ハルヒと親父 @ wiki

彼を知る彼女達の対話

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haruhioyaji

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 「あんたは、ぜんぜん変わらないわね、有希」
「あなたも、それほど変わらない」
「変わるわよ。もう80超えたんだもの。あいつを看取って、もう2年よ。ようやくなれてきたわ。あんたにも、いろいろ心配かけたわね」
「かまわない。……あなたは変わった。しかし、少しずつだが、以前のあなたに戻ってきている」
「そうかもね。あたしたち15の時に会ったのよ。あいつとも65年よ! まさか、こんなに長く一緒に居るとは思わなかったわ。……ずっと、一緒に居られる、ってどこかで信じてた。ううん、無理だと分かっていても、でもそう願ってた。……そういう意味じゃ、ほんと変わらないわね。夢は夢でしかないと知ってるのに、夢みたいなことばかり追いかけてた。あんたたちにも、いろいろ付き合わせたわね」
「付き合ったのではない。私は私の理由でそこにいた。そして……楽しかった」
「あ、ありがと、有希。……もう、いやね、なに湿っぽい話してるんだろ。ひさしぶりに有希に会ったっていうのに」
「それに、あなたは夢をかなえたはず」
「ええ、かなえたわ。これだけは絶対譲れないってやつを。だから、あたしは幸せだったし、……だから今も幸せ。素直にさびしいと認められるくらいに」
「……よかった」
「……もう、あんた以外に聞く人もいないから、話しときたいことがあるんだけど、聞いてくれる?」
「わかった」
「いつだったか、それが現実のことか、夢の中のことか、それもあやふやなくらい昔のことよ、あいつがあたしに変なことを言ったの。あたしに力があるって。願うことすべてを実現できるような、とんでもないやつがね。もちろん、一笑に伏したわ。『そんなものがあるなら、あんつはそのくだらないおしゃべりを止めて、あたしを抱きすくめるなりしてるはずよ』ってね。思った通りの言葉がそのまま口から出て、後の祭り。なんか、変てこなプロポーズみたいになっちゃって、たしかに抱きすくめられたけど。肝心の話も、なんで、あいつがそんな話をしたのかも、結局分からずじまいよ。……ずっと忘れてたんだけどね」
「……もしも、その力があなたに備わっていたなら、彼の死を回避した?」
「いいえ、しないわ。あいつはそんなこと、これっぽっちも望んでなかったし、あたしも考えなかった。あのバカ、ターミナル・シロップさえ拒否したのよ。死ぬまで目を閉じたくない、おまえの顔を見ていたいから……って」
「……」
「有希、もう、行くの?」
「また来る」
「……子供たちが死んだとき、あたしが倒れたとき、あいつが死にかけたとき、あたしたちが何か大変なことになると、決まって《あんたたち》が来てくれた。あんたは何代目の有希? ううん、ほんとは有希は15のときに会ったあの有希ね。どうして歳を取らないのかわからないけど、あんたは来てくれて、あたしたちと一緒に居てくれたわ。そして何度もあたしたちを助けてくれた。いつも、ありがとね。みんなの分も、あいつの分も、お礼を言わなきゃ」
「……」
「ん、なあに、有希?」
「…」
「あの頃は、あいつの方があんたの表情とかしぐさとか、とにかく細かく見てたけど、これだけの長いつきあいよ。あたしだって、あいつの次ぐらいには、あんたのことわかるの。言い淀むなんてらしくないわ。何でも聞いてあげるから、言ってみなさい!」
「次は……《迎え》に来る」
「そう。……そんなに先じゃないのね?」
「(こくん)」
「あいつに、また、会えるかしら?」
「……きっと、会える」
「有希が、そう言うなら、信じるわ」
「それで、わたしの役目も終わる」
「……じゃあ、向こうでも、あたしたちのところに来なさい! あいつと二人も楽しいけど、楽しすぎてまたケンカばかりすることになるわ」
「わかった」
「約束よ、有希」
「約束する」
「またね、有希」
「また……三人で」










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