「お、大きい・・・」

地面から突如現れた巨大な肉塊を前にして私はただ驚くだけだった。

「流石にデカイな、さっき見た時は人型だったが・・・」

「え?」

「いや、アレを解放すれば気を引けるかと思ったんだがな、まさかここまでデカくなるとは思わなかった」

「来夏がアレを解放したの?」

「そうだ、何か問題があるか?」

「あるでしょ、普通・・・。」

私がため息をついた、その時。

「皇帝陛下!」

さっきの所長がそう叫んで来夏に向かって膝をついた、その横ではオレンジが呆れた顔をして突っ立っている。

「え?」

状況を理解するまでに数秒かかったが彼は来夏に向かって膝をついているという結論に達した。

そしてそれがどういう事を意味するのかを理解するまでさらに数秒の時間を要した。

「オレンジ、何故バラした?」

「詳しい説明は省くけど僕の命にかかわる事柄だったからね、仕方なく、だよ。」

「え・・・。」

「えええええええええええええええええええっ!!」

「ら・・・来夏が皇帝陛下!?」

「まあ、そう言う事になるな。」

来夏が余計なことをしやがって、という顔をしながら答えた。

「で、でも苗字が・・・」

「この国じゃ結婚すると嫁の方は苗字を婿と同じにするからな、普段は籠崎姓を名乗っている。」

「じゃ、じゃあ来夏の前の名前って・・・」

「ライカ・ベスカルート、ベスカールト帝国第25代皇帝だ。」

開いた口がふさがらない、というのはまさにこの事だろう。

変わっている人だと思っていたがまさか皇帝だったとは。

「えっと・・・。」

「まあいきなり事実を受け止めろとは言わんさ、今までの事も不問にしておく、友人に膝を付かれるのは嫌いなんだ。」

「あ、うん・・・。」

そう言うと来夏は所長の所に歩み寄った。

「本来なら俺自ら手を下す所だが・・・この非常時だ、務所に終身禁固刑にしておいてやる。」

「陛下のお心遣い、感謝します。」

そして来夏はこっちに戻ってきた。

「さて、アレを片づけてさっさと帰るぞ、有沢。」

「う、うん・・・。」

いまだに信じられそうにない事実を頭の中に抱えながら私は後ろの肉塊に向かってガトリング砲を構えたのだった。

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最終更新:2011年08月24日 08:15