1988年12月
カッパノベルス
1994年4月
光文社文庫
(現在、各社電子文庫で入手可)
迷犬ルパンシリーズの第11作
川澄健と
木暮美々子が通う
文成中学校(未)の文化祭準備に端を発し、連続殺人へとつながっていく一連の怪事件を、おなじみの
ルパンファミリーが追う。健と美々子がほとんど主役となって、
朝日刑事と
ランはいつもより出番が少なくなっているが、影が薄いというほどではなく、レギュラーメンバーの軽妙な会話は健在。
水上刑事をはじめとする警視庁捜査一課の出番も多い。
連続殺人の中での犯人消失等のトリックは魅せるものがある。しかし、本作の主題になるのは、健と美々子の友人・讓とみどりのそれぞれの親の過去の恋に始まる水面下の悲恋物語である。讓の父・東洋夫とみどりの母・住子に容疑がかかる中、二人の無実を信じ、復縁の後押しをするレギュラーメンバーの善意は、シリーズの王道であり大変に清々しい。だが、それゆえに物語に隠された真の悲劇は悲しいものがある。
健と美々子は文成中の文化祭に向けて、展示用ロボット「てばたくん」を制作していたが、ある日完成間近の「てばたくん」が何者かにバラバラにされ、血で濡れていた。その一方で、健と美々子は、不良たちのいじめで無理矢理模擬結婚式を挙げさせられかけた後輩の峰岸讓と柚原みどりを、
ルパンと共に助け出す。
そんな小さな事件は、やがて謎めいた連続殺人につながり、文成中を巻き込んでいく。
それらの事件は、讓の父・峰岸東洋夫とみどりの母・住子との、若き日の悲恋が発端となっていた。
最終更新:2015年01月10日 10:44