「え゛っ…ウソ、もう夜明け・・・っ!?」
「何ぐずぐずしてらっしゃるの、そんなことを言ってる暇があるなら全力疾走しなさい!!」
「そうね、それが一番だわっ」
深い森をかける影が2つあった。
空が白み始めたこの早朝に、何をしているのか。
少女二人は、焦った様子で枝伝いに森を駆ける。
「全く、いっつも時間ギリギリになるような無理難題な依頼ばっかり引き受けて…長老、じゃなかった総長は何を考えているのかしら」
「わたくし1人なら余裕ですわ~」
「よく言うわっ、何回あんたのピンチ救ってあげたと思ってんの!?」
「あら、あなたも人のこと言えないんじゃなくて?」
「つーか、2人とも結局同レベでしょ!!本来ならばペアもいらないのよ、忍なんだから!!」
そう、彼女たちは、忍。
闇夜の黒に交じり各々の任務をこなす。
だから夜が明けると拙いというわけではない。
こんな深い森の奥で誰かに見つかる心配などないからだ。
それに、彼女たちはあまりにも速すぎて、一般の人間にはその目に姿を捉えることすらできないだろう。
尋常じゃないその速さも、忍だからというわけではない。
「てゆーかさ、別によくない?もうここまでくれば大丈夫でしょ、歩いたって10分程度よ?」
「即死じゃないなんてとっくにわかりきってますわ!でも熱が上がったりすぐに肌が焼けたりするんですもの!!しばらく体調も優れないままだもの!!」
「10分じゃそこまでならないわ、仮眠で十分回復できるレベルよ。」
「いいからスピード落とさないで走りなさいっ!!」
「まったく、陽が昇ると同時に帰ってくるバカがいるか!」
「目の前に2人も居ますが」
「屁理屈はいらんっ」
「だったら難しい任務ばかりまわすのを控えて欲しいのですわ~」
「ったく、陽の光を浴びたら即死で無いとは言えすぐに体に影響するんだぞ、もうちょっと自分たちが吸血鬼だということを自覚せんか馬鹿者っ!!」
彼女たちは、人間ではないのだ。
だが、吸血鬼としての能力を一時的に封印して人里に下りることもままある。
そうすれば陽の光を浴びても平気だ。
ではどうして2人はそうしなかったのか、というと――――
「ヤバッ、遅刻するぅーっっ!!」
学校に、通っているから。
「吸血鬼なのに…なんで神様から依頼が来るかなー」
「学校と任務…休む暇もありませんわ…」
朝から疲れた顔をして、自分たちの通う学校、精華中学校の門をくぐったその時。
「おっはよ、異色コンビ!今日も朝から疲れてるねっ」
「おっはよー恭平!昨日も遅くまで勉強してたからねぇ。てか異色は余計」
もちろん、忍の勉強をね。
「そうそう、こう見えてわりと同じ感じですのよ、わたくしたち。」
――――吸血鬼で、忍だからね。
2人で同じ事を思い、顔を見合わせ不敵な笑みを浮かべる。
「さ、南条君、早く教室に行きましょう。遅刻しますわ」
「ほんとほんと、あと1分…ってああぁぁああぁあぁぁっっ!!走れええぇぇ!!」
最終更新:2010年10月08日 23:19