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ネギま!バトルロワイヤル2

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匿名ユーザー

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夕刻の黄昏と調和するかのように、小高い岸壁から落ちる滝の音が間断なく聞こえてくる。
悪夢のようなこのゲームには全く似つかわしくない美しい自然のハーモニーだった。
 たった今、長瀬楓(出席番号20)は破いたブラウスを包帯代わりに、親友・古菲(出席番号12)
の足の 応急処置をしたところだった。彼女の話では、ここに運ばれてくるヘリの中で兵士達に抵抗
しようとして、足を銃で撃たれたとのことだった。彼女がここにくるまで座って途方にくれ
ていたという。

傷口からの血液の流れはまだ止まっていなかったが、適度にきつく巻いたその布で、
数分以内にとりあえずの止血はできると思われた。滝の水は綺麗に済んで見えるので、
あの水で傷口を洗ってもいいかと考えたが、見ず知らずの島でのこと、どんな病原体が
潜んでいるかも分からないので、止めておいた。ただ、デイパックの中のミネラルウォーターは
わずか2リットルである。おそらく亜熱帯に属するこの高温多湿の島では、脱水症状を免れるために、
衛生面のリスクは侵してでも滝の水を飲まざるを得ない状況になるかもしれない。

「古、もしかして武器だけじゃなくデイパックも支給されなかったのでござるか?」
「・・・そうアル」
 古菲は消え入りそうな声で答えた。足を怪我し満足に歩けそうもない状況下で、
武器も食料すら支給しないするとは、なんという悪趣味な放置プレイであろうか。
死ねと言っているようなものである。
運良く楓が通りかからなかったらどうなっていたことだろう。

それはさておき、楓はこれからどうしたものかと試案していた。弾丸は膝を直撃
している。膝蓋骨や半月板が損傷しているかもしれない。これでは歩けないのも無理は
ない。迷った末、楓は切り出した。

「拙者が、助けを呼ぶでござる」
「楓・・・?」
「古を背負って移動してもいいでござろうがそれでは襲われた時ひとたまりもないでござる」
確かにデイパックを持ったまま、同い年の人間を背負って険しい道を移動するのは
流石の楓でも生易しいことではない。
移動速度は極端に遅くなるし、万一敵に襲われたらとっさの対応ができない。

楓は裕奈と同じように、ヘリの窓から他の多くのヘリが島の北東部へ飛んでいくのを
見ていた。つまり、滝が落ちてくる小崖を上って続く丘陵地帯を越えて島の東側に出れば、
クラスメートに遭遇する可能性が高いということだ。できれば古菲を担ぎながら安全に
移動するために、2人以上の仲間が欲しいところだった。一人に古菲を支えてもらって、
もう一人が古以外の3人分のデイパックを運び、武装した残りの一人が周囲の警戒に
当たりながら、安全な家屋か洞窟まで移動するという段取りだ。
より多くの仲間を見つけるためには、東に向かわなければならない。しかし、そのためには
丘陵地帯を越えなければならない。平地ならともかく、岩山を上り下りするのでは、
急ごしらえの松葉杖も役立たないだろう。

「ワタシを…置いていっちゃうアルか…」
「大丈夫でござる。拙者の荷物を置いていくから中身は好きに使っていいでござる。
 武器も置いていくから出来るだけ早く戻ってくるでござる。」
 そう言って楓は、支給された22口径のデリンジャーを古菲に手渡した。
「これは“でりんじゃぁ”と言う飛び道具で一応上下2連発撃てるようになっているでござる。」
 足が折れて動けない分、この武器で自分の身を守れ、ということだった。

「でも、楓は、丸腰で大丈夫アルか?」
「大丈夫でござる。こういうときの方が動きやすいでござるから」
「・・・・・・わかったアル。ワタシ、楓を信じて待ってるアルね」
「拙者が戻るまで、出来るだけここにいて欲しいでござるな。もし誰か他の友達に会って、
 その子らとどこか別の場所に行くことになったら、置手紙でも置いてくナリよ。」
「わかったアル。気をつけてね。」

「ニンニン」
古菲を笑顔で見届けると、楓は南側に向かってかけ出した。100m程走り、登りやすそうな
場所を見つけると、楓は砂と草に覆われた岩石質の斜面を登り始めた。

楓がいなくなったと同時期に、夕刻の闇が深くなってきた。滝周辺は木がまばらで
見通しが良いため、まだ淡い夕光の明度が保たれているいるが、周辺の雑木林の中は、
夜のように暗くなっているだろう。闇の中に一人ぼっち、おまけに足を負傷してほとんど
歩けない――古菲は徐々に取り残されたような孤独感が心を支配し始めた。

開始当初の喧騒もどこ吹く風といったところで、今や作戦本部司令室の面々は暇を
もて余していた。生徒側が不穏な動きを見せない限り、教師達も兵士達も口でも開けて
モニターを眺めてさえいればいいのだ。仕事があるのは、死亡発表の放送を行うタカミチと、
生徒の動きを逐一記録する軍の記録係。そして計器類に異常がないか監視する技官達だった。
もっとも放送を行うのは6時間おきだし、記録係や技官達も3交代制で大部分は待機要員だった。

ちなみに本部の組織構成は、タカミチが総司令、しずなと新田が副指令で、学生時代に
情報処理技術者の資格を取得した瀬流彦が、情報処理班の班長、つまり技官達を統括する
最高責任者であった。歴代BR法には、“シビリアンコントロール”の条文があり、
全プログラムにおいて、教員達の下に軍人達が配属されるような指揮命令系統を作ることが
義務付けられている。もっとも、これも名目的なものに過ぎず、教師の選抜は軍関係者が
BRゲームを忠実に遂行してくれそうな者をリストアップして、その中から任命される訳で、
――あくまでも教育の一環として行っているという――国民向けのプロパガンダに過ぎない。
たかが数日後に解散される臨時作戦本部内での話である。教師側のメリットはたかだか数万円の
特別手当が支給されるぐらいだった。教諭達がBR遂行を妨げるような行動を取れば彼らはもちろん
拘束されて、軍人達が指揮を代行するだけの話である。形だけの文民統制であった。

 ただ、“プログラム”の主旨に反しない限り、教諭達にはそこそこ自由な裁量と権限が
与えられている。特に専守防衛軍に人脈をもっているタカミチには、兵士達も一目置かざるをえない。
生徒達各々のスタートポイントや支給武器を決めたのもタカミチである。年配の新田を
差し置いて、タカミチが総司令に抜擢されたのはそんな経緯がある。プログラムが終わった後も、
麻帆良学園内での彼の影響力は強くなっていくだろう。


 タカミチ達4人には、士官クラスの軍人達と同様、この数日間を過ごすための個室が与えられて
いた。それぞれ(中学校の)音楽準備室や美術準備室を改造した粗末なものだったが、基地の
共同宿舎内に寝泊りしている兵士達より明らかに優遇されていた。
タカミチが周囲を見渡すと、仕事がなくて退屈した兵士達が、将棋や麻雀に興じていた。

「それにしても・・・・・・随分意図的にみんなを配置したのね」
中央の大画面を見ながらしずなはタカミチに同意を求めた。

「ああ、BRの醍醐味は生徒同士を戦わせることだからね。明石君と大河内君、
 鳴滝姉妹、古君と楓君の位置が近いのは偶然じゃない」
「え?そうだったの。でも、おかしいわ。仲良し同士を最初に遭遇させたら、
 彼女らはペアを作っちゃうんじゃない?」

 タカミチは兵士が用意してくれたコーヒーを手に取った。
「それが狙いだよ。彼女らが一人で歩いている時に、誰か別の生徒と出会ったら、
 怖さが優先されて、あまり信用できないクラスメートでも妥協してペアを組むだろう。
 その後、自分の親しい友達に会ったらどうする?仲の良くないあの子でも大丈夫
 だったんだから、親友だったらなおさら安全だ。そうやって大グループが出来るだろう。
 最終的にはクラス全体が一つのグループにまとまるかもしれない。それじゃあつまらん」
 タカミチはテーブルの傍らに置いてあったボールペンを手に取り、くるっと回転させてみせた。

「ということは、最初から親友同士をくっつけて小グループをつくらせて、
 小グループ同士での疑心暗鬼を起こさせようって寸法ね?一人でいる時は不安の方が勝るけど、
 何人かでグループを作って安心を得たら、猜疑心の方が強くなる。でも、
 そんなにうまくいくかしら」
「いろいろ手段はあるさ。例えばゲーム後半になったら今回のゲームの優勝者は
 2人に変更しますとアナウンスするとかね。BR法案ではゲームの運営について
 ある程度柔軟な権限が指揮官である総指令に認められている。それに、こちらのいいように
 撹乱してくれる伏兵も用意している。埋伏の毒ってやつだね。」
「ふぅん・・・・・・」
理解したのかしなかったのか、しずなの返事は曖昧だった。

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