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魔獣」(2014/05/20 (火) 21:53:41) の最新版変更点

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*魔獣 ◆LuuKRM2PEg 「……これでいいですね」 「へへっ……悪いな、沖」 「いえ、困った時はお互い様ですよ」  沖一也は志葉屋敷の一室にて、一文字隼人の身体に包帯を巻きながら穏やかな笑顔を向ける。  先程暗黒騎士キバと名乗った重厚な鎧を纏った男によって負わされた傷は決して浅くはないが、処置をすれば何とかなるかもしれない。幸いにもこの屋敷には、その為の道具がいくつかあった。  沖自身は知らないが、この屋敷は侍戦隊シンケンジャーが外道衆から人々を守る為の拠点とも言える。そこには彼らを支える黒子達が如何なる事態にも対処できるように、あらゆる備えを用意していた。  当然、医療器具もある程度は充実している。 「よし……これなら何とかして戦えるな」  そして出来る限りの処置を終えた頃、一文字は立ち上がって右手で胸を軽く撫でる。彼は力強い笑みを浮かべているが、沖は決して安堵することは出来なかった。 「待ってください、これはあくまでも応急処置なんですから無理をしてはいけませんって」 「馬鹿野朗、今は一刻を争う緊急事態なんだ。これくらいの傷を耐えなくてどうする」 「それは分かっています。でもさっき戦ったあいつみたいな敵がまだたくさんいるかもしれません」 「そいつらを手っ取り早く倒せばいいだけの話だろうが」 「そういう問題じゃないでしょう!」  一文字は明らかに強がっているが、無理をしてはすぐに傷口が開く恐れがある。それが沖にはどうしても不安だった。  確かに仮面ライダーは多少の傷を負っていたとしても、人々を守る為ならば戦わなければならない。一文字の言う事は正しかった。 「お前、俺の事を見くびってるのか?」 「そうじゃありません。ただ、あなたの怪我を無視するわけにはいかないだけです」 「おいおい、俺がどれだけの戦いを乗り越えてきたのか知らないって訳じゃないよな?」  頭を乱暴に掻きながら、一文字は呆れたような目で沖を見つめる。 「……まあいい、お前に言っておくことがある」 「言っておくこと?」 「ついてこい」  思わず怪訝な表情を浮かべる沖に背を向けて、一文字はすぐ近くにあった戸を横に引いて部屋から出た。  沖はまだ無理をしてはいけないと引きとめようとするが、その為の言葉は出なかった。今の一文字を休ませようとしても、聞く耳など持たない事を知っている。  一文字に言われるまま木造の廊下を歩き、開かれた扉から外に出た。冷たい夜風が吹き付けてくるも、宇宙進出の為に改造を施したこの身体にとっては微風に過ぎない。  やがて志葉屋敷の大きな壁を伝って歩いた先には、二台のバイクがある。その中の一つは、沖自身もよく知る最初の仮面ライダーが愛用していた、サイクロン号だった。 「これはサイクロン号じゃないですか!」 「あのキバって野朗に遭遇する直前に見つけたんだ。しかも幸運にも、鍵まで付いてやがる」 「そうですか……」 「そこで沖、今からこいつに乗って二手に分かれて行動するぞ。お前はサイクロン号に乗って東に向かえ」 「えっ?」  いきなり出てきた一文字の言葉に、沖はぽかんと力なく口を開けてしまう。しかしそれはほんの一瞬で、すぐに目を見開いた。 「それって、俺と一文字さんで別行動をしろって事ですか!?」 「他に何がある」 「駄目です、あなたを一人にするわけにはいきません! ここで下手に別行動をするなんて危険すぎます!」 沖は必死に抗議する。 何が起こるか分からないこの状況で単独行動をしては危険極まりないし、何よりもせっかく再会した先輩と別れるなんて出来なかった。 「おいお前、何か勘違いしてないか?」  しかしそんな沖の心配など余所に、一文字は軽い溜息を吐く。 「俺達仮面ライダーはショッカーやドグマ、それにBADANのような悪の組織から人間を守るのが使命だろ」 「それは分かってます!」 「だったら、何故俺だけにこだわる? お前も仮面ライダーなら、優先するのは何だ? お前の拳や命は何の為にある? 言ってみろ」 「人の夢や……想いです。この力は、それを守る為に手に入れました」 「分かってるじゃねえか」  その答えに満足したのか、一文字は不敵な笑みを沖に向けてきた。 「俺を心配するのは勝手だが、何を優先させるべきかをしっかりと見極めろ。ここにはあの加頭っていけ好かない野郎の陰謀に巻き込まれた人達が、大勢いるだろうが」 「でも、だからって一文字さんを……」 「おいおい、こうしている間にも罪のない命が次々に犠牲になったらどうする? だったら、一緒に行くよりも別々に行動する方が効率も良いだろ? 本郷や結城や村雨と合流できるだろうし」  一文字の提案は理解することが出来ても、納得する事が沖には出来ない。  しかしここで反対しようとしても、一文字は何としてでも追っ払おうとするはず。何よりも、同行する事で進めない道で犠牲者が出てしまうのは、一文字が言うように避けなければいけなかった。 「……分かりました、確かに今は二手に分かれて行動した方が得策かもしれませんね」 「だろ?」 「ただし、一文字さんも決して無茶をしないでください。もしもあなたに何かあったら……」 「分かってるって……おっと、もう一つ忘れてた」 「今度は何ですか」  沖がその提案を受け入れた後、一文字は肩にかけたデイバッグに手を入れる。  その中から一枚の地図を取り出した一文字は、自分達が今いるであろう『B-02』の地点を左手で指した。 「俺達が今いるのはここだ……でだ、今日の18時までに島の反対側にある町で落ち合おうぜ。そこまでどう動くのかはお前の勝手だからな」 「わかりました、もし本郷さんや結城さんと出会えたらそう伝えておきます」 「頼んだぞ」  そう静かに語る一文字はいつもの頼もしさを感じさせる笑みを向けながら、右肩をポンと叩く。  ここまで言われてやらないわけにはいかない。一文字を一人にすることに後ろめたさを感じるが、これ以上何か言うのは決意を侮辱する事になってしまう。  沖はサイクロン号に跨ってキーを回し、勢いよくハンドルを回した。エンジン音が力強く唸りを鳴らす中、一文字の方に振り向く。 「一文字さん、どうかご無事でいてください」 「ああ、お前こそ」  そのやり取りを終えた後、沖は前を向いてバイクを走らせた。まさにサイクロンの名を示すかのように、竜巻を思わせるような勢いで。  このマシンを乗るからには、振り向くことも止まることも許されない。本来の持ち主である本郷猛は、サイクロン号に乗って悪の組織に立ち向かう風となったのだから。  その意志を継ぐ9番目の男である自分もまた、加頭に立ち向かう風にならなければならない。  自らにそう言い聞かせる沖の瞳は、穏やかでありながら強い決意が感じられた。 【1日目/黎明 B-3 道路】 【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]:健康 [装備]:不明 [道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3、サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS [思考] 基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す 0:東に向かい、殺し合いを止める為に仲間を探す 1:仮面ライダーとして人類を護る 2:先輩ライダーを捜す 3:鎧の男(バラゴ)は許さない。だが生存しているのか…? 4:仮面ライダーZXか… [備考] ※参戦時期は第1部最終話終了直後です ※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました ※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました ※18時までに市街地エリアに向かう予定です。 ※村エリアから東の道を進む予定です。(途中、どのルートを進むかは後続の書き手さんにお任せします) ◆ 「……さて、これからどうするか」  建物の影で座り込むバラゴは、仮面ライダー達との戦いで負ったダメージが癒えるのを感じると、静かに立ち上がる。その手には、ホラーの魂が封印された魔弾が握られていた。  二人の仮面ライダーとの戦いを経験し、これを撃ち込んで下僕として動くホラーにさせようと考えた。  だが、それを易々と許すような相手か? 答えは否だ。  冷静になって考えてみると、あのような異形の存在ならば銃声に気付いて回避行動を取ることも出来るはず。だとすると、下手に撃っては弾を無駄に消費するどころか返り討ちにあう恐れもあった。  しかしだからといって、実力で押さえつけてから魔弾を当てるのも難しい。正面から向かうなど論外だし、不意打ちだけで勝てるような半端者でもないだろう。  どうしたものかと、バラゴは考える。 「冴子さん、ようやく森を抜けましたね!」  しかしそんな彼の思考を打ち消すような大声が、突如として響き渡った。それを耳にしたバラゴは立ち上がり、足を少し進める。  見ると、一組の男女が歩いていた。男は騒いでいるのに対し、女は呆れたように溜息を吐いている。  名も知らない男は、この状況にも関わらずして『冴子さんを守る』などと大声で喚いていた。こいつはただの馬鹿と考えて良い。  逆に冴子と呼ばれている女の方は割と落ち着いた態度で、男の言葉を適当に流していた。どうやら、速水と言う男にはうんざりしているように見える。  見たところ、奴らはこの殺し合いに乗ってないようだったがそれはどうでもいい。あのような者達に魔弾を打ち込めさえすれば、仮面ライダー達を打破する戦力となる。  恐らくこの殺し合いに呼び込まれているからには、二人も何らかの力を持っているはずだ。魔戒騎士や仮面ライダーに及ぶかどうかは分からないが、無いよりはマシ。 「幸運だったな。お前達は魔界へと向かう切符を、一足先に手に入るのだから」  仮面ライダー二人を従えられないのは痛いが、背に腹は代えられなかった。奴らの片方を捨て駒にして、片方の仮面ライダーをホラーにすればいい。 そう思いながらバラゴは右手で握った拳銃に魔弾を装填。そのまま、引き金を引いた。 ◆  険しい山道で鬱蒼と生い茂った森を抜け出した園咲冴子に、夜空の光が降り注ぐ。しかし、ようやく不安定な道を抜け出したからと言って安心することは出来ない。  ここは殺し合いの場。ちょっとでも気を抜いたら、それが一瞬で死に繋がることになりかねない。  敬愛する井坂深紅朗と合流するのを目指す以上、そんな事があってはならなかった。 「冴子さん、ようやく森を抜けましたね!」  そしてもう一つ、冴子にとっての不安要素があった。森の中で遭遇した、速水克彦という男。  単独行動は避けねばならないと思って接触したが、馬鹿みたいに喚くので鬱陶しい事この上ない。  第一、大声を出した時点で誰かに見つかる可能性があった。それが利用できる奴ならまだいいが、もしも殺し合いに乗った狂人ならば見つかってしまう。出来るなら一刻も早く速水を切り捨てたいが、今は我慢しなければならなかった。 「そうね、ここに井坂先生や霧彦さんがいるといいけれど」 「そうですね……一刻も早く井坂先生のような正義の心を持つお方を見つけて、あの加頭という男の陰謀を食い止めなければ!」 「ええ……私も速水さんの言うとおりだと思うわ。こんな馬鹿げた戦い、早く止めさせないと」 「全くです! みんなが力を合わせて平和の為に戦う……それが一番ですから!」  喜色満面な速水の叫び声は冴子の耳に響く。あまりの喧しさに舌打ちしそうになるものの、彼女はそれを堪えた。  ここでこいつを切り捨ててもその場しのぎにしかならない。馬鹿と別れられるのは結構だが、その後は単独行動を強いられる。それにダークザイドという未知の存在に対する知識も今後必要になるかもしれない。  だから今は速水と同行するしかなかった。 「冴子さんを守る! そして井坂先生や霧彦さんとあなたを再会させたいと……俺は今、モーレツに思っている!」 「そ、そう……それは嬉しいわね」  しかしそうは言っても、やはり苛立ちが募ってしまう。  だがここで黙らせようとしても、言って聞くようなタイプとはとても思えなかった。もし五月蠅いのを指摘したら、今度はしつこいくらい謝ってくるだろう。それでは意味がない。  今は出来る限り速水の言葉を流すしかなかった。もしもこの先利用出来る奴と出会えたら、そいつに押しつければいい。  こんな奴と付き合うのはそれまでの辛抱だ。その後はこいつがどうなろうと知ったことではない。  生きようが死のうが、誰かを殺そうが誰かに殺されようが、どうでもよかった。人間に殺されようと怪物に殺されようとまるで興味が沸かない。  それこそ今、この場でドーパントのような怪物に殺されようとも構わなかった。もっとも、そんな事など起こっては困るが。 「あの男……一体何を考えているんだ!? 俺達をこんな訳の分からない戦いを強いて、一体何をしたいんだ!?」 (それはあなたの方でしょ……)  本当はそう突っ込みたかったが口に出来るわけがないので、心の底で毒を吐く。 (全く……何でよりにもよってこんな奴なのよ。最悪だわ……)  己の不運を嘆くことしか冴子には出来ない。  加頭という訳の分からない男によって殺し合いに放り込まれた挙げ句、頭のおかしい奴と行動する羽目になる。  これを最悪と言わず、なんと言えばいいのか。 (誰でもいいから、早くこいつを何とかしてよ……)  この男と別れられるならもう何だっていい。不可能なことは分かっているが、速水はもう耐えられなかった。  こんな男と一緒にいては命が幾つあっても足りないかもしれない。だから、何とかしたかった。  苛立ちのあまりに、冴子は叶うはずのない願いに縋ってしまいそうになる。  その直後、闇の中で一発の銃声が鳴り響いた。冴子はそれに一瞬で気付くも、次の瞬間には脇腹に強い衝撃が走り出す。  それを感じた頃には、冴子は悲鳴をあげる暇もなく地面に倒れた。大量の血液が流れだし、身体が寒くなる。  しかし不思議と痛みはなかった。自分が撃たれたことは一瞬で気付いたはずなのにまるで痛くない。  その代わりにたった一つだけ妙な感覚が生まれていた。自分の中にどす黒い何かが生まれ、それが身体の中に広がっていく。  自分の身体が自分のものでなくなっていくような気がして、冴子は吐き気を感じた。しかしそれはほんの数秒だけで、次の瞬間には彼女の視界は漆黒に満ちる。  それは、人間としての園咲冴子が終わりを告げる合図だったが、彼女がそれに気づくことは永久にない。  何故なら、彼女の意識は魔界に生きるホラーに食い尽くされてしまったのだから。 ◆ 「冴子さん、冴子さんっ! しっかりしてください!」  速水克彦は突然倒れた園咲冴子の身体を必死に揺さぶるが、彼女は死んだように反応しない。  彼女の左脇腹には、まるで銃で撃たれたような穴が開いている。それが何を意味するのかなんて考えるまでもないが、速水は認めることなど出来ない。  守るべき人であるはずの園咲冴子が撃たれたという事実を。 「冴子さん! 冴子さん……ッ!」  速水は呼びかけるが返事は何も帰ってこない。  冴子の身体が次第に冷たくなっていくのを感じて、彼の中で後悔が生まれる。人々の平和を守る戦士と自負していたのに、たった一人の女性すらも守ることが出来なかった。  その自責の念は次第に、彼自身と下手人に対する怒りへと変わっていく。   「誰だ! 出てこい!」  激情のあまりに冴子の身体を手放して、速水は大声で叫びながら闇の中を見渡すが誰も見つからない。  しかし、影から女性を狙撃するような卑劣な輩は絶対に近くにいるはずだと、速水は思っていた。 「許さない……許さないぞ! 彼女を影から……」 『TABOO』  そんな彼の怒りを遮るかのように、野太い声が響き渡る。  速水は反射的に振り向いた途端、その身体が大きく持ち上げられた。次の瞬間には、首が大きく締め付けられていく。  突然現れた、異形の怪物によって。 「な、なんだ……お前は……! ダークザイド……かっ!?」  ギリギリと首が音を立てて軋む中、速水は相手を睨み付ける。  それは、速水が常日頃戦っている闇次元から襲来するダークザイドというモンスターを彷彿とさせる存在だった。  鬣は燃え上がる炎のように逆立っていて、赤い唇の両端から頬に糸が縫われたような跡がある。右肩に付いた頭蓋骨と、蓑虫のような下半身の先で光を放つ一つ目が薄気味悪さを演出させていた。   「冴子さんは、冴子さんはどうした……ッ!?」  呼吸が遮られる中で彼は冴子を探すが何処にも見あたらない。いるのは、肘と腹部に彩られた灰色以外、全身が赤と黒の二色を帯びた怪物だけ。  それが意味するのは、冴子のラームがこのダークザイドに食い尽くされてしまった事。速水はその可能性に思い当たったが、もう遅すぎた。  速水の首を絞める怪物、タブー・ドーパントは右手を真っ直ぐに向けるとそこから球状の炎が生まれる。  それに驚いて目を見張った瞬間、速水の世界は一瞬で灼熱に飲み込まれてしまった。 ◆  頭部が跡形もなく焼失した速水克彦の遺体を、タブー・ドーパントは無造作に投げ捨てる。  異形の下に潜む園咲冴子の表情は、死人のように冷たく固まっていた。まるで冴子自身が殺意を覚えていた、加頭順のように。  しかしそれを冴子が気付くことはなく、何よりも考えることもなかった。 「成る程、君はあのドーパントという奴だったのか」  そんなタブー・ドーパントの前に、辺りに広がる闇の中からバラゴが現れる。  バラゴが冴子に魔弾を撃ち込んだのは、男より女の方が利用価値がまだある為。人間の男は愚かにも、女の色気仕掛けに負けてしまう時があった。  しかし命中してから状況は変わる。何と、冴子が速水を殺す際に加頭順が見せ付けたガイアメモリを所持し、ドーパントに変身したのだ。  良い拾い物を得たと確信したバラゴは、闇の中でニヤリと笑う。これではまるで、運命が自分の勝利を願っているかのようだと思いながら。  奴らのデイバッグにある道具を確認したかったが、今は仮面ライダー達をホラーにする事が最優先だからそんな暇など無い。  これ以上こんな所で時間を浪費して逃げられるくらいなら、後回しにするしかなかった。  バラゴは気持ちが高ぶりつつある中、タブー・ドーパントに振り向く。 「村にいるはずの仮面ライダーを出来るだけ殺さないように消耗させろ。まあ抵抗するなら、殺しても構わないが」  バラゴがそう言い放つと、タブー・ドーパントは何も答えることなく宙に浮かんだ。  恐らく、これもドーパントが持つ能力の一つなのだろうと彼は思う。加頭はメモリの能力は極めて多彩と言っていたから、空が飛べたところで何らおかしくない。  夜空の元で飛び続けるタブー・ドーパントの後を、バラゴはゆっくりと歩いた。 ◆ 「……あの野郎、見つからねえな」  沖一也が去ってから数十分の時間が経った後、一文字隼人は志葉屋敷の周辺を歩いている。  沖が去った後、彼はこの付近にいるはずのがんがんじいもどき、暗黒騎士キバを探していた。いくらスーパーライダーダブルキックを叩き込んだとはいえ、まだ生きている可能性がある。  あれからすぐに爆死したのかもしれないが、そんな轟音は聞こえてこなかった。もしかしたらダメージが深くて死んだかもしれないが、楽観的に考えては痛い目を見る。  沖と共に探せば見つかる可能性が上がったかもしれないが、こんな事を二人でやっても無駄に時間を浪費する可能性があった。  だから一人で村を捜索したが、それらしい影は全く見あたらない。 「そろそろ行かないとやばいな……」  軽く舌打ちしながら、一文字は先程見つけたバイクの前に立つ。  彼自身は知らないが、それは科学警察研究所が未確認生命体と戦う仮面ライダークウガを支援するために開発した、ビートチェイサー2000と呼ばれるマシンだった。  このまま村に留まってキバを探していても、見つかるかどうか分からない。ならば今は一人でも多くの仲間を優先させなければならなかった。  一文字はビートチェイサー2000のハンドルに、手をかけようとする。 「――ッ!?」  しかしその直後、背後から突き刺さるような殺気を感じた。  反射的に横へ飛ぶと、一文字とビートチェイサーとの間に勢いよく炎が横切って、地面に衝突する。  爆音が響く中、彼は炎が飛んできた方向に振り向いた。視界の先には、一体の怪人――一文字が知らないタブー・ドーパントと呼ばれる怪人――が宙を漂っているのが見える。  メラメラと音を立てながら燃え上がる背後より熱が突き刺さる中、怪物の掌に火球が生成されていた。怪人はそれを投げつけてくるが、一文字は背後に跳躍して避ける。  そこから次々と火炎が放たれるが、どれも一文字は飛ぶことで回避し続けた。 「問答無用って訳か……」  辺り一帯が炎に包まれる中、一文字は呟く。  こいつは敵だ。BADANの手先か加頭が変身していたドーパントのどちらかは知らないが、こんな奴は一刻も早く倒さなければならない。  話し合いなど通用するタイプではないと瞬時に察した一文字は、いつものように変身の構えを取った。 「ライダアアァァァァァァァ……変身ッ!」  現れた怪人に鋭い眼光を向けながら、彼は跳躍する。すると、ベルトの中央に宿る風車が回転し、風のエネルギーによって身体が変化を始めた。  精悍な顔は瞳が赤い光を放つ仮面に覆われ、一瞬で黒いスーツに包まれた全身は緑色の装甲が生成され、首に巻かれた深紅のマフラーは風に棚引く。  一瞬で仮面ライダー二号への変身を果たした一文字隼人は宙を飛ぶ怪人に拳を振るって、その巨体を吹き飛ばした。敵は地面に叩き付けられるが、すぐに宙へ飛ぶ。  二号は大地に降り立つのと同時に、ライダーパンチを受けても平然と立ち上がる怪人を仮面の下から睨み付けた。 「てめえ……意外とタフじゃねえか」  先程のキバと違って腕に痺れは感じていないものの、相手はただの怪人ではない。力の二号の一撃を受けても、衰える気配が感じられなかった。  それどころか再び火球を作り出して、勢いよく投げつけてくる。スピードはかなりのものだが、充分に対応出来る範囲だった。  着弾しようとした直前、二号は左腕を横に振るって火球を弾き飛ばす。続くように灼熱は迫り来るが、二号はそれを反対の右手で砕いた。  その直後、彼は体勢を低くして疾走する。このまま戦いを長引かせても得策ではないし、何よりも相手が隠し球を持っている可能性があった。  それを出される前に、速効で叩き潰す!  風のように走り出す二号を目がけて怪人は怒濤の勢いで火球を発射する。しかし二号はそれら全ての間をかいくぐって、距離を詰めていった。 「トオオオオォォォォォォォォォ!」  二号は凄まじい咆吼と共に地面を強く蹴って、大きく跳躍する。一瞬で怪人が浮く高度を超えた彼は、宙で身体を一回転させた。  これまでに数え切れないほどの危機を乗り越える為に放った、必殺の蹴りを繰り出すために。 「ライダアアアァァァァァァァ!」  そして夜空を背に、二号は真正面に右足を伸ばしながら急降下した。その標的は、跳び上がった二号を見上げている怪人。  怪人はそんな二号を打ち落とそうと火球を放射するが、捉えるには速度があまりにも足りなくて全てが空振りに終わる。唯一当たろうとした炎も、右足に衝突したことで呆気なく崩壊した。  しかも、それが障害物となって二号の勢いが衰える事も全くない。 「キイィィィィィィィィィクッ!」  やがて二号のライダーキックは怪人の胸部に打ち込んで、怪人を背中から地面に叩きつけた。  土が砕ける轟音が響いて粉塵が舞い上がる中、二号はキックの反動で飛び上がった後に着地する。  ようやく仕留めたか?   二号は勝利を確信しそうになるが、それは瞬時に否定される。怪人が蹌踉めきながらも、宙を飛んだ為。  その身体には所々に傷が見えるものの、まだ動いている。しかし、そのスピードは先程とは違って明らかに鈍くなっていた。  本来のタブー・ドーパントならこの時点で既に死んでいたかもしれないが、今のタブー・ドーパントはバラゴの放った魔弾によってホラーの力を得たので、ある程度肉体強化がされている。  もっとも、それを二号が知ることはないが。 「ケッ、しぶとい野朗だ……ッ!?」  二号は怪人に悪態を吐こうとしたが、それは続かない。数メートル程離れた場所に、見覚えがある異形の姿を見つけた為。  虎を模した巨体に全身から生えた白い体毛、そして大きく開いた口から生えた巨大な大砲。  BADANが生み出したパーフェクトサイボーグの技術によって、その身体が人間の物ではなくなった元FBI捜査官、三影英介。またの名をタイガーロイド。 「お前は……!」 「まさかとは思ったが、本当に貴様がいるとはな……一文字隼人」  二号が三影の名を思わず口にしようとした瞬間、砲口が光を放つ。それを察知して二号は反射的に飛ぶと、轟音と共に凄まじい爆発が起こった。  一度までならず数度に渡って周囲の物が無差別に吹き飛び、一瞬で火の海と化す。  爆風によって二号は吹き飛ばされたが、空中で一回転をして体制を立て直しながら着地。そして、現れたタイガーロイドを睨みつける。 「チッ、外したか」 「やれやれ、こんな時に虎さんがやって来るとは……ついてないねぇ」 「その減らず口……耳障りだ。すぐに貴様を潰し、お仲間達もあの世に送ってやる」 「……やってみろよ!」  この時二号は沖と別行動を取った事を少しだけ後悔するが、今更言っても仕方が無いと自分に言い聞かせた。  今やるべきことは、三影をここで何としてでも倒すこと。それだけを考えればいい。  辺り一面が灼熱に包まれる中、飛蝗の異形は虎の異形と睨み合っていた。 ◆ 「ほう、新たな役者が現れるとは」  戦場から少し離れた場所より、バラゴは新たに現れた虎の怪人を見てほんの少しだけ目を見開く。  ドーパントとなった冴子に一文字隼人を消耗させて、その隙を見て魔弾を発射しようとしたが、事態は急変する。  突如村に現れたサングラスをかけた男は、仮面ライダーのように虎の怪人への変身を行った。そして口から出した大砲で辺りを無差別に吹き飛ばす。  恐らく、冴子は爆発に巻き込まれてガイアメモリごと跡形もなく吹き飛んだのだろうが、別にどうでもいい。ガイアメモリに代わる戦力が、目の前に二人もいるのだから。  あの銀色の仮面ライダーがいないのが気がかりだったが、ここにいない以上考えても仕方がない。恐らく別行動を取っただけだろう。  それよりも今は、燃え盛る炎の中で今にも戦いを行おうとしている怪物達の方が何よりも重要だった。 「まあ、精々勝手に消耗すればいいさ……」  ホラーをいとも容易く吹き飛ばす、魔戒騎士とはまた別の人知を超えた力を持つ存在達。もしも奴らが自分の意のままに動かす事が出来るのなら、便利な手駒が二つも得られる事になる。  幸いにもその手段は手元にあるが、事に及ぶとしても慎重に行かねばならなかった。下手に魔弾を打ってもその身体能力で回避された後に、反撃される可能性がある故に消耗を待たねばならない。  もっとも、もしも奴らがこちらに気付いて攻撃を仕掛けたりするのであれば、キバとなればいいだけの話だが。  火炎が燃え盛る中でバラゴは、怪物達が互いに潰し合うのを心待ちにしていた。 【1日目/黎明 B-2 志葉屋敷前】 ※志葉屋敷前にビートチェイサー2000@仮面ライダークウガが設置されています ※周囲の建物は壊滅しました(どの程度の規模かは、後続の書き手さんにお任せします) 【一文字隼人@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]:疲労(中)、胸部に斬痕、仮面ライダー二号に変身中 [装備]:不明 [道具]:支給品一式、姫矢の戦場写真@ウルトラマンネクサス、ランダム支給品0~2(確認済み) [思考] 基本:仮面ライダーとして正義を果たす 0:まずは三影英介を倒す 1:他の仮面ライダーを捜す 2:暗黒騎士キバを警戒(但しキバは永くないと推測) 3:もしも村雨が記憶を求めてゲームに乗ってるなら止める 4:元の世界に帰ったらバダンを叩き潰す 5:この場において仮面ライダーの力は通用するのか……? 6:バイク(ビートチェイサー2000)に乗って南から市街地に向かう [備考] ※参戦時期は第3部以降。 ※この場に参加している人物の多くが特殊な能力な持主だと推測しています。 ※加頭やドーパントに新たな悪の組織の予感を感じています(今のところ、バダンとは別と考えている)。 ※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました ※18時までに市街地エリアに向かう予定です。 ※村エリアから南の道を進む予定です。(途中、どのルートを進むかは後続の書き手さんにお任せします) 【三影英介@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]:疲労(小)、タイガーロイドに変身中 [装備]:無し [道具]:支給品一式、ランダム支給品0~3 [思考] 基本:殺し合いに勝ち残り、加頭の命を断つ。 0:まずは一文字隼人を抹殺する 1:殺し合いを止めようなどと考える『偽善者』の抹殺 2:邪魔をする者には容赦しない [備考]  ※参戦時期は仮面ライダーSPIRITS第7巻、村雨との一騎打ちの直前からです  ※タイガーロイド変身時は、全身から銃口・砲身を出現させて射撃を行うに当たり、体力を消耗するようになっています。   疲労の度合いは、放つ射撃の威力・大きさに比例して大きくなります。 また、破壊力に関しても通常時と比較してそれなりに落とされています。 【バラゴ@牙狼─GARO─】 [状態]:胸部に強打の痛み、顔は本来の十字傷の姿に [装備]:ペンダント、魔戒剣、魔弾(1発)+ボーチャードピストル(0/8)@牙狼 [道具]:支給品一式×3、ランダム支給品0~2、冴子のランダム支給品1~3、顔を変容させる秘薬?、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー、紀州特産の梅干し@超光戦士シャンゼリオン、ムカデのキーホルダー@超光戦士シャンゼリオン、『ハートキャッチプリキュア!』の漫画@ハートキャッチプリキュア! [思考] 基本:参加者全員と加頭を殺害し、元の世界で目的を遂行する 0:あの二人の戦いをまずは監視する 1:仮面ライダーに魔弾を打ち込みホラーにする 2:今のところ顔を変容させる予定はない 3:仮面ライダーと怪人に隙が出来るのを待つ [備考] ※参戦時期は第23話でカオルに正体を明かす前。 ※顔を変容させる秘薬を所持しているかは不明。 ※開始時の一件で一文字のことは認識しているので、本郷についても認識していると思われます。 ※冴子と速水の支給品はまだ確認していません。 【備考】 ※タブーメモリ&ガイアドライバー@仮面ライダーWは破壊されました。 &color(red){【速水克彦@超光戦士シャンゼリオン 死亡確認】} &color(red){【園咲冴子@仮面ライダーW 死亡確認】} &color(red){【残り60人】} *時系列順で読む Back:[[魔法、魔人、悪魔]]Next:[[波紋呼ぶ赤の森]] *投下順で読む Back:[[魔法、魔人、悪魔]]Next:[[戦いは始まる]] |Back:[[SPIRITSを伝えろ!]]|[[沖一也]]|Next:[[変身超人大戦・開幕]]| |Back:[[SPIRITSを伝えろ!]]|[[一文字隼人]]|Next:[[血染めのライダーパンチ]]| |Back:[[正義の価値]]|[[三影英介]]|Next:[[血染めのライダーパンチ]]| |Back:[[顔に十字を持つ者]]|[[バラゴ]]|Next:[[血染めのライダーパンチ]]| |Back:[[MY FRIEND]]|[[速水克彦]]|COLOR(RED):GAME OVER| |Back:[[MY FRIEND]]|[[園咲冴子]]|COLOR(RED):GAME OVER| ----
*魔獣 ◆LuuKRM2PEg 「……これでいいですね」 「へへっ……悪いな、沖」 「いえ、困った時はお互い様ですよ」  沖一也は志葉屋敷の一室にて、一文字隼人の身体に包帯を巻きながら穏やかな笑顔を向ける。  先程暗黒騎士キバと名乗った重厚な鎧を纏った男によって負わされた傷は決して浅くはないが、処置をすれば何とかなるかもしれない。幸いにもこの屋敷には、その為の道具がいくつかあった。  沖自身は知らないが、この屋敷は侍戦隊シンケンジャーが外道衆から人々を守る為の拠点とも言える。そこには彼らを支える黒子達が如何なる事態にも対処できるように、あらゆる備えを用意していた。  当然、医療器具もある程度は充実している。 「よし……これなら何とかして戦えるな」  そして出来る限りの処置を終えた頃、一文字は立ち上がって右手で胸を軽く撫でる。彼は力強い笑みを浮かべているが、沖は決して安堵することは出来なかった。 「待ってください、これはあくまでも応急処置なんですから無理をしてはいけませんって」 「馬鹿野朗、今は一刻を争う緊急事態なんだ。これくらいの傷を耐えなくてどうする」 「それは分かっています。でもさっき戦ったあいつみたいな敵がまだたくさんいるかもしれません」 「そいつらを手っ取り早く倒せばいいだけの話だろうが」 「そういう問題じゃないでしょう!」  一文字は明らかに強がっているが、無理をしてはすぐに傷口が開く恐れがある。それが沖にはどうしても不安だった。  確かに仮面ライダーは多少の傷を負っていたとしても、人々を守る為ならば戦わなければならない。一文字の言う事は正しかった。 「お前、俺の事を見くびってるのか?」 「そうじゃありません。ただ、あなたの怪我を無視するわけにはいかないだけです」 「おいおい、俺がどれだけの戦いを乗り越えてきたのか知らないって訳じゃないよな?」  頭を乱暴に掻きながら、一文字は呆れたような目で沖を見つめる。 「……まあいい、お前に言っておくことがある」 「言っておくこと?」 「ついてこい」  思わず怪訝な表情を浮かべる沖に背を向けて、一文字はすぐ近くにあった戸を横に引いて部屋から出た。  沖はまだ無理をしてはいけないと引きとめようとするが、その為の言葉は出なかった。今の一文字を休ませようとしても、聞く耳など持たない事を知っている。  一文字に言われるまま木造の廊下を歩き、開かれた扉から外に出た。冷たい夜風が吹き付けてくるも、宇宙進出の為に改造を施したこの身体にとっては微風に過ぎない。  やがて志葉屋敷の大きな壁を伝って歩いた先には、二台のバイクがある。その中の一つは、沖自身もよく知る最初の仮面ライダーが愛用していた、サイクロン号だった。 「これはサイクロン号じゃないですか!」 「あのキバって野朗に遭遇する直前に見つけたんだ。しかも幸運にも、鍵まで付いてやがる」 「そうですか……」 「そこで沖、今からこいつに乗って二手に分かれて行動するぞ。お前はサイクロン号に乗って東に向かえ」 「えっ?」  いきなり出てきた一文字の言葉に、沖はぽかんと力なく口を開けてしまう。しかしそれはほんの一瞬で、すぐに目を見開いた。 「それって、俺と一文字さんで別行動をしろって事ですか!?」 「他に何がある」 「駄目です、あなたを一人にするわけにはいきません! ここで下手に別行動をするなんて危険すぎます!」 沖は必死に抗議する。 何が起こるか分からないこの状況で単独行動をしては危険極まりないし、何よりもせっかく再会した先輩と別れるなんて出来なかった。 「おいお前、何か勘違いしてないか?」  しかしそんな沖の心配など余所に、一文字は軽い溜息を吐く。 「俺達仮面ライダーはショッカーやドグマ、それにBADANのような悪の組織から人間を守るのが使命だろ」 「それは分かってます!」 「だったら、何故俺だけにこだわる? お前も仮面ライダーなら、優先するのは何だ? お前の拳や命は何の為にある? 言ってみろ」 「人の夢や……想いです。この力は、それを守る為に手に入れました」 「分かってるじゃねえか」  その答えに満足したのか、一文字は不敵な笑みを沖に向けてきた。 「俺を心配するのは勝手だが、何を優先させるべきかをしっかりと見極めろ。ここにはあの加頭っていけ好かない野郎の陰謀に巻き込まれた人達が、大勢いるだろうが」 「でも、だからって一文字さんを……」 「おいおい、こうしている間にも罪のない命が次々に犠牲になったらどうする? だったら、一緒に行くよりも別々に行動する方が効率も良いだろ? 本郷や結城や村雨と合流できるだろうし」  一文字の提案は理解することが出来ても、納得する事が沖には出来ない。  しかしここで反対しようとしても、一文字は何としてでも追っ払おうとするはず。何よりも、同行する事で進めない道で犠牲者が出てしまうのは、一文字が言うように避けなければいけなかった。 「……分かりました、確かに今は二手に分かれて行動した方が得策かもしれませんね」 「だろ?」 「ただし、一文字さんも決して無茶をしないでください。もしもあなたに何かあったら……」 「分かってるって……おっと、もう一つ忘れてた」 「今度は何ですか」  沖がその提案を受け入れた後、一文字は肩にかけたデイバッグに手を入れる。  その中から一枚の地図を取り出した一文字は、自分達が今いるであろう『B-02』の地点を左手で指した。 「俺達が今いるのはここだ……でだ、今日の18時までに島の反対側にある町で落ち合おうぜ。そこまでどう動くのかはお前の勝手だからな」 「わかりました、もし本郷さんや結城さんと出会えたらそう伝えておきます」 「頼んだぞ」  そう静かに語る一文字はいつもの頼もしさを感じさせる笑みを向けながら、右肩をポンと叩く。  ここまで言われてやらないわけにはいかない。一文字を一人にすることに後ろめたさを感じるが、これ以上何か言うのは決意を侮辱する事になってしまう。  沖はサイクロン号に跨ってキーを回し、勢いよくハンドルを回した。エンジン音が力強く唸りを鳴らす中、一文字の方に振り向く。 「一文字さん、どうかご無事でいてください」 「ああ、お前こそ」  そのやり取りを終えた後、沖は前を向いてバイクを走らせた。まさにサイクロンの名を示すかのように、竜巻を思わせるような勢いで。  このマシンを乗るからには、振り向くことも止まることも許されない。本来の持ち主である本郷猛は、サイクロン号に乗って悪の組織に立ち向かう風となったのだから。  その意志を継ぐ9番目の男である自分もまた、加頭に立ち向かう風にならなければならない。  自らにそう言い聞かせる沖の瞳は、穏やかでありながら強い決意が感じられた。 【1日目/黎明 B-3 道路】 【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]:健康 [装備]:不明 [道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3、サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS [思考] 基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す 0:東に向かい、殺し合いを止める為に仲間を探す 1:仮面ライダーとして人類を護る 2:先輩ライダーを捜す 3:鎧の男(バラゴ)は許さない。だが生存しているのか…? 4:仮面ライダーZXか… [備考] ※参戦時期は第1部最終話終了直後です ※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました ※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました ※18時までに市街地エリアに向かう予定です。 ※村エリアから東の道を進む予定です。(途中、どのルートを進むかは後続の書き手さんにお任せします) ◆ 「……さて、これからどうするか」  建物の影で座り込むバラゴは、仮面ライダー達との戦いで負ったダメージが癒えるのを感じると、静かに立ち上がる。その手には、ホラーの魂が封印された魔弾が握られていた。  二人の仮面ライダーとの戦いを経験し、これを撃ち込んで下僕として動くホラーにさせようと考えた。  だが、それを易々と許すような相手か? 答えは否だ。  冷静になって考えてみると、あのような異形の存在ならば銃声に気付いて回避行動を取ることも出来るはず。だとすると、下手に撃っては弾を無駄に消費するどころか返り討ちにあう恐れもあった。  しかしだからといって、実力で押さえつけてから魔弾を当てるのも難しい。正面から向かうなど論外だし、不意打ちだけで勝てるような半端者でもないだろう。  どうしたものかと、バラゴは考える。 「冴子さん、ようやく森を抜けましたね!」  しかしそんな彼の思考を打ち消すような大声が、突如として響き渡った。それを耳にしたバラゴは立ち上がり、足を少し進める。  見ると、一組の男女が歩いていた。男は騒いでいるのに対し、女は呆れたように溜息を吐いている。  名も知らない男は、この状況にも関わらずして『冴子さんを守る』などと大声で喚いていた。こいつはただの馬鹿と考えて良い。  逆に冴子と呼ばれている女の方は割と落ち着いた態度で、男の言葉を適当に流していた。どうやら、速水と言う男にはうんざりしているように見える。  見たところ、奴らはこの殺し合いに乗ってないようだったがそれはどうでもいい。あのような者達に魔弾を打ち込めさえすれば、仮面ライダー達を打破する戦力となる。  恐らくこの殺し合いに呼び込まれているからには、二人も何らかの力を持っているはずだ。魔戒騎士や仮面ライダーに及ぶかどうかは分からないが、無いよりはマシ。 「幸運だったな。お前達は魔界へと向かう切符を、一足先に手に入るのだから」  仮面ライダー二人を従えられないのは痛いが、背に腹は代えられなかった。奴らの片方を捨て駒にして、片方の仮面ライダーをホラーにすればいい。 そう思いながらバラゴは右手で握った拳銃に魔弾を装填。そのまま、引き金を引いた。 ◆  険しい山道で鬱蒼と生い茂った森を抜け出した園咲冴子に、夜空の光が降り注ぐ。しかし、ようやく不安定な道を抜け出したからと言って安心することは出来ない。  ここは殺し合いの場。ちょっとでも気を抜いたら、それが一瞬で死に繋がることになりかねない。  敬愛する井坂深紅郎と合流するのを目指す以上、そんな事があってはならなかった。 「冴子さん、ようやく森を抜けましたね!」  そしてもう一つ、冴子にとっての不安要素があった。森の中で遭遇した、速水克彦という男。  単独行動は避けねばならないと思って接触したが、馬鹿みたいに喚くので鬱陶しい事この上ない。  第一、大声を出した時点で誰かに見つかる可能性があった。それが利用できる奴ならまだいいが、もしも殺し合いに乗った狂人ならば見つかってしまう。出来るなら一刻も早く速水を切り捨てたいが、今は我慢しなければならなかった。 「そうね、ここに井坂先生や霧彦さんがいるといいけれど」 「そうですね……一刻も早く井坂先生のような正義の心を持つお方を見つけて、あの加頭という男の陰謀を食い止めなければ!」 「ええ……私も速水さんの言うとおりだと思うわ。こんな馬鹿げた戦い、早く止めさせないと」 「全くです! みんなが力を合わせて平和の為に戦う……それが一番ですから!」  喜色満面な速水の叫び声は冴子の耳に響く。あまりの喧しさに舌打ちしそうになるものの、彼女はそれを堪えた。  ここでこいつを切り捨ててもその場しのぎにしかならない。馬鹿と別れられるのは結構だが、その後は単独行動を強いられる。それにダークザイドという未知の存在に対する知識も今後必要になるかもしれない。  だから今は速水と同行するしかなかった。 「冴子さんを守る! そして井坂先生や霧彦さんとあなたを再会させたいと……俺は今、モーレツに思っている!」 「そ、そう……それは嬉しいわね」  しかしそうは言っても、やはり苛立ちが募ってしまう。  だがここで黙らせようとしても、言って聞くようなタイプとはとても思えなかった。もし五月蠅いのを指摘したら、今度はしつこいくらい謝ってくるだろう。それでは意味がない。  今は出来る限り速水の言葉を流すしかなかった。もしもこの先利用出来る奴と出会えたら、そいつに押しつければいい。  こんな奴と付き合うのはそれまでの辛抱だ。その後はこいつがどうなろうと知ったことではない。  生きようが死のうが、誰かを殺そうが誰かに殺されようが、どうでもよかった。人間に殺されようと怪物に殺されようとまるで興味が沸かない。  それこそ今、この場でドーパントのような怪物に殺されようとも構わなかった。もっとも、そんな事など起こっては困るが。 「あの男……一体何を考えているんだ!? 俺達をこんな訳の分からない戦いを強いて、一体何をしたいんだ!?」 (それはあなたの方でしょ……)  本当はそう突っ込みたかったが口に出来るわけがないので、心の底で毒を吐く。 (全く……何でよりにもよってこんな奴なのよ。最悪だわ……)  己の不運を嘆くことしか冴子には出来ない。  加頭という訳の分からない男によって殺し合いに放り込まれた挙げ句、頭のおかしい奴と行動する羽目になる。  これを最悪と言わず、なんと言えばいいのか。 (誰でもいいから、早くこいつを何とかしてよ……)  この男と別れられるならもう何だっていい。不可能なことは分かっているが、速水はもう耐えられなかった。  こんな男と一緒にいては命が幾つあっても足りないかもしれない。だから、何とかしたかった。  苛立ちのあまりに、冴子は叶うはずのない願いに縋ってしまいそうになる。  その直後、闇の中で一発の銃声が鳴り響いた。冴子はそれに一瞬で気付くも、次の瞬間には脇腹に強い衝撃が走り出す。  それを感じた頃には、冴子は悲鳴をあげる暇もなく地面に倒れた。大量の血液が流れだし、身体が寒くなる。  しかし不思議と痛みはなかった。自分が撃たれたことは一瞬で気付いたはずなのにまるで痛くない。  その代わりにたった一つだけ妙な感覚が生まれていた。自分の中にどす黒い何かが生まれ、それが身体の中に広がっていく。  自分の身体が自分のものでなくなっていくような気がして、冴子は吐き気を感じた。しかしそれはほんの数秒だけで、次の瞬間には彼女の視界は漆黒に満ちる。  それは、人間としての園咲冴子が終わりを告げる合図だったが、彼女がそれに気づくことは永久にない。  何故なら、彼女の意識は魔界に生きるホラーに食い尽くされてしまったのだから。 ◆ 「冴子さん、冴子さんっ! しっかりしてください!」  速水克彦は突然倒れた園咲冴子の身体を必死に揺さぶるが、彼女は死んだように反応しない。  彼女の左脇腹には、まるで銃で撃たれたような穴が開いている。それが何を意味するのかなんて考えるまでもないが、速水は認めることなど出来ない。  守るべき人であるはずの園咲冴子が撃たれたという事実を。 「冴子さん! 冴子さん……ッ!」  速水は呼びかけるが返事は何も帰ってこない。  冴子の身体が次第に冷たくなっていくのを感じて、彼の中で後悔が生まれる。人々の平和を守る戦士と自負していたのに、たった一人の女性すらも守ることが出来なかった。  その自責の念は次第に、彼自身と下手人に対する怒りへと変わっていく。   「誰だ! 出てこい!」  激情のあまりに冴子の身体を手放して、速水は大声で叫びながら闇の中を見渡すが誰も見つからない。  しかし、影から女性を狙撃するような卑劣な輩は絶対に近くにいるはずだと、速水は思っていた。 「許さない……許さないぞ! 彼女を影から……」 『TABOO』  そんな彼の怒りを遮るかのように、野太い声が響き渡る。  速水は反射的に振り向いた途端、その身体が大きく持ち上げられた。次の瞬間には、首が大きく締め付けられていく。  突然現れた、異形の怪物によって。 「な、なんだ……お前は……! ダークザイド……かっ!?」  ギリギリと首が音を立てて軋む中、速水は相手を睨み付ける。  それは、速水が常日頃戦っている闇次元から襲来するダークザイドというモンスターを彷彿とさせる存在だった。  鬣は燃え上がる炎のように逆立っていて、赤い唇の両端から頬に糸が縫われたような跡がある。右肩に付いた頭蓋骨と、蓑虫のような下半身の先で光を放つ一つ目が薄気味悪さを演出させていた。   「冴子さんは、冴子さんはどうした……ッ!?」  呼吸が遮られる中で彼は冴子を探すが何処にも見あたらない。いるのは、肘と腹部に彩られた灰色以外、全身が赤と黒の二色を帯びた怪物だけ。  それが意味するのは、冴子のラームがこのダークザイドに食い尽くされてしまった事。速水はその可能性に思い当たったが、もう遅すぎた。  速水の首を絞める怪物、タブー・ドーパントは右手を真っ直ぐに向けるとそこから球状の炎が生まれる。  それに驚いて目を見張った瞬間、速水の世界は一瞬で灼熱に飲み込まれてしまった。 ◆  頭部が跡形もなく焼失した速水克彦の遺体を、タブー・ドーパントは無造作に投げ捨てる。  異形の下に潜む園咲冴子の表情は、死人のように冷たく固まっていた。まるで冴子自身が殺意を覚えていた、加頭順のように。  しかしそれを冴子が気付くことはなく、何よりも考えることもなかった。 「成る程、君はあのドーパントという奴だったのか」  そんなタブー・ドーパントの前に、辺りに広がる闇の中からバラゴが現れる。  バラゴが冴子に魔弾を撃ち込んだのは、男より女の方が利用価値がまだある為。人間の男は愚かにも、女の色気仕掛けに負けてしまう時があった。  しかし命中してから状況は変わる。何と、冴子が速水を殺す際に加頭順が見せ付けたガイアメモリを所持し、ドーパントに変身したのだ。  良い拾い物を得たと確信したバラゴは、闇の中でニヤリと笑う。これではまるで、運命が自分の勝利を願っているかのようだと思いながら。  奴らのデイバッグにある道具を確認したかったが、今は仮面ライダー達をホラーにする事が最優先だからそんな暇など無い。  これ以上こんな所で時間を浪費して逃げられるくらいなら、後回しにするしかなかった。  バラゴは気持ちが高ぶりつつある中、タブー・ドーパントに振り向く。 「村にいるはずの仮面ライダーを出来るだけ殺さないように消耗させろ。まあ抵抗するなら、殺しても構わないが」  バラゴがそう言い放つと、タブー・ドーパントは何も答えることなく宙に浮かんだ。  恐らく、これもドーパントが持つ能力の一つなのだろうと彼は思う。加頭はメモリの能力は極めて多彩と言っていたから、空が飛べたところで何らおかしくない。  夜空の元で飛び続けるタブー・ドーパントの後を、バラゴはゆっくりと歩いた。 ◆ 「……あの野郎、見つからねえな」  沖一也が去ってから数十分の時間が経った後、一文字隼人は志葉屋敷の周辺を歩いている。  沖が去った後、彼はこの付近にいるはずのがんがんじいもどき、暗黒騎士キバを探していた。いくらスーパーライダーダブルキックを叩き込んだとはいえ、まだ生きている可能性がある。  あれからすぐに爆死したのかもしれないが、そんな轟音は聞こえてこなかった。もしかしたらダメージが深くて死んだかもしれないが、楽観的に考えては痛い目を見る。  沖と共に探せば見つかる可能性が上がったかもしれないが、こんな事を二人でやっても無駄に時間を浪費する可能性があった。  だから一人で村を捜索したが、それらしい影は全く見あたらない。 「そろそろ行かないとやばいな……」  軽く舌打ちしながら、一文字は先程見つけたバイクの前に立つ。  彼自身は知らないが、それは科学警察研究所が未確認生命体と戦う仮面ライダークウガを支援するために開発した、ビートチェイサー2000と呼ばれるマシンだった。  このまま村に留まってキバを探していても、見つかるかどうか分からない。ならば今は一人でも多くの仲間を優先させなければならなかった。  一文字はビートチェイサー2000のハンドルに、手をかけようとする。 「――ッ!?」  しかしその直後、背後から突き刺さるような殺気を感じた。  反射的に横へ飛ぶと、一文字とビートチェイサーとの間に勢いよく炎が横切って、地面に衝突する。  爆音が響く中、彼は炎が飛んできた方向に振り向いた。視界の先には、一体の怪人――一文字が知らないタブー・ドーパントと呼ばれる怪人――が宙を漂っているのが見える。  メラメラと音を立てながら燃え上がる背後より熱が突き刺さる中、怪物の掌に火球が生成されていた。怪人はそれを投げつけてくるが、一文字は背後に跳躍して避ける。  そこから次々と火炎が放たれるが、どれも一文字は飛ぶことで回避し続けた。 「問答無用って訳か……」  辺り一帯が炎に包まれる中、一文字は呟く。  こいつは敵だ。BADANの手先か加頭が変身していたドーパントのどちらかは知らないが、こんな奴は一刻も早く倒さなければならない。  話し合いなど通用するタイプではないと瞬時に察した一文字は、いつものように変身の構えを取った。 「ライダアアァァァァァァァ……変身ッ!」  現れた怪人に鋭い眼光を向けながら、彼は跳躍する。すると、ベルトの中央に宿る風車が回転し、風のエネルギーによって身体が変化を始めた。  精悍な顔は瞳が赤い光を放つ仮面に覆われ、一瞬で黒いスーツに包まれた全身は緑色の装甲が生成され、首に巻かれた深紅のマフラーは風に棚引く。  一瞬で仮面ライダー二号への変身を果たした一文字隼人は宙を飛ぶ怪人に拳を振るって、その巨体を吹き飛ばした。敵は地面に叩き付けられるが、すぐに宙へ飛ぶ。  二号は大地に降り立つのと同時に、ライダーパンチを受けても平然と立ち上がる怪人を仮面の下から睨み付けた。 「てめえ……意外とタフじゃねえか」  先程のキバと違って腕に痺れは感じていないものの、相手はただの怪人ではない。力の二号の一撃を受けても、衰える気配が感じられなかった。  それどころか再び火球を作り出して、勢いよく投げつけてくる。スピードはかなりのものだが、充分に対応出来る範囲だった。  着弾しようとした直前、二号は左腕を横に振るって火球を弾き飛ばす。続くように灼熱は迫り来るが、二号はそれを反対の右手で砕いた。  その直後、彼は体勢を低くして疾走する。このまま戦いを長引かせても得策ではないし、何よりも相手が隠し球を持っている可能性があった。  それを出される前に、速効で叩き潰す!  風のように走り出す二号を目がけて怪人は怒濤の勢いで火球を発射する。しかし二号はそれら全ての間をかいくぐって、距離を詰めていった。 「トオオオオォォォォォォォォォ!」  二号は凄まじい咆吼と共に地面を強く蹴って、大きく跳躍する。一瞬で怪人が浮く高度を超えた彼は、宙で身体を一回転させた。  これまでに数え切れないほどの危機を乗り越える為に放った、必殺の蹴りを繰り出すために。 「ライダアアアァァァァァァァ!」  そして夜空を背に、二号は真正面に右足を伸ばしながら急降下した。その標的は、跳び上がった二号を見上げている怪人。  怪人はそんな二号を打ち落とそうと火球を放射するが、捉えるには速度があまりにも足りなくて全てが空振りに終わる。唯一当たろうとした炎も、右足に衝突したことで呆気なく崩壊した。  しかも、それが障害物となって二号の勢いが衰える事も全くない。 「キイィィィィィィィィィクッ!」  やがて二号のライダーキックは怪人の胸部に打ち込んで、怪人を背中から地面に叩きつけた。  土が砕ける轟音が響いて粉塵が舞い上がる中、二号はキックの反動で飛び上がった後に着地する。  ようやく仕留めたか?   二号は勝利を確信しそうになるが、それは瞬時に否定される。怪人が蹌踉めきながらも、宙を飛んだ為。  その身体には所々に傷が見えるものの、まだ動いている。しかし、そのスピードは先程とは違って明らかに鈍くなっていた。  本来のタブー・ドーパントならこの時点で既に死んでいたかもしれないが、今のタブー・ドーパントはバラゴの放った魔弾によってホラーの力を得たので、ある程度肉体強化がされている。  もっとも、それを二号が知ることはないが。 「ケッ、しぶとい野朗だ……ッ!?」  二号は怪人に悪態を吐こうとしたが、それは続かない。数メートル程離れた場所に、見覚えがある異形の姿を見つけた為。  虎を模した巨体に全身から生えた白い体毛、そして大きく開いた口から生えた巨大な大砲。  BADANが生み出したパーフェクトサイボーグの技術によって、その身体が人間の物ではなくなった元FBI捜査官、三影英介。またの名をタイガーロイド。 「お前は……!」 「まさかとは思ったが、本当に貴様がいるとはな……一文字隼人」  二号が三影の名を思わず口にしようとした瞬間、砲口が光を放つ。それを察知して二号は反射的に飛ぶと、轟音と共に凄まじい爆発が起こった。  一度までならず数度に渡って周囲の物が無差別に吹き飛び、一瞬で火の海と化す。  爆風によって二号は吹き飛ばされたが、空中で一回転をして体制を立て直しながら着地。そして、現れたタイガーロイドを睨みつける。 「チッ、外したか」 「やれやれ、こんな時に虎さんがやって来るとは……ついてないねぇ」 「その減らず口……耳障りだ。すぐに貴様を潰し、お仲間達もあの世に送ってやる」 「……やってみろよ!」  この時二号は沖と別行動を取った事を少しだけ後悔するが、今更言っても仕方が無いと自分に言い聞かせた。  今やるべきことは、三影をここで何としてでも倒すこと。それだけを考えればいい。  辺り一面が灼熱に包まれる中、飛蝗の異形は虎の異形と睨み合っていた。 ◆ 「ほう、新たな役者が現れるとは」  戦場から少し離れた場所より、バラゴは新たに現れた虎の怪人を見てほんの少しだけ目を見開く。  ドーパントとなった冴子に一文字隼人を消耗させて、その隙を見て魔弾を発射しようとしたが、事態は急変する。  突如村に現れたサングラスをかけた男は、仮面ライダーのように虎の怪人への変身を行った。そして口から出した大砲で辺りを無差別に吹き飛ばす。  恐らく、冴子は爆発に巻き込まれてガイアメモリごと跡形もなく吹き飛んだのだろうが、別にどうでもいい。ガイアメモリに代わる戦力が、目の前に二人もいるのだから。  あの銀色の仮面ライダーがいないのが気がかりだったが、ここにいない以上考えても仕方がない。恐らく別行動を取っただけだろう。  それよりも今は、燃え盛る炎の中で今にも戦いを行おうとしている怪物達の方が何よりも重要だった。 「まあ、精々勝手に消耗すればいいさ……」  ホラーをいとも容易く吹き飛ばす、魔戒騎士とはまた別の人知を超えた力を持つ存在達。もしも奴らが自分の意のままに動かす事が出来るのなら、便利な手駒が二つも得られる事になる。  幸いにもその手段は手元にあるが、事に及ぶとしても慎重に行かねばならなかった。下手に魔弾を打ってもその身体能力で回避された後に、反撃される可能性がある故に消耗を待たねばならない。  もっとも、もしも奴らがこちらに気付いて攻撃を仕掛けたりするのであれば、キバとなればいいだけの話だが。  火炎が燃え盛る中でバラゴは、怪物達が互いに潰し合うのを心待ちにしていた。 【1日目/黎明 B-2 志葉屋敷前】 ※志葉屋敷前にビートチェイサー2000@仮面ライダークウガが設置されています ※周囲の建物は壊滅しました(どの程度の規模かは、後続の書き手さんにお任せします) 【一文字隼人@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]:疲労(中)、胸部に斬痕、仮面ライダー二号に変身中 [装備]:不明 [道具]:支給品一式、姫矢の戦場写真@ウルトラマンネクサス、ランダム支給品0~2(確認済み) [思考] 基本:仮面ライダーとして正義を果たす 0:まずは三影英介を倒す 1:他の仮面ライダーを捜す 2:暗黒騎士キバを警戒(但しキバは永くないと推測) 3:もしも村雨が記憶を求めてゲームに乗ってるなら止める 4:元の世界に帰ったらバダンを叩き潰す 5:この場において仮面ライダーの力は通用するのか……? 6:バイク(ビートチェイサー2000)に乗って南から市街地に向かう [備考] ※参戦時期は第3部以降。 ※この場に参加している人物の多くが特殊な能力な持主だと推測しています。 ※加頭やドーパントに新たな悪の組織の予感を感じています(今のところ、バダンとは別と考えている)。 ※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました ※18時までに市街地エリアに向かう予定です。 ※村エリアから南の道を進む予定です。(途中、どのルートを進むかは後続の書き手さんにお任せします) 【三影英介@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]:疲労(小)、タイガーロイドに変身中 [装備]:無し [道具]:支給品一式、ランダム支給品0~3 [思考] 基本:殺し合いに勝ち残り、加頭の命を断つ。 0:まずは一文字隼人を抹殺する 1:殺し合いを止めようなどと考える『偽善者』の抹殺 2:邪魔をする者には容赦しない [備考]  ※参戦時期は仮面ライダーSPIRITS第7巻、村雨との一騎打ちの直前からです  ※タイガーロイド変身時は、全身から銃口・砲身を出現させて射撃を行うに当たり、体力を消耗するようになっています。   疲労の度合いは、放つ射撃の威力・大きさに比例して大きくなります。 また、破壊力に関しても通常時と比較してそれなりに落とされています。 【バラゴ@牙狼─GARO─】 [状態]:胸部に強打の痛み、顔は本来の十字傷の姿に [装備]:ペンダント、魔戒剣、魔弾(1発)+ボーチャードピストル(0/8)@牙狼 [道具]:支給品一式×3、ランダム支給品0~2、冴子のランダム支給品1~3、顔を変容させる秘薬?、インロウマル&スーパーディスク@侍戦隊シンケンジャー、紀州特産の梅干し@超光戦士シャンゼリオン、ムカデのキーホルダー@超光戦士シャンゼリオン、『ハートキャッチプリキュア!』の漫画@ハートキャッチプリキュア! [思考] 基本:参加者全員と加頭を殺害し、元の世界で目的を遂行する 0:あの二人の戦いをまずは監視する 1:仮面ライダーに魔弾を打ち込みホラーにする 2:今のところ顔を変容させる予定はない 3:仮面ライダーと怪人に隙が出来るのを待つ [備考] ※参戦時期は第23話でカオルに正体を明かす前。 ※顔を変容させる秘薬を所持しているかは不明。 ※開始時の一件で一文字のことは認識しているので、本郷についても認識していると思われます。 ※冴子と速水の支給品はまだ確認していません。 【備考】 ※タブーメモリ&ガイアドライバー@仮面ライダーWは破壊されました。 &color(red){【速水克彦@超光戦士シャンゼリオン 死亡確認】} &color(red){【園咲冴子@仮面ライダーW 死亡確認】} &color(red){【残り60人】} *時系列順で読む Back:[[魔法、魔人、悪魔]]Next:[[波紋呼ぶ赤の森]] *投下順で読む Back:[[魔法、魔人、悪魔]]Next:[[戦いは始まる]] |Back:[[SPIRITSを伝えろ!]]|[[沖一也]]|Next:[[変身超人大戦・開幕]]| |Back:[[SPIRITSを伝えろ!]]|[[一文字隼人]]|Next:[[血染めのライダーパンチ]]| |Back:[[正義の価値]]|[[三影英介]]|Next:[[血染めのライダーパンチ]]| |Back:[[顔に十字を持つ者]]|[[バラゴ]]|Next:[[血染めのライダーパンチ]]| |Back:[[MY FRIEND]]|[[速水克彦]]|COLOR(RED):GAME OVER| |Back:[[MY FRIEND]]|[[園咲冴子]]|COLOR(RED):GAME OVER| ----

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