851通常の名無しさんの3倍
垢版 | 大砲
2025/09/11(木) 17:41:22.25ID:bCgopJYR0
それは夏のある暑い日のこと、ディアナ=ソレルが所有する屋敷群の一つの前へと3人の人間が歩いていた。
ディアナやアグリッパが管理している記録だが、それは別に
黒歴史だけというわけではない。
他にも様々な歴史の記録、史料、あるいはTV番組の録画したものに至るまで、多種多様なものを所持しているのだ。
そうした歴史のひとかけらに触れるため、ディアナにその閲覧許可を得るために3人はこの建物を訪れた。
1人はマチュ、もう1人はニャアン。
最後の1人はシュウジではなく、あるいはディアナと縁が深いロランでもなく、なぜかガロードである。
ディアナの屋敷の場所を知っているガロードは、ディアナに用事がある2人を引率するためにここに来たのだ。
快晴の天気の下で屋敷を訪問した3人組は、さっそくディアナに許可をもらい家の中へと足を踏み入れた。
マチュやニャアンが探し求めていた記録がある場所は掃除がされたきれいな部屋だった。
殺風景な様子ではなく、色んな雑貨が棚の中や上に並んでいる。
マチュ達2人はその部屋のソファーに勢いよく座ると、備え付けられたそこそこ大型のスクリーンを凝視した。
マチュ「これこれ! どうしても見たかったんだ! 『上田と女がDEEPに吠える夜』!」
ニャアン「やっぱり『くりぃむしちゅー』の上田さんっていいよね」
ソファーではなく、同じ部屋にあるテーブルのそばの2つのイスに向かい合って座ったガロードとディアナは苦笑した。
ガロード「なんだよ、TV番組が見たかったのか」
マチュ「はあ? 『くりぃむしちゅー』って仲間内ではめちゃくちゃ有名なんですけど。
特に上田さん。街で道行く人に聞いてみればわかるって」
ガロード「でもなあ、せっかくこの屋敷まできてトーク番組を観るっていうのもね」
ディアナ「まあまあ、私は名前が『海砂利水魚』時代の『くりぃむしちゅー』もTV番組で見て知ってますが、
好感度高い芸能人だと思いますよ?」
どうやら目の前のディアナ=ソレルは芸人関係の知識にも詳しいらしい。
ガロードはディアナに用意してもらったグラスの中のオレンジジュースをストローで飲みながら、
自分が来たまた別の用事について話し出した。
ガロード「俺がここに来た理由はあの2人を連れてきたかったからだけじゃない」
ディアナ「というと?」
ガロード「あんたに、いや、将来俺の義理の姉さんになるかもしれない人間に『あんた』というのも変かもしれないけどさ。
聞きたいことがあるんだ。この間、あんたはウチのロラン兄さんと2人で海外まで泊りがけで旅行に行っただろ?
それはウチにとっては大事件の1つだからな。だから来たのさ。俺も大ニュースだと思うから」
852通常の名無しさんの3倍
垢版 | 大砲
2025/09/11(木) 17:43:19.56ID:bCgopJYR0
ディアナは無言で微笑んだ。
ガロード「ロラン兄さんはその
旅行の話を俺達が聞こうとすると、恥ずかしいのか顔が赤くなって何も言おうとしないんだ。
俺達一家が女の人と2人で出かけることは他にもある。
例えば世界各国で
ガンダムファイトをしているドモン兄さんはレインと一緒に海外に行くことが多いし、
会社勤めをしているマイ兄さんは同じ会社のモニクと共に出張することが最近は意外とある。
だけどさあ、ドモン兄さんとかマイ兄さんとは違う、
ロラン兄さんが女連れで外泊ってのはウチではすごく大事件なのさ」
ガロードはロランがいない数日間の家での様子を脳裏に思い浮かべた。
フリットが『究極の料理』として作ったメニューはおいしかった。
世界各国を旅するうえでたくさんおいしい料理を食べてきたであろうドモンも思わずうなるほどだったのだ。
ガロード「ロラン兄さんがウチでは家事をよくやっているのは弟の俺もよくわかってる。ありがたい。
いずれはロラン兄さんもあの家から巣立っていくかもしれない。
いなくても大丈夫なように、俺達が少しづつ家事うまくできるように努力しているのもそうさ。
でもそれはそれとして、今このタイミングでロラン兄さんの外泊はすごいビッグニュースなの。
だから
何があったのかは知りたい。ウチの家族の兄弟姉妹の意見、総意としてね」
ガロードはクチはうまい方、交渉事は得意な方だと自覚はしていた。
ふと、ガロードの頭の中でこのような会話が苦手そうな家族の顔が何人も浮かんだ。
彼ら彼女らにできないことはないかもしれないが、
やっぱり不得手であろうというのがガロードの考えた結論だった。
ガロード「旅先で何があったのかとか、あんたがロラン兄さんをどこまでどう思っているのか知りたい」
ディアナ「あの外国での旅行は、とても楽しいものでした。色々な冒険、様々な体験。
現地ではなんとこの街に住むご近所さんに会いました。お互い旅行先で会うとは不思議なものですね」
ガロード「……、で?」
そう聞き返すとガロードは横目で室内の様子を眺めた。
壁の前の棚に置かれた多数のセーラームーングッズはディアナの趣味なのだろう。
模造品らしき宝石やティアラに加えて、神社のお札やあるいは手鏡や剣等が部屋にある。
かと思えばセーラームーン関係なく、どこかのお笑い芸人の写真がパネルとして壁に掲げられている。
芸人トリオ、ネプチューンの隣のパネルで映っているあの芸能人の名前は何だったかなとガロードは思いを巡らした。
この前のイスに座っているディアナ=ソレルは撮影された人物のファンだと頭の中で推測したのである。
確か名前は月亭方(つきていほう)……。
ディアナ「私達が偶然旅先で出会ったそのご近所さんは自分なりの『ニュータイプ論』を持っているようでした。
ガロードはそういう話に興味はないですか?」
ガロード「『ニュータイプ論』ねえ。興味がないわけでもないけど」
853通常の名無しさんの3倍
垢版 | 大砲
2025/09/11(木) 17:45:28.66ID:bCgopJYR0
ディアナ「私とロランが話したその人物の『ニュータイプ論』の彼なりの結論は、
要するにニュータイプは想像、妄想、あるいは宣伝のたぐいであり、
普通の人間と変わらないというものでした」
ガロード「へえ、ニュータイプは幻想という考えの『D.O.M.E.(ドーム)』と同じような結論なんだな」
ガロードはそこでマチュやニャアンを見つめた。
2人ともスクリーンを見ながら、番組のトーク内容そっちのけでおやつに用意してもらったピザを食べ、
くりぃむしちゅー上田の芸人としての能力の高さや番組司会者としてのすごさについて語っている。
妙に前向きなタイプのこの2人はニュータイプであることになっているが、
同時に普通の人でもあるのだろうとガロードは思った。趣味は濃そうだが。
ガロード「なあ、さっきの質問の答えが聞きたいな」
ディアナ「まあまあ、そうせかさずに落ち着いて。
私とロランが会ったその彼には、私達2人はだいぶ勉強させられました。
人間、時が経つと考え方が変わりますが、彼は悪い方ではなくいい方に成長しているようでした。
むやみやたらに拳をふるわず、女性や子どもを見殺しにはせず、
部下にもしたわれ、漢(おとこ)の中の漢になっていました。
この街だけではなく外国でも人生経験を積み、また修行したのでしょう。
ガンダムファイター並みの身体能力も手に入れていました。
彼は私よりよっぽど年下ですが、学ぶべきところは多かったですね」
ガロード「ごめん、悪いけどその旅先で会ったこの街の人より、ロラン兄さんとの出来事の方が俺は気になるんだ。
話を急ぐようで申し訳ないけど」
ディアナは嘆息した。
ディアナ「そうですか……。ガロードやこの街の人には、彼の話題に興味があるかと思ったのですが。
考え方やふるまいだけではなく、筋肉モリモリなあの体つきには驚かされました。
私とロランが旅行先のネオジャマイカで出会った人物、ジャマイ漢(かん)には」
ガロード「ジャマイカン!? 今話してたのはジャマイカン=ダニンガンのことだったの!?」
854通常の名無しさんの3倍
垢版 | 大砲
2025/09/11(木) 17:47:19.93ID:bCgopJYR0
ディアナ「彼の変貌ぶりには驚かされました。筋骨隆々のマッチョマンという表現が似合う紳士になっていました。
人格者。この街の住人なら昔の彼と今のジャマイ漢の違いに驚きますよ。
一応以前の体形に戻ることもできるようですが。
しかし一瞬で筋肉が大幅についた体格にもなることができると本人は言ってましたね。
人間の肉体の神秘を感じます。
こういう話題にみんな関心があるかと感じていましたが、そうでもないのですね。
……、ええ、あの旅行でロランと何があったのかを話しましょう。
高級ホテルでのロランとの暑い夜のひとときのことを」
ガロード「えっ、ええー!? それももちろん気になるけど、ジャマイ漢も気になる……。
何があったんだ!? いや、俺にはロラン兄さんの話題をウチの家族に伝える『任務』がある。
でもでもジャマイ漢の話も……」
ディアナ「ジャマイ漢とも私達はネオジャマイカでたくさん話をしましたが、それはとても驚くべきものでした。
しかしガロードは彼の話題よりも兄のロランのことが気にかかるのですね。
まあそれは当然ですね。実の家族ですし。
私はあの時高級ホテルの一室で月亭方正、つまり山崎邦正についてロランと熱く語っていました。
暑い夜でした。それからホテル内でカラオケを2人で楽しみました。
アニメの曲です。セーラームーンの歌やそれ以外も。
その時に出たウラヌスやネプチューンの話も楽しかったです。ネプチューンの話題もいいですね」
ガロード「待って!? 外国まで行って夜に月亭方正の議論にカラオケ!?
俺が言うのも変だけど、他にやることはたくさんあるでしょ!?」
ディアナ「そうですね。なので他にもロランと思い出を作りました。例えば……」
さんざんガロードが大声を出したので、ソファーのマチュとニャアンがTV番組から目を離してにらんだ。
マチュ「そこ、うるさいよ!
あーあ、TVで上田さんの番組終了後にジークアクスが活躍するアニメでも放送されないかな?
そうすればくりぃむしちゅーのファンにはジークアクスの良さが伝わるし、
逆にアニメファンにはくりぃむしちゅーの良さが伝わるかもしれない」
ニャアン「
残念だけど、ジークアクスは実際に存在するMSだからね。アニメじゃなくて現実」
マチュ「そうだよね。アニメじゃない、現実なのさってね。
でもどこかのアニメ会社がジークアクスのアニメを作ってくれないかなあ」
この後、マチュとニャアンは上田、上田と日没までディープな話題でお互いに叫んでいた。
ディアナに許可を取って電話でさらに大量に注文した宅配ピザを食べ、
仲良くなった女3人で立ち上がって、カラオケを歌って盛り上がっていたことも追記しておかなくてはならないだろう。
ガロードはイスの背部に寄りかかり、ぐったりとしていた。
マチュ「ん? 大丈夫?」
ガロード「いやあ、俺は前々から自分のことをバイタリティーある方だと思ってた。
今もそう思ってるけど、それとは別にこの街の住民のみんなのバイタリティーの高さ、
個性の強さには驚かされっぱなしだよ。もうどうなってもいいや。そろそろウチに帰るわ」
最終更新:2025年10月03日 12:50