「できたでござる!」
楓が瓶を置く。
「何アル?これ」
「火炎瓶でござる。これなら銃を撃つよりも投げるだけでいいでござるからな」
最後の一つを作り終えると楓は考えた。
「信用出来る奴と組んで、作戦を立てたいでござるよな。この人数じゃ限界があるナリよ。
とにかく明日菜殿と合流したいでござるな…」
バカレンジャーは夕映を除けば後の4人はまだ生きている。その内の二人がここにいる。
ずらりと並ぶ自家製火炎瓶を見ながら、古菲は考えていた。
(楓、本当に用意周到アル。ここまで逃げてこられたのだって、楓のおかげだし)
何故、楓の選んだルートを通ると敵に会わなかったのだろう。
一時間移動がズレれば、銃撃戦に巻き込まれていた場合だってあった。
どうして?
(まさか楓、何かを知ってるんじゃ……)
嫌な考えがよぎる。もし万が一、最後の二人になってしまったら楓はどうするだろう。
そこに並ぶ火炎瓶を、投げてきやしないか?
それなら裕奈も信じられない。
何故、都合よく楓と一緒に来れたのか?
今まで無防備な姿を見せて安心させ、いざと言う時になったら武器を向ける。
(…!そんなことない!そんなことないアル!)
助けてくれた二人を天秤にかけている自分がいる。
狂いかけている自分。
(………そんなはずないアル)
「古、生き残るナリよ」
「え…」
楓が話しかける。楓は真っ直ぐ古菲を見ていた。
「…うん!」
(信じよう)
抱きしめる腕に力をこめた。
【残り15人】
BR作戦本部では死んだ生徒の確認を取っていた。
「もう半分も死んだのか…やる気になると意外とやるもんだな」
高畑が呟きながら将来設計を漠然と考えていた。
(このプログラムが終われば、僕は麻帆良の学年主任に推薦されるだろう。木乃香クンを
故意に優勝させて学園長に恩でも売っとけば次期学園長の座は確実だが、そこまでの介入は
軍に申し訳が立たないな・・・)
歩いている兵士がタカミチに敬礼の姿勢を取る。タカミチは軽く会釈した。
(ゲームの内容は、特に問題が出ない限りどうでもいい。それよりも、同僚の扱いだ。
新田と瀬流彦には恩を貸しを作っておきたいな・・・)
と本部の画面に警告音が鳴り出した。
「何事だ!」
高畑が怒鳴る。
「ハッキングです。ものすごいスピードでプロテクトを解いています!」
瀬流彦が慌てて対策マニュアルを開く。
「番号26番エヴァンジェリンの首輪が解除されました!」
「なんだと!」
「さらに側にいる、8番、10番、29番、そしてネギ・スプリングフィールドの首輪のプロテクトを外しています」
計算速度は人間並みではない。高畑は茶々丸の存在を思い出した。
「・・・そうか…たしかパソコンが武器に入っていたな。そして4人の中の誰かに渡った…」
すると高畑は一枚のディスクを取り出すと瀬流彦に一言二言伝えて椅子に座った。
数分後
「ハッキングが停止しました。ゲーム終了まで進入不可能です」
高畑は“ワイルドセブン”をまた一本
取り出しジッポで火を付けた。
すぅーっと一杯に吸って煙を思いっきり吐き出してみた。
「な、そのディスクは相手に逆ハックを仕掛けてプログラム全体を破壊するように作られてるんだよ」
「さすが、用意周到ね」
しずなはタカミチの頬にそっと口付けをした。
某所
そこにはパソコンにどうやって進入したか、バトルロワイアルのゲームを見入っている人達がいた。
「あ、ハッキング失敗したやつがおるな」
「何とかならないのか」
「そうよ、過去にこのゲームに私たちは巻き込まれかけたのよ」
「ほなら、ウチがハッキングしたるわ。この程度お茶の子サイサイや」
それは突然訪れた。
それまでハッキングを試みていた茶々丸の体が大きく痙攣しだした。
「茶々丸ー!」
エヴァが叫ぶ。
「マ…スター……ハッ…キン…グ…失敗…しまし…た」
「茶々丸さ…うあっ」
ネギが近づくが漏電した体に触れてしまいしびれてしまった。
「首輪…の…解析は…完了…シま…し…タ…」
「茶々丸!しっかりしろ!」
「マ…すたー・・・あな…タに・・・会えて……よかっ…」
茶々丸のデータが消されていく。
学園もエヴァもフォルダに分けて大切に保管していたネギのことも。
(ネギ…先生…今度会え…るときは…人間の…姿で…会いた……)
茶々丸の体が大きく傾く。
消失するプログラムを掻き分けて右手の人差し指を動かす。
キーボードのEnterを押すだけで十分だった。
「……解析完了」
「ちゃ…茶々丸ーーー!!」
するとエヴァの首輪が音を立てて外れた。
「ふざけるな…何が解析完了だ…くそぉ…畜生ーーー!」
エヴァが叫びを上げた。
ネギたちも沈黙した。
途端にあやかの首輪が点滅する。
あやか本人にネギと明日菜も突然のことに驚く。
「何で!!」
ネギや明日菜の首輪は何ともない。
動かなくなったはずのパソコンの画面に文字が現れた。
『ハッキングのペナルティとしてそこにいる誰か一人に死んでもらう』
「そんな…私が…」
あやかが絶望の表情をする。
ネギはあやかの首輪に飛びついた。
「外れろ!この!外れろー!!」
必死に首輪を上下や左右に振るが首輪の警告音は早くなるばかりであった。
「離れてくださいネギ先生!もうすぐ爆発してしまいますわ!」
「嫌だ!もう僕はこれ以上誰かが死ぬのは嫌だーー!!」
泣きながら首輪を壊そうとするネギの体を持ち上げると頬に軽くキスをした。
ネギを見て軽く微笑むと勢いよく明日菜に向かって投げた。
「い…いいんちょ!」
武器のショットガンも投げると一歩づつ下がるあやか。
「ネギ先生を頼みましたわよ、私の一番の友人として信頼してますから。」
するとあやかは振り返り全力で駆け出した。
「いいんちょーー!!」
(ネギ先生に私が死ぬところを見せるわけには…)
少し離れた部屋に入り込む。ドアを閉めたところで警告音が止まった。
「さよなら、ネギ先生」
奥の部屋から爆発音が響いた。
「う…うわあああああああぁぁ!!」
ネギが泣き叫ぶ。
明日菜も泣いた。
「あなた馬鹿よ…なんで…う…く…」
エヴァもネギも明日菜もその場に泣き崩れた。
【出席番号10・29 絡操茶々丸・雪広あやか 死亡 残り13人】