791サイド3からただいま2017/09/03(日) 10:57:01.01ID:vbe/eJ0O0

サイド3から地球へと向かうシャトルに、彼女は乗っていた。
『間もなく当機は地球、日登宇宙港へ到着いたします…』
アナウンスが流れる。長い船旅も終わり、もうじき懐かしの故郷へ降りられる。
「ついにこの時が来たのだ…」
「忌々しい病の治療に費やした長い年月が無駄でなかったことの証のために…」
「アムロ、セレーネちゃん、そしてまだ見ぬ家族たちよ! 私は帰ってきた!」


「あの、お客様。もうじき大気圏突入となりますので、席について大人しくしていただけると…」
「あ、ごめんなさい」
乗務員に注意されて、彼女は慌てて謝罪し、いそいそと席に座りなおす。

「お前な…子供じゃないんだから大人しく座ってろ」
「サイド3式の帰還の挨拶のつもりだったんだけど」
隣に座る男に咎められて、女性は釈明した。
「あんな挨拶、見たことも聞いたこともねえや」
「…あそこには、社長もいるんだよね」
隣の男に聞こえないよう、ぼそりと呟く。
――揺れが大きくなってきた。地球はもうすぐだ。

792サイド3からただいま 22017/09/03(日) 10:58:13.00ID:vbe/eJ0O0
場所は変わり、日登町のデマークリーニング店。
カウンターのさらに奥。店の裏手につなげる形で作られたガレージで、デマーが機体の調整にいそしんでいた。
「白…くくく…白はいい。実にいい…」
「…店長、珍しくコルレルの調整なんかして。何があったんだろ」
愛機コルレルを改めて白く塗り固めているデマーを地上から見上げ、アセムが呟いた。
「来たか、アセム」
クリーニング店側の入り口から現れたのは、ウルフ・エニアクル。アルバイト先の先輩である。
「ウルフさん」
「悪かったな、急に呼び出したりして」
「別に構いませんよ」
「大将が仕事してくれなくてな。人手が足りないんだよ」
「あ、あの店長が仕事をしない!?」
"白く染める"ことに徹底的にこだわり、そのためなら何ら妥協しないあのデマー・グライフがクリーニングの仕事を放棄する。
彼の人となりを知る人間からすれば大事件と言っていい。

「うるさい、気が散る!」
思わず大声を出したアセムを、デマーは作業しながら叱り飛ばす。
その声にびくりと体をすくませ、アセムは声量を抑え改めて聞いた。
「…何があったんですか?
「この近所にライバル店ができるって噂を聞いてから、ずっとあの調子なんだよ」
「ライバル店…て。クリーニング屋の?」
「ああ。珍しいこともあるもんで、店も近い。あと可愛い女の子が店員をやるなんて噂もある」

「はあ…で、それとこれと何の関係が」
「可愛い女の子が重要に決まってるのは当然として…もしもの時はあれでぶっ潰すんだとさ…」
「ええええ…」
可愛い女の子云々はどうでもよかったが、MSでライバル店を潰すというのは穏やかではない。というか大問題だ。
「ほら、大将ってあの性格だろ。俺じゃ止められねえ」
どう控えめに言っても変人としか表現のしようがない性格のデマーは普段も人の話を聞いているか怪しいが、こと白色やクリーニングが絡むとその傾向はさらに強くなる。
「なるほど…」
「そんなわけだから、しばらくシフトに入ってほしいんだよ。頼む!」
「は、はい。わかりました」
ただでさえ普段から世話になっているウルフだ。そんな彼に手を合わせて頼まれればノーとは言えない。
幸いなことに特別な用事もなかったので、アセムは少し戸惑いながらも引き受けることにした。



「白だ! あいつもこいつも! 私がみんな白にしてやるぅぅぅぅ!」
そんな二人の方には見向きもしないデマーの絶叫が、広いガレージに木霊した。

793サイド3からただいま 32017/09/03(日) 10:59:27.42ID:vbe/eJ0O0
その夜。ガンダム家の夕食の席で、アセムはアルバイトのことを話した。
「…ていうわけで、しばらくバイト続きになりそうなんだ」
「大変ですね、アセムも」
「アセム兄もよくあのクリーニング屋で働けるよな…俺じゃ絶対無理だ」
同情するようなロランの言葉に続き、ガロードがぼやく。
「ちょっと変わってるけど、悪い人たちじゃない。仕事に対してはすごく真面目で丁寧だし、すごい人たちだよ」
「あの変人を相手にそんな評価ができるアセム兄も、やっぱりちょっとおかしいよな…」
とある事件でデマーと戦い苦戦した記憶があるためか、ガロードはひどくげんなりした様子だった。

「しかし、新しいクリーニング屋ですか」
「近場に二つもクリーニング屋があるっていうのも珍しいわよね。クリーニング屋ってそんなに儲かるもんなの?」
「ボロもうけしてるクリーニング屋…なんかイメージしづらいよね…」
「少なくともお客は奪いやすそう」
マイとセレーネが疑問を口にし、ジュドーもいまいちしっくりこないといった顔をする中、あっさり言い放ったキラにウッソは苦笑した。
「デマーさん相手に委縮しちゃってる人も多いですからね…」
鉄仮面だが実は気さくなカロッゾや組長顔だが実はいい人なドズルとは違い、デマーは単純に顔が怖い上に日ごろの言動も怪しいので怖がる人間は多い。
なので最近はもっぱら人当たりのいいウルフが接客をしているが、彼がカウンターに居る時とデマーがカウンターに居る時で明らかに客の数が違うのだ。

「あら。仕事の合間の副業のつもりだったんだけど。そんな商売敵がいるなんて予想外だったわ」
「まあ、普通はそこまでやる人いないでしょうし。予想外なのは仕方ないですよ」
「ネオジオンやサイド3にも変な人いっぱいいたけど、ここも負けず劣らずって感じね」
「自慢じゃないですけど、変人の質と量でこの街に勝てるところなんかないって断言できますね」
「…ウッソ、さっきから誰と話してるの?」
「へ?」
キオに指摘されてウッソが会話の相手の方へ向き直った先には、見慣れぬ女性が立っていた。

「誰だあんた!?」
「やっほ。勝手に入らせてもらったわよ」
シンの追究の声もどこ吹く風と言った具合で、女は片手を軽く上げて挨拶した。
「いや…勝手に入ったって」
「鍵も電子ロックも完璧だったはず…貴様、どうやって入った!?」
「ふふふ。そんなものは私の『万能鍵開け機』シャングリラ十六号とグリーンノア十五号。鉄壁の物理ロックも無敵の電子ロックもこの二つで一発解除ってね」
どこから取り出したのか、怪しい機械を両手に得意げに語る女性。セキュリティに自信を持っていたヒイロと刹那の両名は表情に出さないまでも内心で驚いていた。
「馬鹿な…」
「だが、変態迎撃用のトラップが作動しないはずはない…」
「え、そんなの付いてたの?」
「ちょっと、アムロ兄さんもなんとか言ってくださいよ」
この事態にずっと黙っていたアムロにロランが声をかけるが、反応がない。
「アムロ兄さん?」
どうしたのだろう。ロランがアムロとその隣に座っているセレーネに目を向けると、二人はぽかんと口をあけて硬直していた。

「あ、あ…あ…アルレット姉…さん?」
「はぁい、アムロ。髪形あんまり変わんないわね。元気してた?」
アムロがようやく絞り出したその声に。先ほどとまったく変わらない、至極軽い調子で女性――アルレット・アルマージュは答えた

794サイド3からただいま 42017/09/03(日) 11:02:36.66ID:vbe/eJ0O0
「え…」
「ぼ、僕たちの…」
「お姉さん?」
アムロの声に、にわかに場がざわめく。
「嘘でしょ…姉さん…死んだはずじゃ…」
「突然ですがここに取り出したるは第三の発明品。『全自動セレーネちゃんひっぱり機』フラナガンくん八号改。ゴー!」
セレーネの呟きを聞いたアルレットは、プロペラに洗濯バサミを取り付けたような機械を取り出して、セレーネに向かって飛ばした。
機械はそのまま飛行し、セレーネの頬を洗濯バサミで挟んで引っ張りだした。
「ぎにゃー!」
「残念だったな、トリックだよ――とでも言うと思った? 勝手に姉を殺さないように」
機械を外そうとじたばたとのたうち回るセレーネを後目に語るアルレット。

「最近まったく連絡してこなかったんだ。そりゃあ勘違いもする。何してたんだ」
未だ機械と格闘しているセレーネはとりあえず放置し、ようやく硬直が解けたアムロが聞いた。
「仕事してた。治療費と入院費も稼がなきゃいけなかったし」
「娘の治療費すら払わなくなったのかあの馬鹿親は…」
姉?の返答に、アムロが頭を抱える。

「それで医者からオーケーもらって、会社からもこっちで仕事しないかって誘われたから戻ってきたの。理解できた?」
「あ、ああ…一応」
「あの…」
「兄さんと姉さんだけで納得されても困るんですけど…」
困惑ここに極まるといった弟たちの言葉を聞いて、アムロは頷いた。
「あ、ああ。すまん。俺たちも少し混乱してるんだ。うん、とりあえず落ち着いて、話を整理しようか」
「ああ、痛かった…うう、昔を思い出す…」
アムロは一度深呼吸をし、改めて椅子に座り直す。ようやく引っ張り機械から解放されたセレーネも席に戻り、その間にロランが用意した椅子にアルレットも座った。

「改めて紹介すると、彼女はアルレット・アルマージュ。俺の姉…つまり、兄妹の中で一番年上の人だ」
「…どう見ても十代後半か二十代前半にしか見えないんですけど」
アルレットを示して言ったアムロに、ウッソが反論する。アルレットは見た目だけで言えばセレーネよりも年下、シローの彼女であるアイナと同年代かそれ以下に見えた。
見る人によっては十代と言っても通じるかもしれない。

「見た目は若いが中身は…」
「『全自動アムロの口塞ぎ機』マハルちゃん二号。発進!」
アルレットが今度は大きな吸盤と羽根の付いた機械を取り出して飛ばすと、何やら言いかけたアムロの口をふさいだ。
「むぐぐ!?」
「見た目も中身も若い。そうでしょ?」
どこか圧力を感じるアルレットの声。
「ぷは。…とにかく、俺より年上だ。当人がこんな感じなので何歳かは言えん…というか俺も知らない」
口にひっついた吸盤を、隣のセレーネに引っ張らせて外したアムロが言い直す。
「知らないってどういうことです?」
「姉さんに関する書類は全部本人が持って行ってしまったし、子供のころも教えてくれなかったからさ。ただ、俺と同年代かそれ以上の年齢なのは間違いない」
「そんなこと…あり得るんです?」
「実際起こってる。現実が全てだ」
「姉さん?…の主張は理解できますけど、見た目が若すぎる理由付けになってないような…」
アムロはばっさりと言って切り捨てたが、それがアルレットが異様に若いことの理由にはならない。
ウッソがさらに追究する。
「セレーネ姉さんには悪いけど…セレーネ姉さんより年上っていうのが信じられません」
ロランもこれに同調した。

795サイド3からただいま 52017/09/03(日) 11:05:39.41ID:vbe/eJ0O0
「く…否定したいけど否定できない…」
「やっぱりコーディネイター?」
「まさか。手先の器用さと頭の良さ以外は至って普通の人間よ」
キラの問いにセレーネが答える。基準が他人より高いセレーネが他人を褒めるのは珍しい。
その言葉に、アルレットの顔が少しだけ陰った。
「生まれが人間ってだけで、体は強化人間とそう変わらないかもしれないけどね」
「それって…」
「…言っていいのか?」
「家族にまで隠すことないでしょ」
一層、真剣な顔になって聞くアムロに、一転して真面目な声色でアルレットが答えた。
アムロは呼吸を一つ置いてから、口を開いた。
「…そうだな。みんな、これは真面目な話だ。よく聞いてくれ」

「私が話すわ。…えっと、私は生まれつき難しい病気にかかっててね。小さい頃からあっちこっちに連れまわされて、いろんな薬や治療を試されたのよ
 そのせいか知らないけど、他人より老けるのが遅いの」
「どんなところに連れまわしたらそんな体質に…」
「オーガスタ研、ムラサメ研、NT研、スーパーサイコ研、連合社付属病院…色々だな」
「連合付属って、ステラ達がいた…」
「それにオーガスタにムラサメ…あんなところまで頼ったんですか!?」
いずれも強化人間やニュータイプに携わる機関である。現在では非人道的な行為が露見し壊滅した場所も数多い。
「藁にも縋る思いだったんだ。当時そこまで悪名は轟いてなかったし」
「何か、変なことされませんでしたか?」
「大丈夫。まあ、正直居心地はよくなかったけどね。いくつか潰れたって聞いてせいせいしたくらいよ。誰がやったのかしらね」

「…さ、さあ…誰だろうな…」
実はそれらの施設の壊滅に弟たちも少なからず関わっていたりするのだが、わざわざ言うことはないだろう。
表情を引きつかせるアムロ達に、アルレットは少し怪訝な顔をしたが、気にしないことにしたらしい。話をつづけた。
「それで、流れ流れて最後にたどり着いたのがサイド3。そこでようやく治療できる設備が見つかって、ずっと入院してたわけ。何年くらいだっけ?」
「シローが生まれてすぐだったから…二十年以上だな」
「一年に何回かは連絡は取ってたんだけど、最近は仕事も忙しくて連絡できなくてね。そういうわけで、こんな状況になったわけ」
「知らなかった…」
「姉さんが入院したのはあんたらが物心つく前だったからね。存在を知ってたのは私とアムロ兄さんくらいよ」
シローとイオの視線を受けてセレーネが答えた。
「治るどころか生きて会えるかもわからないような状態だったし、アルレットの頼みもあって黙っていたんだけどな」
「水くせえな…」
「悪かったよ」
イオのぼやきに、アムロとセレーネ、アルレットが苦笑した。

「戻ってきてくれたのは嬉しいけど…事前に連絡は欲しかったな」
「いつもの端末にメッセージ送ったはずだけど?」
「え?」
「そういえば姉さんとの連絡に使ってた端末、ちょっと前にパーツ抜かれて動かなくなってたわね。誰がやったのか知らないけど」
「まさかお前たち…」
「お、俺じゃないよ!?」
「俺でもないからね! ンな簡単にバレること誰がやるかっての!」
シローにじとりとした目を向けられ、自身が疑われていると感じたジュドーとガロードが慌てて否定する。
「詳しい話は後でみっちり聞いてやる」
「俺じゃないってばー!」
「俺でもねーってばー!」
必死で訴える二人だが、普段の行いが行いなのでシローは聞く耳を持っていないようだった。
後で釈明の機会はもらえるだろうが、今は無理と悟って二人は肩を落とした。
「………」
そんな中イオの顔がわずかに引きつっていることに三日月だけが気付いたが、特に気にしないことにした。

797サイド3からただいま 62017/09/03(日) 11:08:22.17ID:vbe/eJ0O0
「………まあ、犯人はともかくとしてだ。アルレットねえ…」
「No! アルレットちゃんは永遠の20歳! 妥協してもセレーネちゃんと同い年!」
「妥協て」
姉さん、と言おうとしたところをアルレットが遮った。妥協呼ばわりされてセレーネは少し凹んでいたが、誰も見ていなかった。
「まあセレーネちゃんは許す…というか姉さん呼びじゃないと許さない。でもあんたは呼び捨てすること。よろしい?」
「な、なんで…」
「アムロより年上ってつまり三十過ぎって言ってるようなもんでしょ。そんなの嫌だから最悪でも28くらいってことにしといて。じゃ、よろしくね兄さん」
あんまりな主張である。
「いや兄さんて…」
「最悪…28…」
「あ、年のこと突っ込まれたせいかセレーネ姉さんが珍しく落ち込んでる」
セレーネがさらに落ち込んだことにアセムが気付いた。しかし余計な一言が添えられたせいで遂にいじけだし、ぶつぶつ言いながら床にのの字など書き始めた。
「アセム兄さんはいつも一言余計だと思う…あ、姉さんがちょっと泣いてる」
そんなフリットの言葉は誰に届いたのか。それはわからなかった。
「でも見た目で言ったら妥当な気はします」
「そういう問題じゃない!」
ウッソの意見をすぐさま否定するアムロ。当然だ。その理屈が通るならブライトやザビ家の人々にトレーズ、ゼクスやフロスト兄弟達はどうなるのか。

「だって、私あんたとセレーネちゃん以外の兄弟のこと全然知らないし。この子たちも、いきなり現れた美少女が実は最年長だったから敬えー、って言われても困るでしょ」
「…むう…」
アルレットの意見。一理あるような気がしてきてアムロは顎に手を当て考える。
「さりげなく自分を美少女と呼ぶのはどうかとおも」
「『全自動セレーネちゃんはさみ機』フラナガンくん二号改、ゴー!」
シンの言葉に反応してまた機械を取り出して発進させる。先ほどのセレーネ引っ張り機と似たようなつくりの機械だ。やっぱり洗濯バサミがついていた。
「なんで私に矛先がいでででで」

798サイド3からただいま 72017/09/03(日) 11:09:24.29ID:vbe/eJ0O0
今度は引っ張るのではなく洗濯バサミで挟むだけだったが、やたらと痛そうであった。
「だってまだアムロ用とセレーネちゃん用しか作ってないもの」
「じゃ、じゃあ兄さんにやってよ…!」
痛がりながらセレーネが訴える。外そうとしているが、予想以上に力が強いのか外れないらしい。
「アムロじゃ泣くばっかりでつまらないし」
「………」
「そんな目で見るな! 子供はそういうものだろう!」
何人かの弟たちから情けない男を見るような視線を受けて、アムロが釈明した。
「なんかごめん…姉さん…」
「後で覚えてなさいよ…!」
その横では、ようやくハサミから逃れたセレーネがシンに恨み言を言っていた。もうぐだぐだである。

「というわけで決定!」
「…はぁ。もう面倒だし、とりあえずはそういうことにしておくよ…」
場がカオスになったところですかさず畳みかけるアルレット。アムロもいい加減疲れたのか、もうどうでもいいとばかりに認めてしまった。
「ところで…本当に、体は大丈夫なのか?」
「心配性ね。大丈夫よ。お医者さんからお墨付きももらっtガハァッ!」
アムロの問いに笑顔で答えながら、アルレットが血を吐いた。
「姉さんが血を吐いた!?」
「そ、そうだ!いけなかったんだ!新参者だからって病み上がりなのに長々と喋らせたらいけなかったんだ!」
「謝れ! アルレット姉さんに謝れ!」
「なんでだ!?」

799サイド3からただいま 82017/09/03(日) 11:13:21.92ID:vbe/eJ0O0
「…うん、こうやって…たまにちょっと調子が悪くなる程度…」
「調子が悪くなるってレベルじゃないでしょ!?」
血を吐きながらなおも笑顔で話すアルレットに、ロランがツッコミを入れる
「というわけで…これからよろしくねー…あと輸血よろ。そろそろ意識が…」
「気軽に輸血を要求するな! おい、寝るな! 寝たら死ぬぞ! 起きろ!」
「うわあ、どんどん顔色が悪く!」
「先生に電話!」
「いやカミ―ユ兄を医者にすれば万事解決する!」
「だから勝手に医者にするなっていうのに!」
どんどん顔色が悪化していく姉を見て周囲が混乱する中、体が弱いから機械で折檻していたのかと三日月とヒイロ、刹那の三人は冷静に納得していた。

そんな光景を見て、コウがなんとなく口を開いた。
「…いつものことだけどさあ」
「なに?」
同じく、なんとなくシーブックが聞き返す。
「なんでこう、みんな濃いんだろうね」
「俺たちの兄弟だからじゃないかな?」
「なるほどね…」

「あ。言い忘れてたことがあった…」
「喋るな! 余計に辛くなるぞ!」
「いや…これだけは言わなきゃ…言うって…決めてたんだから」
「なんだよ! 末期の言葉じゃないだろうな!?」
「違う違う…」
「ただいま、地球。ただいま、みんな…」
最上級の笑顔でアルレットはそう言って、意識を失った。
遠くサイド3からやってきた彼女は年齢不詳の長女、アルレット・アルマージュ。ガンダム家はまだまだ騒がしくなりそうである。


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最終更新:2018年10月23日 10:28