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  • 犬猫おもいで秘宝館システム5臨時@ wiki
  • 水仙堂雹様依頼 里樹澪様作品

犬猫おもいで秘宝館システム5臨時@ wiki

水仙堂雹様依頼 里樹澪様作品

最終更新:2024年02月25日 19:46

匿名ユーザー

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管理者のみ編集可
どうしてこうなった。


ここ数日ずっと言葉が頭の中を巡っている。
この世で起きる物事には原因があるというが、それが一切合切何もわからないからだ。
わからないが、それでも自分は今、

「ぬぅおおおおおおおお!」

身長ほどの角材を地面に空けた穴に差し込んで、全力で体重をかけている。
その穴の上、目の前には光り輝く紋様が並べられた円が描かれている。
いろいろわからないことはあったが、とにかくこれを壊さなければいけない。
これがうまく行かなければここ数日の自分の頑張りが苦労が血と涙がすべて無駄になる。

「ふんぬぅぅぅぅうう!!」

だが堅い。
マジで堅い。
ただただ堅い。
ひたすらに堅い。

「ぬううううううあ……あ」

折れた。
オイオイオイオイオイオイ、これで4本目だぞ?!
文句もそこそこに汗をぬぐい、折れた角材を放り投げ、新しいものを差し込む。
ふぅ、と深呼吸。
ようし、よしよし、焦るな。

「……ぁぅ……大丈夫デスか?」

傍らに立っていた、銀髪の女性から心配そうに語りかけられた。
そう、焦ってはならない。
彼女を心配させてはならない。
男にはそういう恰好を付けないといけない時があり、今がまさしくそれなのだ。
ふっと笑ってサムズアップ。

「     、          」

おや、なんでそんな不思議そうな顔をしているんですか。
余裕ですよ、心配しないでくださいって今言いましたよね。
もう一度そう言おうとして、気付いた。

声が出ていない。

「 、  、  」

なんかわからないけどすぅっと目の前が暗くなった。

あ、いかん

薄れる意識の中、彼女に心配しないで欲しいと微笑みながら、倒れまいと角材にしがみついた。
我ながら器用な気絶の仕方をしたなと思ったが、一瞬自分の意識は途絶えた。


ああ、本当に、どうしてこうなった。



/*/



「なんて?」
「だから、アクマだよアクマ」

自分の店にふらっと現れた昔馴染み。
あまり表立って言えない仕事人のその斡旋を行う人間。
引退してから普通の町中華を営んでいる自分とはもう縁がないと思ったそいつが急にやってきた。
あまりというかかなり歓迎したくない客だったが、それで常連さんに迷惑をかけてもいかんので急遽閉店にして話をしている。
何か出してくれというのでしぶしぶ作った当店自慢の旨辛灼熱麻婆豆腐を提供して、それで話を聞いての第一声がそれだ。

「サクマならちょっと前にくたばったんじゃないか?」
「馬鹿、『悪魔』だって。今回の競合相手が使ってるんだとよ」

面倒そうだからはぐらかそうとしたが、ダメか。
昔の仕事はやっぱりあまり人には言えないが、なんにしても魔法を用いていろいろなことをやった。
足を洗って夢だった料理人になって、その力を活かしてなにかできないかと考えた。
試行錯誤の末苦労して作り上げたのが熟成を魔法で早めるマジカル醤!
至高の一品というほどではないが、そこらの高級店でも出せない味の源として地域の皆様の胃袋に貢献できていると自負している。
ここ数年は店をオープンするための修行と店の運営で、他のことをやる時間なんぞほとんどなかった。
確定申告つらいよほんと……。
1週間かけて探し当てた領収書のことを思い出しながら、やっぱりそういう業者とは関わりなかったなと判断する。

「ある程度調べはついてるだろうけど、俺は関係ないぞ」
「本当かぁ?……と言いたいところだが、この旨さを出すためなら当然か。いや、マジで旨いな」
「そらどうもありがとう。それでわかる通り俺はもうただの料理人だ。ほぼ毎日次の日の仕込みでいっぱいいっぱいだよ」
「……そうか、よくわかった。ごっそさん」
「おう、お粗末様」

半分いやがらせでファミリー向けの大皿だったんだが、完食しやがった。
……ちょっとだけ嬉しいじゃねえかコノヤロー。
それが伝わったか、斡旋人はニヤニヤと笑いながら茶を飲む。

「まあ、普通の中華屋として報告はしておくかなあ」
「おう、そうしてくれ」
「言われなくてもちゃんとするさ。んじゃ、失礼するかな」
「おうおう、今度はちゃんと客として来いよ」
「ははっ……そりゃ無理だな」

その一言だけ声色が変わった。
昔取ったなんとやら、相手の意識が変わったことが理解できた。
ジャケットの下に素早く手を差し込む動きで理解が確信に変わった。
相手より早く机を押し出して腕を動かせないように阻害。
後ろが壁で完全に固定できればよかったんだが、店の真ん中だったからそれは諦めて厨房にバック宙で飛び込んだ。

ドドドッ

隠れた頭の上を銃弾が通っていくのを感じた。拘束甘かったな。
オープンキッチンだから逃げようにも丸見えだし、一区切りにしかならない。
引退してしばらくこういう無茶していなかったからたった2アクションなのにもう息が切れる……年かな。
……ふぅ、少し引き延ばすか。

「おいおいおいおい、失礼するんじゃないのか!」

ドンッ

「だから失礼してるだろ?店壊して悪いな」

ドンッ

あ、皿が割れた。安くねえんだぞあれ。
なんにしても古巣は悪魔に関わる何かを排除したいらしい。
よっぽどやられてるんだなあ……いい気味だ。
だがこのままやられるわけにもいかんし、どうにかお帰り願うか。

「そうか!適当に壊したら早く帰ってもらえないかなあ?!」
「残業がそこで息してたらできないだろ!!」

俺は残業扱いかい。
だがこっちの息も整った。
確かあいつの獲物はコルトガバメント、装弾数は8発。
5発撃ったなら残弾は3か。
それならば、あの方法で行くか。
カウンター下の冷蔵庫を開けて野菜をいくつかと、お目当てのものを取り出す。

「そんなら終わらせてやるよ!」

キャベツ、白菜、冬瓜。
ちょうどよさそうな大きさの野菜三つを投げつける

ドドドッ

律儀に迎撃してくれてありがとう!
心の中で感謝をして、怒りを込めて立ち上がる。
弾倉が落ちる音が聞こえるのと同時にカウンターに足をかける。
が、

「1挺だけとはいってねえぞ!」

2挺目を取り出した相手がこちらに照準を合わせる。
ふ、一瞬焦ったが、想定済み!
直線で向かうのではなく、天井に向かって飛び上がる。

ドドッ

さっきまでいたカウンターに弾痕が刻まれる。
この1枚板もたけえんだぞ!!!
怒りもそこそこに目指した照明器具にぶら下がる。
狙いをつけさせないためにもそのまま大きく旋回し遠心力を付け、怒りのドロップキック。

「むぐっ!」

キックの姿勢のまま馬乗りになり、マウントポジションを取る。
両手の自由を奪っていることを確認して、用意していたとっておきにゆっくりと右手を『漬け』る。

「醤に欠かせない唐辛子の成分といえば……」

真っ赤な俺の手が真っすぐに奴の顔に伸びる。

「むがッ……??!!!?!」
「カプサイシン!!!」

粘膜という粘膜に特製醤の辛みが浸透し、

「%$DSrふぇさdふぁ!!!!!」

悶絶。

悪は倒れた。



/*/



「なんて?」
「ソコ、知っていマス」
「ナゥー」

銀髪の女性はそう繰り返した。
ついでに猫も鳴いた。

あれから数日、毎日大変だった。
まともに前も見れないくらい悶絶しきった斡旋人は、粘膜という粘膜からありとあらゆる汁を垂らしながら帰って行った。
嵐が巻き起こったとしか思えないくらい荒れた店を前に俺はちょっとだけ泣いた。
だがまた来られても困るのでそのまま修理する前に解決……とまではいかないにしてももう少し情報収集をしようと身を隠す目的でも立ち寄った中華街。
店は一時休業にして別の知り合いの店で働かせてもらいながらいろいろ調べたところ、悪魔使いなる暗殺者が裏稼業業界を騒がせているとわかった。
魔法使いが何か関係しているとのことで、じゃあ先につぶしておとなしくさせておくかということが初日の襲撃の原因だったらしい。
なんて迷惑なやつらだ。

情報そのものは集まったものの結局解決できないしなあと悩んだ2日目、雨の日にその猫に出会った。
マツダスピード、往年のル・マンの覇者の名前だな。
この時代でなかなか珍しい『拾ってください』という書置きとともにダンボールに入っていた白猫。
苦難にさらされている自分とダブったのもありどうしても放置できなかった。
が、そんな状態で拾うもんじゃなかったなと3日目に追手に狙われたときには思ったものだ。
どうも尾行されているので関帝廟にお参りをしてそのまま隠れようと思ったのだが。

「ナゥー」

まあ、バレるわな。
猫に鳴くなとも言えず、追手に見つかって迎撃するかと思って目についたのが関羽像。
関羽といれば青龍偃月刀。
火には強いのが火の料理人。
飾り物の青龍偃月刀に火をつけて大立ち回りを演じることで目立ち、後ろ暗い相手を撤退させることには成功した。
自分もそのままでは捕まってしまうのでマツダスピードを抱えてその場を立ち去ろうとして、

「……なんでこう、見つけるかねえ」

どうみても怪我をした銀髪の女性が倒れていた。
まーた放っておけずどうにか抱え上げて、間借している宿に戻ってきたが夕方のことである。
幸い怪我は大したことはなく、ちょっとした傷を洗ってガーゼをまくだけでよかったが、どう扱うものかと悩んでいた。

『まあ、腹は減るだろう→怪我人だしどう見ても日本人ではない→何が好みかわからないし、とりあえず体に優しいもの→粥だな』

という連想ゲームの末に乾燥ホタテを使って中華粥をこさえて振る舞ったのがつい今さっき。
怒涛の日々だったが、まあ、

「……オイシイ」

微笑んだ彼女のその一言にすべて報われた。

「お粗末様、お口に合って何よりだ」
「アー、ごちそうサマ……ですね。それと、アリガトウございマス」
「礼には及ばないさ。作ったものを旨いと言ってもらえれば料理人冥利に尽きるってもんだ」
「ハイ……」
「だが、なんであそこで倒れていたかは教えてもらいたいかな」

ピンという音が聞こえたかと思うくらい、空気が張り詰めたのが分かった。
それでもこれが彼女を助けた理由の一つであるからには、聞かねばならない。
彼女は何かの関係者であることは間違いないのだから、自分の身にふりかかっていることにも何かの対処方法が見つかるかもしれない。
当然何も言ってもらえないことも覚悟はしていたのだが、彼女はゆっくりと口を開いた。

「……私も、悪魔使いデス」
「……おう」

意外な内容にちょっと背筋冷えた。
助けるべきではなかったか?

「……でも逃げましタ」
「……おう?」

なんて?


悪魔使いとは別の世界からこちらに召喚された悪魔と契約して、その異能を使うものらしい。
力の代償はある程度大小あるものの、共通することとしては力を使い切れば悪魔に喰われる。
存在そのものが悪魔がこちらに出てくるための触媒とされ、もちろん生贄はそのまま命を失う。
その結末も知らされずに目の前で大豚に変貌した仲間を見て、自分のしてきたことに気付き、それで足ぬけを図ったと。
彼女が使役する悪魔が炎に由来するものであり、炎を使う俺も巻き込まれ事故として狙われたと。
うーん、合点がいってしまった。

「すみまセン。アナタにも迷惑をかけましタ」
「いや、まあ、迷惑は迷惑だが、君のせいではないだろう」
「でも……」
「それよりも、解決に向けて知恵を貸してほしい。こう、本拠地とかその悪魔の契約の基とか」
「ハァ……」
「いや、全員が知っているようなものではないかな……」
「私、ソコ、知っていマス」



「なんて?」
「ソコ、知っていマス」
「ナゥー」

銀髪の女性はそう繰り返した。
ついでに猫も鳴いた。
頭が言葉の意味を理解しきれなかった。
(元)うちの組織は国単位の仕事も受けるような大き目の組織なんだが、それが動くからには相手も大きいのかと思っていた。
今回だけなのか元々がそうなのかはわからないものの、とにかく全員が同じ魔方陣で契約を行い、同時にその力の源もそこにあるらしい。
放棄された工事現場のその地下……割と近いそこがこの数日自分を悩ませた元凶だった。
あいつらの情報収集能力たいしたことねえなあと顎髭をいじりながら心の中で大爆笑しておいた。いい気味だ。

「なるほど……よくわかった、ありがとう」
「イエ……知っているダケですかラ」
「よし、んじゃあ明日にでも行くか」

これだけ悩まされたんだからいい加減解決してやろう。
とりあえずマツダスピード用の餌を用意して、留守を誰かに頼んで、

「アー……私も行きマス」
「ナァゥー」



「なんて?」

マツダスピードを抱えてやる気に満ちた彼女の言葉に、俺はここ数日何度目かの言葉を発するのであった。



/*/



「ハッ!!!」

いかんいかん、走馬灯でここ5日の思い出が流れていった。
思い返せば酸欠だな、力みすぎて呼吸を忘れていたんだ。
意識を失ったのは一瞬だけのようで、彼女の心配そうな顔とその位置は最後の記憶とそう変わりはなかった。

「大丈夫デスか?」
「ああ……いやちょっと大丈夫ではない……かな」

本当に、なんでただの土がこんなに堅くなっているんだ。
幸いにして残っていた建材はそのまま放置されていたから、道具には事欠かない。
有能アドバイザーの彼女曰く『少しでも崩れれば式が成立しなくなって自壊する』とのことなので、最初は直接紋様をいじろうとはした。
だが紋様がうっすらと光を放っておりすでに何かしらの力が発動しているのか、魔方陣そのものには干渉できなかった。
それで酸欠になるくらい一生懸命土台から掘り起こそうとしているのだけれども、こんなに堅いとは……。
もう一つ幸いだったことは、ちょうど別件で全員出払っていて遮るものが居なかったことだ。
なので悠長に魔方陣を壊そうとはしているのだけれども、これ本当に壊れるのか?
なにかの力が必要なのではないか……そんな考えも頭をよぎるが、

「……?」

心配そうにこちらをのぞき込む彼女の顔を見れば、それは吹き飛んだ。
彼女に負担をかけてはいけない。
そして自分の力も、なんか使ってはいけない気がする。
自分の持っている、自分の力だけで為さなければいけない気がする。


その時、遠くから人の声が聞こえてきた。
さすがに時間をかけすぎたか、組織の人間が戻ってきたのかもしれない。
おいおい、今来られてもどうしようもできないぞ
慌てて角材に力を入れようとしたが、自分の手にそっと重ねられたものがある。

「大丈夫デス、あなたは私が守りマス」

彼女の手だ。


≪ダメだ、使わせてはいけない≫


「私も悪魔使いデス!強いデスよ!」

マツダスピードをそっと地面に降ろして、彼女はウィンクした。
いや、右目を瞑った。
それが力を使う条件だと直感で理解できた。

≪ダメだ、ダメだ、やらせてはダメだ≫

彼女は震える手をぎゅっと握り締めて、自分に背を向けて歩いていく。

≪“      ”にこれ以上やらせてはダメなんだ≫

止めろという前に目の前の角材に力を籠める。
今までよりも、この人生のいつよりも。
これを壊してしまえば終わりなんだ。
思い出せ、一番重いものを動かした記憶を。
……ああ、あれだ。
あれに比べれば、

「……中華屋なめんなよ」

息継ぎをするタイミングで、口から自然と言葉が漏れていた。
大きく吸い込んで力を込める。

「料理人なめんなよ」

思い出すのは下積み時代。
山のような鶏ガラを、牛骨を、豚骨を、寸胴でひたすらに煮込むあの作業。

「修業時代の、下積み時代の、あのブラック店の」

なんか別の怒りが込み上げてきた。
動かないものを動かす時のコツを体が思い出してきた。
ピシリと小さな音が聞こえた気がした。

「ガラスープの鍋混ぜるの、どんだけつらかったと思ってるんだ……」

骨が絡み合って動かなくなった時のあの捻りを加えつつ砕けろ貴様と念を込めたあの思い出。
体がその通りに角材を動かす。
ひび割れるような音が広がっていく。

「あの時の、寸胴鍋の方が、100倍重かったわー!!!!」

一息にぐんと力を込めた。

パキン

土が動いたはずなのに、そんな無機質な音がした。
魔方陣が崩れて、急にその光を失った。
それと同時に場に張りつめていた何かの重圧がふっと消えたのが分かった。
抵抗もなくなったから、角材と一緒にずべっと地面に倒れた。

「い、いててて」

どうにもしまらない恰好ではあるが、目的は達成できたようだ。
地面から振動が伝わってきて、近くまで来ていたはずの人間たちが逃げたのが分かった。
あー、ここからもうひと踏ん張りかと思ったが、助かったな。
少し顔を上げると、驚いた顔で彼女が振り返ったのが見えた。

「あー、あー……すみません」

ただ、限界だな。

「少し寝ま……s」

言い切れずに意識を失った。
最後に彼女の顔がちゃんと見えてよかった。
そう思った。



/*/



「本当に、アリガトウございましタ」
「礼を言うのはこっちさ。いや、本当に助かったよイテテ」

後日、自分の店。
力を入れすぎたからか全身信じられないくらいの筋肉痛で、彼女に助けてもらいながら帰ってきた。
ひげ面のおっさんが美人に支えられながら歩いているもんだからまあ注目は集めたけれどもな。
それでも彼女が手伝わせてほしいというのでありがたくお言葉に甘えた姿勢だ。

「こんなに早く戻ってこられるとは思っていなかったからねイテテ」
「ナゥー」

マツダスピードの鳴き声が情けない奴って聞こえたのは気のせいだろう。うっせお前。
これから修理どうしようか、修繕費とか考えることはいっぱいあるものの、当面事件には巻き込まれなくて済みそうだ。

「それジャア、私はこれで失礼しマス」
「ああ、そうだったな」

俺も自分の生活に戻るように、彼女にも自分の生活がある。
本当は料理を振る舞いたいところだが今の状態では難しい。
なので、これで彼女とはお別れだ。

「今は何もできないが……でも店を再開したらなんでも作ってやる。何か食べたいものがあったらいつでも言ってくれよ」
「はい、アリガトウございまス。アー、あのrice porridge!!おかゆがイイです!」
「おう、いつでも出せるように良い米と乾貨仕入れとくわ」

マジカル醤使わないメニューは純粋に自分の料理人としての力がものをいうから、そっちを褒められると素直にうれしいものだ。
最高級干ホタテ仕入れておこう。
ぱあっと明るい表情で笑った彼女が、そういえばと軽く手を叩いた。

「スミマセン、もう一つだけお願いがありマス」
「なんだろう?なんでもいいぞ」

問いかけた俺に答えるように、彼女はマツダスピードを抱え上げた。

「この子を、一緒に連れて行ってイイですカ?」

ナァウとマツダスピードも鳴いた。
思ってもいなかった申し出だが、それはそれでありがたい話だった。

「仕事と……この修理であまり面倒をみてやれないからな、もらってくれると俺も助かる」

この荒れ果てた店……とは別にちゃんと住居はあるが、正直そこまでしっかり世話ができるか不安ではある。
元々保護したのも衝動的だったし、ちゃんと里親探そうと思っていたところで負担が少なくなるのは本当にありがたい話ではあった。
でもせっかくの縁だしなあ、

「でもそうだな、食事をしに来たついでに顔を見せてくれると嬉しい」
「ええ、エエ!勿論!」

マツダスピードを抱えてくるりとその場で回る。
猫もナゥーと笑っているように見えた。
……俺が保護した時とキャラ違くない?君。

だが、そうだ。
少女のようなその姿を見て、ふっと思い出した。

「ああ、そうだ済まないが」
「ハイ?」
「名前を聞いていなかったな。今更だが、お別れの前に教えてくれるかい?」

そう、彼女の名前を自分は『知らない』んだった。
猫を知っていて人間の方を知らないなんてのも間抜けだろう。

「ハイ!私はヴァンシスカ……」

マツダスピードを片手に、もう片手でスカートをすっと持ち上げ、優雅なお辞儀をする。

「ヴァンシスカ・オルレアン・オーノールといいマス」

ヴァンシスカと名乗った銀髪の彼女。
その笑顔を多分自分は一生忘れないだろう。



終


依頼者:里樹澪@満天星国様【国民番号:45-00419-01】
製作者:水仙堂雹@神聖巫連盟様【国民番号:36-00690-01】
2024年2月25日お引渡し

【製作者コメント】
この度はご依頼ありがとうございました。
最終日のやりとりがすごく良かったのでどうやってそこに持っていこうか考えるのが楽しかったです。
お眼鏡に叶えば何よりです。



作品への一言コメント
感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です)

  • あまり情報のないAマホ生活を元に依頼させていただきましたが、綺麗な物語に仕立てていただいてありがとうございます。大切にします。 -- 水仙堂@神聖巫連盟 (2024-02-25 19:46:50)
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