美砂、のどか、円は未だに洞窟の中にいた。
放送を聞き終わったら、順番に見張る。
禁止区域と縁が無ければの話だが。
今は円が見張りの番だ。
座りながら、美砂は懐かしい学園の日々を思い出した。
楽しかった。チアリーディングとして汗を流した日々。
三人でよく町にショッピングに出かけたあの頃が懐かしく思えた。
しかしもう戻れない。
桜子は死んだ。
それまでの自分にも。
自分の中の何かが変わってしまった。
自分を襲ってきた美空を何の躊躇もなく撃てたから。
「もう無理なのかな…」
学園にいる彼氏の存在を思い出す、こんな私をまだ見てくれるかな?
「……のどか」
美砂がのどかに話しかける。
のどかが自分の頭を抱え込むようにして丸くなった。泣いているのかもしれない。
ハルナが死んだからであろう。
夕映と三人でいつも行動していたのを何度も見てたから。
(私たちは二人だけど…のどかはもう一人……)
美砂は無言でのどかの頭を軽く撫でた。
(人を平気で傷つける私じゃ、何を言っても何の慰めにもならないから…)
それが今の自分にできる精一杯の慰めだった。
【残り16人】
木乃香は泣きつかれて眠っている。刹那の肩にもたれ、その腕にくるまれたまま。
これからどうするか刹那は考えた。
木乃香と合流できた以上、必死になって木乃香の命を守る。
だが生き残るのは一人だけだ。誰かが勝手に潰しあってくれればいいだろうが
戦闘になったら刹那は木乃香の目の前で相手を殺さなくてはいけない。
木乃香にこんな残酷な所を見せられない。
しかし、生きるためには相手を殺すしかない。
(お嬢様を生き残らせる為に、全力を尽くそう)
そう刹那が思ったとき、ふいに木乃香がゆっくりとその目を開く。
「あ………」
木乃香の目が刹那を見る。刹那も木乃香を見た。木乃香が身じろぎをする。
刹那は慌てて抱きしめている腕を緩めた。
「大丈夫ですか?」
「…ウチ…寝とったんや…」
寝起きの木乃香に刹那は缶詰を一個取り出した。
「どうぞ食べてください。私はもう食べましたから。」
「ありがと、せっちゃん」
木乃香は缶詰を持って食べ始めた。やはりまだ怖いのか、無意識のうちに肩が寄っている。
刹那は木乃香を励ますように、その肩を抱き締めた。
「ウチな…」
「はい」
木乃香がうつむいて呟く。
「ウチは、仇を討ちたい。ハルナの……」
ドキンと刹那の心臓が鳴った。ハルナを殺したのは刹那だ。
「ハルナはただ水を探しに行っただけやのに……理由なんかどうでもええ…
ウチはそいつのこと絶対許さへん…」
刹那は本当のことは話せなかった。
話せば、二人の友情に終わりが来る。
(私はずっと…黙ってるべきなのか…どうしたら…私はどうしたら…)
刹那の苦悩は続いている。
【残り16人】
「……はぁ……はぁ……」
真名は歩き続けた。誰かを殺すために。
歩くだけなのに異常に息が上がる。
喉が渇き水を飲む。
「ふぅ…」
喉が潤い一息つく。
(私はあと何人殺せばいい…全員か…先は長いな…)
高畑はただ殺せと命じただけだ。
何人殺せとは聞いていない。
「…ふ…ふふ…」
少し笑う。自分でも何で笑っているのか分からない。
なにもかも分からなくなってきた。自分の人格が何処にあるのか分からなくなる。
「…私は狂ってるな」
分かっていた。それは和美を殺した時点で。
腕に握られた銃を見る。
自分のこめかみを撃てば楽になるが、もう一人の仕事人としての自分が必死に止める。
「……行くか」
真名はまた歩き出す。その足取りは重い。
【残り16人】