700ダリルとベアッガイ2017/08/05(土) 05:07:22.75ID:3MBaiJYG0
日登町郊外の山中
フィッシャー「やれやれ、仕事とはいえまたこんなところまで来るとはな」
ダリル「……………」
ビリー「どうした、隊長?」
ダリル「いや、そういえばあいつに初めて出会ったのはこの近くだったなと思ってさ」
ビリー「あいつ?」
ショーン「ああ、あいつか」
フィッシャー「そういやそうだな」
セバスチャン「誰ですか、そのあいつとは」
フィッシャー「ダリルにはな、少し前までもう一人家族がいたんだ。いや、一匹というべきか」
ビリー「一匹?」
ダリル「もう一年前になるのか…」
一年前
ショーン「ったく、なんで俺たちまでわざわざこんな山の中まで来なきゃいけないんだよ」
フィッシャー「そう愚痴るな。これも仕事だ」
マイ「すいません、リビングデッド課のみなさんにまでお手伝いいただいて」
モニク「
空中分解したヅダの破片は全て回収しないと、最近は環境団体がうるさいんでな」
デュバル「諸君らの奮闘に期待する!」
ショーン「うるせえ!空中分解させた当人が威張んな!」
ガサゴソガサゴソ
ダリル「ふう…」
マイ「おやダリル君。破片は見つかりましたか?」
ダリル「いやダメでした。思ったより遠くまで飛散したみたいですね」
モニク「ではその腕に抱いているものは何だ?」
ベアッガイ「モキュ~…」
ダリル「途中で見つけたんです。左脚を怪我して自力で歩けないみたいだったんで」
ショーン「野良モビルシチズンか」
マイ「結構初期のタイプですね。
モビルシチズンとしては極少数生産されたと聞きますが、実物は初めて見ました」
モニク「で、どうするんだ?アッガイ園にでも持ちこむのか?」
ダリル「怪我してますからね…とりあえず自宅に連れて行こうと思います。こういう修理はカーラ得意なんで」
マイ「幼児退行しても技術自体は忘れていないんですね」
ベアッガイ「モキュ…モキュ…」
ダリル「よしよし、もう大丈夫だからな」
――これが、俺とあいつとの出会いだった。
701ダリルとベアッガイ2017/08/05(土) 05:08:41.04ID:3MBaiJYG0
ダリルの部屋
カーラ「パパ~ベアッガイが机の下に隠れたっきり出てこないよ…」
ベアッガイ「キュ~…」
ダリル「うん、多分怯えてるんだろう。突然こんなところに連れてこられた訳だし」
カーラ「でもこれじゃ修理もしてあげられないよ」
ダリル「そうだな。なんとかしないと……うん?」
ベアッガイ「……ジー」
カーラ「この子、何かを見てるね」
ダリル「あれは俺のアッガイか?」
カーラ「あはは、そうだね。パパのアッガイをお母さんだと思ってるのかな?」
ダリル「お母さんか……そうだ、いいこと思いついたぞカーラ!」
数日後
ダリル「よし、じゃあ一緒に会社に行くぞベアッガイ!」
ベアッガイ「モキュ!」
プル「あ、見てみてマリーダ!おっきいベアッガイが小さいベアッガイを連れて歩いてるよ。親子かな?」
マリーダ「単にモビルシチズンと外見を改造した普通のアッガイが並んで歩いているだけですよ」
プルツー「(かわいい……)」
フィッシャー「お、今日もベアッガイと出勤かダリル」
ショーン「最初は何事かと思ったけど、このでっけえベアッガイにもすっかり慣れたな」
モニク「しかし考えたな。ベアッガイの警戒を解くために自分のアッガイもベアッガイに改造するとは」
マイ「実際、動物園や研究所でも保護した野生動物に餌を与えるのにぬいぐるみや着ぐるみを使うと聞きますからね」
ホルバイン「警戒心が強くなけりゃ生きていけねえ。それが野生ってもんだ」
アッガイタン「モキュ!」
ダリル「よし、じゃあ仕事に行ってくるよ。ここでしばらく大人しくしてくれな」
ベアッガイ「モキュ~…」
ダリル「はは、そんな寂しそうな声を出すなよ。昼休みになったらまた遊ぼうな」
ベアッガイ「モキュン!」
――カーラの修理もあって、ベアッガイはみるみる元気を取り戻して行った。そして、数か月が過ぎた。
ダリル「その頃にはあいつも人間社会に打ち解けてな。MSに乗らなくても俺やカーラとすっかりなつくようになっていた」
フィッシャー「飯ももりもり食ってたしな」
ダリル「ああ。初めて会ったときは腕の中に納まるくらい小さかったのに、数か月で二倍くらい大きくなったからな」
フィッシャー「ありゃあびっくりしたな」
ビリー「あのーちょっと聞きたいんだけど、そのベアッガイってモビルシチズンなんだよな?今って野生の本物の熊の話をしてるんじゃないよな?」
フィッシャー「なにいってんだアンタ」
ダリル「ごめん、俺の話がわかりづらかったかな。確か初めに野生のモビルシチズンを拾ったって話したと思ったんだけど」
セバスチャン「いえ、確かに聞きました」
ビリー「いや、あー、うん。わかってるんならいいんだ。話の腰を折って済まない」
ダリル「そう。ともかく数か月後にはあいつもすっかり元気になった。それである日、俺はあいつを連れて初めて会ったこの山に来たんだ」
702ダリルとベアッガイ2017/08/05(土) 05:14:40.79ID:3MBaiJYG0
ダリル「ふう、いい天気だなベアッガイ」
ベアッガイ「モキュ」
ダリル「空気も爽やかだし来てよかった…おまえもそう思うだろ?」
ベアッガイ「モキュ~!」
ダリル「ははは、懐かしいか。生まれ故郷だもんなお前の」
――今日、ここに来たのは理由がある。ベアッガイを野生に戻すべきか、それを決めに来たのだ。
ホルバイン「お前があいつの面倒をずっと見るっていうならそれでもいい。だが、一度人間の世界に馴染めば二度と野生には戻れねえ」
ダリル「ホルバインさん…」
ホルバイン「もう一度、見つけた山に行ってみたらどうだ。決められるのは、今しかねえぞ」
――そしてその薦めに従い、俺とベアッガイはこの山に帰ってきた。
ベアッガイ「モキュ~モッキュモッキュ」
ダリル「(でも、本当に山に返す必要があるのか?だってこいつには親もいないし、引き離されたらきっとカーラだって悲しんで…)」
ベアッガイ「モキュキュ?モキュ?」
ダリル「あ、ああゴメン。考え事してたよ。…ん?」
バルチャー1「ヒャッハー!久しぶりに来たぜここに!」
バルチャー2「ヒャッハー!今日も野良モビルシチズンを狩りまくってやるぜ!」
ダリル「あいつらバルチャーの密猟者か。こんなところに来るなんて。…どうしたベアッガイ」
ベアッガイ「モキュ~……」ガクガクブルブル
ダリル「こんなに怯えて…そうかわかったぞ。半年前、お前を傷つけたのはあいつらだったのか!」
バルチャー1「しかし前捕まえたベアッガイは高く売れたぜ。まさか少数生産のレアモノだったとはな!」
バルチャー2「あの時小さい方には逃げられちまったからな!今日はあいつも捕まえてまた大儲けだぜ!」
ベアッガイ「モキュ…!モキュ~!!」
ダリル「おまえ…怒ってるのか?そうか、そうだよな。母親をやられたんだ、怒らないはずがない」
ベアッガイ「モキュキュ、モキュモキュモキュ!」
ダリル「ああ、そうだな。仇を取ろう、二人で!」
ベアッガイ「モキュ!」
――俺とあいつは作戦を練って奴らを撃退することにした。…それが、後であんなことになるなんて俺はまだ知らなかった。
703ダリルとベアッガイ2017/08/05(土) 05:16:55.78ID:3MBaiJYG0
バルチャー1「ヒャッハー!出てこいベアッガイ!」
バルチャー2「ヒャア!出てこないと山ごと燃やしちまうぞ!」
ベアッガイ「モキュ…!」
バルチャー1「お、ラッキー!こんな早く見つかるとはな」
バルチャー2「よし、手筈通りだ。回り込んで捕まえるぞ!」
ベアッガイ「モキュ~!」
バルチャー1「ちいっ!こいつ前よりすばしっこくなってるぞ!」
バルチャー2「追い込め!角に追い込んで捕まえるんだよ!」
ベアッガイ「モキュ!」
ダリル「(よし、いいぞベアッガイ。そのまま開けたところへおびき寄せて……今だ!)」バキューン!
バルチャー2「ぐわあ!!」
バルチャー1「狙撃された!?こんな山の中でいったいどこのどいつが…!」
ダリル「これで二対一だ。もうお前らに勝ち目はないぞ」
バルチャー1「銃を持ったベアッガイ?!…いや、ただの改造したアッガイか。けったいな見た目しやがって…!」
ダリル「半年前ベアッガイを密猟したのはお前らだな?武装を解除して投降しろ。そして、こいつに謝るんだ!」
ベアッガイ「モキュ!!」
バルチャー1「ふざけやがって…!誰がモビルシチズンごときに謝るかよ!」ボン!
ダリル「煙幕!?」
バルチャー1「今日のところは引き上げてやる!だがまた来るからな、そん時は覚悟しやがれベアッガイ!」
ダリル「くそっ!ここで逃がす訳には…!」
ベアッガイ「モキュ……モキュ!!」
ダリル「ベアッガイ!?」
バルチャー1「はあ、はあ。ここまでくりゃ大丈夫だろ」
ベアッガイ「モキュ!」
バルチャー1「やべえ、追いつかれた!?って…お前一匹かよ脅かしやがって」
ベアッガイ「モキュ、モキュ…」
バルチャー1「あのアッガイがいなきゃてめえなんて怖くねえぞ!せっかく見つけたんだ、ここで捕まえてやる!」
ベアッガイ「モキュ、モキュモキュモキュ。…モキュ~~~!!」
ダリル「はあ、はあ。くそ見つからない、一人でどこに行ったんだベアッガイ…!」
「…キュ、モキュ~」
ダリル「ベアッガイ!?そこにいるのかベアッガイ!」
ベアッガイ「モキュ、モキュキュ~!!」
ダリル「よかった無事で。心配したんだぞ捕まったんじゃないかって」
ベアッガイ「モキュ…モキュモキュ」
ダリル「それであのバルチャーはどうしたんだ?結局逃げられたのか?」
ベアッガイ「モキュ…」
――ベアッガイが指した先には信じられない光景が広がっていた。目の前には破壊されたMS。特にコクピット付近は鋭い爪のようなもので、ズタズタにされている。
ダリル「…これ、お前が一人でやったのか?」
ベアッガイ「モキュ!」
――ベアッガイは誇らしげに胸を張った。俺は何も言わず、MSの側でガタガタ震えているバルチャーに声をかけた。
ダリル「…おい、おまえ」
バルチャー1「ヒィ!は、はい!」
ダリル「もう二度とここへは来るな。わかっただろ、お前らじゃこいつ一匹にも勝てないって」
ベアッガイ「モキュキュキュキュキュ…!」
――唸り声をあげるベアッガイ。バルチャーは余程怖い思いをしたのか、完全に腰を抜かしていた。
ダリル「わかったらさっさと行け。…俺じゃなくて、こいつの気が変わらないうちにな」
バルチャー1「は、はいい……!」
――バルチャーは這いずるように逃げて行った。そして実際、二度と奴らがあの山に現れることはなかったらしい。後で警察に聞いた話だ。
704ダリルとベアッガイ2017/08/05(土) 05:18:02.27ID:3MBaiJYG0
ダリル「…………」
カーラ「むにゃむにゃ…パパぁ…ベアッガイ…」
ベアッガイ「モキュ…モ-キュ…」
――その夜、俺はいつものようにカーラに抱かれながら眠るベアッガイを見て考えていた。どうするのが、こいつにとって一番いいことなのかを。
ダリル「…そんなの、もう決まってる」
――俺はカーラのベッドからこっそりベアッガイを抱き上げると、そのままMSに乗せた。そして、再びあの山に向かう。
ベアッガイ「…モキュキュ?モキュモキュ?」
――途中でベアッガイが起きた。何をしているのか、どこへ向かっているのか。まだわからないという顔だった。
ダリル「…ごめんな、ベアッガイ。俺はもう、お前と一緒に暮らせないよ」
ベアッガイ「モキュ?」
ダリル「今日、お前を見て解ったんだ。お前はもう、初めて会った時のお前じゃないんだって」
ベアッガイ「モキュ…」
ダリル「お前自身は変わってないつもりかもしれない。でも、お前の力は昔よりずっと強くなった。一人でも自然の中で生きられるくらいに」
――俺はベアッガイの方を見ずに語り続けた。果たしてどこまで理解しているのかはわからない。でも、語らずにはいられなかった。
ダリル「正直な、俺は今日お前の戦いを見て怖くなったんだ。お前はこれからどんどん強くなる。きっと生身の人間じゃ相手にならないくらいに」
ベアッガイ「モキュ、モキュモキュ」
ダリル「お前はただ遊んでいるつもりかもしれない。でも、もしこれからその力で誰かを…カーラを傷つけることがあれば、きっと俺はお前を許せなくなる」
ベアッガイ「モキュモキュ…モキュ」
ダリル「だから、俺たちはもう一緒にいない方がいいんだ」
ベアッガイ「モキュキュ…」
ダリル「山に帰ろう、ベアッガイ」
――やがて俺たちは山に着いた。俺の話がわかったのか、コクピットを開けるとベアッガイはのそのそと外へ這い出ていった。
ダリル「さよなら、ベアッガイ」
――そして、あいつは一度も振り返ることのないまま山へ消えていった。
カーラ「パパ!ベアッガイはどこにいったの!ベアッガイは!?」
――家に戻ると案の定カーラは泣きじゃくっていた。
ダリル「カーラ、ベアッガイはもういない。あいつは山へ帰った。それが一番いいやり方だったんだ」
カーラ「やだ!ベアッガイを連れて帰ってきてよ!そうじゃなきゃパパなんて大嫌い!」
――カーラをなだめるのには一週間以上もかかった。それがあんまり大変だったせいで、あいつがいない寂しさを少しでも忘れられたのは、逆に救いだった。
――そしてそれから五か月後、俺は再びあの山に来ていた。
ダリル「くそっ!ついてない…まさかここでヤツに遭うなんて!!」
イオ「おらおらどうした!逃げるばっかりかよ!」
――この五カ月、あいつのことを忘れたことはなかった。元気にしているだろうか、ちゃんと生きているだろうか。自分で捨てたくせに、そればかりが気になっていた。
ダリル「せめて何か痕跡でもと思ったのに、よりによって見つけたのが
ガンダムなんて!」
イオ「たまには遠出してみるもんだな!…別に金がねえから山に何か食料採りに来たわけじゃねえぞ!ホントだぞ!」
ダリル「この、穀潰しが!たまにはちゃんと真面目に働けぇ!」
イオ「うるせえバーカバーカ!」
――ヤツのガンダムと俺のアッガイとでは分が悪い。まして当時はまだベアッガイのままだった。戦闘力は通常のアッガイよりも劣る。
イオ「へっ、追い詰めたぜ。その珍妙なMSに乗ってたのが運の尽きだったな」
ダリル「くそったれ…!サイコザクさえあれば…!いや、せめて一瞬でも、奴の注意を逸らすことができれば…!」
イオ「終わりだ義足野郎ォォォォォ!!」
ダリル「ここまでか…!ごめんカーラ、みんな…!」
706通常の名無しさんの3倍2017/08/05(土) 05:22:24.63ID:3MBaiJYG0
――そのときだった。
「モキュウウウウウウウウ!!」ザクゥッ!
イオ「ぐはっ!」
ダリル「なんだ…誰だ…!?」
――そこに現れたのは一体のMSだった。識別コードはアッガイ。だがその外見は通常と異なり、熊の意匠が施されている。
ダリル「ベアッガイ…!」
イオ「くそ!なんでこんなところで増援が来るんだよ!しかもまたベアッガイだと!?」
ベアッガイ「モキュウ!」
――ベアッガイは見た目に合わない敏捷性で奴のアトラスをかく乱する。その動きはまさに歴戦の戦士そのものだった。
ダリル「考えるのは後だ。奴が向こうに気を取られているうちに、狙撃で仕留める!」
イオ「クソがっ!俺が…こんな妙な格好をした奴らに負けるなんて!!」
――俺は一発の銃弾でコクピットを撃ちぬき、奴を
ミンチにした。そして戦いが終わったあと、俺は助けてくれた謎のベアッガイに話しかけた。
ダリル「ありがとう、助かったよ。ええと…よかったら顔を見せてくれないか」
ベアッガイ「モキュ、モキュモキュモキュ」
――だが、ベアッガイのコクピットは開かない。通信機はただモキュモキュ言ってるだけだ。その時、俺はあることに気付いた。
ダリル「…アンタ、左脚に古傷があるんだな。修理は終わってるみたいだけど、結構古い」
ベアッガイ「モキュ、モーキュモキュモキュ」
ダリル「……そうか。生きてたんだな、おまえ」
――はっきりわかった。目の前にいるのは、あの時
別れたベアッガイだ。あれから随分成長して体長はMSサイズになっていたが、その表情は変わらない。
ダリル「よかった……ずっと、ずっと心配してたんだ。元気でやってるか、またバルチャーに襲われてないか、それで…」
ベアッガイ「モキュキュ…」
――そこへベアッガイの背後から茂みをかき分けて二体のモビルシチズンが現れた。
プチッガイ「モキュ~!」
ママッガイ「もきゅ、もきゅもきゅもきゅ?」
ベアッガイ「モキ、モキュキュモキュモ」
ダリル「は、はは…もしかしてそれ、お前の家族か?」
ベアッガイ「モ、モキュモキュモキュウ」
ママッガイ「もきゅう、もきゅもきゅもきゅも」
――照れたように笑うベアッガイとママッガイ。あいつはいつのまにか、ただのベアッガイからベアッガイFに成長していたのだ。
ダリル「そっか…そっか。お前、父親になったんだな。よかった…本当に良かった」
ベアッガイ「モキュキュ、モキモキモ」
ママッガイ「もきゅも、もきゅもきゅきゅ」
プチッガイ「モキュモキュキュ~!」
――そしてベアッガイFは手を振りながら仲良く山の中へ去っていった。逞しく育った、その幸せそうな後ろ姿に、俺は涙を抑えることができなかった……。
ダリル「元気でな、ベアッガイ。今度こそ、本当のお別れだ」
707ダリルとベアッガイ2017/08/05(土) 05:24:06.91ID:3MBaiJYG0
ダリル「きっとこの山のどこかに、今でもあいつ…ベアッガイFはいるんだ。そう思うとなんだか俺ももっと成長しなきゃなって思えて」
フィッシャー「…いい話だな」
セバスチャン「おっと…つい涙腺が。いかんな年を取ると涙もろくなって」
ショーン「まさかあのベアッガイにそんなエピソードがあったなんてな」
ビリー「……………」
ダリル「ん、どうしたビリー?さっきから黙り込んで」
ビリー「あーもう限界だ!ツッコミてえ!!何なんだよ今のハナシ、最初はともかく後半は完全に動物感動エピソードになってんじゃねえか!」
ショーン「動物感動エピソードって言われてもなあ」
フィッシャー「実際ダリルは野良ベアッガイを飼ってたわけで」
セバスチャン「それのなにがおかしいのか」
ビリー「充分おかしいから!なに最後ちゃっかり子供作ってんだ!ていうかそもそもモビルシチズンは成長しても普通のMSになったりしねえから!」
ショーン「え、モビルシチズンって成長するのか?」
フィッシャー「まあAIが知識を蓄えて云々を成長といえばそうだが」
ビリー「するわ成長!いや、本当はしねえけど今のハナシだとなんか成長する感じだったろうが!」
ダリル「すまないビリー。凡人の俺には君がなにを言いたいのかよくわからないよ」
セバスチャン「ビリー様はニュータイプですからな。オールドタイプにはよく真意を感じ取れないところがあるでしょう」
ショーン「(ヒソヒソ…いるよなーこういう冷笑系っていうの?)」
フィッシャー「(ヒソヒソ…ああ、いい話にわざと水を差すヤツな)」
ビリー「聞こえてっぞおまえら!」
ダリル「ビリー、君が俺の話を信じてくれなくてもかまわない。でもあいつは確かにこの山で逞しく暮らしていた。俺にとってそれが真実なんだ」
ビリー「いやそんな爽やかな顔で言われても……なんだよこれ、俺がおかしいのか?」(苦悩)
セバスチャン「ビリー様、あんまり細かいことを気にしてはこの街でやっていけませんぞ?」
このベアッガイFは、まだ日登町の山にいるのです。たぶん。
ベアッガイ「モキュ」
最終更新:2017年11月16日 07:42