いっそ自分も後を追おうか…
海岸を歩きながら揺れる波を見て、ふと考えたが死の直前の千鶴の笑みと遺言が、
夏美をまだこの世界に留まらせていた。
千鶴が崖の向こう側に消えてから放送があるまで夏美はずっとそこから動こうとはしなかった。
否、動けなかった。
あの時銃を突き付けられていても、来るなと言われても、自分は止めるべきではなかったのか。
だって、千鶴の銃―グロック17には弾が入っていなかったのだから。
予備のマガジンは全てデイパックの中にあったのだ。
千鶴はどうあっても死ぬ気だった。きっと自分が止めても死を選んだだろう。
それならばあの時自分が千鶴の最期を見届けた事は、千鶴にとってある意味幸せな事だったんだろうか。
だが、夏美がいくら自問自答しても答えを与えてくれる者はいない。
せめて自分に出来るのは千鶴が安らかに逝くように願う事と約束を守る事くらいしかない。
「ちづ姉ぇ、小太郎に伝えるから。」
グロックを手に立ち上がる夏美。自分の本当の武器が花火だけだとしたら笑ってしまう。
決心して振り返る夏美。
「…龍宮さん?」
そこには真名が立っていた右手で銃を構えたことにすぐ気付かなかったのが最悪であった。
パンパン
二発の銃弾を体に浴びる。
「な…」
理解できない。振り向いたらいきなり撃たれた。まだ私は何もしてないのに…
真名が近づく、また一発打つ。
夏美の右腕が大きく跳ねた。もっていた千鶴の形見である銃を落とした。
真名がまた近づく、そしてとどめに最後の一発。
視界が空を向き、夏美は千鶴が落ちた海に向かって落ちていった。
(ちづ姉ぇ…ごめん…約束…守れなかった……)
ドボンと大きな音がして夏美が海に沈む。
海面が赤く染まっていくのを確認して、真名はグロック17を拾った。
「これで3人目か…私に何人殺させればあいつらは気が済むんだ…」
そんな真名の問いかけに誰も応じる者はいなかった。
【出席番号28 村上夏美 死亡 残り18人】
重要事項をメモし終えた後、森を歩きながら美砂は水を飲んだ。三口ほどパンを齧る。
(7人か…)
最初の放送で一気に7人も死んだ。無論美空の名前もあった。
(円大丈夫かな…)
小さくため息をつく。美空にフライパンで叩かれた右肩が痛む。
水で冷やしたがこの痛みだとそうとう強く叩かれたみたいだ。
「…か…の・・・か……のどか!」
突然の声に大袈裟に振り返った。どうして気づかなかったのだ。人の気配に対して、あんなに気を配っていたのに。
しかし、この声は聞いたことがある。
「円!」
「え…み…美砂!」
突然の声に円が振り向く、ホッとしたような泣きそうな笑顔で円が目の前に飛び込んで来た。
「ああ、よかった……ホント、よかった……」
独り言を繰り返す。あまりの正直な姿に、美砂にも同じような感情が浮かんだ。
「円…無事でよかった」
美砂が嬉しそうに笑う。
美砂は続けた。
「一体何を叫んでたのよ?」
「そ…そうだ、のどかが」
「え?」
円のそばにはのどかが制服の胸の中心に大きな穴を開けて倒れていた。
「のどか!?しっかりして!一体どうしたの?」
「それがこの近くの洞窟に隠れてたんだけど突然銃声がなって…行って見たらのどかが…」
必死に呼びかける。するとのどかは目を覚ました。
「…あ、釘宮さん…柿崎さん…」
「のどか!生きてたの」
のどかが必死に上半身を起こす。そして制服のボタンを外してそれを見せた。
「…なるほど。防弾チョッキね」
「はい、鞄にはこれしか入ってませんでした」
しかしのどかが無事なのは何よりだった。
不思議なエンカウントで出会った三人は、円のいた洞窟に身を寄せた。
「これからどうする?」
「三人で行動するのが一番いい選択だけど…」
「こんな私ですが…できれば…一緒にいたいです…もう、一人は・・・」
美砂はこれからのことを考えた。三人いるのだから食料と水はなんとか確保できる。
しかし武器は、ポケットピストルと折りたたみ傘と防弾チョッキ。
これだけで何とかしようものならそいつは相当な天才だ。
(私、そこまで頭回らないし…)
皮肉っぽくため息をつく美砂。
親友の円、怯えているため戦力にはなりがたいがのどかが加勢。
三人でこれからどうするべきか、美砂は考えた。