洞窟の中で美砂とのどかは死んだ円の体を寝かせてた。
手を中心で組ませその上に一輪の花。
これがこの島で出来る精一杯の葬式であった。
「円…」
いつも三人で行動していたのに突然いなくなってしまった二人。
のどかも痛いほどそれが分かる。
その時、外で放送が始まる音楽流れる。
「な…なんで!?まだ早すぎるよ」
洞窟から二人が出る。
『みんな!もう殺し合いはしなくていいの!!私たちが止めたの!』
「明日菜さん!?」
のどかがその声に反応する。
『教室で会ったネギは偽者なの、ここにいるのが本物よ!』
「え…」
二人が驚く。
『みなさん!僕です、ネギです!もうやめてこの作戦本部に来てください!首輪は解除できました!』
その声は放送と同じ声のネギ本人であった。
「ネギ先生…よかった…本当によかった…」
のどかが驚きながらも嬉し涙を流す。
するとマイクの音声が突然乱れた。
『ネギーーー…ガガッ……ピー……』
銃声のあと、音は途切れた。
「明日菜さん!、ネギ先生ーー!」
のどかが走り出す。
「待って!何処に行くの!?」
美砂がのどかの腕を掴む
「先生の所です!先生が…」
「危険よ。今行ったら死に行くようなものよ!」
止めようとする美砂だがのどかは聞かなかった。
「それでも行きます…!」
美砂の手を振り切って走るのどか。
「ちょ…のどか……」
防弾チョッキは着せているものの、武器がないため傘を握らせているが役に立つまい。
ポケットピストルの弾の数を確認する。
「あと一回分か…」
マガジンはもう残り一つしかない。
無駄玉は撃てないと思い、最後のマガジンを装填する。
美砂はのどかの後を追った。
「先生…ネギ先生…」
のどかは走り続けた。足がもつれようとつまずきそうになっても必死で体勢を立て直して走った。
(この森を抜けたら先生に…)
そう思ったが、次の瞬間その思考は強制的に停止する。
バラララララララララララララ
「きゃああああああ!!」
近くにマシンガンの雨が降った。
のどかは腰を抜かし動けなくなってしまう。
茂み近くから千雨が出てきた。
「お前か…よく生きてたな。真っ先に死ぬと思ってたが…」
マシンガンはのどかを狙っている。
必死で立ち上がり逃げようとするが、千雨はのどかの両足を撃った。
「あぁぁああぁぁ!!……痛い…あ…足が…」
のどかの体を踏みつけて頭にマシンガンを押し当てる。
「ひぃ……お、お願い…助けて……」
痛みと恐怖の涙を流してのどかは助けを求めた。
「ハッ、この状況で命乞いか。諦めな」
「だ…誰か…ネギせんせぇ…」
マシンガンの引き金に指がかかる。
パン
一発の銃声と共に千雨のマシンガンが飛んだ。
「ぐっ…」
千雨が横を向くと美砂がポケットピストルを構えていた。
「のどか!大丈夫!?」
「は…はい…」
力なく話すのどか。
「あんたもまだいたんだ。」
意外そうな顔でベレッタを取り出し美砂に構える。
「そういやさっき走ってきた二人はあんたたちか…惜しいことしたな」
あの時さっさと撃っておけばよかったと千雨は思う。
「円の仇!今取らせてもらうわ!」
「ふぅん」
どうでもいいような返答をする千雨。
憎い、殺してやりたい、これほど人を殺したいと思ったことはなかったと美砂は思う。
二人は距離を取りながら、ほぼ同時に走り出す。
のどかの目の前で二人は銃を撃ち合い“殺し合い”を始めた。
【残り6人】
二人が森に消えてから銃声が何発も聞こえる。
両足を撃たれて動けないのどかは美砂の心配をする。
何発もの弾丸を発射する千雨に対して弾薬が厳しい美砂はあまり撃てない。
右手にベレッタ、左手にグロックを構えてお構いなく連射する千雨。
「もう!武器がこれじゃ…」
弾が残り少ない、千雨から離れる。
「待て!」
走って美砂を追いかける、走りながら銃を撃つ。
「あぁぁ!!」
美砂の脇腹を掠り尻餅をつく。
千雨はニヤリと笑うと引き金を引いた。
美砂は体を捻った、自分の顔の少し横を弾丸が掠める。
体勢を立て直して美砂は銃を放った。
「――!!」
千雨の顔の右横を弾丸が掠めた。その瞬間、千雨の眼鏡の淵に当たりレンズが砕け宙を舞った。
目の上辺りを切ったが千雨は構わずグロックとベレッタを交互に撃ち放った。
「―っ!」
雨のように降って来る弾丸に、必死に身を縮め大きな岩の裏に転がり込む。
千雨が近づいてくる音がする。岩陰から一発発砲した。
一発につき、何発もの銃弾が返ってくる。圧倒的に不利だ。
美砂は小石を拾うと、隣の茂みに向かって投げた。ガサリと茂みにぶつかって揺れる音。
千雨は途端にその茂みに向かって連射した。
(とにかく、弾を減らさせなきゃ)
次は、そこの隣の茂みに石を投げた。再び茂みの揺れる音に続き銃声。
(いいぞ、もうちょっと続けられれば)
弾薬を確認する。あと4発。
千雨がだいぶ近くまで来た、美砂は銃の狙いを定めた。
(……落ち着くの…落ち着くの…)
銃を握る手は緊張ですっかり冷たくなっている。止まらない手の震えを必死に抑え込む。
千雨はマシンガンを構えたまま、周囲を見回している。
(今だ!)
気合いを入れて数回引き金を引いた。
「うっ!!」
しかし弾丸はベレッタに当たり弾き飛ばしただけだった。
(しまった!)
「そこか!」
左手のグロックが鳴る。避けることに成功したが目の前に千雨が大写しになる。
「うわあああああああああああああ!!」
美砂は千雨にタックルした。重心を崩して千雨が倒れる。
「うわっ!」
千雨が怯む。美砂は千雨のグロックにしがみついた。
「くそっ!!」
力比べになる。互いが必死になって銃を奪おうとする。
「でえええい!!」
千雨は思い切り美砂の胸元に肘打ちを食らわせた。
「ぐっ!!」
美砂はよろめく間に千雨はの銃を撃った。美砂の左肩で何かが弾けた。
「っ!!」
倒れながら茂みから飛び出す美砂。
「か…柿崎さん!」
少し離れた所に叫ぶのどかが見えた。
「這ってでもなんでもいいから早くここから逃げて!」
美砂はのどかに向かって叫んだ。
千雨が茂みから出てくる。
ポケットピストルを持つ右腕を踏みつけ、美砂にグロックを向ける。
千雨の顔は笑っていた。
「弱い人間にかまってるから、そういうことになるんだよ」
「あんた……」
千雨は余裕の笑みを浮かべている。絶体絶命、他に逃げ道が無かった。
「くっ!」
(円ごめん!)
美砂は覚悟して目を閉じた。
しかし銃は火を吹かなかった。代わりに耳を突く銃弾の連謝音。
目を開けると銃を構えた左手が血まみれになって血が顔に落ちる。
美砂は自分の右手に力を込めて千雨の足をはらう。
バランスを崩した千雨の両足に銃弾を一発ずつ食らわせた。
「ぐうぅぅぅ…」
千雨が苦しみだす。
美砂は音のした方を見た。
そこには涙目の震える手で千雨の落としたマシンガンを構えているのどかの姿があった。
「あ…あ……わ、私……」
マシンガンを落として取り乱すのどか。
立ち上がってのどかに向かう美砂。
「柿崎さん…私…私は…」
「大丈夫…のどかは私の命の恩人よ…」
抱きしめて取り乱すのどかを落ち着かせる美砂。
「うああああぁああぁぁああぁあ!!」
千雨が右手でグロックを拾い、うつ伏せの体勢で銃を撃つ。
「危ない!」
美砂がのどかを抱きしめた体勢で横に飛び、あと一発のポケットピストルを撃つ。
だが無理な体勢と体の痛みで照準が大きく反れた。
反れた弾丸は千雨には当たらず千雨のデイパックに当たった。
ドガァーーーーーーーーーン
大地を揺るがすような爆音が響いた。
美砂の弾丸は千雨のデイパックの中の手榴弾に当たって爆発、残りの二つにも誘爆した。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!」
近くで爆風をもろに受けた千雨の体は真っ赤な炎に包まれた。
「うぁあ゛あああああぁぁああああああ゛ああぁっぁああああああ!!!!!」
火で全身を焼かれ悶え苦しむ千雨。
「見ちゃ駄目!」
のどかの顔を体に押し付ける。
やがて悲鳴が弱くなり千雨の顔は地面に落ちた。
(円…仇はとったわ…)
黒こげになった千雨を見て美砂は心の中で円に話しかけた。
「行こう、のどか」
傷ついた体に鞭打ってのどかを背負い、美砂は作戦本部に向かって走り出した。
【出席番号25 長谷川千雨 死亡 残り5人】