音楽が流れた。
いつもの定時放送の時間だ。もう驚かなくなった。
『みなさーん。三回目の放送ですよぉー。それでは早速、死亡者の報告でーす。
出席番号10番・絡繰茶々丸さん、13番・近衛木乃香さん、15番・桜咲刹那さん、18番・龍宮真名さん
29番・雪広あやかさん、以上でーす』
「…」
のどかはまた泣いていた。
ついに木乃香も死んだ、もうわずか11人こんな弱い自分が生き残れるのが逆に恐かった。
「のどか…」
円が心配する。
『今回から禁止区域のペースが増えますぅー。一時間に一個増えます。注意して下さぁーい。
一時間後の7時にAの4、8時にGの10、9時にCの6、10時にGの2、11時にCの10、12時にAの2ですぅー。
それでは皆さん、頑張って下さい』
放送が終わった。
「……」
得体の知れない虚無感に包まれる。
銃を構えて戦おうとする美砂、戦いたくないと閉じこもるのどか、二人のどちらにもつけない円。
三人の間に会話はなかった。
【残り11人】
千雨は放送を聞きながら死んだ人の名前の欄に斜線を入れた。
「あと11人…」
マシンガンを構えて千雨は進んだ。
武器は大量にある、木乃香と刹那から奪ったマシンガンに拳銃二丁
おまけに手榴弾とナイフ(ノコギリは捨てた)と揃った。
(厄介なのはバカレンジャーだな…)
一気に総力戦で勝ち抜きたい。
このペースならおそらく早くても明日には決着がつく。
―――殺す…殺す…みんな…みんな…死んでしまえ…最後に生き残るのは…この私だ!
「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー」
謎の呪文を唱えて千雨は歩く、もう前しか見ない。後戻りするつもりは全くない。
そこにはかつてネットアイドルとしてのプライドも面影も捨て去った
少女が不気味な笑顔をしながら歩いていた。
【残り11人】
ネギ・明日菜・エヴァは放心していた。
エヴァはパートナーをネギと明日菜はあやかを失い
何をするでもなく体を折り曲げて悲観に打ちのめされていた。
三人のいる部屋にはスクリーンセーバーの画面が出ているパソコンだけが動いていた。
回路は茶々丸に直結してたためディスクの攻撃のほとんどを茶々丸が受けたため、パソコンは
ほんの一部の機能を残してかろうじて動いていた。
しかし放送で木乃香、刹那も死んだためネギと明日菜はさらに悲しんだ。
泣いて、泣いて、涙が枯れるまで。
ただ時間だけが過ぎていた。
不意にパソコンの画面が動き出した。
「…?」
明日菜が画面を見る。
「ちょ…ちょっとネギ」
明日菜に起こされてネギが顔を上げる。
「どうしました?明日菜さん」
「これ見て」
パソコンの画面をネギに向ける。
「…!こ…これって」
パソコンの画面には小さなウィンドウが勝手に開いて文字を打っていた。
『君たちを助けられるかもしれない。ここの状況を教えてくれ』
「…」
二人は画面をじっと見た。助かるかもしれないと思った。
【残り11人】
「裕奈殿、起きるでござるよ」
楓が眠っていた裕奈の体を揺する。
「…え、あ…私寝ちゃってたんだ……」
極限状態であまり眠れなかった裕奈は楓が見張りの交代と同時に強烈な睡魔に
襲われて眠ってしまった。
「大変でござるよ。禁止区域が一時間ごとに変えられたでござる」
「えっ、ここは…」
そのことを聞いた裕奈は慌てた。時計を見ると七時前だった。
定時放送からかなりの時間が経過していた。
「大丈夫でござる、かろうじてここは禁止区域にはならなかったでござるよ」
楓が禁止区域になったところに印をつけた自分の地図を裕奈に見せた。
「…9時にCの6!?」
裕奈は目を疑った、はアキラがいる区域だった。
慌てて立ち上がり、武器のボウガンを持つ裕奈の肩を楓が持つ。
「どうしたでござる裕奈殿?」
「Cの6の区域にアキラがいるの!何としても助けたいの!」
「しかしはここはDの1でござる。今から行くとギリギリでござるよ」
「でも…でも助けたいの!」
裕奈の必死な姿に楓は手を放した。
「分かったでござる。こっちも準備ができたら拙者達も後を追うでござる、
そろそろここも危険でござるから」
その声に古菲が上半身を起こした。
「裕奈。帰ってくるアルよね」
「…絶対帰ってくる。帰ってくるよ」
裕奈はそうはっきり答えて走り出し、廃病院を後にした。
「さぁ、準備するナリよ」
楓は身支度をし始めた。
「…ねぇ、楓…」
古菲が話しかけてきた。
「何でござる?」
「ワタシを背負っていくの?」
「当然でござろう。どうやってお主を連れて行くでござるか」
古菲の様子のおかしさに気付く楓。
「クー?」
「ワタシを…置いていって欲しいアル」
その発言に楓は驚く。
「何を言ってるでござる!お主を置いていくことなどできないでござるよ!」
「でも…ワタシ歩けないアル…左足が動かないのに…ワタシ、ワタシは足手まといアル」
今にも泣きそうな古菲を楓は優しく抱きしめた。
「足手まといなわけないでござろう、古は大切な親友でござる」
「仲間…」
「裕奈殿も、自分の親友を助けるために危険を顧みず行ったでござろう。」
「……楓ぇ…」
古菲の目が涙で一杯になる。
「約束するでござる。何があってもお主を守ると」
楓の腹は決まっていた。
「…ありがとアル、楓。ごめんアル、ワタシがこんな怪我さえしてなければ…」
古菲は今にも泣きそうだ、いままで我慢してきたものがこみ上げてくる。
「今更自分を責めたって、何にもならないでござるよ」
「うぅ…うわーーーーーーーーん」
ついに古菲は泣き出してしまった。
彼女にとって楓は裕奈よりも大切な心の支えであった。
スタートして足を銃で撃たれ、足場の悪い岩場に放置され、そんな彼女を初めに助けてくれたのが楓。
そんな彼女の優しさに、古菲は感謝の意味を込めて泣いた。
【残り11人】