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国際収支の不均衡
ここでは利子率が海外利子率と同じで一定であるという仮定を置いている。
しかし国際収支までが常に均衡状態で固定されているわけではないということは忘れてはならない。
均衡状態でなんらかのショックが発生すると、一時的に不均衡の状態に陥る。
その後に経済の調整メカニズムがはたらき、また均衡状態に戻ろうとする。
均衡状態とはいわばゆるいV字の坂の底にあるボールのようなもので、
転がそうと思えば簡単に底から動かすことができる。
しかしボールに重力がはたらき、そのボールは坂を転がりながらもとの底に戻ってしまう。
このようなイメージだ。
例として、一時的にi>i*となった場合を考えよう。
このときは外国から資本が流入するためFが増加し、国際収支は(EX−IM)+F>0となる。
しかし自国通貨の需要も同時に増加するため為替レートが低下(自国通貨高)し、貿易収支が悪化する。
この貿易収支の悪化分が資本収支の増加分を打ち消し、国際収支は均衡状態に戻る。
財政政策
さあいよいよマンデルフレミングモデルでの経済政策の効果を確かめる。
財政政策は政府支出G0を増加させる政策のことだ。その目標はGDPの増加である。
しかし、結論から言えばこのモデルでは財政政策は無効であり、GDPの増幅効果はない。
ではなぜそうなるのであろうか。それを以下で説明する。
まず3曲線は点A(Y~,i*)で交わっているとする。
この状態で政府支出G0を増加させると、財市場に超過需要が発生する。
これを均衡状態に戻そうと生産量Yが増やされることになり、IS曲線が上方にシフトする。
Yが増加したことで⑨式より貨幣需要が増加し、貨幣市場の均衡が崩れる。
その状態を立て直すために利子率iが上昇し、貨幣市場が再均衡する。
iが上昇したため投資Iが減少してそれに伴いYも減少する。(クラウディングアウト)
そうして均衡点は点A'に行き着く。
このままであれば確かに生産量Yは増加している。
しかし、IS曲線とLM曲線は点A'で交わっているが、BP曲線は点A'を通っていない。
外国利子率を自国利子率が上回っているため、自国債権の需要が増加する。
それによって自国に資本が流入し、資本収支が増加することで資本収支が黒字、すなわち不均衡状態になる。
また、自国債権需要が上昇するため、自国通貨の需要も増加する。
それに伴って自国通貨が増価(Eが減少)し、⑤、⑥式より貿易収支が悪化する。
このことによって国際収支は再び均衡状態に戻るが、国際収支の悪化が総需要の減少を招く。
それによる超過供給を解消するため生産量Yが減少し、利子率iも減少する。
Eの増価によってIS曲線も下にシフトし、結局のところ均衡点はAに戻ってきてしまう。
(図)
このような市場の動きによって財政政策は無効化される。
自由貿易が進めば進むほどこのモデルに近づいていくため、世界的に自由貿易が推し進められている現在にはこれに近い将来が待っているものと予測される。
金融政策
次に金融政策の効果について分析していく。
金融政策は貨幣供給、いわゆるマネーサプライを増加させる政策である。
このモデルにおいては、M0を増加させることに対応する。
まず下図のとおり最初の均衡点をAとする。
M0を増加させるとLM曲線の式の定数項が減少するため、LM曲線が下方にシフトする。
貨幣供給が増加するため、貨幣市場が超過供給の不均衡状態になる。
ここでiが減少し、これによって貨幣市場が再均衡する。
iの減少によって投資Iが増加するので、財市場には超過需要が発生する。
それを解消するためにYが増やされ財市場も再均衡しようと動き、均衡点はA'へと移る。
また、iの減少によって国際収支にも影響が出る。
資本収支Fが減少することで国際収支が赤字になり、自国通貨安(Eの上昇)が進行する。
しかし自国通貨安によって貿易収支が改善するため国際収支が再び均衡する。
貿易収支が改善することによって財市場で再び超過需要状態が引き起こされる。
それの調整のために再び生産量Yが増加し財市場が再均衡する。
このことによりiが増加し、均衡点はA"に移行する。
(図)
この結果をみると、利子率の上下無しに生産量Yを増加させることに成功している。
したがって金融政策はこのモデル上では有効ということになる。
そのような事情もあってか最近では、財政政策よりも金融政策が重視されるようになっている。
最終更新:2013年12月13日 10:07