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  • 涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)
  • 運命と選択 第四章

涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki(避難所)

運命と選択 第四章

最終更新:2020年03月18日 21:44

haruhi_vip2

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だれでも歓迎! 編集

「どうしても行くのか? 僕達を残して……」
玄関から出て行こうとするみくるに、僕は問いかけた。みくるは悲しみを携えた表情でうつむくと、その場に立ち尽くした。
「このまま行かなくても……誰もお前を責めやしない。なのにお前は……僕と娘を残して出て行くと言うのか?」
僕の傍らでは、娘が泣きそうな顔をして僕達ふたりの様子を見つめていた。
「ごめん……なさい……」
みくるは、うつむいたまま、消え入りそうなほど小さな声でそうつぶやく。そんなみくるの姿を見て、やりきれない思いが後から後から込み上げ、ついに僕は感情をコントロールできなくなった。
「どうして! どうしてお前が行かなければならないんだ!! おかしいじゃないか! どうして僕達があいつ等のために犠牲にならなければならないんだ!!」
みくるは顔をあげ、怒りを爆発させた僕の顔を見つめる。その瞳からは悲しみの涙が溢れていた。そんなみくるの顔を見て、みくるへの愛しさが溢れてきた。
僕はみくるの身体を抱き寄せ、力いっぱい抱き締める。
「行くなああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 行かないでくれ! 僕を、僕を置いて行かないでくれ! 頼むうぅぅ!!」
胸に顔をうずめて、僕は感情の赴くままに泣き叫んだ。娘が後ろで見ていることは知っていたが、このときの僕にはそんなことに気をつかう余裕は残されていなかった。みくるはそんな僕を無言のままただ優しく抱き締めてくれていた。
しばらくして、僕は落ち着きを取り戻し、その場にしゃがみこむ。みくるは無言のままそんな僕を見つめていた。
みくるは僕の言葉を待っていた。そしてそのことは僕も十分理解していた。もし僕がもう一度「行くな」と言えば、いやこのまま何も言わなければ、みくるはずっとそうしていただろう。
そして、ずっと僕達はいっしょに暮らすことができたかもしれない。
しかしそれは、今後ずっとみくるが過去を振り返り、贖罪を背負って生きていくことを意味する。僕はそんなみくるの悲しむ姿を、これ以上見たくなかったのだ。
こんな言い訳をすれば、きっと、皆はこんな僕を責めるだろう。卑怯で、臆病で、我侭で、自分勝手な奴だと。だがそれでも、僕はもうみくるを引き止めることができなかった。
「行け、僕の気の変わらないうちに……僕の前から消えてくれ」
顔をあげることなく、うつむいたまま僕はそうつぶやいた。このときみくるがどんな表情をしていたかは、僕には知るすべはない。
ただ一言、震える声で、
「ありがとう……さようなら……」
そう言い残して、みくるは出ていた。後には、娘のすすり泣く声と、無機質な音を立てて玄関の扉が閉まる音だけが残された。
 
 
 
 
「ハル……ヒ……嘘だろ……」
道端に倒れ、ピクリとも動かないハルヒの姿を見て、俺の胸に絶望感が込み上げてきた。街の喧騒が遠くに聞こえ、目の前の出来事が、まるで夢のように非現実的に思える。
なす術が無いといった言葉がこれほど当てはまる状況に、俺はいままで陥ったことは無かった。あまりのショックに涙を流すことすら忘れ、全身から力が抜けるようにその場にひざまずく。
「あ……ハ……ハル……」
言葉にならない呻き声をあげながら、放心状態でハルヒの倒れている様を眺める以外に、俺には何もできなかった。
だんだんと感情が目の前の現実に追いついてくる。目の前の景色が潤み、涙が溢れてきたことがわかった。
「う、う、うう……」
やり場の無い怒りと悲しみこみ上げてきて、拳をアスファルトに叩きつけて、声にならない声で泣き叫ぼうとした瞬間、奇跡が起こった。微かにだがハルヒが動いたのだ。
「ハ!? ハル……ハルヒ!?」
俺は即座に立ち上がり、わき目も振らずに、ハルヒのもとに駆け寄る。
「ハルヒ! 大丈夫か!!」
必死で声をかける俺の様子に、ハルヒは少しびっくりしたようで、ビクッと身体を縮こまらせた。ハルヒは、ゆっくりと、自分の頭や手足を触りながら、自分が無事であることを確認する。
「だ、大丈夫……みたい……」
「ハルヒ!!」
ハルヒがそう言うや否や、俺はハルヒを力いっぱい抱き締めた。そうしなければ、目の前で起こった奇跡が俺のもとから去ってしまうのではないかと恐れたからだ。
「キョ、キョン、苦しいよ……」
「ハルヒ……よかった……本当によかった。てっきり轢かれたものだとばかり……」
「誰かがあたしを突き飛ばしてくれたのよ。だから……あたし助かったの……」
ハルヒの言葉を聞いて、ようやく奇跡の正体がわかった。ハルヒが突き飛ばされた様子を見て、俺はハルヒが暴走車に轢かれたと勘違いしてしまったのだ。
「ごめんなハルヒ、もっとお前のことを考えてやるべきだったよ。いままで寂しい思いをさせてごめん。もう二度とお前に辛い思いはさせない。だからずっと俺の傍にいてくれ」
「キョン……」
ハルヒもぎゅっと俺を抱き締めてくれた。つきあって以来、初めて自分の素直な気持ちをハルヒにぶつけたような気がした。
俺は橘京子の言葉に捕らわれ過ぎていた。だからハルヒの倒れている姿を見て、ハルヒが死んでしまったと勘違いをしてしまった。今となっては恥ずかしい限りだ。
だが、そのおかげで、こうやってハルヒとの仲を深めることができたのだから、不幸中の幸いとはこのことなのかもしれない。誰かがハルヒを突き飛ばしてくれなかければ、危ないところだったが……
「キョン? どうしたの?」
抱き締めていた腕の力を緩めた俺の顔を、ハルヒは怪訝そうな表情で眺めて尋ねる。だがこのとき、俺の脳裏にはハルヒの言葉も届かないほどのひとつの疑問が思い浮かんでいた。
誰かがハルヒを突き飛ばしてくれなければ、ハルヒは暴走車に轢かれて死んでいた。
誰かがハルヒを突き飛ばしてくれたおかげで、ハルヒは死なずにすんだ。
誰かとは、いったい誰? その誰かはいったいどうなった? まさか……、まさか……
そう、俺はその誰かが誰であるかをよく知っているはずだ。橘京子の言葉が、喫茶店での光景とともに、脳裏に浮かぶ。
「……もし、あなたが朝比奈さんを助けるために、彼女を未来の世界に帰したら……、彼女の代わりに涼宮さんが死ぬことになります」
「彼女の代わりに涼宮さんが死ぬことになります」
橘京子のこの言葉が頭の中にこだまする。ハルヒは朝比奈さんの代わりに死ぬと告げられたはず……そして俺の目の前でハルヒは生きている。
では、ハルヒの代わりになるのはいったい誰?
まるで、意識だけが俊敏になったかのように自分と周囲の動きが緩慢に思える中、ゆっくりと、非常にゆっくりと、俺は自分の背後を振り返る。
周囲の喧騒はもう俺の耳には届かず、この世界には俺ひとりだけが存在しているかのようであった。
刹那の時間、だが俺にとっては永遠に思えるほどの時間が過ぎ、俺が振り向き目にした光景は、大人になった朝比奈さんが倒れている姿だった。
言葉がでなかった。時間が静止したかのような錯覚に陥る。ただ目の前の光景を茫然と眺めているしかなかった俺の時間を動かしたのは、ハルヒの言葉だった。
「キョン……、まさか、その人……みくるちゃん……? じゃないよね? 大人……だし……」
不安そうにそうつぶやくハルヒの声を聞いて、俺は目の前で起こったことのすべてをようやく理解することができた。
だが、それを理解した後も、俺はどう行動してよいかわからなかった。時が経つのも忘れ、その場に茫然と立ち尽くしていると、隣でハルヒの小さな呻き声が聞こえた。
ハルヒのほうを振り返ると、古泉が、当て身を当てて、ハルヒを気絶させている光景が目に飛び込んでくる。俺が古泉に言葉をかける間もなく、古泉は、真剣な顔で、開口一番にこう告げた。
「あなたは朝比奈さんに付き添ってあげてください。涼宮さんのほうは僕のほうでなんとか誤魔化しておきますから」
「え、あ、ああ」
「本当はあなたには涼宮さんに付き添っていてもらいたいのですが、そうも言っていられない状況ですしね。機関の手配した救急車が来たようなのでそれに乗ってください」
古泉は、気を失ったハルヒの身体を支えながら、サイレンを鳴らし近づいて来る救急車を一瞥する。救急隊員が朝比奈さんを救急車に運び込み、俺もいっしょに救急車の中に乗り込んだ。
担架の上に横たわる朝比奈さんの片手を握り締めて、俺は朝比奈さんに呼びかけた。
「朝比奈さん! 大丈夫ですか! しっかりしてください!!」
どう見ても助かりそうには思えなかった。それでも俺は、朝比奈さんの手を握り締めて、必死になって叫び続けた。
「みくる……」
背後でそうつぶやく声が聞こえ、俺が振り返ると、そこには藤原と文芸部室で見た不法侵入者の少女の姿があった。俺は驚愕の眼差しでふたりを見つめる。
「な!? お前等、なんでここにいるんだ?」
「みくるは僕の妻だからな。僕がここにいても不思議はないだろう」
「何!?」
朝比奈さんがコイツの妻だと! 冗談もいい加減にしろ!
「キョンくん……」
背後から微かに朝比奈さんの声が聞こえてきたため、俺は、藤原に掴みかかるのも忘れて、朝比奈さんのほうを振り返る。
「朝比奈さん!!」
「涼宮さんは?」
「え、ハ、ハルヒですか? ハルヒは助かりましたよ。朝比奈さんのおかげで……」
「よかった……」
俺の言葉を聞いて、朝比奈さんは弱々しく微笑んだ。俺はそんな朝比奈さんの微笑む姿を見て、直感的にもう朝比奈さんは助からないと悟った。
「どうして……どうしてこんなことに……」
「キョンくん、そんな顔をしないで。これは避けることのできない運命なの……だから、これでよかったの……」
「ハルヒが助かったことは嬉しいです。でも、でも、どうしてそのために朝比奈さんが犠牲にならなければならないんですか!」
朝比奈さんは、少し困ったような表情をして、弱々しい声で俺に自分の身の上を語りだした。
「わたしはね、涼宮さんの代わりにこの時間平面で死ぬために、未来の世界から送り込まれてきた生贄なの。
二年前、涼宮さんを監視していた時間駐在員、いまのわたしの夫である彼が、この時間接点で涼宮さんの死の可能性が高まっていることを発見した。
その報告を受けたわたし達の上層部は、涼宮さんの死が未来の世界に影響を及ぼすことを恐れ、当時何も知らなかったわたしをこの時間平面へと送り込み、わたしを犠牲にすることで涼宮さんの死を回避しようとしたの。
だから、こうなったことは涼宮さんやキョンくんの責任ではないわ。これがわたしの役割、誰にも抗うことのできない運命なのよ。だからもし、わたしが助かれば涼宮さんが死ぬことになるわ」
「そ、そんな……」
どう言葉を返して言いかわからなかった。このとき朝比奈さんから告げられた事実は、俺の想像の範疇を遥かに越えていたからだ。
狭い救急車の中の空間に沈黙が訪れ、サイレンの音だけが虚しく俺の耳に届く。
無言の時間がしばらく続いた後、朝比奈さんが、か細く小さな声で、その沈黙を打ち破った。
「キョンくん……わたし達が別れたあの夜のことを覚えてる……」
「はい、あの日のことは今でもしっかりと目に焼き付いてます」
「ふふふ、わたしもね、あの日のことを忘れたことはなかったわ。わたしはずっとキョンくんにふられたとばかり思っていた。でも、キョンくんはわたしのことを助けてくれたのよね」
橘京子の言葉で選択を迫られ、デートの最中であるにも関わらずどちらを選ぶか悩んでいたあの日の光景が、ありありと目に浮かんでくる。
黄昏を受けて真っ赤に染まる公園の風景、母親に連れられて駆け回る幼い子供達、そして、不安そうに俺を見つめる朝比奈さんの表情。公園で吹いていた風の肌寒さやその匂いさえもが鮮明に頭に思い浮かんだ。
「わたしはね、ずっとキョンくんのことが好きだった。でも、この想いをキョンくんに伝えることはできなかった。
それは、わたしが未来から来ているというだけではなく、わたしとキョンくんの間にはいつも涼宮さんがいるような気がしたから。
わたしはそのことをずっと歯がゆく思ってたわ。涼宮さんのことを憎く思ったことさえあった。涼宮さんさえいなければ、もっとキョンくんの傍に近づけるのにと」
「朝比奈さん……」
「でも、最後の別れの日、キョンくんは涼宮さんではなく、わたしを助けることを選んでくれた。その事実を知ったとき、わたしは初めて涼宮さんを超えてキョンくんに近づけたと感じたわ。
正直、キョンくんがあの時、どういう理由でわたしを選んだかは、わたしには知る術は無い。でもいいの。例えどういう理由であれ、あのとき、キョンくんは涼宮さんではなく、わたしを選んでくれたのだから……」
遠い目をして、まるで昔話を話すように、自分の心情を交えて別れの日のことを語る朝比奈さんを見て、俺はやりきれない想いで胸が一杯になった。
朝比奈さんは既に自らの死を覚悟していた。だから、今生の別れとなったいま、俺に伝えきれなかった自分の想いを吐露したのだ。そんな朝比奈さんを見て、俺は涙を流さずにはいられなかった。
「泣かないでキョンくん。わたしは幸せよ。本来なら、わたしは何も知らないまま、この時間平面で誰にも看取られること無く、独り寂しく死んで逝く運命だった。
でも、キョンくんがわたしを選んでくれたおかげで、わたしは暖かい家庭を持つことができたし、娘にも恵まれた。そして愛する夫と、愛しい娘と、大好きだったキョンくんに看取られて死ぬことができるのだから……」
「朝……比奈……さん……」
あまりの悲しさに声が出なかった。伝えたいことがたくさんあるはずなのに、咄嗟に言葉が出てこない。そんなもどかしさが胸に込み上げてくる。
「キョンくん……」
「は、はい」
「わたしの分まで、涼宮さんを幸せにしてあげてね。涼宮さんは寂しがり屋だから……」
「約束します。きっと、きっとハルヒを幸せにして見せます」
俺が朝比奈さんの手をぎゅっと握り締めてそう言うと、朝比奈さんはとても優しい、天使のような微笑で俺に応え、そしてその微笑のまま俺達の前から去って逝った。
「朝比奈さん? 朝……比奈……さん……、う、うあ、うああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………」
朝比奈さんの手を握り締めたまま、俺はその場で叫ぶように泣いた。後から後から涙が溢れ、朝比奈さんの腕に滴り落ちる。それでももう、朝比奈さんが目を覚ますことはなかった。
どれぐらい俺はそこで泣いていただろう。声も涙も枯れ果てて、横たわる朝比奈さんを茫然と眺める俺に、藤原が声をかけてきた。
「もういいだろう、そろそろ降りてもらおうか」
「ちょっと待ってくれ、もう少し……」
「いいかげんにしろ! 悲しいのはあんただけじゃないんだ!! みくると約束したはずだろ、涼宮ハルヒを幸せにすると。だったらあんたは自分の在るべき時間と場所に帰るべきじゃないのか!」
藤原は俺の胸倉を掴み上げてそう叫んだ。藤原の手を払いのけた俺の前に、例の少女が立ち、ペコリと頭を下げた。
「この間は申し訳ないことをしました。母が死ぬのはあなたが原因と勘違いし、わたしは取り返しのつかない過ちを犯すところでした。心から謝罪します。
後、こんなことを頼める義理ではないのですが、ひとつだけお願いを聞いて欲しいのです……」
年齢はおそらく俺と妹の間であろう。真っ赤な目がさっきまで泣いていたことを物語っていた。だが、気丈にも取り乱す事のないその態度は、朝比奈さんの娘というよりハルヒに近いような感じがした。
「母は、わたしたちがこの時間平面を去るときには、自分の記憶をこの世界から消去していくように言い残しました。しかしわたしはあなたにだけは覚えていて欲しいのです。
母が最も愛したあなたに、母とともに過ごした思い出を、母があなたを好きであったということを、朝比奈みくるという少女が確かにあなた方と共にいたという事実を。
あなたからも忘れ去られて、この世界から母の、朝比奈みくるのすべての痕跡が消えてしまうのは、あまりにも母が不憫に思われて仕方がないのです。だから……」
彼女は涙を流しながら俺に懇願した。目の前で、ハルヒを助けるために母親が亡くなっているというのに、俺に一言の恨み言も言わず、頭を下げて懇願する彼女に罪悪感すら覚えた。
「当たり前だ。忘れてくれといわれても、忘れるつもりはない。だから、朝比奈さんの記憶を残してくれ」
「ありがとうございます」
彼女が深々と頭を下げるのと同時に、俺達の乗っていた救急車が停止し、ハルヒが運ばれたであろう機関ご用達の病院の前で後ろのドアが開いた。救急車の外には昨日と変わりない日常が広がっているようであった。
「あ、後、これも持っていって下さい」
彼女がポケットから取り出したのは、朝比奈さんがよく使っていたファンシーな封筒だった。中には、何度も何度も書き直した跡のある白紙の便箋が入っていた。
「この手紙はあなたが母と別れるときに、母が渡すはずだったものです。わたしがあの日に戻って、母が公園のベンチの上に置いていったものを、無断で持って来ました。
母は常々『あなた方と過ごしたSOS団での日々をこの便箋に綴ろうとしたが、自分の知るどんな言葉でも表現できなかった』と言っていました。
この手紙にはそんな母の想いが詰まっています。だから、せひあなたに持っていて欲しいのです」
彼女の話しぶりから、朝比奈さんが俺達との思い出の日々をどれほど大事に思っていたかを知ることができた。悲しい感情の中にも嬉しさがこみ上げ、涙が溢れてくる。
「ありがとう、大事にするよ」
俺が手紙を受け取ると、彼女はほんの少しだけ微笑んだ。そんな微笑んだ彼女を見て、確かに朝比奈さんの娘であることを確信した。
「キョンさん……もう会うことはないですけど……お元気で……」
救急車から降りようと、俺が手すりに手をかけ、まさに一歩を踏み出そうとした瞬間、背後から不意に藤原の声がかかる。
「待て!」
「なんだ?」
手すりに手をかけたまま、俺が振り向くと、藤原は初めて会ったときのような敵意を剥き出しにした表情で、思いもよらないことを言い出した。
「橘京子には気をつけろ! 涼宮ハルヒを殺そうとしたのは奴だ」
「どういうことだ」
俺も、初めて出会ったときと同じように、藤原を睨みつける。そんな俺を見て、藤原は無知な輩を見るような目で、めんどくさそうに口を開いた。
「僕が橘京子といっしょにあんたに会ったとき、僕達は利益を共有していた。僕の目的はみくるを助けること、奴の目的は涼宮ハルヒの死。
だが、完璧であったはずの計画は、九曜周防の一言により崩れた。あの一言で涼宮ハルヒが生存する可能性が出てきたからな。僕にとってはそんなことはどうでもいいことだったが、橘京子には許しがたいことだった。
だから、橘京子は涼宮ハルヒの死を確実なものとするために、機関内部の裏切り者を手配し、涼宮ハルヒ暗殺を企てたというわけだ。それがこの事件の真相だ」
「では今後も、橘京子がハルヒを殺そうとする可能性があるということか?」
「それはない。涼宮ハルヒはあの時間接点以外では、老衰以外で死なないことになっている。これは規定事項だからな。奴もそんな無駄なことはしないだろう」
「橘京子はお前の仲間ではなかったのか」
「言ってるだろ、僕は涼宮ハルヒなどどうでもいいんだ。みくるを助けるために利害関係が一致しただけだ。だが、いまとなってはみくるの敵に過ぎない」
「勝手な言い草だな」
「人間とはそういうものだ。あんたもいまにわかるさ。では、もう降りてもらおうか。僕はこの時間平面で、あんたが一番嫌いなんだ」
初めて会ったときと同じような冷淡なムードで会話を交わした後、俺は救急車からアスファルトの上へと降り立った。ふと、後ろを振り返ったが、そこにはもう救急車の姿は跡形もなかった。
俺はやるせない気持ちでゆっくりと病院のほうへと向かって歩き、玄関の自動ドアをくぐりぬける。玄関先には観葉植物が飾られ、近代的な雰囲気の漂う総合病院だった。
忙しそうに小走りに駆けていく看護士や入院していると思しき患者の姿を横目で見ながら、受付の前まで来ると、古泉が多少険しい顔つきで俺のほうに駆け寄ってきた。
「いままでどこに行っていたのですか、涼宮さんが事故に遭ったというのに。もっと涼宮さんの恋人であるという自覚を持ってください」
古泉の言葉の節々から非難めいたものが感じられる。
「ああ、ちょっと朝比奈さんのことでな」
「朝比奈さん? それはいったい誰ですか? まさか浮気をしているわけではないですよね?」
ああそうか、朝比奈さんの記憶はもうこの時間平面からは消失してしまったのだったな。
「後で説明するよ、話せば長くなるからな」
「待ってください!」
古泉は、適当にあしらおうとした俺の片腕を掴んで、俺がハルヒのもとに行くのを静止した。
「涼宮さんの所に行く前に詳しく話してください。あなたがどれだけ自覚しているかわかりませんが、あなたの一挙手一投足に世界の命運がかかっているのですよ」
「朝比奈みくるはわたし達と同じSOS団の一員であったと思われる女性のこと。おそらく時空を超えて未来より派遣されていたと推測される」
不意に横から声がしたため、俺達が声のした方向を振り向くと、長門がゆっくりと階段を下りてくる姿が目に映った。古泉は、俺の片腕を掴んでいた手を放し、長門に事情の説明を求める。
「つまり、涼宮さんが『未来人がいて欲しい』と願ったために、この世界に呼ばれた未来人ということですか」
「そう」
「な、なぜ、お前はそれを知っているんだ。この世界から朝比奈さんの情報は消失したはずじゃないのか」
俺が当然の疑問を長門にぶつけると、長門は少し悲しそうな顔をして俺のほうを向いた。
「確かに朝比奈みくるの情報は消失してしまったが、周囲の情報から、朝比奈みくるという人物が我々の仲間としてSOS団に存在していた、ということを推測することは可能。しかし……」
長門は、珍しく言葉を少しつまらせた後、さらにこう続けた。
「しかし、情報統合思念体が推測できるのは朝比奈みくるという人物がいたという事実だけ。朝比奈みくるがわたし達にとってどれだけ大切な仲間であったかということは情報統合思念体にもわからない。
でも、あなたは朝比奈みくるのことを覚えている。そして、あなたの心の底にある深い悲しみが、わたし達にとって、朝比奈みくるがとても大切な仲間であったことを教えてくれる。
許して欲しい。朝倉涼子の件はわたしの不手際。二度とこんな失態は犯さない。わたしは悲しそうなあなたの姿を見るのが辛い。あなたにはまだわたしや古泉一樹、涼宮ハルヒがいる。
だから……この世界に絶望しないで欲しい……」
長門は……泣いていた。長門が、ヒューマノイドインターフェイスが涙を流す。そんなことがあるとは思いもしなかった。
だが、目の前で長門は涙を流し、俺達にその悲しみを訴えていた。そんな現実を目の当たりにして、俺だけでなく古泉すら驚愕の表情で長門を眺めていた。
だが、この後古泉の言い放ったセリフは俺の感情を逆撫でするものだった。
「おおまかな事情はわかりました。詳細は後でゆっくり伺います。とりあえずいまは涼宮さんの所に行ってもらえませんか。彼女はあなたが来るのを待ってるのですから」
「古泉!!」
俺はこの言葉を聞くや否や、古泉の胸倉を掴みあげて頬を拳でぶん殴った。倒れこんだ古泉と俺の間に長門が割り込み、古泉を睨みつける。
「古泉一樹! あなたには失望した。わたし達はかけがえのない仲間ではなかったのか。あなたの今の言動はわたし達を涼宮ハルヒの駒程度にしか考えていない発言。
もしそうであれば、あなたは、わたしや彼が朝比奈みくると同じ状況に陥っても、簡単に見殺しにする。あなたにとって仲間とはその程度のものなのか」
長門は怒っていた。だがその怒りは、生徒会室や九曜周防との対峙のときに見せたような怒りではなく、失望もしくは悲しみを伴ったような怒りだった。
古泉は、そんな長門の怒りに気づいているのかどうかわからないような様子で、ズボンを手で払いながらゆっくりと立ち上がり、少し悲しげな顔で俺と長門を交互に見つめた。
「……いまから……僕が言うことは……ただの独り言です」
少し躊躇いがちにそう前置きをしながら、古泉は俺達に背を向ける。
「僕は……あなたが涼宮さんの鍵に選ばれたとき……あなたに嫉妬しました」
今度は古泉に驚かされる番だった。俺だけでなく長門ですら古泉の発言には驚いているようだった。まさか古泉がそんな感情をハルヒに持っていたなんて……
古泉の胸のうちを聞いて、俺も長門も言葉を発せられないでいた。
古泉はいままでどんな気持ちで俺とハルヒのお膳立てをしてきたのだろう。自分の好きな女性が他の誰かとつきあうのをどんな気持ちで手助けしてきたのだろう。
気まずい雰囲気が漂う中、俺達の間にあった沈黙を破ったのは古泉だった。
「205号室です。行ってあげてください。涼宮さんはあなたが来ることだけを……待っているのですから」
スマン、という言葉が喉元まで出かけたが、なんとかその言葉を飲み込んだ。ここで謝れば、さらに古泉を傷つけることになるからだ。
古泉がどんな顔をしていたかは、背を向けていたため、わからなかった。ただ、背中が小刻みに震え泣いているように感じた。
二歩、三歩、後退りをしてから、俺はその場から逃げ出すように、階段を駆け上がった。
 
 

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