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ネギま!バトルロワイヤル5

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匿名ユーザー

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楓がいなくなって一時間あまり経つ。古菲はぼんやりと、変わらずに飛沫を上げる滝の音を
聞いていた。辺りはめっきり暗くなってしまった。月明かりが唯一、今の彼女の心の支えだった。
「楓・・・・・・早く戻ってくるアル」
古菲は力なくそうつぶやいた。足を撃たれて動けず、暗い土手でただ一人座っているしかないと
いうのは、中学生の女の子にとってとても心細いものだ。古菲はすっかりしょげ返っていた。

「ん?」
張り詰めた気配を感じ、ゆっくり顔を上げた。
「クー?」
立っていたのは自分と同類のチャイニーズ風の少女だった。
「……チャオ」
気がつくと超鈴音(出席番号19)がそこに立っていた。
名前を呼ぶと超はにっと笑って軽く手を振る。
それは一見いつも通りの笑顔に見えて、実は全く別種の、根本的に異質なものだった。
敏感にそれを察知し、古は徐々に速くなって行く鼓動を何とか抑えようとした。
「クー、どうしたネその足?」
「あ…撃たれちゃって…アハハ」
とりあえず笑いかけておく。
「それじゃあ、さっきまでずっと一人だったノ?」
「楓と一緒だったアルが、今は助けを呼びにいったアル」
「…ふぅん」
世間話と変わらないような会話だ、二人の間隔がやけに空いている事を除けば。
古の目には、超の目が全く笑っていないように映る。
本能が警告灯を点滅させ、エマージェンシーコールを響かせる。
―――ココハ危険ダ、スグ逃ゲロ、一刻モ早クココカラ離レルンダ―――
「どしたネ?」
「いや、何でもないアルよ」
やはり目が笑っていない。
無意識のうちに握り締めていた(楓から譲り受けた)デリンジャーのグリップ部分が、
ぴったりと右の手のひらに吸い付く。逃げるのが出来ないならどうすればいいか。
答えを探すまでもない。殺すか、殺されるか。道は二つしかない。
そして後戻りは多分不可能。

「ねぇ、クー」
超がこちらを見ている。古は彼女の右手に注意を払っていた。
何をするでもなく、しかし下げたまま動かそうとはしない。
同じように、超の視線がさりげなく自分の右手の中のデリンジャーに
注がれているのにも気付いていた。
ある程度距離を置くと、それ以上彼女は近づいて来ようとはしなかった。
「何アル?」
必死に平静を保とうとするのだが、薄く笑みを貼り付けたその顔が怖い。
「何でこんな事になったんだろうネ」
「ホントアル。何で、こんな事に」
自分と超との距離は5メートル程だった。初動が早ければ先に相手を倒す事も
不可能ではない。しかし既にネタがバレている自分と、一体何を持っているのか
解らない彼女とでは明らかに自分が不利だ。
「こんな事で死にたくはないネ」
「そうアルよ」
(何、あの目。殺すつもり十分じゃないアルか……)
自分を見据える彼女の瞳孔は必要以上に開き、薄気味の悪い光を帯びている。
相手に気付かれないように、デリンジャーを握る手に少しだけ力を加えた。
進んで人殺しなんてしたくなかった。でも、相手が自分を殺すつもりなのに
はいそうですかと言って易々と殺されるわけにも行かない。

「クー」
「…何アル?」
「ワタシ、まだ死にたくないネ」
「…ワタシもアル」
「そっか」

無感動な相槌と、超が動いたのはどちらが早かっただろうか。解らないが、
そんな事はもう認識する必要がなかった。
躊躇せずに古は超に向かってデリンジャーの引き金を引いた。破裂音が鳴り弾丸が発射される。
しかしギリギリのところでかわされ、古の目の前に現れる超、
古の視界に映ったのは、銀色の細いアイスピックを握った超の手。
古は振り下ろされたそれをまだ動く右足で足場を蹴ってどうにか避けた。
超の身体が空回りしている間に地面に転がって体勢を整え、取り落としかけた
デリンジャーを握り超に向けたが

「アッ!!」
超が素早く横に飛び、間髪いれずにデリンジャーの握られた手を弾く。
デリンジャーが岩場の下の段にまで落ちていく。今の古の足では取りにいけない。
「終わりネ!」
左腕で古の体を押さえつけ、右手でアイスピックを逆手に持ち振り上げる。
―――死ぬ。殺される。
一瞬そんな言葉が頭をよぎったが、ここで死ぬ訳にはいかない。
「うあああああああああ」
古は下半身に力を込めて傷ついた左足を上げた。
ドスッ
「ぐ…ぅ…!」
左足のふくらはぎにアイスピックが深々と突き刺さる。怪我をした足を犠牲にしたのだ。
(ど…どうせ今使い物にならない足アル…)
しかし古の目からは痛みで涙がこぼれる。

大振りする格好になった超はバランスを崩す。
よろけて地面に手をつく所で右足で超のわき腹に蹴りをかます。
「!!」

痛打されて地面に転がり、息が詰まって動けなくなったところに乗り上げられる。
必死に手足をばたつかせても、頭をがっちりと押さえつけられていては
さすがの超も身動きが取れない。
古は足に刺さったアイスピックを抜くと勢いよく超の首めがけて振り下ろした。

「あ゙……!!」
アイスピックの先がずぶずぶと沈んでいく。
細かく痙攣するような動きを見せた超の身体。
あまり血は出なかったが、それでも幾らか飛び散ったそれが
古の顔と制服に赤い水玉模様を作る。
既に超の意識はなかった。凶器が延髄を正確に破壊し、即座に身体中の
機能を停止させていたからだ。恐らく痛みも苦しみも一瞬だっただろう。
「はぁッ、はぁッ……あ…あぁ…」
途端に体が震えて超の体から急いで離れる古。
目の焦点が定まらないがそんな事を気にしている状態ではなかった。
今すぐこの場を離れたかった。


「う…お、えぇぇ」
途端に嘔吐した。
頭に鉛の弾でもぶち込まれたような感覚だった。
古は地べたに四つん這いになったまま嘔吐を繰り返した。
「ゲホッ、げ、ぇ……っ……」
胸を掻きむしっても震えは止まらない。
瞬きひとつ、息のひと吸いがままならない。
(殺した!殺した!ワタシは人を殺した!!)
たった今、超にしたことがビデオを巻き戻して見てるように思い出す。
目に映る自分の手が他人のもののように見えた。
泥と砂と血に汚れた両手。
(この手でワタシはチャオを…)
「は、はは……」
古は自分の中で何かが壊れていくのを実感していた。

【出席番号19 超鈴音 死亡  残り23人】


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