- 61. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:10:52.68 ID:xhDGRan60
- 廃墟のそこら中から、他のプレイヤーたちがログインしてきた。
そして、私に銃を向ける。
聡「あんたの装備データをほしがる馬鹿が結構いてね」
ジルと名乗った女の子が、私の銃を奪い取る。
私は何もできず、両手を挙げる。
唯「”プレイヤーキラー”だね……」
聡「これもアヴァロンで稼ぐ方法さ」
そう言って私に近づいてくる。
聡「うひょおいい貧乳だね、唯さん」
そう言って私の胸に手を……
唯「当てさせると思った?」
私は聡くんの腹に蹴りを入れて、首を抱え込んで拳銃をつきつける。
周りのプレイヤーたちが呆気にとられて、立ちつくす。
>>60
惜しいは草薙モデルで配役選んだそうですよ
- 62. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:12:36.01 ID:xhDGRan60
- 唯「聡くん、痛いの嫌?」
聡「当たり前だろ……」
唯「”スペシャルA”の情報を」
聡「本気なのか?」
それに答えるかわりに、私は拳銃の撃鉄を起こした。
首筋に銃口が当たり、私は引き金に指をかける。
聡「ま、待って……詳しくは知らないけど……」
聡「この世界を……プログラムした連中」
聡「本物の”九姉妹”なら……」
唯「何、それ? 教えてほしいな、聡くん」
首にもっと強く拳銃押しつけて脅迫する。
私をただのか弱い女の子だと思われちゃ困る。私はこの世界で食べていく、最強のソロプレイヤーの一人。
聡「……単なる噂だ……でも連中なら……」
ジル「聡!!」
女が叫んだ。皆が一斉にその方向を向く。
唯「!?」
そこには、空中に出現したハインド。
機体はジグザグにねじれて、残像が残る。
聡「ひでえ……ラグってやがる!」
- 63. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:15:01.39 ID:xhDGRan60
- 機影がはっきりとし始めたハインドから牛の鳴き声のような連続音。
機首のガトリング砲が雄叫びをあげた。
さっきの女の子は、ハインドの機銃掃射を食らって即死した。
次々と他のプレイヤー達も薙ぎ倒されて死亡していく。
唯「こっち!」
私は聡くんを掴むと柱の裏に吹っ飛ばした。
自分も柱を遮蔽物に、取り返したSVDを構える。
唯「……!」
せめてパイロットだけでも殺してやる。
そしてスコープの倍率を上げた。
そのレンズ越しに見えたのは、火の玉――
- 64. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:16:27.63 ID:xhDGRan60
- 私は端末を外してベッドから転げ落ちると、思いっきり胃の中のものを吐き出した。
唯「うっ……はあ……はあ…げぼっ……」
胃液のにおいが鼻を刺して、私はさらに胃液を吐き出した。
唯「……はぁ……はぁ」
喉とお腹が熱くて、息苦しい。
さわ「唯ちゃん……」
ディスプレイに表示された”RESET”の文字が消えて、さわちゃん先生が姿を現した。
唯「ごめんなさいさわちゃん……部屋、汚しちゃって……」
さわ「気にしないで」
さわ「そんな日もあるわ」
- 65. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:19:37.39 ID:xhDGRan60
- ゆっくりと服を着て、何も言わず私は個室を出て、帰路についた。
どうしたの? と聞く和ちゃんに今日のキャッシュはないから、とだけ告げて。
電車を降りて駅のホームを見れば、”アヴァロンをやめよう”と書かれたポスター。
まんざら間違いでもないと、私は思う。
アヴァロン――フリークスと廃人の島。
アヴァロン――私の墓場。
- 66. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:23:24.68 ID:xhDGRan60
- ベンチに座っていると、憂からメールがきた。
『お姉ちゃんは今日の晩ご飯何がいい?』
唯「……そうだなぁ」
少しだけ、元気が出た。
吐いちゃったけど、元気だけが私のとりえだから、もう大丈夫。
お腹はぺこぺこ。
唯「カレー……」
中辛はダメ……甘口で。
『帰りにお肉とじゃがいも買ってきてほしいな』
唯「わかったよ。今から買って帰るから……っと」
- 70. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:28:05.73 ID:xhDGRan60
- スーパーの中を、かごを持って歩き回る。
ここ数年でさびれちゃった感じがするけど、これが現実だから仕方ない。
何が悪いのかはわからない。
アヴァロンができたからか、政権が交代したからか、景気の低迷か。
なんにせよ、我が家はアヴァロンのおかげで生活には不自由しない。
わたしが戦い続けるからには、大丈夫。
いちご牛乳とマシュマロ、晩ご飯のあとで憂と食べようかな。
りんごも買っていこう。
もちろん忘れずに、お肉とじゃがいもも買わなきゃ。
スーパーを出たころには、私はすっかり上機嫌。
- 73. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:30:39.99 ID:xhDGRan60
- 憂「おかえり! お姉ちゃん」
玄関を開ければ、憂が待っていてくれた。
唯「ただいま、憂」
コートを脱いで、手を洗って、うがいをして……。
それから私は、キッチンへと向かった。
カレー粉のいい匂いがする。
唯「うい〜」
憂はいつものようにエプロンをして、うでまくりをしていた。
憂「どうしたの? お姉ちゃん」
唯「私も一緒につくるよっ」
憂「ええっ!?」
唯「だいじょうぶだよー、私もうそんなにやわじゃないもんっ」
憂「うーん、じゃあ、鍋でお肉とか炒めておいて」
唯「了解!」
憂といっしょにご飯をつくるなんて、どれほどぶりだろう。
高校時代のクリスマス会でケーキにいちごを乗せたとき以来かもしれない。
- 74. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:31:25.38 ID:xhDGRan60
- ――お肉お野菜ひみつのかくし味……育ちざかりの欲張り恋心
――大好き、コトコト煮込んだカレー
――キミがいなくちゃ寂しいテーブルなの
――女の子は甘いのが好き。あこがれだけど中辛はおあずけ
――だけど限界、辛すぎてもうダメ……カレーちょっぴり、ライスたっぷり
>>71
了解しました! 肝に銘じておきます!
- 75. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:32:36.15 ID:xhDGRan60
- 憂「お姉ちゃん、もしかしてそれって新歓ライブの時の……」
唯「カレーのちライスっ」
憂「やっぱり! いい曲だよね」
二人笑いあって、お皿にカレーを盛りつける。
唯「カレー、おいしいね〜」
憂「今日はいつもよりもっともっとおいしいよ」
唯「?」
憂「だって、お姉ちゃんと一緒に作ったから……えへへ」
憂の笑顔が、いつもに増して輝いて見える。
私のたった一人の妹。大事な、とっても大事な妹。
今の私の生きがいであって、私を待っていてくれる大切な人。
- 77. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:34:37.93 ID:xhDGRan60
- 憂「お姉ちゃん、ほっぺにご飯つぶついてるよ」
そう言ってご飯つぶをとると、ぱくりと食べた。
唯「ありがとね〜うい〜」
憂「お姉ちゃんも変わらないね〜」
唯「そんなことないよー!」
それから、私はテレビを見て、憂は食器を片付けてくれていました。
憂「皿洗ってるから、テレビ見てていいよ」
唯「ありがとう〜うい〜」
ホッとするひととき。
>>ごめん。二回同じの入った
- 78. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:35:32.50 ID:xhDGRan60
- テレビでは障害者の人の特集をやっている。
ちょっとネタにしすぎて、不謹慎じゃないかなぁと思う。
『衝撃の事実はCMのあと!』
数分経って、CMに入った。
唯「ういー」
台所が、とっても静かだった。
水の流れる音も、聞こえない。
唯「憂?」
私はテレビの電源を切った。
しん、と静まりかえったリビング。
唯「憂? どこ行ったの?」
- 79. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:36:16.95 ID:xhDGRan60
- キッチンをのぞくと、誰もいない。
洗っていない皿が流し台にそのままになっている。
唯「ねえ、う〜い〜、いないの?」
1階のクローゼットを開けてもトイレにもいない。
二階の電気をつけて、誰もいないはずの二階へ上がる。
唯「ねえ憂」
私の部屋にも、憂の部屋にもいない。
唯「……うい……なんでいないの……?」
私はコートを羽織って、玄関を飛び出した。
外は真っ暗……そこには人の姿はない。
唯「うい……憂……!」
唯「ねえ憂、憂、どこにいるの……」
唯「憂……お願い出てきてよ憂……!」
- 80. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:38:00.98 ID:xhDGRan60
- 夜の街を、一人走り回る。
最近はすっかり街はさびれ、治安も悪くなった。
夜に憂を一人で歩かせちゃダメ。
お姉ちゃんが迎えに行くから……憂。
唯「憂!」
ただただ走り回り、へとへとに疲れ、私はついに転んでしまった。
唯「う……うい……うい…どこなの……憂」
唯「……ひぐっ……うっ……憂……っ」
道に倒れ込んだまま、動けない。
悲しくって、わからなくって涙が止まらない。
何がおかしいの……現実がもう一つあるような気がしはじめてから?
あずにゃんが廃人になってから?
それともムギちゃんがいなくなってから?
……アヴァロンを始めてから?
軽音部ができた時……から?
- 81. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 12:39:59.00 ID:xhDGRan60
- ?「ゆ、唯!……大丈夫か!?」
誰かの声がする。
泣きじゃくる私を抱き起こして、呼びかけている。
澪「唯!」
唯「みお……ちゃん?」
澪「こんなところで何してるんだ?」
私の服についた泥を払って、澪ちゃんは私を引っ張ってくれました。
澪「立てるか? 唯」
唯「……うん」
澪「何があったんだ?」
唯「……う……」
現実がもう一つあるような気がしはじめてから?
唯「……な、なんでもない……よ」
憂がいないのは現実じゃないから?
今ここで憂のことを言葉に出してしまったら、憂ともう二度と会えないような気がする。
唯「リセットが……身体にこたえただけ」
まんざら嘘でもない嘘をつく。……ごめん、澪ちゃん。
澪「そっか……」
二人、暗い路地を歩く。
唯「澪ちゃんはどうしてこんなところに?」
澪「唯に会いにきたんだ……話があって」
唯「私に話……?」
澪「クラスSAへ通じるゲートの話とか、いろいろ。調べてきたんだ」
- 85. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:02:00.29 ID:xhDGRan60
- 唯「はい、お茶」
澪「ありがと」
澪「唯もお茶を淹れれるなんて、昔とは違うんだな」
唯「ひどっ!」
澪「ふふっ、冗談だよ」
澪「そうだ、これ……」
澪ちゃんが紙箱を手提げ袋から取り出した。
澪「よくムギが持ってきてたマドレーヌと同じやつ」
唯「おおっ、ほんとだ!」
>>82
あれはスタンナに嫌悪感を抱かせるシーンでもあるんで朝食のもぐもぐむしゃむしゃ描写はカットしました
澪はそこまで嫌われものキャラじゃないってことで
>>83
ごめん、お猿規制を食らっちゃって1時まで待機してました
- 86. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:02:45.22 ID:xhDGRan60
- お茶を飲み、マドレーヌを食べながら、私たちは最近のことを話しました。
澪ちゃんも変わらず。パーティの偵察としてうまくやっているみたい。
澪「じゃあ、本題に移るか……」
唯「……うん」
澪「”ゴースト”との遭遇条件。知りたかっただろ?」
澪「梓と同じように”未帰還者”が出たんだ……」
澪「パーティからなんとか聞き出したんだ」
澪「結論から言うと……”ビショップ”」
唯「”ビショップ”?」
澪「そう。共通しているのは、ただそれだけなんだ」
澪「遭遇したパーティは必ず”ビショップ”がいた」
唯「職業が条件なの?」
澪「いや……手っ取り早く”ビショップ”を仕立て上げてもダメなんだ」
唯「……もしかして、レベル?」
澪「いいせんいってるよ」
澪「クラスAコンプリートそして、レベル12以上の”ハイ・ビショップ”」
澪「これが条件だ。間違いない」
澪「ロストした梓はソロで……」
レベル12の……。
唯「”ビショップ”だった……」
澪「唯のレベルは12か13くらいでしょ?」
唯「そうだよ」
澪「その軽く二倍以上の経験値がいる……梓を見ればわかる」
澪「”ビショップ”のレベル上げには膨大な時間とお金がいる……」
澪「それこそ、パーティのバックアップなしには無理だ」
- 88. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:06:01.71 ID:xhDGRan60
- 唯「職業を変える気はないよ」
澪「……あんまり言いたくはないけど……そうなると……」
澪「パーティを組むしかない」
唯「……澪ちゃん」
澪「でもな、唯」
澪「”ハイ・ビショップ”自体そうそういるものじゃない」
澪「こんな話には無理があるんだ」
唯「澪ちゃん……」
澪「あと、これ。アヴァロン……アーサー王伝説の方のね」
澪「それについての本とか」
そう言って袋から本を何冊か取り出す。
『アーサー王伝説の起源 C リトルトン&L マルカー』
『アーサー王伝説 R キャヴェンディッシュ』
『アーサー王物語 A ホプキンス』
『アーサー王伝説万華鏡 高宮利行』
高そうなハードカバーばかりだ。
唯「こんなにもらっちゃ……悪いよ」
澪「気にしないでいいよ唯。せっかく買ってきたのに、もらってくれなきゃ私が困る」
唯「ありがとう、澪ちゃん……ぐすっ……」
澪「な、何で泣くの……!?」
唯「ごめんね……澪ちゃん。ありがとう……本当にありがとう」
それから少し、澪ちゃんとお話しました。
唯「外まで送るね」
澪「ごめんな。今日は押しかけちゃって」
唯「いいよいいよ〜。また来てね」
澪「ああ、また」
目が真っ赤なままで、澪ちゃんを見送る。
>>87
ちょうど先日けいおん原作買ったので。まなびストレートでも見てたら、みか「アヴァロン!」になってたと思う
- 89. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:06:48.34 ID:xhDGRan60
- 澪ちゃんの姿が見えなくなってから、私は虚空を見上げた。
唯「憂のこと……話してなかった」
ただの偶然だよね。
明日になったら、また帰ってくるよ。
唯「帰ってきたらちょっとだけしからなくっちゃ!」
唯「お姉ちゃんをこんなに心配させてっ、って……」
また涙がこぼれてきた。
涙を袖でぐしぐしと拭って、玄関に入ろうとしたそのとき……。
誰かの気配を感じて、私はとっさに後ろを振り返った。
右手がパッとホルスターの位置に飛ぶ。
でも、腰には何も引っかかってはいない。
真っ白な帽子、ふわふわのコート。
ウェーブした髪。
?「……唯ちゃん」
たくあんのような眉毛。
唯「ムギ……ちゃん……!?」
- 90. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:08:30.78 ID:xhDGRan60
- 紬「……求めよ、さらば与えられん……」
ムギちゃんは優雅な、深みのある笑顔で、私に迫る。
重攻撃ヘリを破壊したときと、同じ顔。
唯「どうして来たの……?」
紬「私を必要としているのは、唯ちゃんの方だと思うわ」
家のドアを開けて、ムギちゃんを家に入れる。
このムギちゃんは何かが決定的に違う。
ムギちゃんはこんな裏のありそうな表情をしない。
紬「本物の肉に……本物の野菜……米……」
ムギちゃんはキッチンに置いてあるカレーの材料をちらりと見る。
紬「幸せな姉妹ね」
唯「……!!」
ムギちゃんはわかっている。憂のこと。
でも私はその事を声に出すつもりはないし、表情に表すつもりもない。
紬「私たち人間のためには……本物の酒……タバコ、インターネット」
紬「……閲覧できなくなった知識」
『アーサー王伝説万華鏡』を手に取り、ぱらぱらとページをめくってみせる。
紬「全てアヴァロンの賜物……ソロプレイヤーの特権ね」
紬「ゲームは手段でなく、目的だけどね……」
紬「いろいろと調べさせてもらったわ」
唯「ムギちゃん……」
紬「情報分析能力の高さは”ビショップ”の重要なスキルのひとつだから」
- 92. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:10:52.71 ID:xhDGRan60
- 紬「当時、様々な憶測を呼んだ”放課後ティータイム”の解散……」
唯「やめてよ……ムギちゃん」
紬「その詳細は未だ不明」
紬「指揮を無視した”ファイター”が単独でリセットをかけたことが直接の原因……」
紬「そういう人もいる」
ムギちゃんは優雅な笑顔で続ける。
紬「前衛が逃亡したパーティが壊滅する……よくある話よ」
紬「問題があるとしたら……無敵を謳われた”放課後ティータイム”だったことだけ」
私は閉ざしていた重い口をやっとの思いで開いた。
言うべき事はひとつ。
ムギちゃんは”ビショップ”だ。
私はムギちゃんを利用する。
唯「パーティを招集したいの……私含めて6人」
唯「3人の”ファイター”と優秀な”シーフ”、”メイジも”」
そこで私は黙る。
紬「私のことは聞かないのね」
唯「ムギちゃん……教えてくれるの?」
紬「アヴァロンのフィールドでなら、ね」
そう言うとムギちゃんは立ち上がり、玄関に向かった。
紬「お邪魔しました、唯ちゃん」
紬「明日24時に……”高射砲塔22”で会いましょ」
- 93. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:11:45.99 ID:xhDGRan60
- 次の日の夜、私は誰もいないロビーのベンチで座っていました。
カウンターでは和ちゃんが各部屋の電気を落としています。
和ちゃんが懐中電灯を持って、シャッターを降ろしに行こうとしたけど、私を見て立ち止まった。
和「唯、そろそろしめるわよ」
唯「ごめん、和ちゃん」
唯「クラスAのフィールドで、0時にムギちゃんと待ち合わせしてるの」
和「そう……」
和ちゃんは私の前に来ると、ベンチに腰を下ろした。
和「ねえ唯……アヴァロンにクラスSAなんて存在しないわ」
唯「え……」
私は和ちゃんを見る。ロビーは真っ暗で、顔は見えない。
和「どれほどリアルでも、ゲームはゲームにすぎない……」
和「クリアを拒むプログラムは、既にゲームとはいえないものよ」
和「だから隠されている……禁断のフィールドとしてね」
唯「和ちゃん……どうしてそれを……?」
和「私も、紬にスカウトされた一人よ」
和「もっとも、プレイヤーとしてではなく、管理者としてだけどね」
唯「紬ちゃんは……何者なの?」
和「彼女はどこからもアクセスしていないわ……つまり、自前の端末で侵入しているのよ」
唯「そんなことが……!?」
和「何の問題もないわ……膨大な設備と資金、それが可能なのは……」
このゲームの、支配者……。
和「悪いこといわないから、紬とはもう関わらないほうがいいわ。唯」
唯「ダメ」
和「どうして?」
唯「”スペシャルA”には……あずにゃんがいる」
- 94. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:13:45.84 ID:xhDGRan60
- 和ちゃんは黙ったまま、カウンターに歩いていた。
静まりかえったロビー内に、キーボードを打つ音だけが響く。
和「スタンバイしておいたわよ。9号室で、ゲームマスターが待ってる」
唯「ありがとう、和ちゃん」
和「いいのよ、唯」
個室への通路の電気がつき、私は歩き出す。
和「気をつけてね」
端末を被ると、さわちゃん先生が現れた。
さわ「座標は入力してあるわ、唯ちゃん」
唯「ありがと、さわちゃん」
さわ「私としては、行かせたくはないんだけど……」
唯「ごめんなさい」
さわ「よきゲームマスターは、ゲームに介入しないものよ」
唯「ひとつだけ聞いていい?」
唯「さわちゃんも、どこかの端末からアクセスしてるの?」
唯「……それとも、システムの一部なの?」
さわ「いずれにせよ、あなたにそれを確かめる術はないわ」
唯「そっか……わかった。始めて、さわちゃん先生」
- 97. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:16:22.30 ID:xhDGRan60
- 塔のてっぺんに、ムギちゃんはいました。
唯「招集してくれてありがとう、ムギちゃん」
彼女の横には、”メイジ”と”ファイター”がいる。
紬「いずれ、この招集は必要だったわ」
紬「私のことは?」
唯「ムギちゃんは……”九姉妹”……アヴァロンの支配者」
唯「このプログラムの供給者」
ムギちゃんはゆっくりと首を振った。
紬「私は”ビショップ”……使徒の継承者に過ぎないわ、唯ちゃん」
紬「創造主は別に存在するの」
唯「だとしても、向こう側の人間には違いないでしょ?」
紬「スカウトしてあげてもいいのよ?」
唯「その人達と組む自信は、ないよ」
紬「パーティに入る必要はないわ。ここにいる彼らはNPC、人格のないデータ」
”メイジ”と”ファイター”を指さす。
それから、私に微笑んだ。
紬「ねえ唯ちゃん……クリアできそうでできないゲームと、クリア不可能に見えて可能なゲーム」
紬「どちらがい良いゲームかなんて、言うまでもないでしょ?」
紬「その微妙な均衡点を探り、レベルアップしつつ、それを維持する」
紬「それが私たちの仕事よ」
それからちらりと、奥の階段を見て言った。
紬「さて、全員揃ったようね」
唯「……えっ!?」
階段を上ってきた人を見て、私は思わず声を上げてしまった。
- 98. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:18:18.37 ID:xhDGRan60
- ?「よう、また組むことになるとはな」
?「ほんと、思ってもいなかったよ」
唯「澪ちゃん……りっちゃん……!!」
澪ちゃんはこの間会ったけど、りっちゃんとは長らく会っていない。
律「おいおい、びっくりするほどたくましくなったな、唯!」
澪「だろ? 律」
ムギちゃんは怖くてちょっと変で、私は前科持ちのソロで、あずにゃんはロストしたけど……。
ここに再び、”放課後ティータイム”が集結したのでした。
- 100. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:21:38.09 ID:Rfy2lzJ50
- 澪「前方の視界に反応なし!」
偵察の澪ちゃんから連絡が入る。
工場の跡地のような廃墟の中を、私たちは前進する。
律「怖がりの澪が偵察とは、すっげえ話だな!」
澪「うるさいなっ、馬鹿律〜っ!」
りっちゃんは相変わらず脳天気で、とっても明るいです。
紬「りっちゃん、唯ちゃん、上へ」
自動拳銃を構えたムギちゃんが、私たちに指示を送ります。
紬「マカニト、ジルワン、バディ、前へ!」
NPCと呼んでいた人たちは名前がちょっぴり不思議。
律「唯、ずっとどうしてたんだ?」
足場を渡りながら、りっちゃんが言った。
唯「ここでずっと、一人で戦ってたよ」
律「……そっか。大変、だったんだな」
唯「うん……」
これ以上何も言わなくても、りっちゃんはわかってくれていた。
やっぱり、みんな私の大切な仲間だ。
- 101. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:22:37.10 ID:Rfy2lzJ50
- 軋む足場を走り、床に空いた穴を飛び越え、澪ちゃんが前に偵察したポイントまでたどり着いた時、無線連絡が入った。
澪「……大変だ……!」
律「え? 何だって?」
唯「どうしたの、りっちゃん……?」
澪「出たあっ!!」
律「おわっ!!?」
澪ちゃんが大声を上げたのか、りっちゃんのホンから音が漏れてくる。
澪「大変だ……こいつ……!」
澪「”ツィタデル”だああっ!!!」
律「うわーーっ!! 耳いてええ!」
唯「大丈夫!? りっちゃん!?……この音……キャタピラ?」
りっちゃんの悲鳴に混じって、何かものすごい重い車両が走るような音が聞こえてくる。
そしてお腹にまで響くエンジンの音。
律「澪のやつ……”ツィタデル”って言ってたな」
紬「ツィタデル……!? 落ち着いて、澪ちゃん……!」
ツィタデル、クラスA最強のフラグ。
巨大な塔のような戦車で、車体のあちこちが展開して、機銃タレットが現れる。
主砲の榴弾砲は建造物を粉々に吹き飛ばす。恐ろしい敵キャラクター。
紬「クラスA最強の敵でも……弱点はあるわ」
紬「接近戦に持ち込めば、主砲は無力化できるから……」
- 102. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:24:16.72 ID:Rfy2lzJ50
- 紬「唯ちゃん、前衛がツィタデルの足を止めるから、あなたは後ろのグリルを狙って」
ムギちゃんから連絡がはいる。
唯「わかった!」
紬「りっちゃんは唯ちゃんを護ってあげて」
律「了解! ムギ」
律ちゃんが機関銃のコッキングレバーを引いて、にこりと笑う。
私もウィンクして、SVDを手に持った。
唯「行きますぞ、りっちゃん隊員!!」
律「了解、唯隊員!!」
二人でいっせいに走り出す。目指すはツィタデルの背後。
不気味な音を立てて走るツィタデルの上を走り抜ける。
敵キャラが召還されて銃撃を浴びせてくるけど、当たるわけもない。
すると数発銃声が聞こえて、敵は撃ってこなくなった。
紬「唯ちゃん、りっちゃん、早く!」
唯「ありがと! ムギちゃん!」
下を見れば、マカニト、ジルワン、バディの3人がツィタデルに銃撃を加えて足止めしている。
私たちも急がなきゃ!
工場の端までたどり着いて、二人で足場から飛び降りる。
そして見事着地。
律「決まってたな!」
唯「もっちろん!」
- 103. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:26:12.86 ID:Rfy2lzJ50
- バシュ、バシュと噴き出すような音が聞こえて、続いて爆発音。
澪「前衛がツィタデルのキャタピラを壊した!」
紬「急いで、唯ちゃん! 持ちこたえられないわ!」
律「行くぞ唯!」
りっちゃんが機銃を撃ちまくって、敵が私を狙えないように弾幕を張ってくれる。
車体のそこら中から機銃が生えて、ツィタデルは私たちを狙い撃ちにしようとする。
紬「マカニト、左上部のタレットを!!」
私の頭上に機銃が弾丸を注ぎこもうとしたところで、RPGが着弾した。
唯「ムギちゃんナイス!」
律「唯! 弾薬が少ない! 急ぐぞ!!」
そして巨大な側面を走り抜け、二人で背後に滑り込む。
唯「やった!!」
敵兵が落としたRPGを取って、ツィタデルの後部エンジングリルを狙う。
トリガーを引き、発射。
初弾は命中。グリルの網の目が吹き飛んだ。
律「こいつを使え!」
りっちゃんが弾頭を投げ渡してくれた。
唯「ありがと!」
次の弾を装填して、再び照準機を覗き込む。
発射、着弾。
律「そらっ!」
次の弾を受け取って、装填、発射。
4枚の展開式安定翼を広げて、ロケットモーターに点火した弾頭は一直線に飛んでいく。
そして着弾と同時にひときわ大きな爆発。ツィタデルの装甲板がバラバラに弾け飛ぶ。
そしてさらに大きな爆発があたり一帯を巻き込み、ツィタデルは消滅した。
- 104. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:27:16.41 ID:Rfy2lzJ50
- Mission Complete
有り余るほどのポイントが表示されて、あたりは沈黙に包まれる。
紬「やったわね……」
澪「……”ゴースト”は?」
りっちゃんが不意に振り返る。
律「あそこだ!!」
澪「っ!!」
唯「……!!?」
みんなが一斉に振り返る中、私は驚愕した。
唯「うそ……なんで……」
私の手から離れたRPGが地面に落ちる。
”ゴースト”は、確かにそこにいた。
哀しい目をした少女が、たたずんでいる。
でも……これっておかしいよ……。
- 105. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:29:49.00 ID:Rfy2lzJ50
- 唯「憂……なの?」
そこには、憂がいた。
澪「きゃああっ!!?」
銃声と、澪ちゃんの悲鳴が同時に響いた。
律「澪!!?……この!!」
機関銃を一連射加えられ、澪ちゃんを撃った敵は消滅した。
私は、上の空。
ただ、憂を見つめていた。
紬「澪ちゃん……!」
澪「うっ……はぁ……また……やっちゃったな……っ…!」
澪「こんなチャンス……二度とないのに……ツイてない……」
律「澪……!」
視界の隅で、りっちゃんが澪ちゃんにすがりついている。
- 106. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:31:48.47 ID:Rfy2lzJ50
- 澪「唯……聞こえてるか……?」
澪「”ゴースト”が……壁を、抜けた時がチャンスだ……」
唯「憂を倒せば……」
澪「クラスSAへの扉が……開く……うっ……!」
澪「梓にも……よろしくな、唯」
律「澪……お前……」
私は、拳銃を構える。
私は正気なの?
憂に銃を向けるなんて、考えられない。
アヴァロンの中じゃなくて、もしも今が現実だったらどうするの?
憂はここにいる。
だったらここは現実じゃないの?
私は何をしようと……してるの。
澪「”放課後ティータイム”の壊滅は……唯のせいじゃないんだ……」
澪「あの時、真っ先に……怯えていたのは……私だったんだ……」
澪「梓に……それを伝えたかった……っ」
澪ちゃんがバーチャル空間の中で息絶え、死亡した。
そして、憂が壁の中に消えた。
- 108. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:33:07.30 ID:Rfy2lzJ50
- 唯「……みんな……」
紬「唯ちゃん」
振り返ると、ムギちゃんが、私に自動拳銃を投げ渡した。
唯「ムギちゃん……」
紬「使って。役に立つわ」
律「唯!」
唯「りっちゃん」
りっちゃんは、私に向かって、ぐっと拳を突き出した。
律「”ゴースト”は待ってくれないよん」
律「しくじるなよ、唯!」
唯「ありがとう、りっちゃん!」
- 109. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/01(火) 13:33:47.76 ID:Rfy2lzJ50
- 私は、憂の消えていった方へと走っていった。
向こうの壁が光っている。
よく見ると、憂がいる。
私は十字の通路で立ち止まると、憂を捜した。
拳銃を構え、トリガーに指を添える。
そのまま、わたしはぐるぐると回り始める。
”ゴースト”は、どこだ。
唯「……っ!!」
3回目に振り返ったとき、私はトリガーを引いた。
二発、三発、四発、五発。
”ゴースト”に銃弾を浴びせ、私はその姿を睨む。
たとえ憂だったのだとしても、ここはアヴァロン。架空の、仮想空間。
数秒後、”ゴースト”は赤く色を変え、死亡、消滅した。
唯「……」
私は、”ゴースト”の消えた跡に向かって歩いていく。
すると視界が消え、私の意識もフェードアウトしていく。
私の意識の中に、文字が現れた。
最終更新:2009年09月02日 03:36