818オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/08/17(月) 00:05:50.21ID:oH2KXOjs0
 AM 05:44 ネオジオン社:地下実験場

ゾルタン「どうしたガンダム兄弟! 逃げ回ってばかりでぇ!」

 コウの挑発に激高したゾルタンは、ネオ・ジオングの全武装を周囲にまき散らす。
 その度に壁や天井の建材がパラパラと崩れ落ちるも、ゾルタンは一向に気にしない。

ガロード「くっそ! アイツこんな狭いところで暴れやがって!」
アセム「このままじゃ最悪生き埋めだ。とにかく、何とか外に脱出しないと!」
コウ「お前たち! なにをグダグダやってやがる!」

 焦るアセムたちに業を煮やしたのか、コウの試作1号機が真っ先に飛び出した。

コウ「こんな図体だけのデカブツに俺様が負けるわけがないだろ! ギャリック砲!!」
ゾルタン「ただの豆鉄砲に大層な名前つけてんじゃねえ!」

 試作1号機の放ったビームライフルはIフィールドにぶつかり掻き消えた。
 しかし気にすることもなく、コウはなおもビームライフルを乱射する。

ガロード「コウ兄さん、普段は全然自分からつっこむタイプじゃないのに……」
アセム「ともかく今がチャンスだ。コウ兄さんが気をひいてる間になんとか脱出を!」
ガロード「脱出はしたいけどさ! これはキツイでしょ」

 確かに今、ゾルタンはコウの試作1号機に集中している。
 だが依然としてネオ・ジオングにジャックされたMSは、
 不気味に統制の取れた動きでアセムたちを狙っているのだ。

アセム「一体一体は大した戦力じゃない。だけどこう数が多くちゃ……」
オルバ「やれやれ、情けないことを言うね」
シャギア「それでも我々のライバルなのかな、ガンダム兄弟」
ガロード「うるさい! 今はおまえらの相手をしている場合じゃ」
シャギア「そんな意思のない人形に手間取るな、と言っているのだよ」
アセム「なんだと?」
オルバ「よく思い出すんだね、アセム・アスノ、ガロード・ラン。君たちが今まで何と戦ってきたのかを」
ガロード「俺たちが今まで……」
アセム「何と戦ってきたか……」

 その言葉に、アセムとガロード、二人は同時に顔を見合わせた。

アセム「そうだ……! なにを焦ってたんだ俺たちは……!」
ガロード「俺たちは、ずっとこういうヤツらと戦ってきたんじゃないか」

819オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/08/17(月) 00:07:41.64ID:oH2KXOjs0
ゾルタン「ん? なんだあいつら……? ずっと逃げ回ってたのに急に動きがよくなって……?」
コウ「何をよそ見してやがるーーーッ! お前の相手は俺様だーーーッ!!」
ゾルタン「うるせえ! いい加減うっとおしいんだよオールドタイプ!!」

 ネオ・ジオングは隠し腕のランディングギアを伸ばすと、虫を振り払うかのように思いきり叩きつけた。

コウ「なにっ!?」

 不意を突かれた試作1号機は、鞠のように吹っ飛んで壁に激突する。

コウ「キュ~(ヽ'ω`)」
アセム「コウ兄さん!」
ガロード「アセム兄! コウ兄を回収して! こっから脱出しよう!」
ゾルタン「行かせるものかよ!!」

 ゾルタンはサイコジャックしたMSを操り、DXとAGE-2に一斉に襲い掛かった。
 だが!

アセム「焦る必要は無いんだ。ビット、ファンネル、ドラグーン、ファング、戦い方は全部変わらない」
ガロード「たとえ精神波でコントロールされていても、動いてるのはただのMSなんだ。なら!」
ゾルタン「なんだこいつら? 今の一斉攻撃を全て避けただと!?」
オルバ「別に驚くことじゃないよ、ゾルタン」
シャギア「ニュータイプ、Xラウンダー……彼らはただの人間でありながら、ずっとそういう格上の存在と戦い続けてきた」
オルバ「その泥臭く積み上げてきた経験値をもってすれば、こんな数頼みの攻撃なんて」
シャギア「切り抜けるのは実にたやすいことだろうね」

アセム・ガロード「「じゃまだあアアアアアア!!」」

 一瞬の交錯、そのわずかな間に、DXとAGE-2のビームサーベルはIIネオ・ジオングから伸びるケーブルを全て切断した。
 サイコジャックから解放された無人機は、糸の切れた人形のようにバタバタと倒れていく。

ゾルタン「なんだと……?」

 呆然とするゾルタンをよそに、アセムのAGE-2は壁にもたれかかったままの試作1号機を回収する。

ティファ「ガロード、あそこです。あの一番端の壁の奥に、地上へ続く通路があります」
ガロード「サンキューティファ! アセム兄、俺が先導するから」
アセム「ああ! すぐに脱出しよう!」

 AGE-2はストライダー形態に変形するとチャフを撒いた。
 そして、目くらましの霧が晴れた時には、三機のガンダムの姿はどこにもなかった。

820オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/08/17(月) 00:09:38.28ID:oH2KXOjs0
ゾルタン「くそっ!! あのオールドタイプどもが! 俺を舐めやがって!!」
オルバ「あ~あ、まんまと逃げられちゃったね」
ゾルタン「うるせえ!! 半分はお前らのせいだろうが! なにボーッと見物してんだ!!」
シャギア「それはこの狭い実験場で、君が無差別攻撃を仕掛けたせいだろう?」
オルバ「同士撃ちはゴメンなんでね。あくまで自分の身を守ろうとした結果さ」
ゾルタン「それだけじゃねえ! おまえら、俺が戦っている間、あいつらにアドバイスしてたな?」
シャギア「アドバイス……? そんなことをしたかな、オルバよ?」
オルバ「してないよね、兄さん。ふがいない彼らを煽った覚えはあるけど」
ゾルタン「トボケやがって……!」

 ゾルタンは腹立たし気にモニターに拳を叩きつけた。

ゾルタン「一つ言っておくぞ、フロンタルがどう考えているかはともかく、俺はお前らを信用してない」
シャギア「ほう」
ゾルタン「この町でずっとガンダム兄弟と和気あいあい馴れ合ってたお前らが、どうして急に俺たちに手を貸す?
     お前たちに何のメリットがある? 一体何を考えてやがる? 
     本当は……土壇場で俺たちを裏切るつもりなんじゃねえのか?」
オルバ「馴れ合っていた、とは心外だね」
シャギア「我々は我々なりに、彼らのライバルとして暗躍していたつもりなのだがな」
オルバ「まあ、たまにご飯をご馳走になったりはしていたけどね」
ゾルタン「誤魔化すな! いいからちゃんと答えろ。お前ら兄弟が、俺たちに手を貸す理由を!」
シャギア「理由、ね」
ゾルタン「ちゃんと答えろよ? 返答次第じゃ、今この場で俺がお前らを……」
オルバ「僕たちが君たちに手を貸した理由は……君だよ、ゾルタン」
ゾルタン「……なに?」

 その意外な返答に、ゾルタンは一瞬キャラも忘れて聞き返した。

シャギア「君の境遇は知っているよゾルタン・アッカネン」
オルバ「シャア・アズナブルを再現しようとした紛い物の存在、フル・フロンタル。そのフロンタルのさらに失敗作……」
ゾルタン「てめえら……!!」

 ゾルタンの顔が見る間に紅潮し、額には脂汗が滲みだす。そして血が出るほどに唇を噛んだ。

ゾルタン「殺す! フロンタルの言いつけなんでどうでもいい、お前らはここで……!」
シャギア「つまり、我々と同じだ」
ゾルタン「?!」
オルバ「君と僕ら兄弟は似ている、驚くほどにね」
シャギア「我々もまた、ニュータイプだと周囲から勝手に期待され、勝手に失望された」
オルバ「残ったのは、カテゴリーFなんて失敗作の烙印だけさ」
ゾルタン「おまえら……」
シャギア「だから君の抱える情動に、我々は勝手に共感を覚えている」
オルバ「それが、僕たち兄弟が君らに手を貸した理由だよ」
ゾルタン「お前たちは……俺のためにこの計画に乗ったってわけか」
シャギア「まあそうなるな」

 こともなげに言い放つシャギアに、ゾルタンは頭を抱える。
 少しの懊悩の末、ゾルタンは絞り出すように言葉を発した。

ゾルタン「……お前たちの言い分はわかった。だが、まだ俺はお前たちを信用したわけじゃねえ」
オルバ「勿論それはわかっているよ」
シャギア「なら後は、戦働きで証明させてもらう」

821オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/08/17(月) 00:13:27.20ID:oH2KXOjs0
 AM 05:50 ネオジオン社:近辺の森

アセム「反応はどうだ?」
ガロード「今のとこなし。ティファは?」
ティファ「私も……まだ捉えられません」

 地下実験場を脱出したアセムたちはネオジオン社近辺の森に身を潜めている。
 すぐに逃げ出さない理由は、囚われているはずのセレーネの行方を探るためだ。

アセム「フロンタルがいない以上、もうここに留まる理由はない。早く姉さんを見つけてみんなのところに戻らないと」
コウ「う、うう~~ん」
ティファ「ガロード、コウさんが目を覚ましました」
コウ「ハッ、こ、ここはどこだ? 僕はアムロ兄さんと戦っていたはずじゃ……」
アセム「よかった、キャラも元に戻ってる」
ガロード「やっぱコウ兄はこのキャラじゃないとな。絡みづらくて仕方なかったぜ」
コウ「アセム? ガロード? なんでここに? ていうか日付変わってるし機体も乗り換えてるし、一体僕に何があったの?!」
ガロード「う~ん、なんていうか色々あったとしか」
アセム「詳しい説明は省くけど、今、町はデビルガンダムに乗っ取られてセレーネ姉さんは攫われて大変なんだ。コウ兄さんもフル・フロンタルと戦うのに力を貸してくれ!」
コウ「いや、何それ! 超展開すぎて全然理解できないんだけど!!?」
ガロード「まあまあそう言わずに。後でチャンと説明するから」
ティファ「! ガロード、来ます!」

 言い合いのさなか、ティファに促され、三機は一斉に散開した。
 すると一瞬前まで彼らがいたところを、強烈なビームが焼き尽くす。

ガロード「これって、変態兄弟のメガソニック砲……!」
アセム「追ってきたか、フロスト兄弟!」
シャギア「今の不意打ちを完全に避けるとは、流石だなガンダム兄弟」
オルバ「それでこそ僕らの宿命のライバルだよ」
ガロード「くそっ! 今はおまえらの相手してる暇なんかは無いんだよ!」

 掴みかかってきたアシュタロンHCのギガンティックシザーズを
 ガロードはシールドで受け流す。
 だがそれはフロスト兄弟の罠だった。
 いつの間にか背後に忍び寄っていたヴァサーゴCBが、
 DXの頭部目掛けて両腕のストライククローを展開する。

アセム「させるか!」

 そこに割って入ってきたのはアセムのAGE-2だ。
 AGE-2はビームサーベルを二刀流で振り回すと、寄ってきたストライククローをまとめて薙ぎ払った。

シャギア「ほう。我々の攻撃を完全に予測したか」
アセム「俺たちがいったい何度お前たちと戦ったと思ってるんだ!」
ガロード「いい加減ワンパなんだよお前ら!」
オルバ「ワンパとは言ってくれるねガロード・ラン」
シャギア「だが忘れてはいないか? 今回は彼もいるのだ」

822オールアムロVSシャア軍団VSガンダム兄弟2020/08/17(月) 00:17:48.02ID:oH2KXOjs0
 その言葉と共に、地中から全高100mを超える巨大な機影――IIネオ・ジオングが姿を現す。

ゾルタン「ようやく追いついたぞガンダム兄弟ィィィィ!!」
コウ「な、なんだアレ? 白いネオ・ジオング?!」
ゾルタン「お前らには散々イラつかせられたからな。借りはキッチリ返してやる。特におまえだそこの地味なガンダム!」
コウ「ぼ、僕!?」
ゾルタン「俺を散々舐め腐ったおまえには、死ぬほど地獄を見せてやる!!」
コウ「知らないうちに知らない人からメッチャ恨み買ってるーーーっ!!?」
ガロード「俺たちは先にフロスト兄弟をなんとかする! コウ兄はネオ・ジオングを!」
コウ「いや、無理無理! アムロ兄さんじゃないんだから一人でジオングは無理だって!」
アセム「うん、わかった! 任せたよコウ兄さん!」
コウ「聞いてなーーーーーーい!!」
オルバ「そろそろお喋りはやめにしようか」

 MA形態に変形したアシュタロンはギガンティックシザーズでがっちりとDXを掴むと、
 そのまま湖の方へ連れていく。

アセム「ガロード!」

 アセムもまた、それを追いストライダーで飛び去って行った。

コウ「ああもう、ウチの弟は揃いも揃って……!」
ゾルタン「なぁにボーッとしてんだ? 諦めたんならさっさとミンチになれよガンダム!」

 ゾルタンは肩部コンテナユニットからバズーカを取り出し、試作1号機に向けて発射した。
 だが試作1号機は急速旋回してそれを回避すると、逆にビームライフルを抜き撃ちする。

ゾルタン「なにっ!?」
コウ「Iフィールド! やっぱりこのネオ・ジオングにも装備してあったか」

 コウは続けざまにライフルを撃ちながらIIネオ・ジオングから一定の距離を保って走り抜ける。
 ゾルタンは試作1号機を狙ってビームライフルやグレネード・ランチャーを発射するも、
 それらは全て寸でのところで回避される。

ゾルタン「くそっ!くそっ! オールドタイプの分際で……バッタかよてめえは!」
コウ「今までの試し打ちでわかったけど、Iフィールドはあの巨体全てをカバーできてる訳じゃない。なら、狙うはあそこだ!」

 試作1号機は盾をかざしながらIIネオ・ジオングに向かって一直線で突き進んでいく。
 そしてビームサーベルを抜き放つと、機体下部に装備されたシュツルム・ブースターを一息に切り裂く!
 爆発が連鎖的に起こり、IIネオ・ジオングの巨体が大きく揺らいだ。

ゾルタン「なんだとォォ!」
コウ「重力下でそんな機体を持ち出したのが仇になったな。シュツルム・ブースターなしじゃその大きさは支えられないでしょ!」

 事実、本体に誘爆する前にゾルタンはブースターを切り離したものの、その機動力は大幅に減少している。
 残ったブースター、スラスターによる再制動を行っている隙に、試作1号機の姿はどこかへ消え去っていた。

ゾルタン「レーダーに機影なし、目視でも確認できず……ハハハ、やってくれるじゃないかガンダム兄弟!」

 高笑いするゾルタン。だがその言動と裏腹に、左目は真っ赤に充血して今にも泣きだしそうだった。



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最終更新:2023年04月20日 13:14