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ハルヒと親父 @ wiki
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ハルヒと親父 @ wiki

ヰタ・セクスアリス/雨宿りのつづき

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haruhioyaji

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 「低気圧が近づくと発情する」というハルヒの理論には、納得できないところがある。
 たとえば雨の日、大抵の人間がそうかもしれないが、俺の体はいよいよ脱力と倦怠の極みに達し、頭脳は小停止とフリーズを繰り返し、気分にいたってはブルー一色の憂鬱に沈み込むだろう------もし、涼宮ハルヒという存在がこの世になければ。そして、よりにもよって俺の席の後ろにいなければ、確実にそうだっただろう。
 精神状態に作用する薬物には、大まかに分けて、気分や精神状態を高揚・興奮させるいわゆるアッパー系と、逆にけだるい気分を提供するダウナー系がある。覚せい剤は、その名のとおりアッパー系であり、身近なところではタバコに含まれるニコチンなどがこの仲間だ。ダウナー系には、悪名高いヘロインからアルコール、アヘン、シンナーなんかもこっちに入る。
 「阿片は余を裏切らないが、余を女たちに対して裏切り者にさせる」と書いたのは、『 阿片ー或る解毒治療の日記』を書いたジャン・コクトーだったか、それとも『 阿片常用者の告白』 (なんと続編も含めて岩波文庫に入ってる)を記したド・クインシーだったか。確かめるには長門にでも聞くのが手っ取り早いが、とにかくダウナー系の阿片吸引は、男のイチモツが立たなくなる、という副作用がある。これは深酒をした時にみられるのと同じものだが、いや、どっちも経験談じゃないぞ、少しいかがわしい連中から仕入れた耳学問だ。つまるところ、多くの人にダウナー系に働く低気圧や雨が、いかにして性欲に結びつくのか、どっちかっていうと逆じゃないか、というのが、第一の疑問だ。
 もうひとつ納得がいかない点は、こんな日はきまって、あいつの100ワットの笑顔が一瞬だって拝めないことだ。確かにハルヒは黙っていれば完全無欠の美少女であり、それが憂いを身にまとって濡れた服で現れた日には、おまえ未成年のくせに18禁だぞ、と叫びたくなるような妖艶さというか、何とも言えない吸引力を放ち出す。こんな時のあいつを他の男にみせる気にならない俺は、単なるスケベか、それとも、これが嫉妬って奴か?少なくとも、俺の「ヤバいこと察知センサー」が(いや、そういう意味じゃなくて)びんびん反応するのもまた、俺が俺たちをこんな場所に運んできた何十ある言い訳のひとつだ。

 「キョン、あんた、シャワーは?」
「あ、ああ。おまえは?」
「先に浴びたわ。あんたこそ風邪引くわよ」
促されるまま浴室の中へ。といっても、ここの浴室は4面全部が文字通りガラス張りで、光も音も筒抜けなんだが。ハルヒのやつ、でかいタオルを体にまきつけたまま、ビジネス・ホテルでは有料チャンネルでやってるような和製ポルノを見てやがる。いや、「上の空」とは正に今のあいつのためにあるような言葉で、正確に言い直せば、顔と目をそちらに向けているだけで心はお留守だ。それなりに扇情的な映像と音声は、ハルヒを通り抜けて、どこかの壁にぶち当たって四散する。男子高校生なれば、それぞれに創意工夫をこらして、結局間抜けな隠し場所に一応は納めておこうとする程度には人気女優なんだがな、いま主演しているお姉さんは。
 今のハルヒは、他人のセックスにまるで関心がないらしい。変と言えば、俺も変だ。今日に限って、気付かなくてすむようなことを、何故こう次々と気付いてしまうんだ? 今日は天中殺か、人生最大のハズレくじの日か? 世界で一番だと信じて疑わない女と、そういうことをする場所に来たその日に限って、何なんだっていうんだ、俺?

 以前、あの忌々しい古泉は「心の方は僕の専門ですが、行動についてはあなたの方が」うんぬんと抜かしてやがったな、確か。ってことは何か? あいつは安楽椅子にふんぞり返ってる精神分析家で、俺の役回りは自分の体を張って駆けずりまわらなきゃならない行動療法家ってことか?

 「なに、見てるんだ、ハルヒ?」
「え? ……ああ、たわいもないエロビデオよ。退屈しのぎにもならないわ」
 そうかい、じゃあ今のおまえさんは、退屈って訳だ。やれやれ。これは厄日決定だぞ。
「ハルヒ、おまえ、変だぞ」
「今に始まったことじゃないでしょ。ま、あんたほどじゃないけど」
「そうか。じゃあ、お言葉に甘えて、エロビデオ以上にお前が興味がないはずの変な話をしてやる。第1話は、電気ショックから逃げ続ける哀れなネズミ君の話だ。 ふたつのカゴをあわせたものに、主人公のネズミは入れられ、床の電線から電気ショックが与えられる。ネズミは当然パニック起こしてカゴの中を駆け回るが、何度目かの電気ショックのときに、つながってるとなりのカゴへ移動すれば電気ショックを回避できることに気付く。それ以来、電気ショックがある度に、ネズミは隣のカゴへと逃げ込む。これを繰り返して行くと、電流をどれだけ小さくしても、それどころか電流がゼロでもスイッチが入る音だけで、ネズミは隣のカゴへと逃げ込むようになったってことだ」
「へえ、そう」
「もうひとつ、お前には、なおさら興味のわかないだろう人間の話だ。そいつは何かの折りに、満腹感を感じると不安が収まることに気付いた。それ以来、不安なことが頭の中をよぎると、何か口に放り込むようになった。人間の感情って奴は、一室しかなくて、同時に異なる感情が両立できないようになってるらしい。たとえば不安と満腹感やリラックス感や怒り、それに性感……」
「つまり、あんたは、あたしがそのネズミやデブと同じだと言いたい訳ね?」
「よく分かったなあ。そいつは最初は鶏ガラみたいにガリガリにやせていたが、不安の度に食べ続けることで、とんでもなく太っていった。満腹感の効果は麻薬と同じでな、使えば使うほど効果が薄れていくんだ。違う角度から言うとこういうことだ。不安から満腹感へと逃げるたびに、不安の方は大きくなる。隣のカゴに逃げたネズミの恐怖感が増して行ったようにな」
「あんたは、不安か憂鬱にかられたあたしが、それから逃げるたびにあんたと寝ると思ってるんだ? あんたをダシにしてるって。 じゃあ、あんたは何? そんなあたしになんで付き合って、のこのここんなところまで来てるの? あたしのカラダが目的!?」
 ほらみろ、やっぱり厄日だ。ある程度の修羅場は覚悟したさ。だがこっちにだって感情があるし、なけなしのプライドだってある。ハルヒはそんなことは百も承知で反撃してくる。だから頭のいい奴はめんどくさい。ったく、こっちだってな、相打ち覚悟なんだぞ。いや、むしろ自爆狙いか?
「うぬぼれんな! おまえなんか、人よりちょっと、かなり顔がきれいで、人がうらやむ程度にはスタイルがよくて、あとは根がスケベで器用で研究熱心なだけじゃねえか!? そんなもの全部なくてもな、俺はお前にゾッコンだ、首ったけなんだ、わかったか、バカハルヒ!!」
「あんた、何言ってんの? 意味がわからない」
「俺だってわからんのに、お前に分かってたまるか!? いいか、ハルヒ。今さっき俺が言ったようなことくらいな、お前はとっくに調べて知ってんだろ? それで余計に不安をこじらせて、低気圧説なんてをぶち上げて、わざわざ気分の乗らない雨の日しか、しないようにしてるんだろ? 俺が怒ってるのはな、お前が俺にまでかっこいい涼宮ハルヒでいようとすることだ。不安なら不安がれよ。寄りかかったら俺ごと倒れそうでもな、寄りかかって倒れたら、それから考えればいい。今度こそ、二人でだ! 一回しか言わないから、よく聞け。 お前の天にものぼるような気持ちのいいカラダが抱けなくたってな、性欲持て余して、鼻血吹いて、性犯罪に走るだけだが、お前の笑顔が見れないなら、俺は死んじまうぞ!!」

 ハルヒはもちろん、あきれてものも言えないという顔になったが、それでもそっぽを向いて、例のアヒル口でこう言った。
「……ったく、あんたがエロキョン以上に始末に負えないアホキョンだってことを忘れてるなんてね、確かにあたしもどうかしてたわよ! でも見損なわないで! このあたしが、あんたに性犯罪なんかさせる訳がないでしょ、バカキョン!! さあ、あんたの性欲なんて一滴残らずあたしが搾り取ってあげるから感謝しなさい! 言い訳は聞かないわ。あたしが毎日、うれしくて楽しくて、たとえどんなに不安になったって、あんたがあたしをちゃんと『ここ』まで連れ戻しにくるって、あんたはタンカを切ったんだからね! バカキョンのアホキョンには手に余るだろうけど、あんたの足りない分は、その、あんたの恋女房が手を貸してあげなくもないわよ。……とにかく!、さっさと、ありったけの栄養ドリンク飲んで、パンツを脱ぎなさい!!」















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