概要
ご都合主義から派生し、物語や創作の上で都合が良過ぎる展開は、基本的に主人公等に対して使われるのに対し、『
負のご都合主義』は主人公サイドが不利になる為、「主人公サイドに都合良く不幸や悲劇が訪れる」「悪役・敵側にタイミング良く都合の良い展開が訪れる」流れである。
読者はフィクションの中に非日常を求めて、主人公がトラブルや山場を乗り越えるのを視聴する為に本を読み、テレビを観る。その面白さや刺激の為に敵や困難にぶつかったり、予定調和の流れを覆す為に用いられる。また、連載作品の場合に人気が出て話を終わらせない為に、新しい山場をもたらすのに用いられる。
例を挙げれば、
- 犯罪行為が常態化し、被害者が続出していたり大規模な犯罪に手を染めているのに警察が動かない、捜査の手が届かない(警察と癒着があったとしても、誤魔化しきれない規模のものでも)
- ヒロイン等が普段行かない場所に行った(特に行く理由がないにもかかわらず)せいで敵や悪役に遭遇して、被害に遭ったり人質になる
- 主人公サイドの言葉を悪し様に解釈、誤解により孤立無援となり、支援も何も受けられず、妨害や嫌がらせまで行われる。刑事ドラマでは縄張り意識や、仲間からの捜査の不備への疑いでは必要な資料が読めないなど
- 情報を伝えねばならないタイミングで通信機や携帯電話の電池が切れたり故障、敵の攻撃を受けて肝心の情報が伝わらない
- 警戒心の欠落。単独行動をとらない、仲間と最低限に連携か連絡を交わしていれば問題や困難を回避できていた。あるいは騒動に巻き込まれるため、急にキャラクターのIQが下がると評されるような愚行に走る
- ミステリーもので、被害者が無抵抗あるいは犯人に無傷で被害に遭う。抵抗して相手に目立つ傷を負わせたり、皮膚や血痕が採取できれば、犯人を推理する必要がなくなってしまう。または警察や鑑定作業が出来ない状況、いわゆるクローズドサークルを指す。
- 度を超した秘密主義。最低限伝えておかなければならない情報も伝えずにいて、そのキャラが死んだり意識不明の重傷や、敵に拉致監禁されて、後を託された仲間や身内が困る、あるいはそのせいで捕まった者が支援も連携も受けられずにそう言う事態に陥る
- 出てくるジャンルが違うような身体能力やタフネスのキャラが出てくる
- 強すぎる味方キャラが病気か負傷で戦線離脱したり、トラブルに巻き込まれて試合や前線に参加できない
- 敵に致命傷に至る攻撃が当たらない、初見殺しの技なのにかわされたり防御される
- 話の都合で清廉潔癖だったり忠誠心が厚いキャラが、いきなり目先の利益に目が眩んで裏切る。インモラルな作品で一途なキャラが恋人や夫または妻がいるのに、唐突に浮気や不倫をするのも同様
- モブ同然の味方サイドのキャラ(それこそ登場していなかったキャラ)を買収や交渉で裏切らせる
- 唐突な敵の秘密の戦士や部隊等が登場。ノウハウもないのに、短期間で強力な兵力の育成や完成が可能なことも
- 邪魔者の登場。主人公及び味方が敵を追い詰めて優位な展開となっているタイミングで、そこに予期せぬ乱入者(親と離れた迷子だったり、様子を見にやって来た味方など)が登場することにより、敵に狙われて形勢逆転して窮地に陥る(人質にされたり、敵がその乱入者を攻撃しようとして味方が庇って攻撃を受けるなど)
- 『龍が如くシリーズ』において顕著。話している途中で撃たれる、ムービーになると銃が強くなる、倒した敵を放置して反撃されるなど。
- 相手陣営の違法行為やスキャンダルが発覚し、衆目に露呈されたにもかかわらず、主人公達の不利が覆らない
- とにかく運が悪い
- 悪役が主人公サイドをはじめとする罪もない人達に対して明らかな悪事を行っておきながら反省や改心の意志が全く見られず結局、何の罰も報いも一切受けない(長期連載中のバトル漫画で顕著)
- 作中で善人が存在しない、良い人であっても何らかの私欲にまみれた動機を持つ偽善者として描写される。モブの善人を登場させてしまうと、そのキャラが最適な行動を取ってしまって山場が生じ難くなったり、主人公の活動や存在意義が減ったり、捻くれた性格のキャラの説得力が低下したりする為etc……。
- 主人公に対して早とちりや勘違い、思い込み等で危害を加えておいてそれらが間違いだったと分かっても、謝罪もせずお咎めなしで許されるキャラクター(お嬢様やお姫様要素を持つヒロイン・キャラクターに縁のあるキャラクターでよく見られる)
- 駅のホームやビルの屋上で追い詰められた人物が不自然に落下する。
世間的には『**都合が悪い方が起こるのが当たり前だ**』な考えが一般的とされている。
また不利益を被ろうと清廉潔癖を貫くよりも、悪事を働いて利益を得る方がその心境は論理的には分かり易く(それがどんなに異常で破綻した内容であっても)見える為に、ご都合主義ほど叩かれにくい傾向にある。
その一方で、青年誌等で規制の緩さから過激描写を売りにした結果、負のご都合主義がバランスを失う程に蔓延り過ぎたり、連載等で人気が出て話を長期化にする為に新たな敵や障害を無理矢理ねじ込んだりして、逆にリアリティを失ってしまったり、
決着を温存しすぎた結果、描写不足やそれまでの敵に比べてラスボスがしょぼくなるほどインフレが加速して追いつけなくなり、敵が倒せる方法にご都合主義を挟まざるをえなくなった作品も存在する。
また、「負の」という冠言葉がつくとはいえ、**ご都合主義であることには変わりない**ため、こればっかりに頼るとそれはそれで見手を白けさせてしまう。
何事にも限度はあるのである。
なお、作劇の都合や、ストーリーの主題を強調する為に、常識的な価値観を作中から省いた世界観で、負のご都合主義を前面に押し出して描く手法もある(いわゆる
ブラックユーモアものや、具体例を挙げると
世にも奇妙な物語等が該当)。
ご都合悪い主義**なる言葉もある。
判断に困るケース
- 独善的な理由で世界を崩壊寸前に追い込みながら、***筆舌し難い過去が原因、主人公と過去に知り合っていた等の繋がり***が判明するや、**情状酌量が赦され罰も下されずに主人公達と和解・ハッピーエンドを迎えるラスボス**(=ラスボスがメアリー・スー)
- 地球防衛軍に相当する公的組織を舞台にしたゲームで、作戦上必要な研究のコストが**主人公のポケットマネーで賄われている**
- 主人公にレベルが適用されないのに、味方NPCにレベルが適用されているゲーム(=**プレイヤーの行動制限にしかなっていない**)
- 主人公の拠点が最新鋭の艦船等の場合、ターゲットの所在を示すサポートに不備(=**わざわざプレイヤーがサポート要請しないと何もしない、何故か時間制限とクールタイムがある**etc……)がある
- 理不尽暴力ヒロインのように何故か主人公に限定し理不尽かつ不可解な言動を見せる、ギャルゲー、ラブコメの一部のヒロインや女サブキャラ(本来は実例に入る可能性もあるが、このような言動を好む層も一定数存在する為、このケースに該当)
- 主人公が悪で、敵対する相手が正義・善の場合での、主人公サイドに都合が良い展開
- 小物だったり大して強くないのに終盤までしぶとく生き残り暗躍する黒幕(=**黒幕が汚れ役**)
- 異世界ものでチートスペックな主人公が学園に入学する際の試験を受ける際に、**学園の試験官サイドが極端な無能であるせいで、試験に不合格になったり、最下級クラスに入学する。**(受験者の魔力等の能力を調べる計測器がオーバーフロー等の異常をきたしているのに、**表示される数字がないから0扱いにする**、実技試験でも的に攻撃や魔法を当てる際に主人公が『一度に複数の的に命中させる』『的が魔法や攻撃の極端な威力に耐えられず消滅する』等の人間離れした結果を出しても**試験官側の反応速度や装置等が追い付かないから1扱いにする、的そのものがなくなったから0にする**)
女に甘い
負のご都合主義の一角で、その名の通り自分の権力や地位等を悪用して主人公やヒロインなどにシャレにならないワガママ、危害を加える、罪もない人達に対して盗みや暴行、殺戮等の悪事を働いても**「女(
女の子、
女性)だから」**等の理由で、加害者側の悪女が相応の報いを受けない負のご都合主義を指す。
作品例
- 『中古でも恋がしたい!』:悪役の男子生徒がヒロインを強姦しようとするも失敗に終わって少年院送りになったのに対し、女性不信になるようなトラウマを植え付けた女子生徒が主人公を逆レイプしようとするも失敗して受けた処罰が**二週間の謹慎処分のみ**、生徒会長がレズレイプを迫るも助けに入った主人公により失敗に終わるが**結局一切の報いを受けていない。**
- 『龍が如くシリーズ』:あくどい行為やイジメの加害者が女だった場合、急に男が現れてそいつとバトルになるが、加害者女とは戦えない。
- 『ブルータル殺人警察官の告白』:人を死に追いやっている女が二人登場したが、いずれも主人公の制裁を受けなかった。
- 『闇金ウシジマくん外伝肉蝮伝説』:肉蝮は女相手にほとんど暴力を振るわず、それどころか相手を死に至らしめたケース事態稀である。
- 『聲の形』:元凶である女キャラが最後まで相応の制裁を受ける事は無かった。
負のご都合主義の代名詞なキャラクター・人物
主人公・ヒーローサイド
悪役サイド
天津垓:或人の逆であり、どれだけの悪事を働いても咎められず、逆に「凄腕」「天才経営者」と称賛されていた。上記の『判断に困るケース』の1例目にも該当するキャラクター。後に
これらの作品群にも(主人公を差し置いて)出演・続投しているため、一部の視聴者から**「
プロデューサーと
脚本家の自己投影キャラでは?」**と勘繰られている。
神代玲花:こちらは飛羽真の逆で敵時限定だが、ある程度の常識を持ち合わせている
尾上と
大秦寺ですら、途中まで彼女の言葉に疑問を抱かず従い、
緋道蓮に至っては半ば忠実な手駒と化していた。
赤石英雄:こちらは一輝の逆で、物語が彼に都合よく進んでおり、その最期も殆ど勝ち逃げに近い様な形だった。
枢木スザク:こちらも敵時限定だが、
主人公サイドが有利なタイミングで不自然に登場と同時に無双し、主人公側の状況をひっくり返すと悪い意味でお決まりのパターンがあった。ただし
コードギアスは
巨大な体制に抗い、その秩序を破壊しようとする主人公を描く物語であり、主人公は体制からすればただの
テロリストであるため、上記の『判断に困るケース』の6例目に該当するキャラクターであるという見方もできる。
ラスタル・エリオン:この言葉の象徴でもある**「負の
デウス・エクス・マキナ」**と呼べる存在。
ガエリオ・ボードウィン、
ジュリエッタ・ジュリス:ラスタル共々象徴めいた存在。
百地三太夫:作中における全ての元凶として出しゃばり過ぎた結果
登場作品自体が**無双MOMOCHI**と揶揄されている。
藍染惣右介:『
破面編』のラスボスであり、多数の犠牲者を生み出しながらも死亡しなかった上に、『最終編』では何故か活躍の場を与えられる。更に公式小説では、本編では明かされなかった彼の事情や内面、劇中の諸言動の幾つかがフォローされるなど、免罪符が提示される始末である。
ブルーリフレクション澪:(
帝の販促の意味合いがあるものの)基本的に**悪役が優遇されるシナリオで構成されている(ラスボスが天津と同様『判断に困るケース』の1例目にも該当し、ラスボスの片腕も改心も制裁もなく生存している等)**。
軌跡シリーズ:
閃の軌跡シリーズ以降の作品では基本的に**悪役が優遇されるシナリオで構成されている(殆どの悪役が天津と同様『判断に困るケース』の1例目にも該当し、それ以外の悪役も改心も制裁もなく生存している等)**。
第三者サイド
代表的な組織
EDF:IR:上記の判断に困るケースの2例目で挙げられている『地球防衛軍シリーズ』の外伝であり、2例目に該当する作品であり組織。地球存亡を賭けた人類と異星人の最終決戦において、人類最後の希望である母船を撃墜された大ピンチな状況の中ですら、ボロボロになった母船の中であくまでもポケットマネーで必要な武器を購入する状況を要求すると、とんでもない組織である。
代表的なクリエイター
関連タグ
ネットスラングの一覧 ご都合主義 不幸 不公平 胸糞
お咎めなし:負のご都合主義によって起こる結果の一つ
高二病:高二病の症状が中二病が「カッコよさや熱血への憧れ」(こちらは一般的なご都合主義と解釈できる。)へのアンチテーゼから「ニヒルさクールさへの傾倒」になるため、高二病を患った者の創作は負のご都合主義に偏ることが多い。
騎士道精神:本来はポジティブな要素ではあるが、前述の『女に甘い』の要素を持つケースも少なくない(
同じ敵でも男の敵には容赦ない攻撃をするのに、女の敵には威嚇程度に留めるなど)。
クローズドサークル:ミステリーものでは定番だが、警察や救助が訪れず、捜査能力の低下を及ぼし、登場人物への被害の危険性が高まる状況。
悪徳勇者及び
勇者以外の悪徳:才能や実力こそあるが、それ以外の要素(主に
人格や
モラル等の善悪に関するもの)に致命的な欠点や欠陥がある……にもかかわらず、(一応は)高い地位や名声を得ている(得ていた)点では、**負のご都合主義の体現者たち**と評価できる。
間男及び
間女:**罪もないカップルや夫婦を身勝手極まる理由で引き裂く**と、
明確な悪事を働いているにも関わらず、
一部の例外を除いてその**悪事の報いを受ける末路が絶対にない。**そもそも悪事の報いを受けないのは、**作者=神が味方している**のが主な理由である。
異世界もの(
追放もの、
復讐もの、
転生もの):
小説家になろうや
カクヨム等のサイトで閲覧できる小説ジャンルであり、作品によっては負のご都合主義が見受けられる。
ループもの:問題が解決してしまうと物語が終わるので、一つの問題が解決したら負のご都合主義によって新しい問題が生え、それを解決したらまた…という堂々巡りになりがちで、その負担は全てループしているキャラクターが引き受けることになる。
お人好し:**悪い意味で**相性の良い要素。これを主人公が備えていると、**理不尽な不幸が主人公に何度降りかかっても、加害者である悪役・悪党は相応の報いを受けない**という展開がほぼ確定し、読者や視聴者、プレイヤーの不評を買ってしまう。
痴漢冤罪:現実でも起こりうる犯罪行為だが、創作作品で用いられる場合は被害者側の男性は**仕事を解雇される、恋人や家族、知人等に見限られる**というシャレにならない被害を被るのに対し、加害者側の悪女は冤罪であることが判明しても**『未成年(未来ある若者)もしくは女だから』という理由でお咎めなしになる**もしくは主人公によって自分の冤罪が知られても**一切の罰や報いを受けずに逃走する**という展開になるのがお約束となっている。
ハイリスクノーリターン:『主人公側が負けたら大きな損失だが、悪役側は負けても一切の損失なし』という賭けや決闘がホイホイ成立するのも負のご都合主義と言えよう。
最終更新:2023年02月27日 07:37