古泉の独り語りは終わった。最後に大仰にお辞儀までしてみせた。
何が『心残り』のないように、だ。
俺の『心残り』はもう、別世界に引っ込んでるんだよ。
「さて、僕はもう行きます。たとえ世界が終わるにしても、
僕には『機関』からの制裁が待っています」
それから、逃げるってのか?
「いいえ。甘んじて受けるつもりですよ。何せ、僕の復讐は果たされたんですから。
それこそ『心残り』なんてありませんよ。
この清々しい気分を抱いたま死ねるなら幸せです。
さようなら、世界。
さようなら、皆さん。
さようなら」
狂気を秘めた笑い声とともに古泉はどこかへ去っていった。
何が『心残り』のないように、だ。
俺の『心残り』はもう、別世界に引っ込んでるんだよ。
「さて、僕はもう行きます。たとえ世界が終わるにしても、
僕には『機関』からの制裁が待っています」
それから、逃げるってのか?
「いいえ。甘んじて受けるつもりですよ。何せ、僕の復讐は果たされたんですから。
それこそ『心残り』なんてありませんよ。
この清々しい気分を抱いたま死ねるなら幸せです。
さようなら、世界。
さようなら、皆さん。
さようなら」
狂気を秘めた笑い声とともに古泉はどこかへ去っていった。
あいつのことは放っておこう。それより俺にはやらなければいけないことがある。
たとえ逆転が絶望的なゲームだって、諦めなければ可能性は残ってるんだ。
最後まで頼りっぱなしというのは気が引けるが、
「長門」
最後はこいつに頼むしかない。
ところが、振り向いた俺の目は嫌な光景が映った。
朝比奈さんが、薄れていた。
「朝比奈さん!?」
「キョン君、落ち着いて聞いてください。今この時間は未来の分岐点なんです。
世界が崩壊の方向に進んだから、私たちの時間平面も消え始めているんです」
「でも!」
俺は未来のあなたに会っています、と言おうと思ったがいえなかった。
「最後まで言わせてください。
大丈夫です。キョン君なら。
キョン君と涼宮さんなら。うまくやってくれます。
信じてるんじゃないんです。分かってるんです。
だから、『さようなら』だけ言ってお別れなんてしませんよ?
『また会いましょう』って言ってお別れです」
そう言うと朝比奈さんは消えてしまった。
たとえ逆転が絶望的なゲームだって、諦めなければ可能性は残ってるんだ。
最後まで頼りっぱなしというのは気が引けるが、
「長門」
最後はこいつに頼むしかない。
ところが、振り向いた俺の目は嫌な光景が映った。
朝比奈さんが、薄れていた。
「朝比奈さん!?」
「キョン君、落ち着いて聞いてください。今この時間は未来の分岐点なんです。
世界が崩壊の方向に進んだから、私たちの時間平面も消え始めているんです」
「でも!」
俺は未来のあなたに会っています、と言おうと思ったがいえなかった。
「最後まで言わせてください。
大丈夫です。キョン君なら。
キョン君と涼宮さんなら。うまくやってくれます。
信じてるんじゃないんです。分かってるんです。
だから、『さようなら』だけ言ってお別れなんてしませんよ?
『また会いましょう』って言ってお別れです」
そう言うと朝比奈さんは消えてしまった。
精神の安定を図るため、俺は長門に一つ質問をする。
「長門、俺は朝比奈さんの――何て言ったけな、そうだ――異時間同位体に会ってるぞ。
朝比奈さんがあそこまで成長するのは『規定事項』じゃないのか?」
長門は空を見上げて、首を振った。
「現在のこの時間は朝比奈みくるの言ったように未来の分岐点。
彼女たちは崩壊しなかった世界から来た」
「つまり、世界は崩壊の未来の方にハンドルを切っちまったわけだな」
そんなこと、認めてたまるか。ここが分岐点というならば
「そう。今からでも未来はかえられる。あなたの行動が、
世界をもう一つの未来につなげる可能性がある」
やってみせるさ。
「長門、俺は朝比奈さんの――何て言ったけな、そうだ――異時間同位体に会ってるぞ。
朝比奈さんがあそこまで成長するのは『規定事項』じゃないのか?」
長門は空を見上げて、首を振った。
「現在のこの時間は朝比奈みくるの言ったように未来の分岐点。
彼女たちは崩壊しなかった世界から来た」
「つまり、世界は崩壊の未来の方にハンドルを切っちまったわけだな」
そんなこと、認めてたまるか。ここが分岐点というならば
「そう。今からでも未来はかえられる。あなたの行動が、
世界をもう一つの未来につなげる可能性がある」
やってみせるさ。
「長門。俺を閉鎖空間に連れて行ってくれないか」
「分かった」
早口で呟く長門。突然目の前が暗くなる。
そして、長門の声が聞こえる。
「あなたは今閉鎖空間にいる。涼宮ハルヒは誰もいない世界を作った。
でも、あなただけはそこにいることが出来る。
あなたは鍵。閉じこもってしまった彼女を再び外に連れ出すための。
あなたに全て任せる。あなたになら任せられる」
その言い方に不穏な物を覚える。
「長門、お前は?」
「私はそこへ行けない。あなたをそこに送るのが私に出来る精一杯。
あたしはここに残ることになる。
残って、新世界の創造に巻き込まれて……消える。
さようなら。がんばって」
どういうことだ?
お別れ?
そんな、まさか……。
おい、長門!
「さようなら、また――」
そして俺の意識は途切れた。
「分かった」
早口で呟く長門。突然目の前が暗くなる。
そして、長門の声が聞こえる。
「あなたは今閉鎖空間にいる。涼宮ハルヒは誰もいない世界を作った。
でも、あなただけはそこにいることが出来る。
あなたは鍵。閉じこもってしまった彼女を再び外に連れ出すための。
あなたに全て任せる。あなたになら任せられる」
その言い方に不穏な物を覚える。
「長門、お前は?」
「私はそこへ行けない。あなたをそこに送るのが私に出来る精一杯。
あたしはここに残ることになる。
残って、新世界の創造に巻き込まれて……消える。
さようなら。がんばって」
どういうことだ?
お別れ?
そんな、まさか……。
おい、長門!
「さようなら、また――」
そして俺の意識は途切れた。