていないらしく、ピッチピチである。下半身の一部分がなんだかもっこりしているのは気のせいではないだろう。
シンはミネバの視界を遮るように立ち、自分もなるべく相手の姿を見ないように努めながら会話を始めた。
シン「………なんでそんな恰好してんですか」
デラーズ「普段着では怪しまれるだろう」
シン「その恰好じゃ余計に怪しまれるだろ!」
デラーズ「そんな馬鹿な。木を隠すならば森の中、女生徒を隠すには女生徒の中
     すなわち、女生徒の証たるこの服装で挑んだのだぞ。どうでしょうミネバ様、この姿」
シン「見せるなあああああ!」
自分の姿をミネバに見せようとシンを押しのけようとした瞬間シン渾身のGNハリセンが炸裂し、デラーズは昏倒した。
シン「………」
ミネバ「………」
重い沈黙。先に口を開いたのはシンだった。
シン「ミネバ」
ミネバ「な、なんだ?」
シン「この意味不明な物体は俺が片づけておくから、安心して遊んで来い。…それと」
ミネバ「それと…?」
シン「俺たちは何も見ていない。そうだな?」
ミネバ「う、うむ! 何も見ていないな! あんな酷い姿のデラーズなどいなかったのだ!」
シン「よろしい。じゃ、行って来い」
ミネバ「ありがとう、シン!」
シン「さて、と…」
悪は倒れ、ミネバは遊びに行った。それはいいとして。
目の前の名状しがたい物体をどうやって外に運び出そうか、シンは割と真剣に悩むことになった。


初等部編3に続く 

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最終更新:2016年05月04日 20:45