「はわわわ~!」
さて、何事かと振り返った平日の朝方。
俺はただ登校していたのだが、のんびりな日常の喧騒に混じってそんな声が聞こえたのは何故だろうか。
とにかく振り返ると橘京子がポニテを揺らして走ってくるのが見えた訳だ。
「き、キョンさん助けて下さい~!!」
もちろん無視して俺はのんびり登校するさ。
無駄に変な事に巻き込まれては学校に間に合わん。
「無視しないで下さい~! 助けて下さい~!!」
あ~遠くからあんなにも精一杯叫ばれては無視出来ないな。よし!
「断る!」
「はぅ!?」
さぁ、登校しよう。
「酷いですよぉ~!」
いつの間にやら橘はすぐそこに居た。まぁ、走ってるしな。
そこでようやく何事を助けろと言っているのか理解した。
犬が、橘を追っかけていた。
オッケー。スルーだ。
関わって犬に噛まれてはたまったものではないからな。我ながら英断である。
「きゃうっ!」
ふと橘がずっ転んだ。そりゃもう派手に。犬は橘の手から零れたそれを口にくわえる。
「あ~! 私の朝ごはんが~!!」
そんな悲痛な叫び声も虚しく、犬は無情にも食パンと共に立ち去った。
「なんと哀れ」
泣き出す橘に俺は笑いながら言ってやった。
ふと、橘が涙一杯の目を俺にキッと向けてきた。
「ぐすっ・・・貴方が助けてくれなかったせいですよ!?」
「ふざけんな」
わざわざ敵を助ける馬鹿は居ない。そして敵の不幸は蜜より甘く面白い。
「あぅ・・・学校から随分離れちゃったし、朝ごはんは食べられないし最悪です・・・」
橘はそう言って深い溜め息を吐いた。
「んな事に知るか」
「貴方は鬼です! 悪魔ッ!」
「誘拐犯に言われたくないな」
俺が叫ぶや否やぴん、と空気が張りつめた。
何が起きたのかさっぱり解らんね。
橘がにやりと笑った以外。
「・・・あぁ、そうでした」
橘の様子がおかしい。
いや、ライチュウとかに進化する訳じゃないぞ?
本当におかしいんだ。何かハルヒに似た空気が・・・。
ふと、俺は橘に腕をガシッと捕まれた。
「え?」
顔を上げれば笑顔。あぁ、解っちまった。
ハルヒも同じような笑顔浮かべるからな。
「私は深く傷付きました。責任取ってもらいます」
これは悪ふざけを思い付いた笑顔だな。うん。
「断る」
「断る、は不可です。責任を取らせます」
「・・・何をせよと」
「とりあえず学校が遅刻確定なのでもう早く行こうが遅く行こうが変わったものじゃありません」
「で?」
「で、今日は気分が乗らないので学校思いっきり遅れたいのです」
嫌な予感がするのは長年の勘が気のせいでは無いと叫んでいる。
「・・・で?」
「なので私が飽きるまで今日は付き合って下さい」
ふざけんなと言いたくなったね、思わず。
「俺が学校遅刻するわボケ」
「知った事じゃ無いです!」
そう言われズルズルと引きずられ俺は学校から遠ざかっていく。
さらば学校フォーエバー。
あ~俺はこのまま何処に行ってしまうのか。
「何処に行くつもりだ」
「え? ん~・・・じゃあエスコートして下さい」
「じゃあ北高に行くぞ」
「それは駄目ですよっ!」
・・・で、俺は町へと連れ出される破目になった訳だ。
言っとくがエスコートなんかした事ない。
「どこをどう行けば良いんだか」
「えっと普段SOS団は何をしてるんですか?」
「不思議探索。知ってんだろう」
「・・・それ以外に何も無いんですか?」
「無いな」
「無意義に休日使ってますね」
だから休日の時間割きは嫌なんだ。俺は憂鬱になって溜め息を深く吐いた。
「仕方ない。カラオケ行くか」
「それ良いですね。私、一回行ってみたかったんですよ」
「学校の友達と言った事無いのか?」
橘はにっこりと笑うだけで何も答えなかった。
さて、俺達はカラオケに来たわけだ。
「えっと・・・これどう操作するんですか?」
「それはタッチパネル式だ」
「あっ、本当だ」
橘は子供のようにはしゃいで居た。ふんふんと鼻歌を歌いながらリモコンを操作する。
そして、今時の曲のタイトルが画面に浮かぶ。
こうして見ると本当にただの女子高生だ。古泉も閉鎖空間外ではただの高校生か。
「はい、次はキョンくんの番です」
橘が俺にマイクを渡してきた。物凄く笑顔で。
「俺も歌うのか?」
「当然です」
「仕方ないな・・・」
いつも谷口達と行くカラオケを女子と二人で来る。
その新鮮さに俺は何とも言えない酸っぱさを感じた。感じながら曲を入れる。
さぁ、橘をドン引きさせようか!
「Wake up your dead!」
俺のチョイスはDir en greyだ。
誰と一緒に来ようが関係ないさ。
唯我独尊で行く俺の為の曲だな。
橘も呆然とした顔で俺を見つめる。
「Oneday I will fuck your parents!」
歌い切ったぜ、女子高生の前で。
「す、凄いです・・・格好良いです・・・」
橘はドン引きしてるかと思いきや感嘆の声を漏らしていた。
拍手までしてもらったさ。まぁ、悪い気はしない。
敵とは言え橘可愛い方だしな。
そんなこんなで意外にカラオケは盛り上がった。
さて、ここで一つ疑問だ。
「何時までやる?」
一応フリータイムで入室してるが何時までやるか決めてなかった。
橘は曲目リストを見ながら、
「貴方が飽きるまでで構いませんよ?」
と言ってきた。
「学校はどうした」
「・・・構いません」
なんか流されてるな・・・。
まぁ、良いか。白けるのはごめんだ。
「次は橘だぞ」
「は~い」
橘はマイクを握ると次の曲を歌い出した。
「とても嬉しかったよ~君が笑いかけてた~」
聞き覚えがあった。確かアニメの曲だ。フルーツバスケットか。
ご丁寧にアニメの映像付きときた。
懐かしい。確か小学生の時だろうか。
ふと橘を見やれば、何故か泣いていた。
「た、橘?」
「Let's stay together いつも・・・ぐすっ」
「大丈夫か?」
「ごめんなさい、見苦しいところを見せてしまって・・・」
そう言って無理矢理に微笑んだ。
その少女に何て声を掛ければ良いか解らなくて黙ってしまう。
「・・・」
「私、本当は学校なんか元々行きたく無かったんです」
唐突に語り出した話を俺は黙って聞く。
「学校でいじめられてるんです、私」
動揺。うん、平静無理♪余裕で衝撃を受けたさ。
「っていう事は今日は・・・」
「はい、元々貴方を巻き込んで学校をさぼる計画でした、学校は辛いので」
犬は偶然ですけど。橘は弱々しく、苦々しく笑った。
「理由はどうあれやっぱり計画的か」
「ごめんなさい・・・学校に行きたいならもう止めません」
顔を伏せてる橘をよそに俺は行動に移した。機嫌が悪くなっちまったからな。
「え・・・」
橘が顔を上げた。ただ呆然としていた。流れてきたメロディに。
そうだ。気分が悪くなったなら歌えば良いのさ。
「どうして・・・」
サブリミナル効果だろうね。潜在意識が橘を守りたがってるのさ。
「困ってる奴は助けたい主義だからさ泣きたいなら胸貸すぞ?」
そう言うや、橘は俺に抱きついて泣き出した。
「ぐすっ・・・ひぐっ・・・」
とりあえず泣き止むまでただただ頭を撫でた。歌い手のないain't afraid to dieがただ流れていく。
・・・。
結局、カラオケを出た頃には外は真っ暗だった。
「ありがとうございます・・・今日は付き合ってもらって」
「気にするな」
「あの・・・また泣きたい時は胸を借りても良いですか?」
「あぁ、勿論」
断る理由は無いさ。ふと橘が俺をすげぇ直視する。
「・・・キョンくん」
「何だ?」
橘はにっこりと笑った。
「私、貴女が大好きかもしれないです」
言葉と笑顔に胸が波打ったのを感じた。
「もしかしたら・・・俺も好きかも知れない」
だからそう返した。
さて、後日談だが普通に俺は怒られた。
橘からもメールが来て、物凄く怒られたという話だ。
まぁ、別に嫌な気分はしないさ。
ほら、
「また胸を借りにきました」
こいつが居るだろ。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「彼氏なら当然だ」
こんな素晴らしい利益が出たんだからな。文句は無いさ。
オワルタ
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