76通常の名無しさんの3倍2018/09/29(土) 08:21:49.88ID:2FhOAPte0
 この街の学校のきれいな正門前で、ある女の子が一人、待ち合わせをしていた。
天気は晴れ。
ガンダムファイトの実況も担当するTVの女性アナウンサーによれば天気予報は今週ずっと晴れらしい。

フレイ「遅いなあ……」
ミリアリア「よっ、お待たせ!」

 フレイの前に現れたのはミリアリア=ハウ。
学生でありながら同時にカメラマンでもあり、ジャーナリストという肩書も持つ。
今日も片手にカメラを持っている。

ミリアリア「今回も取材に行くわよ! フレイも一緒について行ってくれるわよね?」
フレイ「そりゃあ、まあ。友達だから……。で、どこへ?」
ミリアリア「今日の取材のテーマはコウ=ウラキ=ガンダムよ」

 そう言うとミリアリアは駆け出した。

ミリアリア「さあ、ガンダム兄弟の家にレッツゴー!」
フレイ「あ、待ってー!」

77通常の名無しさんの3倍2018/09/29(土) 08:24:24.96ID:2FhOAPte0
 ガンダム兄弟の家の前にフレイとミリアリアが現れた。

ミリアリア「ごめんください」
アムロ「はいはい、どうしました……? ん? フレイとミリアリア?」
ミリアリア「実は今日はコウさんの取材に来ました。
      コウさんに会わせてください」

 カメラを持ちながら取材交渉をするミリアリア。
アムロはあっさりそれを許可した。

アムロ「おーい、コウ、呼んでるぞ。取材だって」
コウ「え、取材?」
アムロ「ああ」
コウ「嬉しいな。取材だなんて。部活での活躍のことを聞きたいの?
   それとも学校での勉強のこと?」

 本当に満面の笑みで嬉しそうに語るコウ。
まさか自分に取材が来るとは思わなかったのだろう。
だがミリアリアは部活のことでもなく、勉強のことでもなく、
別のことについて聞きたいのだった。

ミリアリア「その前にコウさんだけではなくて他の家族の方にも取材させてください。
      まわりの方への取材の下調べは必要ですから」

コウ「他の家族……?」
アムロ「まあ当然ではあるな。コウ以外の人に聞きこみをするのは理解できる」
ミリアリア「ではアムロさんに質問です。
      この家で料理をするのはたいていどなたですか?」

78通常の名無しさんの3倍2018/09/29(土) 08:26:59.24ID:2FhOAPte0
アムロ「料理?
    この家で食事を作るのはたいていロランだな。
    ロランが作らない時は俺も料理はできるが、
    グルメ漫画の主人公山岡と同じ声のフリットとか
    東方不敗と一緒に修行していて自炊ができるドモンあたりが作る。
    そうだよな、ロラン、フリット、ドモン」

ロラン「ええ、まあそうですね」
フリット「究極の料理を目指すくらいのことはしていますよ」
ドモン「料理ならまかせてくれ。自信がある」

 ミリアリアは無言でメモを取っていたが、おもむろに話を切りだした。

ミリアリア「ではなぜコウさんは人参をいまだに食べることができないんですか!?
      今日の取材はそれです! これこそこの街の七不思議の一つ!
      理由がわかれば大スクープ!」

コウ「え……?」
ミリアリア「人参を食べることができないのはきっとこの家の料理に問題があるはず」
アムロ「ちょっと待ってくれ。ロラン達の料理が下手だっていうのか?
    そんなことを言ったら俺は怒るぞ」

ミリアリア「違います。ただコウさんはこの家の人参料理の味つけになじめないだけかと。
      上手い下手ではなく誰か別の人間が調理すれば人参を食べるかもしれません」
アムロ「なるほど。話が読めてきたぞ……。つまり今日は料理をしにウチにやってきたと」
ミリアリア「そう……、料理をしにフレイが」
フレイ「えっ、私?」

 ミリアリアはフレイの方を振り向いた。
家の外の天気はあいかわらず晴れている。

79通常の名無しさんの3倍2018/09/29(土) 08:29:35.48ID:2FhOAPte0
ミリアリア「そう! フレイ、お願い! 人参の入った料理作って!」
フレイ「えー!?」
ミリアリア「お願いお願い、この通り!」

 ミリアリアはカメラを持ったまま両手を合わせて頼んだ。

フレイ「まあ、友達だし……。いいけど……」
アムロ「フレイって料理できたっけ?」
フレイ「父から一通り教わってはいますが……」
アムロ「あー、フレイの父親か。この街にいたような、いなかったような」
ロラン「でも食材はどうするんですか?
    調理用具は台所にありますが、人参や他の食品は?」

ミリアリア「それは私が。適当に買ってきます」

 そう言ったミリアリアはGガンダムのガンダムファイターなみの
スピードで家の外へ走っていった。
数分もしないうちにガンダム兄弟の家に戻ってくる。
両手にはスーパーで買った大量の食材が入ったビニール袋があった。

ミリアリア「買ってきました」
ドモン「……本当にミリアリアってただのカメラマンか?
    今からでも遅くないからガンダムファイターになった方が」
ミリアリア「私はガンダムファイターではなくジャーナリストです!
      司法、立法、行政の三つの権力を監視するマスコミは
      第四の権力って聞いたことないですか? つまりジャーナリストは第四の権力。
      そして私はこの街の七不思議の一つ、コウさんの人参を食べる記事を作り写真を撮影し、
      この街のジャーナリストのコンテストで賞を取るのよ!」

ドモン「第四の権力という言葉と人参の記事で賞をとることに落差を感じるんだが……」
アムロ「カイはいつもミリアリアに何を教えてるんだろうな……」
ミリアリア「じゃ、フレイ。頼むから料理を作って」
フレイ「……ん、わかった」

ミリアリア「メニューは私の独断と偏見で、
      結婚して奥さんが作ったら旦那さんが喜びそうなもの、肉じゃが!」
フレイ「肉じゃがに人参を入れるのね。わかった」

 フレイはこれまたガンダムファイターなみの速度で包丁を入れ、材料を切った。
しばらくして料理が完成した。

ミリアリア「さあ、フレイが作った肉じゃがを食べてください!」
コウ「……肉やじゃがいもはおいしいよ。認める。だけどこの味つけじゃダメだ。
   人参いらないよ」

80通常の名無しさんの3倍2018/09/29(土) 08:31:58.46ID:2FhOAPte0
ミリアリア「なぜ!? なぜなんですか、コウさん!
      こんなに肉じゃががおいしそうなのに!
      こうなったらフレイ、別のメニューを作って。
      例えば洋風のドレッシングを使った人参入りサラダとか」

フレイ「はい、人参サラダね……。完成しました」
コウ「他の食材はおいしいよ。だけど人参いらないよ」

ミリアリア「今度は中華! 中華風人参入りの野菜炒めよ!」
フレイ「はい、完成しました」
コウ「他の食材はおいしいよ。だけど人参いらないよ」

ミリアリア「今度はインド! ネオインドのシジーマもびっくりの人参入りカレーよ!」
フレイ「はい、完成しました」
コウ「他の食材はおいしいよ。だけど人参いらないよ」

 ミリアリアは頭を抱えた。

ミリアリア「なぜ!?
      なぜコウさんはこんなにフレイが作っても人参いらないよって言うの!?
      これじゃコウさんが人参を食べる写真が撮れないじゃない!」
アムロ「メディアがいつも望む写真を撮れるとは限らない。
    そういうこともあるんだよ……」

ロラン「この料理、おいしいですね」
フリット「食べてみたけど究極のメニューに近いよ」
ドモン「おいしさだけではなく調理速度にも目をみはるものがあるな」

 結局取材はミリアリアの期待したストーリー通りにはいかなかったが、
ロランやフリット、ドモン達の間ではフレイの株が上がったという……。
だがそれは別の話。
こうした試行錯誤によってミリアリアはジャーナリストとして
少しずつ大きくなっていくのだが、まだそのことは誰も知らない……。


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最終更新:2019年06月05日 15:06