前回、めでたくヘクシャー=オリーン定理が証明された。
それは果たして現実に即した理論なのか?
それを確かめてみる。
その後発生した様々な比較優位の源泉を求めようとした理論も紹介する。
レオンチェフの逆説
ヘクシャー=オリーン定理が証明されたが、
経済学ではそこで終わりではない。
その定理は現実と比べて確かに正しそうなのか、それを確かめなければ正しい理論とは言えない。
それを確かめようとしたのが、ソ連の経済学者レオンチェフだ。
ヘクシャー=オリーン定理によると、資源の賦存パターン(どの資源が豊富か)によって比較優位財が決定される。
この定理が本当に正しいとすれば、このようにして貿易が行われるはずだ。
そこでレオンチェフは1947年のアメリカの貿易データを用いて実証を行った。
アメリカは資本豊富国であるので、資本集約財を輸出し労働集約財を輸入していると予想される。
アメリカ |
輸出財 |
輸入財 |
資本 |
2550870 |
3091339 |
労働 |
182.3 |
170.0 |
資本集約度 |
13991.2 |
18183.9 |
※単位は資本:ドル 、労働:人/年 、資本集約度:資本/労働である。
※1単位は貿易財100万ドルの生産に用いられた投入量である。
※輸入に対して輸出が多い→輸出財、輸出に対して輸入が多い→輸入財
資本集約度とは、労働に対してどれほど資本が投入されたかという指標である。
つまり、資本集約度が大きい方が資本集約財となる。
このデータによれば、アメリカは資本集約財を輸入して、労働集約財を輸出していたことになる。
アメリカは資本豊富国であるにも関わらず、理論と真逆の貿易を行っていることになる。
比較優位の源泉
このようにヘクシャー=オリーン定理によって求められた比較優位の源泉が反証され、
別の新たな比較優位の源泉を探そうとする動きが1960〜70年代に起こった。
そこで生まれた様々な理論をいくつか簡単に紹介する。
1.技術ギャップ論(ポスナー)
現代では、特に先進国において資源の賦存パターンに大きな違いはなくなってきている。
そのため、比較優位の大小が存在しないことになり貿易が行われないということになる。
しかし実際には貿易は行われているため、他に比較優位の源泉が存在することになる。
そこでポスナーは比較優位の源泉として、新技術の開発を挙げた。
独創的な新技術を用いた財を開発することで、その財が他の財に比較優位を持つとした。
また、その比較優位は永続のものではなく、技術の模倣によって消滅する。
最近では技術の模倣が非常に早く行われ、製品が出るとほぼ同時に類似の商品が発売されることも多い。
2.R&D仮説(グルーバー、メータ、バーノン)
(編集中)
3.プロダクトサイクル理論(バーノン)
製品には登場してからの期間に応じて様々な局面が存在する。
その局面ごとに異なった比較優位の源泉が存在するというのが、この理論である。
製品が登場してからの期間という時間の概念を導入した動学的な理論である。
製品には、導入期、標準期、成熟期、衰退期が存在する。
導入期には研究開発の活発さが比較優位の源泉となり、
標準期、成熟期には海外生産(FDI)などによる生産コストの低下が源泉になる。
最終更新:2013年08月08日 09:47