当時私はピカピカの上等学校一年生であった。
入学式などを終え、私は同好会選びをしなければいけなくなった。
中等学校時代は同好会には入らず、同じような輩とふざけあってばかりいた。
しかし今の私は上等学校一年生。
何もかもが輝いて見え、どの同好会に入っても楽しい生活が送れるような気がしていた。
そして私はとあるチラシを目にした。“自然科学研究会”
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研究会と銘打っているものの、実際は生物好きの集まりであった。
私も田舎育ちである。幼少期から様々な生物と触れあってきたため、虫や魚などは好きであった。
そのため、最初は苦なく通うことが出来た。良き先輩達にも恵まれ、同輩も良い奴ばかりであった。
しかし通っているうちに私は気付いた。周りの人間達が私を遙かに凌駕する生物知識を
持っていたということを。そして日に日に通うのが苦痛になっていった。
同輩達は超高度な生物話をしていて私が横から入ることが出来ない。
先輩達が指示することも超高度な生物用語を使っているので理解できない。
このような生物オタク達に圧倒され、ついに私は同好会へ通わなくなってしまった。
学生寮内を放浪していた私はある日、妙なチラシを見つけた。
そこには次のようなことが書かれていた。
「海苔倶楽部 部員募集中!!来タレ!海苔の健男子ヨ!希望者ハ卯月廿日ニ講堂前ニ集合!」
卯月廿日…何時に集合なのだ…。時間が書いていない…。
そのように思いながらも私はそのチラシに惹かれ、廿日に講堂前へ集まった。
幸い、廿日は恵ノ日だったので授業が休みなのである。
時間が書いていなかったので一応、朝八時に講堂前へ行った。
そして四時間待った。
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何故私は当時、海苔倶楽部という奇妙奇天烈な名前の同好会へ入ろうとしたのか。
実は私の実家は海苔の養殖場なのである。私の実家はチェグ(崔呉)南部のナムチェ(南崔)という漁村である。
そこで育てているのはキンジョン(金津)海苔などという超高級海苔ではなく、
トンハイ(東海)海苔というごく普通の海苔である。
海苔倶楽部では海苔の養殖をしているということだったので、そこに目が行ったのであろう。
ちなみに私の父の兄、つまり伯父は
ニギメダナ(和布店)を経営している。
ニギメダナとは海苔など海藻類を売っている店である。
我が実家で生産された海苔は、乾燥、加工などのプロセスを経て 伯父のニギメダナに売られる。
伯父のニギメダナはチェグ(崔呉)の住宅街の近くにある商店街にあるため、奥様などからよく買われるのだ。
ちなみにキョウシェン(勾神)風の味付け海苔も売っているため、おやつとして子供の客も多い。
伯父のニギメダナのおかげで私は喰っていけたのだ。有り難いことである。
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四時間待って正午になった。
私は食堂で買ってきた弁当を喰いながら講堂前でたった一人で待っていた。
何故当時、私に四時間も待てるほどの忍耐力があったのかは不明だ。
そして向こうから三人の人影が現れた。
一番背の高い男は、長い前髪を真ん中で分けており、眼鏡をかけていた。
そのときは「なんだか見たことある気がするなあ」という程度にしか思わず、
彼がアレであるとは気付かなかった。
もう一人の男は綺麗な顔立ちで高貴な顔をしていた。
そして一番背の低い男は、毎日会っていそうな見慣れた顔をしていた。
まるで寮で同じ部屋に住んでいて、自然科学研究会所属の、私と約三年付き合っている
ヤンという友人のようである。ヤンに瓜二つである。ヤンそのものである。ヤン本人である。