高らかに浮かび上がった布張りのボール目掛け、燦々とビーチを照らす太陽を背にしてしなやかに、かつ力強くカタリナが飛び上がる。
そして大きく後ろに反らせた右腕が最大のインパクトを得られるであろう地点で思いきり振り抜かれ、その衝撃を真芯に受けたボールは、相手に反応する隙すら与えず彼女の狙い通りの場所へと砂埃と共にめり込んだ。
「・・・ゲームセットォォォ!!」
審判が何度かの瞬きの後に興奮した声でそう叫ぶと、次いで周囲の観客からビーチ全体を揺らす怒号のような歓声が沸き起こる。
「いーよっしゃあ!いよいよ次は決勝だ!」
カタリナとエレンがコート上でハイタッチをするのを見ながら、コート脇のチームベンチに陣取っていたポールは彼女等の勝利を我が身の事のように喜び、隣のハリードの肩に組みかかった。
それをたいそう迷惑そうな顔で受けたハリードは、ポールと反対側の手に持っていたタオルを歩み寄ってくるカタリナ達に投げてよこす。
「・・・さて、と。次が正念場ね」
そう言ったエレンが顔を向ける先へとカタリナも視線を傾ければ、そこには観客席の中央に位置するVIP席から自分たちに視線を向ける二人組の男の姿があった。
よく焼けた小麦色の肌に、必要以上に増量されたような躍動する全身の筋肉。その筋肉に包まれた体を惜しげもなく見せびらかし、ただ唯一ブーメランパンツだけが最低限を隠している。そして口元から時折輝き覗く冗談のように白い歯をキラリとさせながら、周囲に群がる観客達に時折愛想を振りまいている。そんな男二人は、そっくり同じような見た目であった。それが、腕組みをしながらカタリナ達を見つめている。
彼等はカタリナ達が今の試合で決勝進出を決める前に、既にもう一方の決勝枠を勝ち取っていたチームだった。
つまり、決勝での対戦相手だ。
「・・・あー、やっぱだめ。私あれ、生理的に駄目」
ものの二秒で顔を背けたカタリナは、フェアリーが渡してきてくれた水を飲みながら、強烈に日を照らす太陽を恨めしそうに睨んだ。
「・・・もうちょっと、日焼け止め塗っとこうかしら・・・」
グレートビーチバレー大会。
確か、このお祭り騒ぎはそんな名称だったとカタリナは記憶している。
わざわざ足場の悪いビーチに色の違う砂でラインを引き、一定の高さまで設置された魚とり網のようなもの(ネットというらしい)を挟んで二人一組のチームが互いの陣地にボールを叩きつけるスポーツの事を、ビーチバレーと言うらしい。
なんでも、ここグレートアーチ地方においては魔王生誕以前から存在するとすら言われる由緒正しい伝統競技なのだそうだ。
十五年前の死蝕にて壊滅的な経済的打撃を被ったここグレートアーチにて死蝕の翌年から復興のシンボルになるようにと毎年開催されているというこの大会には、毎年主催運営を行っているグレートビーチバレー大会運営委員会が優勝者に対して若干の賞金と共に地元協賛企業が提供する様々な賞品を用意しており、例年大きな盛り上がりを見せているのだそうだ。
特にここ最近は各国からも観戦客がくるなど、観光客招致による経済効果も生み出している。
このような大会があることを宿泊中のホテルバランタインのオーナーから聞いたのは、すっかりオーナーと仲良くなったポールだった。
なにしろハーマンの協力を無事に取り付けることが出来たもののピドナに戻る船の出港まで日数が開いてしまっていた一行だったものだから、暇な事も手伝い興味本位でせっかくだからと参加してみる事にしたのだった。
「やっぱチーム編成はカタリナさんとエレンちゃんで大正解だったな!」
ここにいる間は相変わらずハデハデしいシャツにハーフパンツというラフな出立ちのポールが、選手用ベンチに設置された大きなビーチパラソルの下で休むカタリナとエレンに声をかけた。
元々大会には男女の制約がなかったので当初はポールとハリードで出場しようかと話していたのだが、何故か参加申請ギリギリのタイミングになってポールが急にカタリナ達が出場するべきだと言い出し、そのままなし崩し的に彼がエントリーを済ませてしまったのだ。
しかしそこは責任感と最近断れない性格に定評のあるカタリナであるからして、存外素直に、元々ノリノリだったエレンにも押される形でビーチバレーの正式競技服(?)である水着に身を包んだ。
ちなみに水着は、こんな事もあろうかとピドナで買っておいた淡い紫のグラデーションが印象的なパレオ付きビキニだ。デザインに関しては選別に同行していたモニカとサラのお墨付きであり、大人っぽさが漂う中にも可愛らしさや健康的なお色気も忘れない、ガーリーな一品である。
エレンはエレンでトップは燃える様な赤いビキニと、下はデニムのホットパンツ。そして何処から仕入れたのかダークブラウンのサンバイザーという、一見して只者ではないビーチバレー玄人の風格を漂わせている格好だ。
大会当日に彼女等がこの格好でビーチに現れると、観客席からは少なからずどよめきが起こった。元々が男ばかりの参加者で運営も毎回花役を用意はするもののこれが毎度地元の小麦ギャルと言った様相の中、肌も色白で抜群にスタイルの良い彼女等は相当に目立った。
そしてその二人が大会が始まってみれば、あろう事か地元の猛者どもを抑えて破竹の快進撃。おかげで一気に大会の熱気はエスカレートしていったのだ。
「あれ、そう言えばコーチは?」
決勝前のクールタイム中、ふとエレンが周囲を見回しながらそう言った。
「そういえば、暫く見てないです。開会式の時はいたのですが・・・」
カタリナ達の隣で休んでいたフェアリーが可愛らしく首を傾げながら答えると、エレンもそれに習って小さく首を傾げる。
実は今回の彼女等の快進撃は、このコーチなる人物の多大なる助力があったからこその成果だといえる。
そのコーチなる人物こそは、知る人ぞ知るグレートアーチはサウスビーチの一匹狼、ハーマンである。
彼はカタリナ達がエントリーしてから大会当日までの少ない日数の間で、二人に徹底的にビーチバレーの基礎を叩き込んだ。元が運動神経の塊の様な二人であるからして覚えが早かったのは勿論なのだが、しかしこれほど迄の快進撃はコーチたるハーマンの的確な指導が無ければ叶わなかっただろう。
そんなハーマンは教え子達の勇姿を見るためにこの会場にも足を運んでいたはずなのだが、トーナメント形式での本選試合が始まってからは彼女等の前に姿を表していなかった。
「ま、どっかでお酒でも飲んでるのかな。戻ってきた頃には優勝報告でもしてあげましょっか」
この後行われる決戦における自分たちの勝利を確信しているエレンがそう呑気に言うと、特にそれを否定する気もなくカタリナも同意した。
「そうね・・・さて、もうそろそろ時間かしら」
そう言ってカタリナが見つめる先には、にわかに騒がしくなり始めた決勝コートがある。
対戦相手は正直あんまりじっくりと見たくない相手だが、真正面で対峙する以上は直視は避けられないだろう。
極力早めにケリをつけてしまおうと考えながら、カタリナは立ち上がった。
外は雲一つない快晴。だというのに店内はいつも通り薄暗く、漂い続ける紫煙のせいで空気も悪い。
そんな自分のこよなく愛する汚い場末のバーのカウンターでダークラムをロックで傾けながら、ハーマンは相変わらず香りのどぎつい煙草をゆっくりと燻らせていた。普段はここは喧嘩が起こったとき以外は非常に静かなものだが、今日ばかりは遠方からの騒音がここまで届く。
「毎年毎年、飽きもせずにうるせぇな・・・」
バーのマスターがグラスを磨きながらそう呟くと、ハーマンはにやりと笑った。
「・・第一回大会から第五回まで不動の連続チャンピオンだったお前が、何言ってやがる。引退してなけりゃまだあそこにいたんじゃねえのか?」
「うるせぇ爺。相方が鮫に喰われっちまったんじゃ引退するしかねーだろうが」
愛想悪くそう言いながらグラス磨きを続ける。だがそんなマスターの背後にある様々な酒の瓶が並べられた棚の隅には、無造作に置かれた小さな優勝トロフィーが並んでいる。お世辞にも掃除が行き届いているとは言い難いこの店内で、しかしそのトロフィーだけは受賞当時の輝きを失っていない。
「ところであんたこそ、いかねーのかよ。教え子、出てるんだろ?」
マスターがそういうと、ハーマンは返事代わりに煙草を深く吸い込む。
そしてそのままゆっくりと紫煙を周辺に撒き散らし、グラスの中身を一気に煽った。
「ま、あいつらの優勝に間違いはねぇんだ。一々見に行く必要もない・・・って言いてえところだが、確かに今年はちょっと見に行ってやってもいいかもしれねぇな」
そういってハーマンはカツンと音を立てて空のグラスを置くと、カウンターから立ち上がる。
「おい、代金」
「馬鹿言え。後で優勝賞金持ってきてしこたま呑んでやるから、そこで汚ねぇグラスを磨きながら待ってろ」
ハーマンはそう吐き捨てると、舌打ちをしつつもまんざらでもなさそうな表情の店主を無視し、バーを後にした。
「さぁさぁいよいよやって参りました!!第十五回グレートビーチバレー大会、決勝戦!!」
司会の絶叫に、負けず劣らず周囲の観客が歓声で応える。朝の早い時間から予選を含めて進められてきた試合も残すところあと一試合となり、南天高くから砂浜を照らす太陽もこの最後の一試合を今か今かと待ち望んでいるようだ。
「今年も大多数の予想通りに大会2連覇のサザンティンバー兄弟は3連覇を賭けて順調にここまで来たが、対する相手はいつもとはひと味もふた味も違うぞぉぉ!他のベテラン勢を押さえ込み我々の予測を大きく裏切り、エントリー期限直前に駆け込み参加をしてきたこちらのビューティフォーガールズが、ままままさかの快進撃!この決勝の舞台に堂々のし上がってきたぁぁああ!」
再度、司会の絶叫と共に観客の大歓声が唸りを上げる。
その大歓声を受けながら、設置されたネットを挟んで対峙する男女二人組。
「なんと今大会出場のために態々ピドナからやって来たという彼女たち!最早実力はここに立っている以上は明らか!いや、まだ底知れない!つまり、この決勝戦の行方は誰にも分からないぞぉぉおお!」
興奮冷めやらぬ司会の絶好調の煽りに観客の歓声も鳴り止まない。その歓声を馴れたように全身の筋肉で受け止めながら、サザンティンバー兄弟と呼ばれた男二人は天に輝く太陽に負けず劣らずキラリと光る白い歯を惜しげもなく晒しつつカタリナとエレンを見つめる。
対するカタリナエレンは、屈伸をしたり肩を回しながら開始のホイッスルを待っていた。
「・・・あの二人、やっぱり今までのとは段違いで強そうね」
エレンがサンバイザー越しに相手を見ながら言うと、カタリナは軽く頷きながら腕の筋を伸ばした。
「経験値では劣るけれど、身軽さは負けないわ。翻弄していきましょう」
極力相手のことを見ないように脇に視線を向けながらそう答えたカタリナは、ふと視界の隅に見覚えのある人物を捉えた。
ハーマンだった。
「あ、コーチ」
「え、どこどこ・・・あ、ほんとだ!」
相変わらず義足とは思えぬ歩行速度で観客の波を縫うように移動していったハーマンは、そのまま躊躇うことなくコート脇の関係者席まで進んでいく。
すると、それに気づいたらしい司会進行がハーマンに振り返り、ここでも大声を張り上げる。
「おおーっと、ここでハーマンコーチの登場だぁぁ!」
その言葉にその場の全員の視線がハーマンへと注がれるが、当の本人はそんなことは一切構わずにマイペースに進んでいき、チームメイト用ベンチへと腰掛けた。
「ハーマンって意外とここじゃ有名人なのね・・・って、え?」
その様子を見ていたエレンが暢気にそういった直後、驚きの声を上げる。
ハーマンがいつも通りのふてぶてしい態度でどかりと座り込んだチームベンチは、ポールとハリードが陣取っていたカタリナ達のチームベンチではなく、なんと相手であるサザンティンバー兄弟チームのベンチだったのだ。
「大会優勝チームの中でも歴代最強と名高いサザンティンバー兄弟を世に送り出した鬼教官ハーマンコーチも、この一戦は見る価値ありとご来場だぁぁ!!」
俄然盛り上がる会場と司会の言葉に、カタリナ達四人は驚愕の表情をする。
「え・・・え?」
状況を理解できずに疑問符を浮かべるエレンに対し、カタリナは目を細めながらハーマンを見つめる。だがハーマンはその視線には応えず、にやりとしながらサザンティンバー兄弟に視線を送っていた。
「役者は揃ったぁぁぁあああ!それでは第十五回グレードビーチバレー大会決勝戦、試合開始だぁぁぁああああ!!」
そのまま倒れてしまうんじゃないかと心配になる程顔を真っ赤にして叫び狂う司会の号令と共に、ホイッスルが鳴り響く。
サザンティンバー兄弟のサーブから、試合開始だ。
ズバン、とボールが弾け飛んでしまいそうな衝撃音と共に撃ち放たれたスパイクが、ボスッという鈍い音と共に砂浜にめり込む。
「18-3!コートチェンジ!」
審判のコールに、会場が沸く。
しかしその歓声は試合開始当初のものよりも大分抑えられていた。
なにせ既にワンサイドゲームの気配が漂っているのだから、無理もないだろう。
体にへばり付いた砂を落としながら、カタリナとエレンは大差をつけられたスコアボードを横切ってコートを入れ替わった。
ビーチバレーのルールは3セットマッチの2セット先取制で、1,2セットは21点がマッチポイント、3セット目のみ15点がマッチポイントとなる。
コートチェンジのタイミングは両者得点の合計が7の倍数になった時。3セット目のみ5の倍数になった時に行われる。
現在は1セット目の終盤。完全にサザンティンバー兄弟のペースの試合となっていた。
「くっそ・・・何よあいつら、さっきまでの試合と全然違う・・・。すっごい強い・・・」
エレンがサンバイザーとネット越しに余裕の表情でこちらを見つめるサザンティンバー兄弟を睨みつけながら、恨めしげにぼやいた。
それに無言で頷いたカタリナは、如何すればこの状況を逆転できるかを脳内で必死に考えていた。
(・・・基本的な動きはそんなに変わらない。いえ、寧ろ素早さは私たちの方に分がある。競技経験による先読みの差はあれど、やはり相手もコーチから訓練を受けているだけあって私達と基礎の動きはそれほど違わない。これは速度で補うのは十分可能な範囲。でも・・・)
それでも、自分たちと目の前の兄弟とでは決定的な違いがあった。
それこそは、スパイクのパワーだ。
エレンが言うようにこれまでの試合では隠してきたのか、それとも抑も使う必要がなかったのか。
兎に角この決勝戦においてサザンティンバー兄弟が放ってきたスパイクは、これまで見てきたどのスパイクよりも圧倒的な威力を持っていた。なにしろそのスパイクに体がついてこず、彼女らはただただ弄ばれるようにここまで得点を許してしまっていたというわけなのだ。
ただ、ここまでで分かってきたこともある。それは、あのスパイクは恐らく個の動きだけで成せるものではないだろう、ということだった。それこそ、あの二人だからこそ出来る芸当なのだ。
幾年も共に修練を積んだであろう二人だからこそ生まれる阿吽の呼吸から繰り出されるその技は、正しくチームプレーの真髄、即ち連携技だといえる。これこそが、今の自分たちと相手との決定的な違いなのだ。
つまりこの試合に自分たちが勝つには、まず第一に自分たちもこの試合の中で彼らと同じ域に達する必要がある。だが、それだけでは最早足りない。なにしろ自分たちは現時点で点数負けをしている。彼らと同じ域に今から直ぐ追いつけたとしても、点の取り合いでは押し切られて終わるだけだ。だからこそ自分たちは、彼らよりも更に上の次元に到達しなければならない。
つまり、今ここで先に成さねばならないことがあるのだ。
あのスパイクに至るまでの流れ、立ち位置。其れ等の中に確かに存在しているはずの起死回生の糸口を、なんとしてもここで見つけ出さねばならない。
(・・・見切る)
頭の中で、そう呟く。もしかしたら、それは小さく口に出したかも知れない。兎に角そう決心したカタリナは、すっと姿勢を正して背後のエレンに振り返った。すると、エレンもカタリナの動きに反応して迎撃姿勢を解く。
「エレン、前お願い」
「え・・・いいけど、どしたの?」
突然の立ち位置変更に疑問符を浮かべながらも、素直に了承するエレン。
それまでネット際は背丈が高い方がブロックに向いているからとカタリナが担当していたが、それを入れ替えた形だ。
そして後ろ側に移動したカタリナは、ボールだけではなく相手のコート全体を見るようにしながら姿勢を低くした。
「・・・ほう」
その様子を見てハーマンがニヤリとするのを、隣り合わせのチームベンチで最も彼に近い位置に座っていたフェアリーは見逃さなかった。
《・・・カタリナさん、コーチがカタリナさんの動きに反応しました》
突然脳内に響いてきた念話にカタリナはぴくりとしたが、それがフェアリーのものだと分かると小さく頷いた。
《・・・少なくともさっきよりは正解に近づいたかもしれないってわけね・・・。ギャラリーには悪いけど、このセットは捨てる。その代わり、ここで絶対に見極めるわ・・・!》
サザンティンバー兄弟のサーブで再開されたゲームは、やはり先ほどまでと変わらぬ結果だった。
レシーブからのこちらのスパイクでは止めをさせず、そこからサザンティンバー兄弟の強烈なスパイクによってカタリナサイドのコートにボールがめり込む。
「・・・19-3!」
審判のコールが、短いホイッスルの後に一瞬の間を置いて叫ばれた。
結果は先ほぼと同じく、サザンティンバー兄弟の得点。審判のコールに合わせてスコアボードが変えられる光景も同じ。だが、先程までとは明らかに違う点が一点あった。
それはコート後方に位置したカタリナが、彼らのスパイクに対して一切の反応を見せず、微動だにしなかったことだった。先ほどまでそこに居たエレンは相手のスパイクに必死に食らいつこうと何度も砂浜にダイブしていたものだから、一転してのその光景は周囲にとっては途轍もなく異様に映った。
「・・・おいおいなんだ、カタリナさん試合諦めちまったのかぁ・・・?」
ポールが肩を竦めながらそう言うと、ハリードは眼光鋭くカタリナを見つめながら、否定の言葉を口にする。
「・・・いや、あいつはそんなタマじゃないだろう。何かを見ていた、ってのが近そうだ」
そんな二人の会話する様子を尻目に、フェアリーはコート上と隣のハーマンを交互に観察していた。
《・・・コーチ、ニヤニヤしてます。なんだか、ちょっと嬉しそうです》
《何それ気持ち悪い・・・。でも、今はっきりと見えたわ。次で少し、仕掛ける》
そう意気込んだカタリナは、審判のホイッスルを合図に再び放たれた相手の強烈なサーブを無難に捌く。
そのままこれまで通り綺麗な流れでエレンのトス、そしてカタリナのスパイクと続くが、それも相手にうまく捌かれる。
そしてサザンティンバー兄弟は完成された滑らかな動きで以て、再び強烈なスパイクを叩き込んできた。ここまでは、このセットで何度も繰り返された光景。
そして先程までと同じく、彼らの放ったスパイクはとんでもないほどの衝撃で以てビーチの砂を派手に舞い上げるはずだった。
しかし。
バシンッ
弾かれたボールが、浮かび上がった。
完全にインパクトを殺されたボールは直前のスピードが冗談のようにふわりと浮かび上がり、しかしその光景を見逃さなかったエレンが駆け寄るも距離が間に合わず砂浜に静かに着地した。
後に残されたのは、スパイク前の立ち位置から僅かに動いて腕を伸ばした体勢のカタリナだった。
「・・・見切ったか」
《・・・見切ったわ》
フェアリーが感知した中でカタリナがそう脳内で呟いたのと、ハーマンが小さくそう呟いたのは、全くの同時だった。
「・・・20-3! マッチポイント!」
ホイッスル後の審判のコールに、ポールが頭を抱えた。
「くぁー!惜しかったなー!今のスパイク何とか上手く触れたのになぁー!しっかし、こりゃもうダメかねぇ・・・」
そう落胆の表情とともに漏らすポールに、しかしハリードはゆっくりとかぶりを振る。
「・・・いや、どうやらそう言うわけでもなさそうだぜ・・・?」
カタリナの様子に目敏く気付いたハリードがそう言いながら口の端を釣り上げるのと、マッチポイントサーブが放たれるのは、ほぼ同時だった。
「・・・21-3! サ、サザンティンバー!」
審判の第一セット終了を告げるコールに、しかし会場は先程までのような歓声を上げることはなかった。
会場の視線は全て、カタリナに注がれていた。
正確には、その右手。
決して大きすぎるわけではないカタリナの掌でしっかりと受け止められたボールに、会場全員の視線は集中していたのだ。
その様子に誰より驚愕していたのは、彼女らに相対するサザンティンバー兄弟。そしてその様子に誰より上機嫌になったのは、誰あろうハーマンだった。
「・・・カタリナさん」
「・・・あいつらのスパイクは、『見切った』わ。あとは、攻めるだけ。ね、エレン。ちょっといい?」
ベンチに戻ってきて早速次のセットの作戦を話し合うカタリナたちに、すっかりチームのマネージャーポジションとなっているフェアリーが甲斐甲斐しく飲み物を手渡す。
それを笑顔で受け取りながら作戦会議を続ける二人は、大差で敗れた第一セットの事など全く意に介さない様子だ。
反面、サザンティンバー兄弟はセットを獲ったにも関わらず、試合開始前の余裕が全くなくなってしまっていた。今までにない相手の行動に、明らかに動揺を隠し切れていない様子だ。
「おいてめぇら、なにあの程度でびびってんだ!」
目の前で情けなくも焦りを隠せない二人に、ハーマンが立ち上がりながら一喝する。
それにびくりと反応したサザンティンバー兄弟は、普段からの習性なのか脊髄反射の勢いで直立の姿勢をとる。
「・・・相手は恐らくお前たちの連携技ダブルインパクトの見切りと、最後のあれで極意も会得してきたはずだ。次からはエレンにも止められるぞ」
「そ、そんな・・・」
「コ、コーチ・・・我々は一体どうすれば・・・」
ハーマンの言葉になお一層の動揺を隠せぬ二人に、しかしハーマンは再度一喝した。
「ど阿呆が!やることは決まってんだよ!違う技を編み出すんだ!いいか、 彼奴らは確かに規格外の化け物だ。たかだか一セットでお前たちの連携技を見切って来やがった。だがなぁ・・・お前達がこれまで血反吐吐きながら努力してきた全てが、こんなところで終わるのか!?違ぇだろうが!!」
ハーマンのその力強い言葉に、二人はびくりと筋肉を震わせる。
「一セットは獲った。だから次のセットさえ抑え込めばお前らの勝ちだ。だから・・・やるしかねぇだろうが。この一セットを獲るための技を、生み出すしかねぇだろうが。・・・違うかぁ!?」
他の全てを圧倒するほどのハーマンの強烈な叫びがその場に響き渡り、思わず観客までもが黙ってしまう。そしてその場が異様な静寂と熱気に包まれるなか、ハーマンの叫びを全身で受け止めたサザンティンバー兄弟はどちらからともなく向き合い、そしてキラリと光る白い歯を見せ合って笑った。
「・・・そうだ、俺たちは」
「・・・無敵のマッスル」
『サザンティンバー兄弟!』
「そうだ!お前らはこの俺が育てた最強の兄弟。ぽっと出の女二人組なんぞに好き勝手させてんじゃねーぞ!」
ハーマンの力強い言葉に確りと頷いた兄弟は、完全に取り戻した自信を筋肉に乗せてポージングをし、そして高らかに笑った。
「・・・筋肉が気持ち悪い」
「うん、気持ち悪い」
「き、聞こえちゃいますよ・・・!」
作戦会議しながらその様子を見ていたカタリナとエレンの辛辣な感想に、フェアリーがあわあわしながら反応する。
間も無く、第二セットが開始される時間だ。
灼熱の炎天下の中で開始のホイッスルが鳴り響いた第二セットは、正に熾烈を極めた。
序盤は完全にカタリナ&エレンペアのペース。サザンティンバー兄弟のアタックを完全に見切った二人はパーフェクトに相手の必殺アタックを防ぎきり、更には二人同時に攻撃を仕掛けるフェイントを混ぜたエックス攻撃までもをその場で完成させ、一気に攻勢に出たのだ。これにより第二セット序盤はカタリナらが有利な状態で15-6までの得点差でコートチェンジを迎えることとなった。
しかし、防戦一方だったサザンティンバー兄弟は、第二セット終盤にきて新たになんと新たな連携技、時間差攻撃を編み出した。
これにより双方がアタックの乱れ打ちとなり、辛くもこのセットを勝ち取ったのは前半リードを作れていたカタリナエレンペアだった。
「さぁさぁさぁさぁ!遂にやって参りました最終セットォォォオオオ!まさかまさかの展開の連続だったこの第十五回グレートビーチバレー大会も、これが最終セットだぁぁぁああ!」
史上嘗てないほどに白熱した試合展開に興奮を抑えきれない司会の絶叫も、それに反応して波打つ観客の歓声も、ベンチで最終セットに向けて集中する四人には全く届いてはいなかった。
「・・・流石にチャンピオンね。この土壇場で新たな技・・・傲らず鍛錬と挑戦を繰り返す姿勢には感服するわ」
「うん・・・でも、負けないよ。あたし達だってまだまだやれる」
フェアリーに手渡された水を口に含みながら、カタリナとエレンは言葉少なにそう言いあった。
その様子を横目に、ハリードはもう一方のベンチに視線を向ける。
そこでは汗だくのまま座りもせず相変わらず直立姿勢の兄弟に檄を飛ばすハーマンの姿があった。
「新技おせぇぞ!もう後がねぇ!最終セットは一気に畳み掛けろ!」
『はいっ!』
最早今のサザンティンバー兄弟には、ディフェンディングチャンピオンの余裕など欠片も無かった。
代わりにあるのはただ、未知なる対戦相手に対するチャレンジ精神。
その様子を同じく眺めながら、ポールは半眼で肩を竦める。
「ああなった相手は、こえーな。しっかし・・・あんのオッサン、どっちの味方なんだか」
「・・・さぁな」
ハリードはポールの真似をするように軽く肩を竦め、コートへと視線を戻す。
それを合図とするかのように、両チームは再びコートへと舞い戻った。
ネット際へと陣取ったカタリナは、最終セット開始のホイッスルを待ちながら改めて対戦相手であるサザンティンバー兄弟を真っ直ぐに見据える。
最早、彼らには最初に感じていた嫌悪感は一切抱かない。その代わりに感じるのは、只々一プレイヤーとしてのリスペクトだけだ。
(・・・あのアタックを見切った時点で勝ったと思った。でも彼等はその劣勢に果敢に抗い、この土壇場で新技を編み出してきた。あとは先に互いのアタックを見切った方が勝つ・・・。絶対に負けないわ・・・!)
背後の様子を伺えば、エレンも全く同じことを考えているであろうことがその表情から窺える。
それは無論、相手も一緒のはずだ。
そして歓声鳴り止まぬ中、最終セット開始のホイッスルが鳴り響いた。
「っりゃぁあああ!」
気合一閃、玄人顔負けのジャンプサーブを絶妙なコースで放つエレン。
しかしそれを無難に捌いたサザンティンバー兄弟は新たな新技、時間差アタックを仕掛けてくる。
カタリナはなんとかタイミングを合わせてブロックしようとするが、これは難なく躱される。
そして放たれたアタックは、しっかりとカタリナらのコートに突き刺さった。
「・・・1-0!」
ホイッスルと共に、審判の緊張を隠し切れぬ声が響く。その声に、しかし観客は一際静かにコートを見つめるだけだった。
それはまるで、第一セット終盤のデジャヴか。
サザンティンバー兄弟のアタックに微動だにせず、ただ只管にその動きとボールだけを見つめていたエレンの姿を、その場の全員が固唾を飲んで見守っていた。
そして彼女の口の端が僅かにつり上がった事に気がついたのは、ハーマンくらいのものであった。
「・・・化け物め」
その小さなつぶやきに、フェアリーの耳がぴくりと反応する。
《・・・コーチが毒吐きました。エレンさん、『見切った』みたいです》
フェアリーが思念でそう伝えてくるのを受けたカタリナは、背後に陣取る心強い相方に思わず舌を巻く。
これで、相手の新技もほぼ完封する事が可能になった。このまま行けば、彼女たちの勝ちは確定だ。
だが恐らくはこの事実にハーマンとほぼ同時に気付いたであろうネットの向こうのサザンティンバー兄弟は、それでいてなんら表情を崩す事はなかった。
《・・・まだ分からない、か》
《・・・え?》
カタリナの直感による呟きに、フェアリーが疑問符を返す。
そしてそれは矢張り、正しい読みだった。
次のラリーで見事に相手のアタックを捌いたエレンに観客が湧き上がった直後、彼女らの必殺アタックは逆にサザンティンバー兄弟によって止められたのだった。
「と、止めたぁぁぁあああ!!チャンピオンが止めたー!これは本当に試合の行方が分からないぞぉぉぉおおお!!」
もう二度とこんな試合は見られないんじゃないか。まるでそう言いたげなほど全身全霊をかけた司会のシャウトが会場全体に響き渡り、それに一歩遅れてうねる波のように広がる観客の大歓声。その渦中にて、なおもラリーは続いていく。
日没も近くなり、グレートアーチのビーチ全体が夕暮れに照らされる頃。
油を暫く差していないであろうことが窺える取れかけの蝶番が、スイングドアを押してきた人物に対して店主の代わりに歓迎ついでの耳障りな悲鳴を上げた。
すっかり聞き慣れたものの不快なことに変わりはないその音に遠慮なく顔を顰めながら、彼がこよなく愛する薄汚い場末のバーに、まるで我が家に帰ってくるかのように慣れた様子でハーマンは入っていく。
「よう、待たせたな」
昼前と違って店内には今はぽつぽつと客がおり、彼らはそう声を上げながら入ってきたハーマンを見ると、それぞれがグラスを傾けていた手を下ろして彼へと向き直った。彼らは分かっているのだ。今日の主役が、彼であると言うことを。
そして最後にハーマンへと視線を投げかけたのは、カウンターの中でグラスを磨いていたマスターだった。
マスターが自分に視線を向けたことを確認したハーマンは、徐にその右手に持っていた物体を放り投げる。
緩く回転しながら放物線を描いた物体を難なくマスターが片手でキャッチすると、それはこの薄暗い店内には似つかわしくないほどきらきらと輝く、赤珊瑚製のトロフィーだった。
「モルガンブラック、ロックで」
カウンター席にどかりと座り込みながらいつもと変わらぬダークラムをオーダーし、マスターの反応も見ずに懐から煙草を取り出して火をつけるハーマン。だが程なくしてボトルを持ち上げる音、氷を弄る音、そしてグラスに張られた氷の上に液体が注がれる耳に心地よい音から自分のドリンクがしっかり作られ始めたことを確認すると、にやりとしながら面を上げた。
今年も予定通り開催された第十五回グレートビーチバレー大会は天候にも恵まれ、例年通り・・・いや、例年以上に大盛況のうちに幕を閉じた。
優勝タッグは事前オッズの一番人気であり、グレートアーチが誇る地元の英雄サザンティンバー兄弟だ。今大会の優勝にて通算三度目、三連覇という堂々の結果となっている。
しかし、今大会の目玉はディフェンディングチャンピオンたる彼らではなかった。
なんと言っても今大会の台風の目は、決勝戦にてサザンティンバー兄弟と熾烈な戦いを繰り広げた、初出場の謎の美女タッグだ。
大会エントリー期限ぎりぎりに参加を表明してきたという彼女らは、なんと今大会のためにピドナからやってきたとのことだった。そして彼女らは予選にて並みいる地元の強豪達を次々と打ち負かし、迎えた決勝戦では最終セットの最後の最後までサザンティンバー兄弟を追い詰め、その場の誰にも勝負の行方が予測できない大接戦を展開した。
運営に確認してみたところ地元以外から参加したチームがここまでの大躍進をしてみせた例は今までになく、大会始まって以来初の出来事と言うことだ。更にはこれほど白熱した試合は今まで見たことがないと今大会の観客は満場一致で賞賛しており、既に一部では伝説の一戦とすら言われている。
これに敬意を表し、グレートビーチバレー運営委員会は急遽その場にて特別賞を設けて彼女たちにも簡易的なトロフィーを贈るという素晴らしい機転を見せてくれ、集まった観客共々、大いに二人を称えた。
余談となるが、グレートビーチバレー大会の醍醐味の一つとして大会終了後にその場で選手や観客、運営も交えて大がかりなバーベキューを催すというイベントがある。これは地元の高級ホテルバランタインが食材提供を取り仕切るもので筆者も毎年このイベントまで参加するが、今年はこのバーベキューも例年以上の大盛況であった。
特に印象的だったのは、決勝戦を通じて互いを認め合ったサザンティンバー兄弟と美女二人が様々な人々に囲まれながらおおいに飲んで食べて語らい、観客とも非常に和やかに接していたところだ。ここ五年ほどこの大会を取材しているが、歴代の優勝者と同じくサザンティンバー兄弟もどこか超然とした雰囲気で周囲の人間とは距離を置いている節があったものだが、今年の彼らは非常に和やかに周囲とコミュニケーションを図っており、チャンピオン自身にも今回の大会は非常に良い経験になったようだ。
ただ惜しむらくは、美女二人が顔出しNGだということだろう。無論その辺りは本人達の意思を尊重するのだが、随行したカメラマンもこれには非常に残念がっていた。
ただし、インタビューの際に来年の出場について伺うと前向きに検討するという旨のお言葉を頂けたので、彼女らの素顔が気になる読者の皆様も是非、来年はグレートアーチへと足を運んでみては如何だろうか。(試合のハイライトは裏面中央の特集にて)
「・・・だってさ」
ハンス家の大会議室にて行われていた会議も終わり皆が寛ぐ中、エレンはメッサーナジャーナルのスポーツ欄を読み上げた後、窓際で物珍しげに外を眺めていたフェアリーにそう声をかけた。
「なかなか体験できない経験をさせてもらえて私は大満足でしたが、結果自体は惜しかったですね」
「そうだねー。でもあれは仕方ないよね。カタリナさん、トラウマレベルなんじゃないかなー」
記事やそこに載っている写真を見返しながら、エレンが当時を思い出すように振り返る。
試合の最終セットは、正に熾烈を極めた。お互いがお互いの必殺スパイクを見切りそれが決定打とならなくなったため、その必殺スパイクをすらフェイントに用いた非常に高度な戦いが展開された。競技経験値に優れるサザンティンバー兄弟の動きにもカタリナチームは類い希なる素早さを武器に必死の食らいつきで互角以上に渡り合い、正に勝負の行方はその場の誰にも分からないという状況であった。
だがその彼らの非常にハイレベルな動きに、最終最後についてこれず、遂には根を上げてしまったものがあった。
それこそは、サザンティンバー兄弟が身につけていた、極小サイズのブーメランパンツだったのだ。
「相手がアタックで飛び上がった瞬間だったし、ネット際で完全に至近距離だったよねー。あたしは逆光であんまり見えなかったけど、カタリナさんはモロだよ、モロ」
「アタックされたボールを掴み取って相手の方の、その・・・股間に投げつけたときは、何事かと思いました・・・」
当然そこでカタリナチームは1点ペナルティだったわけだが、それが決定打となって軍配はサザンティンバー兄弟に上がったのだった。
「あははは、あたしなんかは昔っから男女お構いなく遊んでたからそういうのも割かし見慣れているけど、カタリナさんってそういうの意外と耐性ないのがまた可愛いよね」
「確かにカタリナさんのそういう部分は、ちょっとずるいなって思うことはありますね」
エレンとフェアリーが当の本人がここに居ないのをいいことに好き勝手感想を言いながら笑い合っていると、その話題に引かれてか周囲の女子が続々と彼女らの周りに寄ってきた。
「カタリナがどうかしましたの?」
「えっとねー、この間グレートアーチでビーチバレーやってきたんだけどね、その時の試合が記事になっててさー」
「記事になっているのですか。凄いですね。ところでそのびーちばれー、とはどの様なものなのですか?」
「あ、ミューズ様も知らないことあるってなんか新鮮。えっとね、ビーチバレーっていうのはねー」
聞き慣れぬ単語に小首を傾げるモニカとミューズに対し、エレンが得意げに説明を始める。そしてそのまま話の輪にサラやノーラも加わり、女子同士での会話に花が咲いていった。
「お姉ちゃんばっかりいいなー、面白そう!」
「というかしっかり水着は活用したんだね。選んでもらった甲斐があったじゃないか」
「来年は私もいってみたいですわ」
「それでは、私達も是非来年はビーチバレーというものをしてみましょう」
気がつけば午後のお茶会の様相を呈してきた会議室でハンス家の執事がお替わりのティーを注いで回る中、ハーマンは自分に話を振られるのを面倒がって、そそくさと会議室を後にした。
最終更新:2016年01月29日 19:12