706オールアムロVSシャア軍団VS
ガンダム兄弟2020/05/25(月) 00:39:28.20ID:q6avxYwB0
時間軸は遡り、ガンダム兄弟家へのゾルタン襲撃直後
日登町郊外
爆発炎上を続けるガンダム兄弟家、
その上空では、二機のMSによる激しい戦闘が続いていた。
セレーネ・マクグリフ【
スターゲイザー】
VS
ゾルタン・アッカネン【シナンジュ・スタイン】
セレーネ「ほらほら! さっきまでの威勢はどこ行ったの!?」
ゾルタン「ちいっ!」
戦況は意外なことに拮抗していた。
それどころか、今はセレーネの駆るスターゲイザーが若干押している。
セレーネ「そこよ!」
バックパックに装着された巨大なリング状の構造体『ヴォワチュール・リュミエール』
そこから放出された光輪がシナンジュ・スタインめがけて一斉に降り注ぐ。
それをゾルタンは紙一重で回避した。
ゾルタン「思ったよりやるじゃねえか。さすがはコーディネーター、それもスーパーコーディネーターキラ・ヤマトの実姉ってか」
セレーネ「おあいにくだけど、私ってばキラと違って全然普通のコーディネーターなのよね。それもパイロット適性の無い」
セレーネは若干はにかみながらそう答える。
セレーネ「私がこの機体でやってるのはあくまでサポート。アンタと戦ってるのはこの子――スターゲイザー本人よ」
ゾルタン「……なんだと?」
セレーネ「この子には、将来、一人でもやっていけるように色んなことを覚えさせてるの。それこそキラやベルリ、アムロ兄さんの戦闘データもね」
セレーネは愛おしそうにスターゲイザーの計器を撫でた。
セレーネ「この子には、いずれたった一人で外宇宙に出るって大きな目標がある! だから、負けてらんないのよこれしきのことでぇ!!」
ゾルタン「『これしきのこと』? ハハ、俺との戦いがこれしきのことだって? 小さな障害だってのか、失敗作との戦いはあッ!!」
再び激昂したゾルタンは、驚くべき行動に出た。
シールドやライフル、手持ちの武装を全て投げ捨てて、敵に向かってきたのだ。
そのMS戦のセオリーをまったく無視した行動に、スターゲイザーはパニックに陥る。
スターゲイザー『???』
セレーネ「戦闘中にぼんやりしない! 撃って! 迎え撃つのよスターゲイザー!」
セレーネに発破をかけられ、スターゲイザーは咄嗟に手持ちのビームガンを乱射した。
しかしシナンジュ・スタインは、被弾を一切気にすることなく、一直線に向かってくる。
その常軌を逸した行動に、スターゲイザーは初めて“恐怖”という感情を覚えた。
707オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/05/25(月) 00:48:00.69ID:q6avxYwB0
ゾルタン「ビビッてんじゃねえぞポンコツがァッ!」
セレーネ「スターゲイザー、避けt……きゃあ!」
回避も間に合わず、シナンジュ・スタインのタックルがスターゲイザーを襲う。
そのままバーニアを噴かし、地面に叩きつけると、シナンジュ・スタインはスターゲイザーの上に馬乗りになった。
ゾルタン「ようやく捕まえたぞポンコツ。どうだ? 失敗作に見下される気分はよ?」
セレーネ「やばいやばい! スターゲイザー、何とかここから逃げ」
ゾルタン「さっきからピーピーうるせえんだよコーディネーター!」
セレーネ「きゃあああああ!」
馬乗りになったシナンジュは、スターゲイザーが動く前にその顔面を殴りつけた。
一発、さらにもう一発。
まるで不良同士のケンカのような戦闘に、経験値の足りないスターゲイザーは何もなす術がない。
ただ無防備に殴られ続ける。
セレーネ「大丈夫、大丈夫よスターゲイザー。怖がらないで!」
ゾルタン「そうだぜ、安心しなポンコツ。お前も、乗ってるお前の母ちゃんも、別に殺しやしねえよ。大事な人質だからな」
セレーネ「人質?」
ゾルタン「そう、アンタにはこの餌になってもらう。この計画に厄介なガンダム兄弟を黙らせるな。それが」
セレーネ「それが、フル・フロンタルの命令ってワケ?」
フル・フロンタル。その言葉にゾルタンの手が一瞬止まる。
ゾルタン「てめえ、なんでフロンタルのことを」
セレーネ「ふ~ん、やっぱりこの騒動、全部フル・フロンタルの仕業なんだ。ひょっとして、アムロ兄さんやシャアさんが暴走したのも?」
感心したように呟くセレーネ。逆にゾルタンは狼狽する。
ゾルタン「て、てめえ、まさかカマをかけやがったのか!? この俺に!?」
セレーネ「そうよ」
悪びれもせず、平然と答えるセレーネ。
セレーネ「ま、薄々予想はついてたけどね。最初に家に襲ってきたのは『袖付き』の連中だったし、アンタが乗ってんのもフロンタルの同型機じゃない」
ゾルタン「…………」
セレーネ「で、こんな騒動を起こして、フロンタルは一体何が目的なの? 答えなさい」
ゾルタン「……メだ」
セレーネ「?」
ゾルタン「やっぱダメだ、フロンタル。こいつは危険だ。生かしとけば、後々面倒なことになるぞ!」
そう言うとシナンジュ・スタインは前腕部からビームサーベルを取り出した。
そしてそれを逆手に持ち、スターゲイザー目掛けて振り下ろす!
セレーネ「やっば……!」
だが、まさにサーベルが突き刺さらんとしたその瞬間、
背後から攻撃を受け、シナンジュ・スタインは大きくのけぞった!
708オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/05/25(月) 00:53:59.77ID:q6avxYwB0
ゾルタン「だ、だれだァっ!?」
セレーネ「あんたたちは……!? どうしてここに!?」
シャギア「どうして、とは随分な言いようだなセレーネ・マクグリフ」
オルバ「僕たちはきみを助けに来たんだよ、ガロードに頼まれてね」
セレーネ「ガロードに!?」
突然現れた助っ人、フロスト兄弟。
その姿にセレーネは驚きを隠せない。
確かに作戦の最初期、自爆したヒイロの代わりにこの二人が手を貸してくれたことは聞いていたが……
セレーネ「でもまさか、『あの』フロスト兄弟が私たちの味方をしてくれるなんてね……」
ゾルタン「誰だァてめえら。誰だか知らねえが……俺の邪魔をするんじゃねええ!」
オルバ「あいつ、こっちに突っ込んでくるよ兄さん」
シャギア「わかっている。だが何も問題はない。ああいう猪突猛進な手合いのあしらい方は慣れている。そうだなオルバよ」
オルバ「うん、ガロード・ランと散々やり合ったおかげでね」
次の瞬間、フロスト兄弟の二機のガンダムは一気に散開。
制圧力に優れたガンダムヴァサーゴがシナンジュをけん制する間、
機動力に秀でたガンダムアシュタロンが背後に回る。
ゾルタン「なんだ、こいつらのコンビネーション? こいつらもニュータイプかよ!?」
オルバ「僕らがニュータイプだってさ、兄さん」
シャギア「それは中々皮肉が効いているな、オルバよ」
フロスト兄弟の連携の前に、ゾルタンは手も足も出ない。
セレーネ「すっご……あいつら敵だとなんかパッしないけど、味方になるとこんなに頼もしいなんてね」
驚きと共にその戦闘の様子を見つめるセレーネ。
その時、空中を見上げていたスターゲイザーのセンサーが何かを捉えた。
続けて分析を行うべく、スターゲイザーのコンピューターが猛烈な速度で計算を始める。
セレーネ「どうしたの、スターゲイザー? 何かを観測してる? ……これは、このデータは!?」
一方、ゾルタンとフロスト兄弟の戦闘は佳境を迎えていた。
激高した隙をつき、アシュタロンのアトミックシザーズがシナンジュ・スタインを背後から拘束。
そこへヴァサーゴがビームサーベルを構えたまま突撃する。
フロスト兄弟お得意の連携攻撃だ。
ゾルタン「クソがあっ! ここでやられてたまるかよ!」
サーベルが当たる寸前、シナンジュ・スタインは
頭部バルカン砲で拘束された腕の関節を破壊。
すんでのところで身体をひねって回避した。
そしてそのまま、腕をひきちぎって拘束から逃れると、シナンジュ・スタインは戦場からの逃走を試みる。
オルバ「逃げるよ、兄さん」
シャギア「そのようだな。我ら兄弟相手に不利を悟ったか」
オルバ「どうする? 捕まえて情報を吐き出させるかい、セレーネ・マクグリフ」
セレーネ「それどころじゃないわ!」
通信機から返ってきたのは、ひどく慌てたセレーネの声。
シャギア「どうした? ただごとではない様子だが」
セレーネ「大変よ、本当に大変……! ああっ! なんてこと、フロンタルの本当の狙いは……!!」
オルバ「本当の狙い……? 今の混乱は、ただのカモフラージュに過ぎないということかい?」
709オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/05/25(月) 01:04:24.74ID:q6avxYwB0
オルバの問いかけには答えず、セレーネはボロボロのスターゲイザーを立ち上がらせた。
その間も、スターゲイザーはずっと観測を続けている。
セレーネ「こうしちゃいられない。早くシローやマイに知らせて……ううん、それだけじゃ足りない。
こんなこと早く終わらせて、アムロ兄さんやシャアさんの力も借りないと。でなきゃ」
ブツブツと一人ごちるセレーネ。その様子を見て、シャギアは肩をすくめる。
シャギア「やれやれ、どうもこちらのことは目に入っていないようだ」
オルバ「そうだね、兄さん。でも驚いたよ。まさか、本当に彼の言う通りになるとはね」
シャギア「そうだな。だからこそ我々が来たのだ。今はまだ、ガンダム兄弟が知るステージではないからな。この計画における、フル・フロンタルの本当の狙いを」
セレーネ「え? いま何か言っt……」
セレーネの言葉はそこで途切れた。
スターゲイザーの胸からは、胴体を貫いたビームサーベルの刃が突き出ている。
背後から刺したのは、シャギアのガンダムヴァサーゴだった。
そのまま、スターゲイザーは糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
セレーネ「なん、で……?!」
オルバ「なんで、って言われてもねえ」
ゾルタン「おい、片付いたのかフロスト兄弟」
シャギア「ああ、今終わったところだ」
ゾルタン「まったく、本気で攻撃しやがって。シナンジュぶっ壊しちまったじゃねえか」
オルバ「それは君が悪いんだよゾルタン・アッカネン」
シャギア「そうだ。完全に頭に血が上って。我々が止めなければ
ミンチにしていただろう? セレーネ・マクグリフを」
ゾルタン「それは! ……まあ、それは俺も悪いと思ってるけどよ、少しは」
三人の会話を、セレーネは壊れかかった通信機から聞いていた。
スターゲイザーの受けた損傷はひどく、システムダウンまでそう時間はかからないだろう。
だがその間も、スターゲイザーはずっと観測を続けていた。
セレーネ「ごめんね、スターゲイザー。私が甘かったわ。なんてことなの、フロスト兄弟は……」
フロンタル「そう、フロスト兄弟もまた、私の仲間の一人だよ」
セレーネ「フル・フロンタル……!」
そこへ姿を現した赤い機体。フル・フロンタルの駆るシナンジュだ。
ゾルタン「フロンタル! なんでここに」
オルバ「君自らが出張ってくるとはね」
シャギア「我々が土壇場で裏切るとでも思ったのかな?」
フロンタル「まさか。ただ大事な人質をお迎えするのに、私が顔を見せなければ失礼だろう? セレーネ・マクグリフ」
セレーネ「フル・フロンタル! アンタの目的は一体何なの!? このままじゃ日登町は、ううん、この世界そのものが……!」
フロンタル「目的? そんなものは決まっている」
セレーネ「答えて! こんなことをして、アンタは日登町をどうする気?」
フロンタル「私の目的。それは人類を一つ上の存在へ進化させ、世界から争いを永遠に無くすことだ。この、日登町を実験場にしてね」
自らの目的を問われ、はっきりとそう答えたフル・フロンタル。
その言葉に、いつもの誤魔化しや虚飾は一切なかった。
日登町郊外:ガンダム兄弟家での戦闘結果
スターゲイザー……フル・フロンタルのスパイであったフロスト兄弟の手により大破。
シナンジュ・スタイン……フロスト兄弟との戦闘により、両腕を損傷。拠点で修理をうける。
フロスト兄弟のゲテモノガンダムズ……ほぼ無傷
セレーネ・マクグリフ……フロスト兄弟らの手により捕縛。フロンタルの人質となる
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最終更新:2023年04月05日 13:07