千雨は時計を見たもうすぐ昼の12時を指す。
おとなしくその場で放送を待つことにした。その間に食事をし、水を飲む。
突然音楽が鳴り出す。
『12時になりましたぁー。皆さん、お疲れ様でーす。まずは新しく亡くなられた方の発表ですぅー
出席番号14番・早乙女ハルナさん、22番・鳴滝風香さん、23番・鳴滝史伽さん、24番・葉加瀬聡美さん
28番・村上夏美さん、31番・ザジ・レニーディさん、以上でーす』
千雨は地図とペンを用意した。
『続いて禁止区域です。一時間後の1時にBの6、3時にDの2、5時にFの4でーす。
残りは16人になりました。頑張って下さーい』
再び音楽が流れ、放送が終わった。
「あと16人か…」
千雨が呟く。
手にした銃を見る。
「あと15人殺したら生き残れる、勝手に潰しあってくれたら楽だな」
千雨はゲームに生き残ることしか考えてなかった。
【残り16人】
「ハルナ…遅いなぁ」
廃墟の一室に木乃香はうずくまっていた。
誰もいない。誰も尋ねてこない。そんな空間で木乃香はただ一人ハルナの帰りを待っていた。
既に体力も限界だった。夜は恐くて30分ごとにすぐ起きてしまった。
目に隈ができても木乃香は眠れなかった。
いきなり爆発音や銃声にはびっくりしたがずっと身を潜めている。
ふと耳を澄ますと外の草むらから誰かがやってくた。
ハルナが帰ってきたと思い窓から覗くと
「せっちゃん!」
木乃香は思わず窓を大きく開き叫んだ。
「せっちゃん!ここやここ!」
「はっ…お嬢様!」
まだ刹那は草むらを数百メートルほどしか進んでなかった。たったこれだけの距離に
木乃香がいたとは予想してなかった。
刹那は周りを確認してすぐ木乃香のもとへ走った。
「お嬢様、無事だったのですね」
「そうや。よかったぁ…ってせっちゃん肩から血ぃ出とるやん!」
木乃香は刹那の肩から血が出ていることに気付いた。
「大したことありませんから、大丈夫です」
「あかん。入って、簡単な手当てくらいならできるから」
そう言って刹那を廃墟の一室に呼び込んだ。
ハンカチを破いて残り少ない水に浸けて軽く傷口を洗う。
「水が少ないではありませんか。これを」
そう言って刹那は自分のデイパックから水を出す。
「すまんなぁ。でも安心しぃや、もうすぐハルナが水を持ってくるで」
「え…」
刹那の手が止まる。デイパックが斜めに傾きそこからサブマシンガンが落ちた。
「…これ…ハルナの銃やん…せっちゃん、ハルナに会ったん?」
「あ…は、はい……お嬢様…まさかハルナさんと一緒だったのでは」
刹那が尋ねる。ハルナは…もう…
「そうや。ついさっきまで一緒やったんや。やのにどうして…」
「…」
刹那が黙り込む。そして重い口を開いた。
「お嬢様よく聞いてください…ハルナさんは…」
「待って!…う、嘘やろ…ハルナが・・・ハルナが・・・」
思い出される爆発音と銃声。このどっちかでハルナは…と頭のなかでよぎった。
そんなはずあるわけないと思っていても、頭が勝手に想像してしまう。
そんなときに放送があった
『12時になりましたぁー。皆さん、お疲れ様でーす。まずは新しく亡くなられた方の発表ですぅー
』
木乃香は耳を塞いだ。そんなわけない、そんなわけないと必死に否定した。
しかし、木乃香の思いとは裏腹についにあの名前が読み上げられた。
『14番・早乙女ハルナさん』
「いやああああああああああああああああああああああああぁぁ」
木乃香が絶叫する。
「お嬢様!」
刹那が木乃香の両肩を持つ
「嘘や!嘘やぁぁぁぁ…絶対帰ってくるって約束したのにぃ…うわぁぁぁぁぁぁぁ…」
木乃香が刹那の胸で泣き崩れた。
「…」
刹那は沈黙した。ハルナを殺したのはこの自分であることに。
「なんでや…なんでこんなことになったんやぁ……」
「…お嬢様」
刹那が抱きしめる。刹那の胸で泣いているのに対し、刹那も涙を流した。
(こんなときに何も言えないなんて…私はなんて臆病で卑怯者なんだ……
お嬢様…何も言えない私を許して下さい…)
そこには、悲しみの涙を流す木乃香と、後悔と謝罪の涙を流す刹那がいた
【残り16人】
「…」
「あ…起きた?」
古菲が目を覚ました。そばには裕奈が、窓にはボウガンを構えた楓がいる。
「よく寝ていたでござるよ、クー」
楓がいつもの口調でやさしく話しかける。
「はい、くーふぇお腹空いたでしょ」
と言ってデイパックからパンと水の入ったペットボトルを取り出す裕奈。
パンを食べる古菲だったが、未だにいつもの覇気が感じられない。
だがしばらく寝ていたため、精神的に落ち着いていた。あのまま寝ていなければ
古菲はどんどん狂っていくだろう。
「くーふぇ、これ」
そう言って裕奈が差し出した右手には一錠ずつ梱包された鎮痛剤を差し出した。
「まだ足が痛むんだったら飲んでね」
「ありがとアル」
鎮痛剤をポケットにねじ込んだ。
ついさっきもこの病院の近くで一発の銃声が響いた。威嚇射撃なのか、誰かを殺したのか
どちらにしても安易に発砲する人間が近くにいる限り、迂闊には歩き回れなかった。
『みなさぁーん。お元気ですかぁー、それでは先ほどまでに死んだ人を発表しまーす』
定時放送の時間がきた。
裕奈は祈る、まき絵とアキラはまだ無事でいるように。
『出席番号14番・早乙女ハルナさん、22番・鳴滝風香さん、23番・鳴滝史伽さん…』
まだ二人は無事なようだ、しかしすぐに楓を見る。
風香、史伽が死んだのだ。
楓の細い目が小刻みに震え二人に背を向けた。
「楓…」
「…」
二人が見つめるなか、楓は目の奥からこみ上げてくるものを必死で押さえ込んだ。
楓は耐えた。
足を撃たれ、しかも生きるためとはいえ人を殺したことで精神的にも弱っている古菲。
武器がボウガンとはいえ戦闘には素人の裕奈。
二人とも楓に頼り切っている。そんな楓が弱気なところを見るわけにはいかない。
(二人とも…泣くのは生きて帰ってきてからでいいでござるよな…)
「裕奈殿。交代の時間でござるよ」
「あ、うん」
楓はボウガンを渡すと側の棚を開け、液体の入った瓶を取り出す。
生きるために、楓は手短なもので武器を作った。
【残り16人】