ニギメダナ序章


 チェグの北方、上等学校があるというだけで、他には何一つとるところの無い、
つまらぬ漁村である。ここはナムシン(南星)王国バオハン(砦浜)県ユナンゲオ(於喃歌)郡。
私はそこにあるグブンゲオ(魚喃歌)上等学校の四年生である。
 神学校の受験があったため、私は長い間同好会へ行っていない。
神学校受験が終わった今、久々にその同好会に行ってみようと思う。
 私が所属しているのは“海苔倶楽部”という奇妙な名の同好会である。
一体どのような輩が集まっているのかと怪しむ人がいるかもしれないが、
“海苔倶楽部”は名前の通り、ただの海苔好きの人間が集まった同好会なのである。
活動内容は「海苔を喰う」ではなく「海苔を養殖する」ことを主眼としている。
 そして私は“海苔倶楽部”の養殖場のそばにある小屋へ来てみた。
 私は、四ヶ月前に摘み取りの終わった養殖場を見た。
遠くであるが、海苔網の支柱が数本立っているのが判る。
三年前の私は、あそこでキンジョン(金津)海苔を育てようとキンジョン(金津)郡まで行ったのだ。
わずか84里という、鉄道で行けば数日で着く距離ではあるが
そこまでの道のりは長かった。いろいろなことがあった。
 私はその道のりでの出来事について思い返してみる。
              ◆
 確かそれは私が海苔倶楽部に入ってから3ヶ月余り、上等学校一年生だった頃であった。
 ではこれから当時のことを語ろうと思う。
じっくりとお聞きいただきたい。途中退席は認めない。


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最終更新:2011年06月04日 18:38