犬猫おもいで秘宝館システム5臨時@ wiki
水仙堂雹様依頼 ニニス様作品
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匿名ユーザー
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その昔、大変な戦いがありました。
これはその戦いに従事した、名もなき整備士が見たお話です。
これはその戦いに従事した、名もなき整備士が見たお話です。
その日は眼鏡をかけて黄色いジャンパーを着た補給官がやってきた次の日で、整備士が大幅に増員された日でもありました。
増員された整備士たちは、現場に到着すると思わず仲間たちと顔を見合わせ、それから手に手に工具を持って駆け出しました。整備状況から前線での惨状がありありと見え、自分たちはこれをなんとかするために呼ばれたのだと肌で実感したからでした。
そのうちの一人は、前からここにいて先輩にあたる整備士に説明を受けている途中、あるものを見て、ついぽかーんとしてしまいました。
パイロットスーツを着た人が、左右から眼鏡の補給官と髪が黒すぎて青く見える美少年に抱きつかれていました。
違いました。
肩を抱かれていました。
まあ密着しているのは同じなのでこの程度の勘違いは誤差だと思うことにして、増員整備士は先輩整備士にあの人達は誰ですかと聞きました。
あれはヤガミさんと水仙堂さんと青さんだよと先輩整備士は親切に教えてくれました。でもそれだけだと誰が誰だかわかりませんでした。
増員整備士はもう一度そっちを見ました。
その時には、色からして多分あれが青さんかなと思われる美少年は別のパイロットを壁ドンしていました。残された推定ヤガミさんと仮定水仙堂さんは、書類の山を持ってなにか話しているようでした。
いや近くない?
増員整備士は率直にそう思いました。
さっきは肩を抱いていたので、つまり密着状態だったのでいいとして、今はもう離れてるのにお互いの腕がぶつかりそうなのです。
近い……近くない……? でもあの二人が気心知れた戦友なら何もおかしくは……いやそれでもやっぱり近いな? いやいやよく見ればそんなに近くないかも? これがここの人たちの距離感ですと言われたらそうかも?
増員整備士はよくわからなくなってきました。
どうやら眼鏡の補給官はパイロットスーツを着たままのパイロットに無茶振りかなにかをしているようでした。パイロットに書類を見せるとだいたい微妙な顔をされるものですが、今回は特にその書類が山になっています。眼鏡をかけたパイロットは書類の山を受け取り、ぺらぺらと何枚かめくって中を確認しているようでした。
その時、増員整備士が我が目を疑うような事が起こりました。
眼鏡の補給官がパイロットの首にかかったタオルの端を掴んだかと思うと、それをそのまま相手の顔に持っていって額を拭ったのでした。
近い近い近い!!
増員整備士は心の中で叫びました。
確かにここは人もたくさんいて機械もたくさんあって暑いのですが、見た目からしてあの眼鏡の補給官はそんなことしなさそうでしたし、そもそもハンカチの二、三枚は持ち歩いていそうでした。タオルを勝手に使われたパイロットはといえば、どうやら度量の大きい人物だったらしく、勝手に使われたことを怒る様子もなく、タオルを首にかけ直してお礼を言っているようでした。
増員整備士は、パイロットってすごい、自分だったらとても平常心じゃいられない、と思いました。
そのパイロットのすごさはそれだけにとどまりませんでした。
書類の中で気になることがあったのか、パイロットは小首をかしげて補給官になにかを話しかけました。補給官は、恐らくは確認のために書類を横から覗き込みました。
近ァい!!
増員整備士は再び心の中で叫びました。
パイロットよりも補給官のほうが背が高いので、補給官のほうが自然と覆いかぶさるような姿勢になるわけですが、パイロットのほうはやはり動じている様子がありません。動じているのは見ているほうです。
親切な先輩整備士が、あの水仙堂さんというパイロットは腕が良くて、最速で山を超えたうちの一人なんだよ、と教えてくれたので、とりあえずどっちがどっちかの区別はつくようになりました。
すごいパイロットはすごいんだなあ、と増員整備士は思いました。
増員された整備士たちは、現場に到着すると思わず仲間たちと顔を見合わせ、それから手に手に工具を持って駆け出しました。整備状況から前線での惨状がありありと見え、自分たちはこれをなんとかするために呼ばれたのだと肌で実感したからでした。
そのうちの一人は、前からここにいて先輩にあたる整備士に説明を受けている途中、あるものを見て、ついぽかーんとしてしまいました。
パイロットスーツを着た人が、左右から眼鏡の補給官と髪が黒すぎて青く見える美少年に抱きつかれていました。
違いました。
肩を抱かれていました。
まあ密着しているのは同じなのでこの程度の勘違いは誤差だと思うことにして、増員整備士は先輩整備士にあの人達は誰ですかと聞きました。
あれはヤガミさんと水仙堂さんと青さんだよと先輩整備士は親切に教えてくれました。でもそれだけだと誰が誰だかわかりませんでした。
増員整備士はもう一度そっちを見ました。
その時には、色からして多分あれが青さんかなと思われる美少年は別のパイロットを壁ドンしていました。残された推定ヤガミさんと仮定水仙堂さんは、書類の山を持ってなにか話しているようでした。
いや近くない?
増員整備士は率直にそう思いました。
さっきは肩を抱いていたので、つまり密着状態だったのでいいとして、今はもう離れてるのにお互いの腕がぶつかりそうなのです。
近い……近くない……? でもあの二人が気心知れた戦友なら何もおかしくは……いやそれでもやっぱり近いな? いやいやよく見ればそんなに近くないかも? これがここの人たちの距離感ですと言われたらそうかも?
増員整備士はよくわからなくなってきました。
どうやら眼鏡の補給官はパイロットスーツを着たままのパイロットに無茶振りかなにかをしているようでした。パイロットに書類を見せるとだいたい微妙な顔をされるものですが、今回は特にその書類が山になっています。眼鏡をかけたパイロットは書類の山を受け取り、ぺらぺらと何枚かめくって中を確認しているようでした。
その時、増員整備士が我が目を疑うような事が起こりました。
眼鏡の補給官がパイロットの首にかかったタオルの端を掴んだかと思うと、それをそのまま相手の顔に持っていって額を拭ったのでした。
近い近い近い!!
増員整備士は心の中で叫びました。
確かにここは人もたくさんいて機械もたくさんあって暑いのですが、見た目からしてあの眼鏡の補給官はそんなことしなさそうでしたし、そもそもハンカチの二、三枚は持ち歩いていそうでした。タオルを勝手に使われたパイロットはといえば、どうやら度量の大きい人物だったらしく、勝手に使われたことを怒る様子もなく、タオルを首にかけ直してお礼を言っているようでした。
増員整備士は、パイロットってすごい、自分だったらとても平常心じゃいられない、と思いました。
そのパイロットのすごさはそれだけにとどまりませんでした。
書類の中で気になることがあったのか、パイロットは小首をかしげて補給官になにかを話しかけました。補給官は、恐らくは確認のために書類を横から覗き込みました。
近ァい!!
増員整備士は再び心の中で叫びました。
パイロットよりも補給官のほうが背が高いので、補給官のほうが自然と覆いかぶさるような姿勢になるわけですが、パイロットのほうはやはり動じている様子がありません。動じているのは見ているほうです。
親切な先輩整備士が、あの水仙堂さんというパイロットは腕が良くて、最速で山を超えたうちの一人なんだよ、と教えてくれたので、とりあえずどっちがどっちかの区別はつくようになりました。
すごいパイロットはすごいんだなあ、と増員整備士は思いました。
戦いはいつかは終わるもの、あの大変な戦いも終わりを迎えるときが来ました。
激戦を経て今やいっぱしの風格を備えるに至った増員整備士も、撤収に備えて職場の片付けなどをしていました。
その途中、あの眼鏡の補給官ことヤガミと眼鏡のパイロットこと水仙堂が二人並んで立ち話をしているところを見かけました。一段落だな、そうですね、くらいの話をしているようでした。
撤収予定の増員整備士は素早く物陰に隠れると、そっと二人に向かって手を合わせました。
補給官ヤガミの方針転換とパイロット水仙堂のマニュアルは戦いに大いに貢献しました。ですから、感謝の気持ちを表さずにはいられなかったのです。
そんな増員整備士がはっと気づくと、周りで他の整備士たちも同じようなことをしていました。
言葉は必要ありませんでした。
整備士たちはただ黙って、こくり、こくりと頷き合いました。
激戦を経て今やいっぱしの風格を備えるに至った増員整備士も、撤収に備えて職場の片付けなどをしていました。
その途中、あの眼鏡の補給官ことヤガミと眼鏡のパイロットこと水仙堂が二人並んで立ち話をしているところを見かけました。一段落だな、そうですね、くらいの話をしているようでした。
撤収予定の増員整備士は素早く物陰に隠れると、そっと二人に向かって手を合わせました。
補給官ヤガミの方針転換とパイロット水仙堂のマニュアルは戦いに大いに貢献しました。ですから、感謝の気持ちを表さずにはいられなかったのです。
そんな増員整備士がはっと気づくと、周りで他の整備士たちも同じようなことをしていました。
言葉は必要ありませんでした。
整備士たちはただ黙って、こくり、こくりと頷き合いました。
我々は壁、天井、風に揺れるペンペン草、敷地の隅っこに何故か落ちている小さな丸ネジ、空気中に漂う微粒子である。
邪魔はすまい、野暮もすまい。
距離が近かろうと遠かろうとどうでもよいではないか。
あの二人――だけではないけれど――のおかげで多くのものが助かった。
もう、それでいいではないか。
邪魔はすまい、野暮もすまい。
距離が近かろうと遠かろうとどうでもよいではないか。
あの二人――だけではないけれど――のおかげで多くのものが助かった。
もう、それでいいではないか。
そこには、同じ戦場をくぐり抜けた同志が持つ、言葉を超えた連帯感がありました。整備士たちはお互いの中に同じ思いがあることを確信し、再び眼鏡の二人に物陰からそっと視線を送ったのでした。
いややっぱり近いよあの二人!
【了】
依頼者:ニニス@るしにゃん王国様【国民番号:01-00914-01】
製作者:水仙堂雹@神聖巫連盟様【国民番号:36-00690-01】
2024年2月24日お引渡し
製作者:水仙堂雹@神聖巫連盟様【国民番号:36-00690-01】
2024年2月24日お引渡し
【製作者コメント】
楽しいご依頼ありがとうございます!モブちゃんの自我が強めですが、でも絶対こうだと思って書きました。ご期待に沿えていたら嬉しいです
楽しいご依頼ありがとうございます!モブちゃんの自我が強めですが、でも絶対こうだと思って書きました。ご期待に沿えていたら嬉しいです
作品への一言コメント
感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です)
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- ヤガミさんと水仙堂、それからそれを遠くから見つめる増員整備士ちゃんがとてもいい感じに描かれていて、指名させていただいた甲斐がありました。良い作品をありがとうございました。 -- 水仙堂 (2024-02-24 15:39:42)
- この作品の元ネタはこちらでした。 https://tendice.seesaa.net/article/201901article_6.html -- 水仙堂 (2024-02-24 16:08:38)