財の分類

ミクロ経済学で登場する財には様々な種類がある。
それを分類するための方法も数多くあるが、今回は競合性と排除可能性によって分類する。

  • 競合性と排除可能性
  • 4つの分類
  • フリーライダー問題
  • 共有地の悲劇

競合性と排除可能性

財には様々な分類の方法があるが、その財の何に注目するかによって変わってくる。
ここで注目するのは、財を使用した際の他者への影響である。
そこで登場するのが競合性排除可能性である。

競合性とは、その財の使用が他者のその財の使用に影響するかどうかである。
例えば自分がその財を使用することにより他人が使用できる量が減少すれば、その財には競合性があると言える。
食品や家電などはもちろんのこと、漁業資源などもこれに当てはまる。
食品は自分が食べればその分を他人も食べることは出来ないし、自分が洗濯機を回しているときに他人はその洗濯機を使えない。
漁業資源もその漁場からの魚の出入りを考えなければ、自分が獲った魚の分だけ他人が獲ることのできる魚は減少する。
逆に競合性がない財としては、映画や空気などが挙げられる。
映画を自分が見たことによって(映画館の座席が埋まっている場合を除いて)他人が映画を見られなくなるということはない。
空気は無尽蔵であるとみなしてもよいほどにあるので、自分が呼吸したところで他人が呼吸できなくなるということは起こらない。

排除可能性とは、対価を支払わずに他人がその財を使用することを妨げることができるという性質である。
排除可能性を持った財の例としては食品や家電、映画などが挙げられる。
自分がしている食事や自分が使っている洗濯機を対価を支払わない人に使われることを防ぐことは可能だ。
また映画をタダで見ようとする人を映画館のスタッフは追い出そうとするだろう。
逆に排除可能性がない財には、漁業資源、空気などが存在する。
漁業資源が獲れる漁場は十分広いので、自分が何らかの特権を持っていない限り他の船が漁獲するのを止めることは出来ない。
空気も同様である。

4つの分類

上で挙げられた例を見ればお気付きかもしれないが、この競合性と排除可能性をそれぞれ持つか持たないかによって、財を4つに分類することができる。

  • 競合性も排除可能性も持つ財
このような財を私的財と呼ぶ。
上記の例では食品、家電がこれに当たる。
  • 競合性を持つが排除可能性は持たない財
このような財を共有資源(またはコモンプール財)と呼ぶ。
広義の公共財であり、準公共財と呼ばれることもある。
上記の例では漁業資源がこれに当たる。
  • 競合性は持たないが排除可能性は持つ財
このような財を自然独占(またはクラブ財)と呼ぶ。
広義の公共財であり、準公共財と呼ばれることもある。
上記の例では映画がこれに当たる。
  • 競合性も排除可能性も持たない財
このような財を公共財、あるいは純公共財と呼ばれる。
上記の例では空気がこれに当たる。

競合性あり 競合性なし
排除可能性あり 私的財 自然独占
排除可能性なし 共有資源 公共財

フリーライダー問題

排除可能性がない財に存在する問題として、フリーライダー問題が存在する。
これはその名の通りタダ乗りに関する問題である。
地方自治体が作った公園を例としてこの問題を説明する。
その公園を作る費用はもちろん無料ではない。
公園の建設費用を誰が負担するかと言えば、基本的にはその自治体に税金を納めている住民達だ。
しかしこのような公園は、その自治体住民に限らず誰でも利用することができる。
しかも費用を負担していない人がその公園を利用することを妨げることはできない、つまり排除可能性が存在しない。

これはいわゆる知識のような財の場合に大きな問題を生む場合がある。
ある薬の製薬技術をある製薬会社Aが多額の資金を投じて完成させたとする。
その薬が発売されたのちに別の製薬会社Bが、その薬を分析して製薬会社Aが投じた研究資金よりも少ないお金でその薬と同質の薬を完成させたとしよう。
製薬会社Bが投じたお金は製薬会社Aが投じたお金に比べて少ないので、製薬会社Bの薬の方が価格的に優位性を持つ。
結果的にその薬を最初に開発した製薬会社Aの薬よりも、製薬会社Bの薬の方がよく売れることになる。
このような事態になれば、その財を生産するために必要な費用(例えば研究費など)の支払いを誰も行わなくなる可能性がある。
そうなってしまえば、民間の企業はこのような財の供給を行わなくなるかもしれない。

これに対する解決策としては、政府が公共財を支出して税収でそれを(強制的に)賄うという方法がある。
国道などがこの方法によって賄われている。
また特許や著作権によりその技術を一定期間保護することも解決策の一つとして挙げられる。

共有地の悲劇

共有資源に起こる問題として共有地の悲劇がある。
羊毛を生産するために羊を買っている生産者達のコミュニティを例にする。
そのコミュニティでは羊を育てるため、そのコミュニティ共有の牧草地を利用しているとする。
この牧草地は共有資源である。
現在、この牧草地で草を消費するスピードは牧草地の回復スピードを下回っており、
なおかつ牧草地の広さは生産者一人一人にとって十分大きいとする。

この状態のとき、それぞれの生産者は自分の所有する羊を少しくらい増やしても良いのではないかと考える。
なぜなら回復スピードは十分であるし、牧草地はまだまだ広いからである。
そうして全員が羊を飼う量を増やしたとする。
これによって羊毛の生産量はアップし、そのコミュニティは潤うこととなる。

これに味を占めて、生産者はさらに羊を増やそうとするだろう。
そうすればさらに羊を増やしていくことだろう。
これが繰り返された結果、どうなるだろうか。
次第に羊の増加による草の消費の増加に、牧草地の回復が追いつかなくなってくる。
そうなれば次第に土地は痩せ、その牧草地は財としての価値を失ってしまう。
生産者達は羊を養うことが出来なくなり、そのコミュニティは崩壊してしまう。
これが共有地の悲劇である。

共有地の悲劇を解決するにはどうすればよいのか。
一つはコミュニティ全体で羊の頭数に応じてなどの利用料を徴収する方法である。
これによって共有資源の過剰な利用を防ぐことができる。
もう一つの方法としては、牧草地を生産者達に分配し私的財にしてしまうことである。
私的財にした場合も過剰な利用を防ぐことができる。
最終更新:2015年09月15日 02:14