『どうやったら、助かるのですか?』
―今はこちらからハッキングを仕掛けている。
証拠を残さずペンタゴンにハッキング仕掛けたほどの腕前だから。
『そうしたら、どうなるの?』
―まずは首輪を解除する。そして本部を混乱させているうちにこちらからヘリで助けに入る。
明日菜とネギは送信された文章をずっと読み返していた。
「…これ信用できると思う?」
「少なくとも、助けようとしていますからね。でもひょっとしてタカミチの罠?」
100%信頼はできない。とにかく話しかけて必要な情報を聞き出しておかなくてはならない。
最後に送信されてからもうかなりの時間が立つ。
痺れを切らして明日菜はキーボードを叩こうとした。
すると突然、ガラスを破る音がした。
軍服に身を包んだ男たち数人が明日菜たちのいる家に乗り込んできたのだ。
「な…何なの!」
「何ですか!?あなたたちは!」
慌てる明日菜とネギに向かってライフルを構える男たち。
そして近くにうつむいているエヴァを見つける。
「エヴァンジェリン発見。これより首輪を取り付ける」
三人は部屋の隅に追い込まれた。目の前には重装備の男たち、普通に考えれば勝ち目はない。
「あ…明日菜さん…」
ネギを抱きしめるように庇う明日菜。
不意にパソコンの画面に目が行った。そこには
『首輪が解除されました。本部にもサイバーテロをしかけます』
「…」
明日菜とネギは自分の首輪を触った繋ぎ目あたりが緩くなっていることに。
「悪いが君たちも始末させてもらうよ」
一人の男がライフルを構えた。
「ぼーや、神楽坂明日菜、手加減をするな。すれば死ぬぞ」
「…………はい」
「…うん」
男の持つアサルトライフルが火を吹く。激しい音と共に銃弾が何発も発射され周りが煙につつまれた。
弾はすべて三人には当たらなかった。ネギが魔法防壁を使ったから。
「この私をここまでコケにした罪、まずは貴様らで償ってもらう!!」
「な…首輪が解除されてる!?」
驚く男たちだが遅すぎた。
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル」
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック」
「アデアット」
すべてが終わると三人は(死なない程度に痛めつけた)男たちから武器のライフルや拳銃を奪い走り出した。
首輪は強く引っ張るだけでいいが明日菜が乱暴に引き剥がして床に叩き付けた。
三人の目指す場所、それは作戦本部。
【残り9人】
楓は古菲を背負い森を抜けていた。ここら辺が禁止区域ギリギリだった。
「どうするアル」
「とりあえずどこか隠れる場所を…ん?」
禁止区域の方向から誰かが走ってきた、裕奈ではない。
「まき絵アル!」
「まき絵殿!」
二人は驚きながらも安心感を持っていた。
佐々木まき絵、古菲、長瀬楓、この三人はバカレンジャーのメンバーだ。
図書館島に侵入したときも、修学旅行の時のネギ唇争奪戦も何かと一緒にいることが多かった。
「まき絵ーよく生きてたアルな」
「そっちも無事のようでござるな」
まき絵はうつむいたまま応えない。体のあちこちが震えているようだった。
「まき絵殿?」
「うたれたの…」
まき絵が喋る。
「ゆーなにうたれたのやっぱりいきのこるためにだれかころすしかないのかなもういや
だれかたすけてたすけてたすけてたすけてたすけ…」
「ま…まき絵…」
「あ、あはははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」
まき絵のワルサーが火を吹いた。
「まき絵殿!!」
慌てて銃弾をかわして距離を保とうとする楓。
「やめて!まき絵!」
楓の背中から悲痛な声をあげる古菲。
連射するまき絵を避ける楓だったが、あまりにもでたらめに撃っているせいで何処に飛ぶのか予想ができない。
一発の弾丸が地面に付いた楓の靴の先を掠めた。
「うわっ」
楓はバランスを崩して倒れる。背中から古菲が転げ落ちる。
撃たれる!と二人は思ったが弾丸は飛んでこなかった。
顔を上げるとまき絵が何か拳銃をいじっている。
どうやら弾切れらしくデイパックから予備のマガジンを取り出してる。
楓は今しかないと思いまき絵に向かって走り出した。
試行錯誤の末、予備のマガジンに交換し終えるがその時には楓が目の前に大きく写った。
「やめるでござる!まき絵殿」
ワルサーの銃身を掴んで引き剥がそうとする。
「うああああああああああ!!」
叫び声を上げ両手で銃を必死に奪い返そうとする。
「楓ぇ!」
古菲が声をあげる。
片手で銃をもう片方の手でまき絵の体を押さえ込む。
大木に体を押し付けて必死に銃を奪おうとする。
(ぐ…あと少し…)
その時、まき絵の手が引き金にかかった。
(まずい!!)
ドン ドン
銃声が二発響いた。
その後、沈黙。
まき絵と楓の体が密着したまま動かない。
するとまき絵の体が傾き地面に倒れた。
「ま…まき絵…」
古菲の顔が強張る。
少し遅れて楓も倒れる。
「か、楓ぇぇぇぇぇ!!!!」
動かない左足以外を必死に動かして楓の所に這いずる古菲。
「楓、楓ぇぇぇぇぇぇぇ!!」
泣き叫ぶ古菲。まき絵はもう息をしていなかった、胸を打ち抜かれ即死だった。
「す…すまんでござる…拙者としたことが…」
楓も左の胸から血を流している。
「楓!なんで避けなかったの!?何で…」
「…避けたら…古に当たる…でござろうが…」
楓が力の限り呟く。
「そんな…ワタシのために……」
古菲の涙が止まらない、今にも気が狂いそうだ。
「古…生きるで…ござるよ……」
「楓こそ生きてアル、生きてよぉぉぉぉ!」
「…古、お主は…強い子だ……だから…これからも…生き…て…」
楓がひゅうっと息を吐くと目を閉じた。
「い…嫌ぁ…い…や……嫌あああああああああぁああぁあああぁぁぁああああ!!!!」
古菲が叫ぶ、声を上げて泣き叫び続けた。
遅れて裕奈が追いつく。
「な…何!?」
裕奈は見た、楓とまき絵が血を流し死んでいる光景を、そして側で泣き叫ぶ古菲。
「くーふぇ!しっかりしてよぉ」
裕奈が叫ぶ。
(ワタシのせいアル!ヘリに乗せられた時に抵抗して足を撃たれさえしなければ、こんなことには…
その後、岩場に放置され、楓と別れチャオが現れて…なにをしたんだっけおもいだせないたしかちゃおがおそい
かかってきてそれをひっしでよけてちゃおのあたまをおさえつけてそして…そして…
殺した。
「わああああああああああああっ!!!」
絶叫した。
両手で頭を抱え、声の限りに叫んだ。
「く…くーふぇ!しっかりして」
「あああっ!!ああぅああっ!!うぁああああぅあああああああ!!」
言葉にならない狂気の叫び。
声が出る限り叫び続けた。
心の糸が限界まで伸ばされ今にも切れそうだ。
「くーふぇ!お願い、しっかりして」
「ああぁぁあああぁあああぅあああ!うああああああああ!!!」
その瞬間、古菲の心の中で何かがぷつりと切れたような気がした。
「―――!…………」
突如古菲は叫びをやめて裕奈の体に倒れこむ。
「!?…くーふぇ…くーふぇ」
揺すっても、頬を叩いても何の反応も示さない。
そこにいるのは古菲の姿をした心のない人形。
彼女の心は砕けてしまった。
【出席番号16・20 佐々木まき絵・長瀬楓 死亡 残り7人】