432オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/12/02(月) 00:57:25.60ID:Zlt+WEKl0
日登町武道館

ミーア「きゃああああ!」

 一足早く楽屋へ戻ったミーア。
 そこへ激しい振動が襲ってくる。

ミーア「な、なに!? 試合はもう終わったはずでしょ!? それとも……」

 さらに、二度、三度と武道館が大きく揺れた。
 立っていられずしゃがみこんだミーアの頭上には、
 パラパラとモルタルの破片が降ってくる。

ミーア「ど、どうしよう。すぐにみんなのところへ戻らないと……きゃあ!」

 そこへさらに間の悪いことに、武道館の照明が全て落ちた。
 時刻はすでに夕方を過ぎている。
 窓の無い楽屋には外の薄明かりさえ差し込まず、辺りは真の闇だ。

ミーア「バ、バルトフェルドさ~ん! ラクスさ~ん!!」

 ミーアは精一杯の声を張り上げて助けを呼んでみるが返事はない。
 それどころか、耳をすませばステージの方からはひっきりなしに人々の悲鳴が聞こえてくるではないか。
 なにか、よくないことが起こったのは明白だった。
 一刻も早くここから避難しなければならない。ミーアはそう思った。
 しかし……

ミーア「ダ、ダメ……怖くて立ち上がれない……」

 想いと裏腹に、怯える身体は言うことを聞かない。
 だがこうしてへたり込んでいる間にも、人々の悲鳴はますます大きくなっていく。

ミーア「わたし……このまま死んじゃうのかな……」

 ミーアがそう呟いた、その時だった。

「ミーア!!」

 闇の中、不意に誰かがミーアの腕を強く掴んだ。

433オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/12/02(月) 00:57:49.15ID:Zlt+WEKl0
ミーア「きゃああああ!! 誰!? 離して! 離してください!!」
???「落ち着け! 俺だ、アスランだ!」
ミーア「アス……ラン……?」
アスラン「そうだ俺だ。アスラン・ザラだ。わかるだろ?」

 そういって闇の中の男はミーアの手を取り、己の顔を触らせる。

ミーア「この広くて大きな額……あなた、本当にアスランなのね!」
アスラン「……うん、まあわかってくれたようでなによりだよ」
ミーア「でも、どうしてこんなところに?」
アスラン「実は今日のコンサート、俺も見に来ていたんだ」
ミーア「そうだったの!?」
アスラン「ああ。まあ半分は会場の外でチリソースの店を出してる、カガリの手伝いってのもあるけどな」
ミーア「チリソースの店? ケバブとかホットドッグとか?」
アスラン「……いや、チリソースの店だ。自家製チリソースをボトルで売ってる」
ミーア「まあ」

    ~新商品! アスハ印のチリソース~
カガリ「おい! そこのお前! アスハお家芸のチリソースだ! 一本買っていけ!」
イザーク「なんだこれは! 本当にただのチリソースではないかキョシヌケー!」
ディアッカ「さすがにこれだけ買っても持て余すぜ非グゥレイトォ……」

アスラン「だけどそれ以上に、ここは君の夢の舞台だからな。昔俺に話してくれただろ、いつかはラクスとステージで共演したいって」
ミーア「覚えてて……くれたんだ」
アスラン「だからチケットを買って予約してたんだけど……災難だったな、こんなことになって」

 ミーアは慌てて首を振った。だがこんな暗闇の中ではわかるはずもない。

アスラン「でも、さっきアカペラで歌っていた歌は本当によかったよ。ちゃんと君は君の歌を歌えるようになったんだな」
ミーア「アスラン……」

 思いもかけない優しい言葉に、ミーアは泣きそうになるのを必死でこらえた。

アスラン「それで試合が終わった後、君が一人で楽屋に戻ったのが見えたからな。バルトフェルドさんに聞いて助けに来たんだ」
ミーア「そうだったんだ……。それで、いったい今なにが起こってるの?」
アスラン「シドだ。突然、シドが襲ってきたんだ」
ミーア「シドって……あの無人MSの?」
アスラン「そうだ。今はガンダム兄弟が引き付けてくれているが……?!」

 その時、突然大きな爆音が響いた。
 爆音は断続的に鳴り響き、武道館全体を大きく揺さぶる。

アスラン「まずいな、このままじゃ崩れるかもしれない。脱出しないと。……立てるか?」
ミーア「う、うん」
アスラン「ほら、肩を貸すよ」

 ミーアはアスランの手を借りて何とか立ち上がった。
 だが、停電は相変わらずで右も左もわからない。

434オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2019/12/02(月) 00:58:10.42ID:Zlt+WEKl0
アスラン「まいったな。ミーア、どこかに懐中電灯とかないか?」
ミーア「わからない……私のスマホも朝からの騒動で、とっくに電源切れちゃったし」
アスラン「せめて出口がどっちかわかればいいんだが……ム!」
ミーア「どうしたの?」
アスラン「い、いや、どこからか急に不吉な匂いが……」
ミーア「匂い?」
アスラン「ああ、この嗅ぎ覚えのあるスパイシーな香りは……」
カガリ「ふっふっふ、困っているようだなアスラン」
アスラン「やっぱり君かカガリ! どうしてこんなところまで!」
カガリ「試合が終わった後、急に姿が見えなくなったからな! てっきり私に隠れてヨーグルトソースでもキメてるんじゃないかと探しに来たんだ!」
アスラン「そんなことするわけないだろ……」
カガリ「そうだよな! お前も私と同じくチリソース一筋の男だものな! 私は信じていたぞ!」
ミーア「相変わらず仲がいいのね、アスラン」
アスラン「ま、まあある意味な。それよりカガリ、君ライトか何か持ってないか?」
カガリ「ライト? 私が持っているのはこのチリソースの瓶だけだ!」
アスラン「ああ、やっぱりな……」
ミーア「これじゃあここから出られないね……」
カガリ「ふっ! 案じるな二人とも! 私はここに来るまで通路にチリソースを撒いてきている。つまり、その匂いをたどれば……」
ミーア「! 出口にたどり着けるのね!」
アスラン「ナイスだカガリ!」

 二人は真っ暗な通路をカガリの先導で進んだ。
 地面から立ち上る、むせかえるようなチリソースの匂いに耐えながらしばらく歩くと、
 やがて道の先に光が見えた。

アスラン「やった、出口に着いたぞミーア!」
カガリ「どうだ! これがチリソースの力だ!」

 道の先、出口にはバルトフェルドやラクス、そしてミーアのファンたちが待っていた。
 皆、ミーアの姿を見とめるとほっとしたような表情を浮かべる。

ダリル「ミ、ミーアだ! みんな! ミーアが戻って無事に戻ってきたぞ!」
ドルヲタ「ミ イ ア ! ミ イ ア !」
ラクス「ミーアさん……無事でよかった」
バルトフェルド「だから言っただろ? アスランに任せておけば大丈夫だって」
ミーア「みなさん……」

 目に大粒の涙を浮かべるミーア。
 その時、ずっと肩を貸して寄り添っていたアスランがそっと離れた。

アスラン「さ、ここからは一人で行くんだ。いくら非常事態とはいえ、みんなのアイドルが男と一緒に出てきちゃまずいだろ?」

 そう言ってアスランは優しくミーアの背中を押した。

ミーア「アスラン……」
アスラン「なんだ?」
ミーア「昔は……あなたのこと搾ってゴメンね」
アスラン「」
ミーア「ずっとそれだけ謝りたかったの。それから、助けてくれてありがとう、アスラン」

 ミーアはそれだけ言うと、 憑き物の落ちたような晴れ晴れとした顔で光挿す方へ走っていった……

カガリ「搾る? 搾るってなにをだ? チリソースの一番搾りか?」
アスラン「いや、そこはあんまり触れなくていいから……」

 思わず頭を抱えるアスラン。
 その額からは、髪の毛が一本、ハラリと落ちていった……

アスラン「ていうか、あの辺のエピソードってまだ無かったことになってなかったのか……」


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最終更新:2023年03月12日 11:02