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『ソレ』は自分の社に戻って来た
もはや祭る者もいず、荒廃への道を辿り続けた社は錆びつき、神格を思わせる物は何1つなかった
「どうした? 手ぶらじゃないか?」
「遂に赤蛇様も焼きが回ったと見得る!」
「ケケケ! 『忘れ神』だ! 『忘れ神』になるぞっ!」
森の住民達がからかいの声を挙げる
≪三枚目共は引っ込んでな 1日猶予をやっただけだ≫
『ソレ』は一睨みすると社の中で蜷局を巻いた
≪………アタイだって分かってるよ…≫
『ソレ』は小さく声を発し眠りに落ちた
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……
…
次の日、その地を大雨が襲った
≪…雨か≫
寝起きの『ソレ』は憂鬱そうな声を出し、少し首を伸ばし外の様子を伺う
…と巨大な猪が雨の中こちらを見ていることに気付いた
≪………南の森の主だね 何の用だい?≫
『ソレ』はその猪に向かって質問を投げた
≪赤蛇よ 汝は昨日手ぶらで戻ったらしいな≫
猪は答える
≪だからなんだい 今日はそうはいかないよ≫
≪…汝も気付いているんだろ? もう祭り人を失った汝が如何に延命しようと終わりは来ると…≫
≪…ッ! 牡丹如きにアタイの何が分かるって言うんだい!!≫
≪分かるさ 儂も今日儂の山を終わらせて来た≫
≪………≫
双方黙り込んだ
≪忘れられまいとしているようだが、それは汝の望んだ形ではあるまい≫
≪…黙って≫
≪知っておるぞ 汝は崇りとは名ばかりの66日と6時間の懺悔と恐怖を与え自らの存在を忘却させまいとしているだけだ≫
≪…黙れ≫
≪現に汝があの一族を崇り殺したことなどあるまい? 何れ屋敷に戻してやるだろ?≫
≪…黙れって言ってるんだよ!!≫
≪恐怖では人の心は得れないぞ≫
森が哭いた
≪…汝は人間が好きだったからな≫
その言葉を聞くと『ソレ』は唯の猪の横を抜けた
≪………汝にはもう何も出来んよ 汝はまた人の眼を視てしまった≫
唯の猪の最後の言葉を背にして『ソレ』は雨の中、屋敷を目指した
最終更新:2013年07月25日 05:20