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化学進化
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化学進化とは
無機物から有機物が生成され、原始的な生物の誕生に至るまでの過程を化学進化という。 化学進化は、旧ソ連のオパーリンが最初に唱えた。
生命の誕生
地球は、太陽を中心に公転していた多数の微惑星が衝突合体することによって、約46億年前に誕生した。 誕生したばかりの地球は熱いマグマに覆われていたとされ、その後、原始大気が生じ、やがて地球表面の温度が下がると、大気中の水蒸気が凝縮して大量の水が生じ、原始海洋が形成された。生命誕生の条件が整ったのは約40億年前と考えられており、生命が誕生した場所は、紫外線が降り注ぐ地上ではなく、紫外線の影響が少ない水中だったとする説が有力である。
微惑星
太陽系形成初期に形成された大きさ数キロメートル程度の天体のことを微惑星という。原始地球には微惑星が降り注ぎ、地表温度が1000°Cを超えマグマの海が形成された。その後、微惑星の衝突回数が減少し、表面温度が低下すると、水蒸気が雨となって降り注ぎ、原始の海が形成された。
化学進化
原始地球は、水蒸気や二酸化炭素、窒素、硫化水素などの還元型大気で覆われていた。地表の冷却化が進むと海ができ、深海にある熱水噴出孔(チムニー、ブラックスモーカー)では、高温高圧条件下で化学反応が活発に進み、メタンやアンモニア、水素、水蒸気などの酸化型大気が、宇宙線、紫外線、放電、熱、圧力、無機触媒などによってアミノ酸、ヌクレオチド、糖、 そしてタンパク質や核酸、多糖類、脂肪などの有機物が生成されたと考えられている。この説は還元型大気説と呼ばれる。そして、それら高分子の有機物が集合して外界との境界面を持った構造体であるコアセルベートやマリグラヌールなどができたと考えられている。こうして、細胞様の構造、そして生命の誕生へと向かっていったのであった。
コアセルベート
タンパク質などの高分子化合物のコロイド溶液が集まって外界との境界面が形成されたものを、コアセルベートといい、流動性があり、物質の出入りが行われる。分裂増殖が起こったり、酵素が生じると代謝が行われたりする。
マリグラヌール
重金属を増やした海水中にアミノ酸を溶かし、105°Cに加熱することでできる構造体を、マリグラヌールという。
ミラーの実験
原始大気を再現した混合気体(メタン、アンモニア、水蒸気)中で放電し、アミノ酸などの有機物の生成に成功した。 ただし、ミラーが想定した原始大気は、現在考えられている原始大気とは異なっている。実際の原始大気のほとんどは二酸化炭素で、他にも一酸化炭素、窒素、水蒸気などを含む混合気体であったとされる。
ミラーの実験に似た実験
水や窒素、メタンなどの単純な物質を、Fe(NH4)2(SO4)2、MnCl2、ZnCl2、CuCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2、NH4Clなどの触媒の酸性条件下で、高温高圧(325°C、200kg/cm2)で反応させると、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、セリンなどといったアミノ酸が発生した。
自然発生説
紀元前4世紀のアリストテレスによって、生物が無生物から生まれるという考え、自然発生説が唱えられたが、レディの実験、パスツールの実験によってそれは否定された。
レディの実験
ガーゼでハエが入らないようにした容器中では、うじ虫は発生しなかった。
パスツールの実験
17世紀後半に、レーウェンフックなどにより、微生物の存在が知られ、物が腐るのも微生物の働きによることがわかってきた。スパランツァーニは培養液の沸騰中にフラスコの口のガラスを溶かして密封したところ、微生物が発生しないことを示した。スパランツァーニの実験で、容器内に空気が存在しないという批判(ニーダム)に答えるために、パスツールは、白鳥の首つきフラスコを用いて、空気が入っても微生物が入ってこなければ、内部の培養液が腐らないことを示し、自然発生説を完全に否定した。
膜の誕生
現在の生物の細胞膜は、リン脂質とタンパク質で構成されている。水中にリン脂質があると、自動的にある種の小胞が形成される。その小胞は二重の脂質膜を持つ球状の構造で、内側に水を含み外界から隔離されている点で細胞に似ている。化学進化の過程で、二重の脂質膜からなる小胞が出現し、その中に核酸やタンパク質などが取り込まれて細胞様の構造が生じたと考えられている。
自己複製系の誕生とRNAワールド
始原生物では、RNAが遺伝情報と酵素の両方の役割を果たしていたと考えられている。また、酵素のような触媒作用をもつRNAをリボザイムという。その頃の時代をRNAワールドといい、現在のようにDNAが遺伝情報を担い、タンパク質が酵素の役割を担っている時代をDNAワールドという。