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「白銀の序曲」 Guild Wiki
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雨にぬれたあなたは愁いを帯びて

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hakugin_ts

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「私は、悲劇のヒロインになりたかったんだけどな」

困り顔で君は僕に笑いかける。

それから、自分の言ったことに驚いて口に手をあてたんだ。

僕には、どうして君がそんなことを言うのか解らなかったんだ。

だって、いつもの君はあんなにも素敵じゃないか。

それとも、何かあったのかなあ。

それなら僕に吐き出してよ。僕が全部、受け止めてあげるから。

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たくさんの管につながれた貴方は苦しそう。

白い病室の中の、白いベッドに横たわったまま。

それでも貴方は笑っているの。

どうして?

悪いのは私なの。

だから、そんな顔をしないで。

黙ってそばで見ていてくれればよかったんだよ。

ごめんね

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悲劇は突然起きた。

二人並んで歩いてたんだ。

二人はある約束をしていた。

約束を果たすための切符を手に入れたばかり。

それは喜ぶべきことだった。

約束を果たすための【切符】を見つめたまま浮かない顔をする女性。

そして差し掛かった横断歩道。

チカチカと点滅する青に目もくれず、女性は歩く。

その青が赤く変わったのは、女性が足を踏み出してすぐ。

進んできた大きなトラックにも気付かず。

大好きな人の叫び声にも気付かず。

大きなトラックのクラクションにも気付かなかった。

周りを歩いていた人たちの間には、諦めの空気が流れていた。

すでに救急車を呼ぶものもいたほど、手おくれだと思われたから。

トラックのブレーキはきかないまま、女性に突っ込む寸前だった。

そこに飛び出したのは、一緒に並んで歩いていた男性。

身長や顔からして、少年という方が限りなく正解に近かったけれど

身体能力は、少年ではなかった。

それは、成人男性をも超越した瞬発力でトラックの前に。

女性を強く押し出すと、そのまま―

周りから悲鳴が聞こえる。

目の前で起きた出来事に驚く女性。

目には涙。

少年の顔には笑みがあった。

すっくと立ち上がると、女性のもとへ歩み寄り指で涙を拭きとって見せた。

「ダメだよ。車はすぐに止まれないんだから」

ね、と言うとその場に崩れ落ちる音がした。

幸いにも、誰かが呼んだ救急車がすぐに到着し少年は担架に乗せられ運ばれた。

もちろん女性も一緒に。



薄暗い病院ではカタカタと震える女性の姿。

外ではざあざあと雨の音がする。

降りやまない雨は、いつまでも止まらない女性の涙のようで。

≪手術室≫の文字は煌々と赤く灯かっている。

その赤が照らし出すのは、青白い顔。

何時間も、何時間も、女性は待ち続けていた。

赤い文字が暗くなり、何もかもが闇に同化しようとした時現れたのは白衣を身にまとった男性。

「大丈夫ですよ」

ドラマなんかでよく見るシーン。

それが自分に起ろうなんて誰が考えただろう?

その場にいた誰にもそれは解らなかった。

それを聞いた女性は大粒の涙を流して地面にへたり込んでしまった。

医師に促されて病室へ。

目にしたのは、たくさんの管が繋がったまま眠っている少年。

すー、すー、と寝息を立てている。

その姿にホッと胸をなでおろし、イスに腰掛ける。

「ごめんね」

ポツリ、謝る。

それでもなお眠り続ける少年に語りかける。

「ごめんね。ごめんね。私が・・・」

すー、すー。

眠っているのを確認すると、女性は一人で語り始めた。

「どうしたらいいんだろう、私。

今回もワガママばっかりで、迷惑かけちゃったね。

こんな性格だから、事務所もあっさり許可してくれたのかな。

二人で遊びに行くこと。

『君なら大丈夫だから、安心していっておいで』だって。

何が大丈夫なのかって、きっと何があっても乗り越えられるって事なんだろうけど。

いっつもそうなの。

周りの新入りにはあれこれ手を焼いているのに。

私には『大丈夫』ばっかり。

映画の主役に選ばれた時も、それが当たり前って感じでさ。

少しは心配してほしかったな。って。

贅沢かな?

でもさ、いっつも事務所で注目を集めるのは新入りばっかり。

私が何をしても誰も心配してくれないの。

自分で言うのもなんだけどさ、気丈に振る舞ってたし・・・。

ほら、泣かないじゃん。私。

なんか嫌でさっ」

そこまで一気に話すと、一呼吸おいて再び。

「・・・ごめんね。

本当は赤になるのも解ってた。

向こうからトラックが来るのも解ってた。

貴方はそこで見てくれていると思ってたからさ。

そんなわけ、ないよね。

・・・ありがと。」

横たわっていた少年がピクリと動いたことに気づく。

うーん、と唸り声。

「まだ動かない方が・・・」

くるりと女性の方を向いて少年は口を開いた。

「そんなこといったって、必死に相談してる人ほっとけないじゃんかっ」

へへへ、と笑う。

「事務所がそういうのも、新人に注目が集まるのも僕は少し解るよ。

でもね、事務所は君を解ってないからそうやって言うんだ。

そりゃ君はワガママだし、態度はでかいし、他の人には失礼極まりないこととか言うし、

でもそれは、本心から言ってるんじゃないって僕知ってるよ?

ほんとの君は小さくて弱くて、僕が守ってあげなきゃだめなんだって。

僕は男の子だよ?

だから、せっかく取った切符もって一緒に船に乗ろうね?」

途中途中の気になる言葉に顔をしかめながらも、女性はそれを聞いていた。

「私は・・・に、・・・った・・・な」

うつむいたままボソボソと小さくつぶやく声が聞こえた。

「なあに?」

「私は悲劇のヒロインになりたかったんだけどな。」

困った顔をして笑う。

それから、慌てて口に手を当てる。

少年は、少しさびしそうな顔をしてからゆっくりと喋る。

「君には悲劇は似合わないよ?

いつもキラキラで、ニコニコで、そんな君がいいんだよ

悲劇のヒロインを見て喜ぶ人は悪役くらいさ

王子さまはステージの真ん中でライトを浴びてるお姫さまが好きなんだよ」

自分で言った言葉に照れてうつむく。

「身勝手で、失礼で、一人で突っ走って行っちゃうお姫さまでも?」

不安げに女性は尋ねる。

「そ。王子さまはね、そんなお姫さまを後から追うことに幸せを感じるんだよ」

納得のいかない様子で首をかしげながらも女性は笑う。

そして、いつもの高飛車な口調で話す。

「じ、じゃあ、早く直して私についてきなさいよね」

「解ってる解ってる。でも、少しは足踏みしてくれないと王子さまも疲れちゃうんだよ?」

女性の頬に右手を添えると、ベッドから起き上がっておでこにKissを。

「お姫さまをあんまり待たせたりはしないからね」

そう言って、女性の膝に首をおとした。

いきなりのKissと膝への重さで驚きながらも、女性は少年の髪の毛を

クシャ、となでる。

「船は待ってくれないのよ」

それから、異変に気づく。

膝に当たる口元からは、温かい吐息が感じられない。

かすかにあたる肌には熱が感じられない。

「・・・ねえ?」

そっと声をかけてみても、反応しない。

それから、少年の息があがってることに気づく。

「なんか、船に間に合いそうにないや」

頭を膝に載せながら、ゆっくり、ゆっくり、一つずつ言葉をならべる。

「君は、大丈夫。知らない、道が、あったら、僕が、導いてあげるから。

でも、ね、『大丈夫』を、真に受けないで。

いつでも、頼れるものは、そばに、あるからね。」

そのまま何も言わなくなってしまった。

言葉も出ないまま、大粒の涙が頬を流れおち

それが、少年の頬へと落ちる。

それは、少年も泣いているようで。

「頑張るから。」


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少年がいつもしていたリングを指に、港へ向かう一人の女性。

乗船券を見せると、一歩を踏み出した。

「それでは、カバリア島で会いましょう~!」

後ろから係員の声が聞こえる。

それをフン、と鼻で笑ってスルーした。

天気は快晴。

他の乗客が、地面にいる身内に手を振る中で

女性は天に向かってリングをかざす。

「待ってなさいよね」

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end.





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