「覚醒!超光戦士ガイアポロン(Bパート)」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

覚醒!超光戦士ガイアポロン(Bパート)」(2014/08/16 (土) 19:24:50) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*覚醒!超光戦士ガイアポロン(Bパート) ◆gry038wOvE シャンゼーリオン Take 2 「た、助けてー!! 悪い奴に人質にされちゃいましたー!!」  ヴィヴィオが先ほどよりも少し気合を入れてそう叫んだ。脚本に手直しでも入れたのか、急にツンデレ設定が消えて普通のヒロインになっている。  ゴハットが磔にされているヴィヴィオたちの前で仁王立ちし、その影が石堀とレイジングハートの体を包む。  とりあえず攻撃してくる様子がない事に安心しながらも、ゴハットが高らかに叫ぶ。 「フッハッハッハッハッハッハッハッ!!! ようこそ諸君!!! 君たちに倒された同胞の雪辱、忘れてはいないぞ……」  ゴハットはわざとらしく、またそう言った。むしろ倒されたのは同胞ではなく、ゴハット自身なのだが、シチュエーション的にはこれで良いらしい。 「貴様、ダークザイドの生き残りかぁっ! ヴィヴィオちゃんを人質に取って何のつもりだ!」  石堀は、少し恥ずかしそうにしながらも、とにかくゴハットに向けて人差し指を指して叫んだ。まるでヒーローだが、そのフリをしてやるのも仕方がない。  状況が状況である。 「フン……この子供は貴様らをおびき寄せる為の餌なのだ! 今日は諸君たちにダークザイドに代わる新たな組織を紹介する為に現れた!」  ゴハットが高所から飛び降り、石堀とレイジングハートの前に降り立った。  フィンフィンフィン……と、昭和らしい変な音を立てながら。  この音が何を示しているのかはよくわからないが、それを考える必要はなさそうだ。 「……おや? シャンゼリオンがいないようだな? ……まあいい。まずは貴様ら二人から、我々が手にした新たな力を味わってもらおう!」  二人は、険しい表情で彼を見つめながら、それぞれの変身アイテムを体の前で構えた。  天に手を掲げたり、体の横で手を振り回したりしながら、彼らは派手に変身ポーズを取る。  後ろで暁がスタンバっているのはここにいる全員が知っているがゆえ、余計に茶番臭かったが、まあ良いという事にした。 「どんな組織が現れようとも、貴様らがどれだけ強くなろうとも、俺たちが必ず叩き潰してやる! ……発身(ハッシン)!」  ──発身とは! 石堀光彦がアクセルメモリーのエネルギーを全開にしてその身をアクセルテクターに包む現象である!(※嘘です) 「バージョンアップ!」  ──バージョンアップとは! レイジングハートのリンカーコアに残留した超魔法エネルギーがダミーメモリーの能力と結合し、ザ・ブレイダーへと変身させる現象である!(※大嘘です)  二人は仮面ライダーアクセルとザ・ブレイダーへと体を変身させた。 「仮面ライダーアクセル!」 「ザ・ブレイダー!」  わざわざ自分の名前を言ってポーズを決めた二人。  アクセルは剣を構え、ザ・ブレイダーはその足に力を込める。  攻撃を開始する前の「ため」であった。これをやると強そうに見えるのである。 「「はぁぁぁぁ……」」  と、あるタイミングで同時に前に出た。  技の発動である。 「エンジンブレードッ!!」 「ザ・ブレイダー・キック!!」  だが、ゴハットは手を後ろに組んだまま、それを巧みに避ける。まるで挑発しているかのようだった。アクセルもザ・ブレイダーも全く本気ではないが、本気で戦っているフリをしながら何とか演技を頑張っている。  ゴハットは実はそこそこ強いダークザイドなので、アクセルやザ・ブレイダーがある程度本気でかかっても倒せたかもしれないが、なるべく死なないように気を付けたのだろう。 「フッフッフッ……その程度かザコめがっ!! 喰らえぇっ!!」 63 :覚醒!超光戦士ガイアポロン(Bパート) ◆gry038wOvE:2014/08/08(金) 21:37:46 ID:o1PzPQC60  ゴハットが体の前に両手を突き出すと、二人の目の前で火薬が爆発する。  何か念力的な技なのだろうが、そこにはあらかじめゴハットが用意した火薬があった。  誰がスイッチを押したのかはよくわからないが、上手くこのタイミングで爆発したのだった。 「うわああああああああああああああああ!!!」  巨大な爆発とともに吹き飛ばされた二人の体は、土の上で変身が解除されてしまう。  地面をわざとらしく悶え、苦しそうな表情をする石堀とレイジングハート。  とにかく、他のどこでもない──“顔”に力を込める。苦渋に満ちた表情の演技スキルは上がったかもしれない。 「くっ……なんて強いパワーなんだっ!!」 「このままじゃ勝てません……」  もがく二人の体にゴハットは近づいていった。  アクセルの方に行ったゴハットは、アクセルの背中にぺちぺちと触手を叩きつける。  ……のだが、アクセルとしては別にさほど痛くないので、触られている感覚しかなかった。それが気持ち悪いというのもあるが、まあ放っておく事にしておこう。 「駄目だよ、もっと苦しむ演技にしてもらわないと! そんなんじゃあ、宮内ヒロシの足元にも及ばない!」 「うっ……ぐわあああああっ!! やられた~~っ!!」 「そうそう……! それでこそ『やられの美学』だよ! ヒーローはねぇ、一度負けてその口惜しさをバネに強くなっていくんだ!! 学校でいじめられている子供たちの希望にもならなきゃいけないんだよ、ヒーローは教育番組なんだからさぁ!!」  このままおとなしく従っていなければ、全部バラすとまでゴハットに言われたのである。  仕方がないので、ダークザギこと石堀光彦もゴハットに従ってこの茶番を演じ切らなければならない。  さて、いつまでこんな事を続ければいいのか……と思っていた時である。  ようやく、救いの手は現れた。 「……待てぇいっ!!」  高らかに響く声。人間の声がどうしてこれほど響くのかはわからない。  バイクの音が聞こえてくる。ぶおおおおおおおおおん………………うぉんうぉん、くぃききぃぃっ。  そんな無駄にカッコいいバイクの音とともに上手に山を登ってくる一人の男がいた。 「おおっ! おのれシャンゼリオォォォォォォン! まさか貴様、ちゃんと正統派ヒーローとして更生してやって来たなァッ!?」  ゴハットはそれを見て、思わず歓喜の声をあげてしまう。  ベストを着た、ややちゃらんぽらんなように見える長髪の男──彼の名は涼村暁。  超光戦士シャンゼリオンとして、ダークザイドと二日ほど戦ってきた正義の戦士である。 「……じゃなかった。……フン、まあいい。今頃やって来たか、シャンゼリオン! キサマの仲間はもう虫の息だぞッ!」  ゴハットがすぐに切り替えた。  レイジングハートとアクセルは死んだように倒れていたが、内心では「早く終われ」と思っている。  とにかく、暁がちゃんとバイクで来る所までやってくれただけに、まあこれからこうして待っていれば話が進むのだろうと彼も思っていた。 「待たせてすまない、みんな……!(迫真)」 「うう……暁ぁ……(棒)」 「後は俺に任せてくれ……!! 俺が決着をつけてやる!!(迫真)」  よく聞くと、ちょっとノリノリな暁であった。  顔を見ると、さらにノリノリっぷりが凄い。彼は顔までヒーローじみた顔にしている。  この人は今ならどんな役柄でもこなしてくれそうな勢いだ。 「フッフッフッ……何人来ようと同じ事だ!!」 「フン、随分と余裕だなァッ!! だが、お前たち悪党どもが新しい力を得ると聞いて、俺も新しい力を手に入れてきたのさ!!」  満足そうにゴハットはそれを聞いていた。うんうん頷いている。  シャンゼリオンがこういう登場の仕方をしてくれたのが余程嬉しかったのだろう。  折角だからラッパを吹いて出てきて欲しかったが、贅沢は言っていられない。この登場の仕方もヒーロー的にはアリだ。 64 :覚醒!超光戦士ガイアポロン(Bパート) ◆gry038wOvE:2014/08/08(金) 21:38:15 ID:o1PzPQC60 「俺のこの体の輝きは、闇を蹴散らす正義の光……見よッ!! 燦然ッ!!」  再び、今度は無意味にリクシンキを走らせながら、いつものように燦然する。  宮内ヒロシよろしく、バイクに乗った状態での変身である。リクシンキが姿勢を制御してくれているのだ。  一応ナレーションを入れておこう。  ──燦然。それは涼村暁がクリスタルパワーを発現させ、超光戦士シャンゼリオンとなる現象である!  ※シャンゼリオンの真似は、危ないですから絶対にしないでね!  宗方博士と青森シンさんのナレーションが入ると、ゴハットは更にテンションを上げた。 「おおっ! ……なんだ? いつもと変わらんではないかっ!!」  先ほどから明らかにゴハットの素の歓喜の声が聞こえているが、それを周囲が突っ込むとまた怒るのが目に見えているので、彼らは何も言わなかった。  無性に怒りたくなったが、それは堪えよう。  自分は素を入れるくせに、他人が台本以外の台詞を言うと怒るのが彼だ。 「まあ見てなって。……戦う事が罪なら、俺が背負ってやるぜ!! 輝け、希望の光、パワーストーン!!」  リクシンキに乗ったまま、シャンゼリオンは頭上高くパワーストーンを掲げる。スーパーヒーローマニュアルⅡに載っていた台詞を強引に入れているあたり、相当ノリノリなのだろう。  東の太陽と重なり、反射し合い、怯えるほど綺麗なパワーストーンの輝きがゴハットの目に涙を浮かべさせた。カメラーワークまで完璧である。  ゴハットは、すぐにその涙を触手で拭う。  ──パワーストーン。それはクリスタルエネルギーを結晶化させた、宗方博士の新たなる発明である! これを使用する事でシャンゼリオンは新たなる戦士に変身するのだ!  今度のナレーションは政宗イッセイ氏のイメージだった。  ちなみに、先ほどから流れているナレーションは、暁とゴハットの脳内でのみ聞こえて、他の人間には全く聞こえていないナレーションである。 「なな、な~~~~~~に~~~~~~~!?」  ゴハットは、涙を堪えてそんな驚きの言葉をあげた。これもわかっている。  この新しい戦士に、いちばん最初に倒されるのが自分である事!  シャンゼリオンに倒されたダークザイド怪人の先輩はいくらでもいるが、これからシャンゼリオンが変身する新たな戦士に倒されるのは自分だけだ。  それは、あの暗黒騎士ガウザーでさえ果たせなかった事。──これが自分だけの敵なのだ。  その事実に改めて感動するゴハットであった。 「朝日に映える伝説の超人、超光戦士ガイアポロンッッ!!!! 本当の戦いはこれからだぜ!!!!!」  超光戦士ガイアポロンの真っ赤なボディが太陽の下、輝いていた。  ガイアポロン──それは、シャンゼリオンの2号として用意されていたデザインしか残っていない戦士である。炎をまぶしたように真っ赤に輝き、相変わらずの重量感を感じさせ、シャンゼリオンの意匠を残した全身──。おそらくこれも次郎さん以外が着たら首の骨が折れるんじゃないかという代物である。  本編では犬に食われ使われなかったパワーストーンの使用という事で、どうしても強化変身のしようがなく、彼は仕方なしに没デザインを流用してガイアポロンとなったのだ! 「ガイアポロンだと……っ!? フン……!! 姿が変わったところで変身者は所詮涼村暁!! この俺の手にかかれば赤子の手を捻るようなものだ!! うーん! それにしても、やっぱり2号やパワーアップは赤が一番だよ、赤!!」  感動を隠して、悪役台詞を言う。赤、いいよね。  ガイアポロンは、ゴハットの方を見ながら、次なる一手を考えた。  とにかく、ゴハットは色々な技を指定してきたので、それを上手い具合に調節して繰り出さなければならない。 「いくぞ!! ガイアポロン、アタック!!」 「ぐああああああ!!!(←嬉しそうに)」 「ガイアポロンきりもみシュート!!」 「ぬああああああ!!!(←嬉しそうに)」 「ガイアポロン・Zビーム!! ビビビビビビビ~(声だけ)」 「ぎゃあああああ!!!(←嬉しそうに)」  ゴハットは、ガイアポロンが放つ攻撃の一つ一つを味わった。  全てゴハットが考えた技である。正義のヒーローが自分に向けて全力で攻撃してくれる。  ゴハットは、そのたびに楽しそうに火薬の配置されている場所に飛び込んでいった。 65 :覚醒!超光戦士ガイアポロン(Bパート) ◆gry038wOvE:2014/08/08(金) 21:38:33 ID:o1PzPQC60  爆発。ドカーン。  ガイアポロンの一撃と、おそらくテレビカメラで見れば良い画が撮れているであろうシーンたち。何もかもが完璧であった。  いや、もはや実際のヒーロー番組でさえ絶対にこんなにしつこくないくらいだ。 「ぐあああああああっ!! なんて事だ……!! おのれ、ガイアポロン……!!」  圧倒的な強さが嬉しかった。  ヒーローが悪の怪人を倒す文法に全く背を向けない、このストレートなストーリー。  やられの美学もあるが、ゴハット論ではもっとヒーローは強くなければならない。  こうして悪の怪人を一方的に倒し、悪の愚かさを教えてこそのヒーローだ。  そう、どう考えても完璧だった。  子供たちが憧れる、スーパーヒーローそのものである。 「そろそろ弱点ついていいか!?」 「どうぞ!!」  ガイアポロンの質問に、ゴハットは即答した。  朝日の背景が夕焼けっぽくなった。夕焼けをバックにした死、それはまさしく悪の怪人──しかも、めちゃんこ強い奴が散る時の情景である。  まさか一怪人に過ぎないゴハットがこんな演出で戦えるなど、誰も思っていなかった事だろう。  なお、この背景は完全にゴハットにしか見えていない。 「おおっ! これは岡本さんが散る時のバックの感じだ! 岡元ジロウVS岡本ヨシノリ、夢のスーパーバトル、いいじゃないか!!」 「なんだかわからんが、殺っちゃっていいんだよな?」 「どうぞ!!」  歓喜のゴハットに向けて、ガイアポロンはちょっとためらうが、とにかくゴハットが促した。今まさしく、ゴハットは伝説のスーツアクター・岡本ヨシノリの気分であった。  散る美学を再現できる。  あの美しき死を演出できるのだ。  ガイアポロンが、胸の前に手を翳し、新たな武器の名前を叫ぶ。 「シャニングブレード!!」 「そうじゃないでしょっ!! おたくの使う剣はチーム名にちなんだ【ガイアセイバー】でしょうがっ!!」 「音声認識なんだよ!! 仕方ないだろ!! ……シャイニングブレード、改め、ガイアセイバーだ!!」  明らかにシャイニングブレードにしか見えない剣をそう呼びながら、ガイアポロンが前に出る。  そう、ガイアポロンには設定上、これといった武器がない。何せ、没デザインしか存在していないのだから。  だから、やむを得ずシャンゼリオン時代の武器を流用しているのだ。しかし、パワーストーンで赤くなっているので威力等が三倍になっている。 「じゃあ遠慮なく。ガイアクラッシュ!!」  ガイアポロンは、シャイニングブレードを構えたまま、前につき進んでいった。  シャイニングブレードを構えて一歩、一歩と着実に地面を強く踏みつけるシャンゼリオンの姿は何と凛々しい事か。  心なしか、今回、また暁美ほむらの幻影が申し訳程度にガイアポロンの後ろに重なる。  これはそういう必殺技なのか──。  ああ、これで全てが終わる。  ゴハットにとって、夢が叶う。  そんな瞬間だった。こんな、カッコいい倒され方が待ってくれているなんて……。  ─────────怪人に生まれて良かったァァァ…………。  CMのあと、ヴィヴィオにまさかの事態が!? テッテレー♪ テレレレ♪(←初代ライダーのアイキャッチの音) ◇ 【DXシャンゼリオンのCM】  燦然! デラックスシャンゼリオン!  クリスタルなフォルム! 可動する21のジョイント! 『シャイニングアタック!』←明らかに暁じゃない声  光る! 叫ぶ! デラックスシャンゼリオン  超光騎士もよろしく! ※現在は取扱いしていません。 *時系列順で読む Back:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート)]]Next:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Cパート)]] *投下順で読む Back:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート)]]Next:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Cパート)]] |Back:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート)]]|[[涼村暁]]|Next:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Cパート)]]| |Back:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート)]]|[[石堀光彦]]|Next:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Cパート)]]| |Back:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート)]]|レイジングハート|Next:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Cパート)]]| |Back:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート)]]|[[高町ヴィヴィオ]]|Next:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Cパート)]]| |Back:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート)]]|[[ゴハット]]|Next:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Cパート)]]| ----
*覚醒!超光戦士ガイアポロン(Bパート) ◆gry038wOvE シャンゼーリオン Take 2 「た、助けてー!! 悪い奴に人質にされちゃいましたー!!」  ヴィヴィオが先ほどよりも少し気合を入れてそう叫んだ。脚本に手直しでも入れたのか、急にツンデレ設定が消えて普通のヒロインになっている。  ゴハットが磔にされているヴィヴィオたちの前で仁王立ちし、その影が石堀とレイジングハートの体を包む。  とりあえず攻撃してくる様子がない事に安心しながらも、ゴハットが高らかに叫ぶ。 「フッハッハッハッハッハッハッハッ!!! ようこそ諸君!!! 君たちに倒された同胞の雪辱、忘れてはいないぞ……」  ゴハットはわざとらしく、またそう言った。むしろ倒されたのは同胞ではなく、ゴハット自身なのだが、シチュエーション的にはこれで良いらしい。 「貴様、ダークザイドの生き残りかぁっ! ヴィヴィオちゃんを人質に取って何のつもりだ!」  石堀は、少し恥ずかしそうにしながらも、とにかくゴハットに向けて人差し指を指して叫んだ。まるでヒーローだが、そのフリをしてやるのも仕方がない。  状況が状況である。 「フン……この子供は貴様らをおびき寄せる為の餌なのだ! 今日は諸君たちにダークザイドに代わる新たな組織を紹介する為に現れた!」  ゴハットが高所から飛び降り、石堀とレイジングハートの前に降り立った。  フィンフィンフィン……と、昭和らしい変な音を立てながら。  この音が何を示しているのかはよくわからないが、それを考える必要はなさそうだ。 「……おや? シャンゼリオンがいないようだな? ……まあいい。まずは貴様ら二人から、我々が手にした新たな力を味わってもらおう!」  二人は、険しい表情で彼を見つめながら、それぞれの変身アイテムを体の前で構えた。  天に手を掲げたり、体の横で手を振り回したりしながら、彼らは派手に変身ポーズを取る。  後ろで暁がスタンバっているのはここにいる全員が知っているがゆえ、余計に茶番臭かったが、まあ良いという事にした。 「どんな組織が現れようとも、貴様らがどれだけ強くなろうとも、俺たちが必ず叩き潰してやる! ……発身(ハッシン)!」  ──発身とは! 石堀光彦がアクセルメモリーのエネルギーを全開にしてその身をアクセルテクターに包む現象である!(※嘘です) 「バージョンアップ!」  ──バージョンアップとは! レイジングハートのリンカーコアに残留した超魔法エネルギーがダミーメモリーの能力と結合し、ザ・ブレイダーへと変身させる現象である!(※大嘘です)  二人は仮面ライダーアクセルとザ・ブレイダーへと体を変身させた。 「仮面ライダーアクセル!」 「ザ・ブレイダー!」  わざわざ自分の名前を言ってポーズを決めた二人。  アクセルは剣を構え、ザ・ブレイダーはその足に力を込める。  攻撃を開始する前の「ため」であった。これをやると強そうに見えるのである。 「「はぁぁぁぁ……」」  と、あるタイミングで同時に前に出た。  技の発動である。 「エンジンブレードッ!!」 「ザ・ブレイダー・キック!!」  だが、ゴハットは手を後ろに組んだまま、それを巧みに避ける。まるで挑発しているかのようだった。アクセルもザ・ブレイダーも全く本気ではないが、本気で戦っているフリをしながら何とか演技を頑張っている。  ゴハットは実はそこそこ強いダークザイドなので、アクセルやザ・ブレイダーがある程度本気でかかっても倒せたかもしれないが、なるべく死なないように気を付けたのだろう。 「フッフッフッ……その程度かザコめがっ!! 喰らえぇっ!!」  ゴハットが体の前に両手を突き出すと、二人の目の前で火薬が爆発する。  何か念力的な技なのだろうが、そこにはあらかじめゴハットが用意した火薬があった。  誰がスイッチを押したのかはよくわからないが、上手くこのタイミングで爆発したのだった。 「うわああああああああああああああああ!!!」  巨大な爆発とともに吹き飛ばされた二人の体は、土の上で変身が解除されてしまう。  地面をわざとらしく悶え、苦しそうな表情をする石堀とレイジングハート。  とにかく、他のどこでもない──“顔”に力を込める。苦渋に満ちた表情の演技スキルは上がったかもしれない。 「くっ……なんて強いパワーなんだっ!!」 「このままじゃ勝てません……」  もがく二人の体にゴハットは近づいていった。  アクセルの方に行ったゴハットは、アクセルの背中にぺちぺちと触手を叩きつける。  ……のだが、アクセルとしては別にさほど痛くないので、触られている感覚しかなかった。それが気持ち悪いというのもあるが、まあ放っておく事にしておこう。 「駄目だよ、もっと苦しむ演技にしてもらわないと! そんなんじゃあ、宮内ヒロシの足元にも及ばない!」 「うっ……ぐわあああああっ!! やられた~~っ!!」 「そうそう……! それでこそ『やられの美学』だよ! ヒーローはねぇ、一度負けてその口惜しさをバネに強くなっていくんだ!! 学校でいじめられている子供たちの希望にもならなきゃいけないんだよ、ヒーローは教育番組なんだからさぁ!!」  このままおとなしく従っていなければ、全部バラすとまでゴハットに言われたのである。  仕方がないので、ダークザギこと石堀光彦もゴハットに従ってこの茶番を演じ切らなければならない。  さて、いつまでこんな事を続ければいいのか……と思っていた時である。  ようやく、救いの手は現れた。 「……待てぇいっ!!」  高らかに響く声。人間の声がどうしてこれほど響くのかはわからない。  バイクの音が聞こえてくる。ぶおおおおおおおおおん………………うぉんうぉん、くぃききぃぃっ。  そんな無駄にカッコいいバイクの音とともに上手に山を登ってくる一人の男がいた。 「おおっ! おのれシャンゼリオォォォォォォン! まさか貴様、ちゃんと正統派ヒーローとして更生してやって来たなァッ!?」  ゴハットはそれを見て、思わず歓喜の声をあげてしまう。  ベストを着た、ややちゃらんぽらんなように見える長髪の男──彼の名は涼村暁。  超光戦士シャンゼリオンとして、ダークザイドと二日ほど戦ってきた正義の戦士である。 「……じゃなかった。……フン、まあいい。今頃やって来たか、シャンゼリオン! キサマの仲間はもう虫の息だぞッ!」  ゴハットがすぐに切り替えた。  レイジングハートとアクセルは死んだように倒れていたが、内心では「早く終われ」と思っている。  とにかく、暁がちゃんとバイクで来る所までやってくれただけに、まあこれからこうして待っていれば話が進むのだろうと彼も思っていた。 「待たせてすまない、みんな……!(迫真)」 「うう……暁ぁ……(棒)」 「後は俺に任せてくれ……!! 俺が決着をつけてやる!!(迫真)」  よく聞くと、ちょっとノリノリな暁であった。  顔を見ると、さらにノリノリっぷりが凄い。彼は顔までヒーローじみた顔にしている。  この人は今ならどんな役柄でもこなしてくれそうな勢いだ。 「フッフッフッ……何人来ようと同じ事だ!!」 「フン、随分と余裕だなァッ!! だが、お前たち悪党どもが新しい力を得ると聞いて、俺も新しい力を手に入れてきたのさ!!」  満足そうにゴハットはそれを聞いていた。うんうん頷いている。  シャンゼリオンがこういう登場の仕方をしてくれたのが余程嬉しかったのだろう。  折角だからラッパを吹いて出てきて欲しかったが、贅沢は言っていられない。この登場の仕方もヒーロー的にはアリだ。 「俺のこの体の輝きは、闇を蹴散らす正義の光……見よッ!! 燦然ッ!!」  再び、今度は無意味にリクシンキを走らせながら、いつものように燦然する。  宮内ヒロシよろしく、バイクに乗った状態での変身である。リクシンキが姿勢を制御してくれているのだ。  一応ナレーションを入れておこう。  ──燦然。それは涼村暁がクリスタルパワーを発現させ、超光戦士シャンゼリオンとなる現象である!  ※シャンゼリオンの真似は、危ないですから絶対にしないでね!  宗方博士と青森シンさんのナレーションが入ると、ゴハットは更にテンションを上げた。 「おおっ! ……なんだ? いつもと変わらんではないかっ!!」  先ほどから明らかにゴハットの素の歓喜の声が聞こえているが、それを周囲が突っ込むとまた怒るのが目に見えているので、彼らは何も言わなかった。  無性に怒りたくなったが、それは堪えよう。  自分は素を入れるくせに、他人が台本以外の台詞を言うと怒るのが彼だ。 「まあ見てなって。……戦う事が罪なら、俺が背負ってやるぜ!! 輝け、希望の光、パワーストーン!!」  リクシンキに乗ったまま、シャンゼリオンは頭上高くパワーストーンを掲げる。スーパーヒーローマニュアルⅡに載っていた台詞を強引に入れているあたり、相当ノリノリなのだろう。  東の太陽と重なり、反射し合い、怯えるほど綺麗なパワーストーンの輝きがゴハットの目に涙を浮かべさせた。カメラーワークまで完璧である。  ゴハットは、すぐにその涙を触手で拭う。  ──パワーストーン。それはクリスタルエネルギーを結晶化させた、宗方博士の新たなる発明である! これを使用する事でシャンゼリオンは新たなる戦士に変身するのだ!  今度のナレーションは政宗イッセイ氏のイメージだった。  ちなみに、先ほどから流れているナレーションは、暁とゴハットの脳内でのみ聞こえて、他の人間には全く聞こえていないナレーションである。 「なな、な~~~~~~に~~~~~~~!?」  ゴハットは、涙を堪えてそんな驚きの言葉をあげた。これもわかっている。  この新しい戦士に、いちばん最初に倒されるのが自分である事!  シャンゼリオンに倒されたダークザイド怪人の先輩はいくらでもいるが、これからシャンゼリオンが変身する新たな戦士に倒されるのは自分だけだ。  それは、あの暗黒騎士ガウザーでさえ果たせなかった事。──これが自分だけの敵なのだ。  その事実に改めて感動するゴハットであった。 「朝日に映える伝説の超人、超光戦士ガイアポロンッッ!!!! 本当の戦いはこれからだぜ!!!!!」  超光戦士ガイアポロンの真っ赤なボディが太陽の下、輝いていた。  ガイアポロン──それは、シャンゼリオンの2号として用意されていたデザインしか残っていない戦士である。炎をまぶしたように真っ赤に輝き、相変わらずの重量感を感じさせ、シャンゼリオンの意匠を残した全身──。おそらくこれも次郎さん以外が着たら首の骨が折れるんじゃないかという代物である。  本編では犬に食われ使われなかったパワーストーンの使用という事で、どうしても強化変身のしようがなく、彼は仕方なしに没デザインを流用してガイアポロンとなったのだ! 「ガイアポロンだと……っ!? フン……!! 姿が変わったところで変身者は所詮涼村暁!! この俺の手にかかれば赤子の手を捻るようなものだ!! うーん! それにしても、やっぱり2号やパワーアップは赤が一番だよ、赤!!」  感動を隠して、悪役台詞を言う。赤、いいよね。  ガイアポロンは、ゴハットの方を見ながら、次なる一手を考えた。  とにかく、ゴハットは色々な技を指定してきたので、それを上手い具合に調節して繰り出さなければならない。 「いくぞ!! ガイアポロン、アタック!!」 「ぐああああああ!!!(←嬉しそうに)」 「ガイアポロンきりもみシュート!!」 「ぬああああああ!!!(←嬉しそうに)」 「ガイアポロン・Zビーム!! ビビビビビビビ~(声だけ)」 「ぎゃあああああ!!!(←嬉しそうに)」  ゴハットは、ガイアポロンが放つ攻撃の一つ一つを味わった。  全てゴハットが考えた技である。正義のヒーローが自分に向けて全力で攻撃してくれる。  ゴハットは、そのたびに楽しそうに火薬の配置されている場所に飛び込んでいった。  爆発。ドカーン。  ガイアポロンの一撃と、おそらくテレビカメラで見れば良い画が撮れているであろうシーンたち。何もかもが完璧であった。  いや、もはや実際のヒーロー番組でさえ絶対にこんなにしつこくないくらいだ。 「ぐあああああああっ!! なんて事だ……!! おのれ、ガイアポロン……!!」  圧倒的な強さが嬉しかった。  ヒーローが悪の怪人を倒す文法に全く背を向けない、このストレートなストーリー。  やられの美学もあるが、ゴハット論ではもっとヒーローは強くなければならない。  こうして悪の怪人を一方的に倒し、悪の愚かさを教えてこそのヒーローだ。  そう、どう考えても完璧だった。  子供たちが憧れる、スーパーヒーローそのものである。 「そろそろ弱点ついていいか!?」 「どうぞ!!」  ガイアポロンの質問に、ゴハットは即答した。  朝日の背景が夕焼けっぽくなった。夕焼けをバックにした死、それはまさしく悪の怪人──しかも、めちゃんこ強い奴が散る時の情景である。  まさか一怪人に過ぎないゴハットがこんな演出で戦えるなど、誰も思っていなかった事だろう。  なお、この背景は完全にゴハットにしか見えていない。 「おおっ! これは岡本さんが散る時のバックの感じだ! 岡元ジロウVS岡本ヨシノリ、夢のスーパーバトル、いいじゃないか!!」 「なんだかわからんが、殺っちゃっていいんだよな?」 「どうぞ!!」  歓喜のゴハットに向けて、ガイアポロンはちょっとためらうが、とにかくゴハットが促した。今まさしく、ゴハットは伝説のスーツアクター・岡本ヨシノリの気分であった。  散る美学を再現できる。  あの美しき死を演出できるのだ。  ガイアポロンが、胸の前に手を翳し、新たな武器の名前を叫ぶ。 「シャニングブレード!!」 「そうじゃないでしょっ!! おたくの使う剣はチーム名にちなんだ【ガイアセイバー】でしょうがっ!!」 「音声認識なんだよ!! 仕方ないだろ!! ……シャイニングブレード、改め、ガイアセイバーだ!!」  明らかにシャイニングブレードにしか見えない剣をそう呼びながら、ガイアポロンが前に出る。  そう、ガイアポロンには設定上、これといった武器がない。何せ、没デザインしか存在していないのだから。  だから、やむを得ずシャンゼリオン時代の武器を流用しているのだ。しかし、パワーストーンで赤くなっているので威力等が三倍になっている。 「じゃあ遠慮なく。ガイアクラッシュ!!」  ガイアポロンは、シャイニングブレードを構えたまま、前につき進んでいった。  シャイニングブレードを構えて一歩、一歩と着実に地面を強く踏みつけるシャンゼリオンの姿は何と凛々しい事か。  心なしか、今回、また暁美ほむらの幻影が申し訳程度にガイアポロンの後ろに重なる。  これはそういう必殺技なのか──。  ああ、これで全てが終わる。  ゴハットにとって、夢が叶う。  そんな瞬間だった。こんな、カッコいい倒され方が待ってくれているなんて……。  ─────────怪人に生まれて良かったァァァ…………。  CMのあと、ヴィヴィオにまさかの事態が!? テッテレー♪ テレレレ♪(←初代ライダーのアイキャッチの音) ◇ 【DXシャンゼリオンのCM】  燦然! デラックスシャンゼリオン!  クリスタルなフォルム! 可動する21のジョイント! 『シャイニングアタック!』←明らかに暁じゃない声  光る! 叫ぶ! デラックスシャンゼリオン  超光騎士もよろしく! ※現在は取扱いしていません。 *時系列順で読む Back:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート)]]Next:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Cパート)]] *投下順で読む Back:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート)]]Next:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Cパート)]] |Back:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート)]]|[[涼村暁]]|Next:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Cパート)]]| |Back:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート)]]|[[石堀光彦]]|Next:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Cパート)]]| |Back:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート)]]|レイジングハート|Next:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Cパート)]]| |Back:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート)]]|[[高町ヴィヴィオ]]|Next:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Cパート)]]| |Back:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Aパート)]]|[[ゴハット]]|Next:[[覚醒!超光戦士ガイアポロン(Cパート)]]| ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: