偏微分

偏微分は、多変数関数の微分を行うために発明された方法である。
経済学においてはおそらく普通の微分より行う機会が多いのではないだろうか。
とはいえ、通常の微分とほとんど変わらないため、比較的楽に習得できると思う。
  • 多変数関数
  • 偏微分とは
  • 偏微分の基本性質
  • 2階偏微分



多変数関数

これまで扱ってきた関数は1変数関数だった。
しかし、経済学では複数の変数を用いた多変数関数がよく使われる。
例えば、労働Lと資本Kを投入して生産Yを生み出す生産関数Y=F(K,L)などだ。
この場合、グラフを書こうとするとK軸、L軸、Y軸の3つの軸の3次元のグラフとなる。

k次同次

本来は多変数関数でなくとも扱える話なのだが、
今書く方がより説明しやすいと思い、このタイミングにした。
k次同次性とは、すべての変数をp倍すれば関数全体としては倍されるという性質のことだ。
例えば、市場に財が財1〜財nまでのn個あるとする。
また、それらの財の価格をとし、所得をYとする。
このとき、財1の需要関数D1の変数は、,Yとなる。
ここで、全ての財の価格と所得が一気に2倍になったとする。
しかし、この状態では財1の需要量は変化しないと考えられる。
なぜなら、財の値段が全て2倍になっても所得が2倍になれば、
買うことのできる個数などになんの影響も及ぼさないからだ。
従ってこの場合、需要関数は0次同次性を持つと考えられる。

偏微分とは

偏微分とは、他変数関数における微分の方法である。
その方法は非常に簡単で、偏微分したい変数以外の変数を定数とみなして微分するだけだ。
偏微分する時の記号としては、関数f(x,y)をxで偏微分する時はや、などと表記する。
また、左から1番目の変数で偏微分しているのでと表記することもある。
は文脈によって他のことを表す場合があるので注意が必要だ。
例を出そう。2変数関数を考える。
これをxで偏微分すると、を定数とみなし、となる。
yで偏微分するとを定数とみなし、となる。

f(x,y)のxでの偏微分は、あるyのところで切った時のグラフの導関数になる。
例えば、でy=1とすると、となる。
これは、と平面y=1の共有部分のグラフの傾きを表している。

偏微分の基本性質

1変数の微分で成り立った性質のほとんどが偏微分においても成り立つ。
和の微分は微分の和や、定数倍の微分は微分の定数倍などだ。
積の微分や合成関数の微分についても問題なく成り立つ。

2階偏微分

偏微分も通常の微分と同じように2階偏微分が定義できる。
経済学ではそれなりに使う場面も多く、関数の最大化の条件などとして登場する。

以下の話は2変数関数の場合を紹介するが、n変数関数でも同様に成り立つ。
被偏微分関数をf(x,y)とすると、2階偏微分には4通りの方法がある。
x→x、x→y、y→x、y→yの4つだが、これらの値はすべて異なると考えられる。
またこれを、と表す。
あるいはのようにも表す。
x→y、y→xの場合上の表記と下の表記でxとyの順序が異なるのは、下の表記では偏微分の順序をそのまま表しているのに対して、上の表記ではの省略形であるからだ。
つまり上の表現は数式的で、下の表現は形式的なものであると言える。

実は経済学に登場するような数式ではは一致する。
これはヤングの定理と呼ばれている。
これによりどちらの変数での偏微分が先であるかを気にすることなく扱うことができる。
最終更新:2013年11月25日 11:22