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けいおんBR2

96. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 01:32:47.94 ID:HjolGcz20
  澪が投げたガラスの破片は、紬の目に当たった――のではなく、口に入った。

  興奮し、口を大きく開けていた紬の口に、
こぶし大のガラスがすっぽりと嵌まったのだ。

紬「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!」

  破片を外そうとすればするほど、口内に食い込んでいく。

澪「律!  早く取り押さえろ!」

  澪は律と紬がいる方向へ駆け寄ろうとしている。
  だが、窓をぶち破った際に膝を怪我した澪は、
早い速度で走ることができない。
  律が取り押さえるしかない。

  律は澪に返事もせずに、紬の懐に入り、両手でマシンガンを掴んだ。

  紬は絶叫しながらマシンガンの引き金を引く。
  先ほどのどかを撃った際に、紬の腕はボロボロになっていた。
  だから、律に押さえ込まれた紬は、銃の向きを変えることができなかった。
  ただ、引き金を引くだけだった。
  紬にはそれだけの力しか残されていなかった。
  銃の向きを決定していたのは、律だった。


  弾が発射された方向には、こちらへ駆け寄ってくる澪がいた。
108. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 01:45:55.56 ID:HjolGcz20
  熱いエネルギーの塊の一つが、澪の腹部を貫いた。
  同時に、右脚にも弾が当たり、衝撃が走った。

澪「あ――――」

  澪の位置からは、紬が引き金を引くところは、
律の身体の影になって見えなかった。
  律が紬のマシンガンの向きを変え、自分に向け、
撃ったように見えていた。

  田井中律が秋山澪を銃撃した。

  それが、このときの澪に見えていた光景だった。

澪「(信じられない……。助けようとしたのに。
  私は、律を助けようとしたのに)」

  澪にとって唯一幸運だったのは、
先ほど紬がのどかと撃った際にマシンガンの弾薬を殆ど消費しており、
また、弾薬を補充していなかったことから、
発射された弾の量が少ないことだった。
  しかし、あまりの痛みに、澪は一瞬、気を失った。

  一方、律は澪に背を向けていたため、
澪が負傷したことには気付かなかった。
114. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 01:55:36.77 ID:HjolGcz20
  またしても不自然な体勢で銃を発射したため、
その反動で紬の身体はバランスを崩した。

  当然、紬は後ろ向きに倒れた。
  マシンガンを掴んでいた律は引っ張られ、
紬に勢いよく覆いかぶさる。

  倒れた律の肩が、紬の口に挟まったガラスの破片を、
さらに深く押し込んだ。

  噴水のように、鮮血が迸った。

  ガラスの破片が、紬の舌と頚動脈と脳を突き破ったのだった。

  噴水の一部は律の口と鼻を襲い、一時的に息ができなくなった。
  律が激しく咳き込みながら立ち上がったときには、
もう紬は静かになっていた。

律「うわあああああああああああああああっ!」

  律の肩も紬の口に破片を押し込んだ際にガラスで負傷していたが、
そんなことに気付く余裕もなかった。

律「(殺した。殺した。殺した。殺した殺した殺した殺した殺した。
  私がムギを殺した。殺してしまった)」




――――十三時二十八分、琴吹紬死亡。
118. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 02:08:03.08 ID:HjolGcz20
梓「あれって、映画とかで聞いたことあるけど、
  マシンガンの音だよね……?
  二回も聞こえた。
  憂に支給された武器はノコギリだったから、
  憂以外の誰かが……」


梓「憂以外の誰かが、他の誰かを殺そうとしたんだ」


梓「憂以外にも、この人殺しゲームに
  乗せられた人がいるんだ。
  信じられない。まだゲームが始まってから、
  十数分しか経ってないのに。
  どうしよう。私、一人ぼっちだよ。
  憂は唯先輩とコンビを組んでるだろうし、
  澪先輩と律先輩もコンビ……。
  1対2じゃ勝ち目はないよ。
  きっと、殺されたのは、のどかさんやムギ先輩だ。
  もう誰も、私の味方にはなってくれない。
  こうなったら――」

梓「こうなったら、自分が殺されるときには、他の人を巻き添えにしよう」

  梓に支給された武器は、手榴弾だった。

  しかし、梓の利き腕は、憂のノコギリでズタズタにされていた。
  手榴弾を遠くへ投げることはできない。
  もはや、梓の手榴弾は、罠か心中くらいにしか役立ちそうになかった。
129. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 02:22:01.31 ID:HjolGcz20
律「澪……。私、ムギを殺しちゃ……って、澪!?」

  振り返った律は、そのとき初めて澪が負傷していることに気付いた。

  律は倒れている澪に駆け寄り、仰向けに寝かせた。

律「お腹と脚を怪我してるみたいだな……。
  でも、澪の奴、何で怪我なんかしたんだろう?
  やっぱり、窓ガラスを突き破るのって、映画みたいにはいかないんだな。
  私の肩の傷はたいしたことないと思うし、まずは澪を止血しないと……。
  鞄に救急箱とか入ってないかな?」

  律は、遠くにある自分の鞄ではなく、近くにあった澪の鞄を探り始めた。
  支給されたものの中には、傷薬や包帯はないらしい。

律「痛ッ……!」

  鞄を探っていると、律の指先に痛みが走った。
  何かに触れて、指を傷つけたらしい。
  慎重に鞄の中身を掻き分け、それを見つけた。

  手袋とピアノ線だった。

  どうやらこれが澪に支給された武器らしい。
  何に使えと言うのだろう。
  律は手袋越しにピアノ線を持ち上げた。

  そのとき、気を失っていた澪が目覚め、律の持っているものを間近で見ることになった。

澪「やめてええええ!  殺さないでええええ!」
134. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 02:32:56.69 ID:HjolGcz20
律「は?  何言ってんの?」

  律はピアノ線を手にしたまま澪の顔を覗き込む。
  律は、自分の顔が血まみれになっていることを忘れていた。

澪「殺さないで!  殺さないで!  何でもするから!」

律「え……?  ああ、これか。大丈夫だよ。
  ただのピアノ線じゃないか」

澪「それで私の首を絞めようとしてたんだろ!?」

律「え?  ……違うってば。
  私はただ、澪を止血する道具を探していただけで……」

澪「それ、私の鞄に入ってた奴だろ!?」

律「そうだけど」

澪「どうして勝手に人の鞄を開けるんだよ!
  もう見ちゃったのか?」

律「見るって、何を……。
  (そうか、この中には澪の私物も入ってるんだ。
  私に見られたくないものを、隠しているんだ)
  私は何も見ていないよ」

澪「……本当に?」

律「本当だってば。しつこいな」
144. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 02:40:37.53 ID:HjolGcz20
澪「うう……。叫んだら傷口が広がって、ますます痛くなった」

律「馬鹿だなあ。待ってろ。止血するから」

  律は、ペットボトルの水で澪の脚の傷口を洗うと、脚の付け根を縛った。
  腹部の傷も同じように洗い、澪の私物のシャツを押し当て、
その上から帯で縛った。

律「とりあえず応急処置。こんなもん、かな?」

  高校生の律には、これが限界だった。

澪「ありがとう。……って、もしかして、律も怪我してるのか?」

律「え?  ああ、肩を少しだけ」

澪「肩の傷なんて、自分じゃ手当てできないだろ。待ってろ。私が……痛っ!」

律「無理すんなよ」

澪「それより、今、どんな状況だ?  私が寝ている間に何があった?」

律「ムギと、それからのどかが死んでる。唯と憂と梓の姿はない」

澪「じゃあ、こんな見晴らしのいいところにいるのは危険だな……。
  早くどこかに隠れないと」

律「じゃあ、とりあえずそこら辺の茂みに隠れるか。
  あっ、荷物は私が運ぶからいいよ。
  (その隙に、澪の鞄を探らないと……)」
149. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 02:55:46.97 ID:HjolGcz20
  ペロペロ……。

憂「お、お姉ちゃん……」

唯「どうしたの憂?  痛い?」

憂「全然痛くないよ。だって、お姉ちゃんの舌なんだから」

唯「それならよかった。もっと舐めるね?」

憂「うん……お願い。……あっ、あっ」

唯「ペロペロ……あ、血が止まったみたい」

憂「ありがとう。お姉ちゃんが傷を舐めてくれたおかげだよ。
  (やっと血が止まってくれた。
  お姉ちゃんを説得するためとはいえ、
  自分の腕を傷つけたのはやっぱり失敗だったかな)」

唯「ところで憂、気になっていることがあるんだけど……」

憂「何?  お姉ちゃん」

唯「憂は、最初、建物を出たけどあずにゃんは待ってなかったって言ったのに、
  どうしてあずにゃんは憂に傷をつけることができたの?」

憂「それは……」

唯「それに、憂が持っていたノコギリ、たくさん血がついてるよね……?
  どういうことなのか、説明してくれるよね?」
157. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 03:08:36.83 ID:HjolGcz20
澪「いいよ。私の鞄は、自分で運べるから。
  ギターを杖代わりにすることだってできるし」

律「そ、そうか……。
  じゃあ、私はムギやのどかのバッグを運ぶよ。
  あっちの茂みに隠れようか?」

  律が指さしたのは、唯と憂が逃げていった方角だった。

  律は、紬がそちらへ行こうとしているのを目撃していたので、
無意識のうちにその方向を選んでいたのだった。

  数分後、二人は並んで、木にもたれかかっていた。

律「私やのどかの武器も確認しておいた方がいいかな。
  マシンガンはもう弾切れだから銃としては役立たずだし。
  殴ることぐらいはできるかもしれないけどね。
  澪のピアノ線も、接近戦じゃないと役に立たないし」

澪「武器を確認する前に、聞いておいたいことがあるんだ。
  大事な話だ」

律「何だよ?」

澪「ほら、私、最後までスタート地点に残っていただろ?
  そのとき、先生から聞いたんだ」

律「……何を」

澪「律。お前――」
161. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 03:17:17.35 ID:HjolGcz20
澪「律。お前――軽音部の部費を、横領していただろ」

律「――!」

  相対的に額が小さく見えるほど、律の目が大きく見開かれた。

律「お前は何を言ってるんだ」

澪「お前は部長としての立場を利用していた。
  生徒会ののどかとグルになっていたんだろ?
  軽音部には多額の部費が支給されていたのに、私達には――
  正確には、私と唯とムギと梓には、知らされていなかった」

律「馬鹿なこと言ってんじゃないよ」

  律の身体が震え始めた。

澪「もう分かっているんだよ。先生が白状したんだから。
  先生は明言していなかったけど、
  軽音部に多額の部費が支給されていたなら、
  顧問が知らないはずがないもんな」

律「やめろ!  お前はさわ子先生に騙されているんだ!」

澪「それだけじゃない。お前は、
  ムギのクレジットカードを盗んだこともあったんだろ?
  ムギは世間知らずだったし、お前を友達だと思っていたから、
  暗証番号まで教えていた。
  なあ、律。どうしてそんなことしたんだよ。
  お金に困っているなら、どうして私に相談してくれなかったんだよ」
168. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 03:24:20.17 ID:HjolGcz20
律「だから違うってば。私はお金に困ってなんかいないよ。
  なあ、澪。目を覚ましてくれ。
  お前は先生にあることないこと吹き込まれて、騙されているんだよ。
  私達を仲間割れさせるのが、先生の目的なんだ」

澪「ここから先は想像だけど――のどかは罪の意識に耐えかねて、
  クレジットカードを盗んだことをムギに謝ったんじゃないのかな」

律「私の話を聞け!」

澪「もしかすると、盗まれたクレジットカードそのものを、
  ムギに見せたのかもしれない。
  その結果、ムギは逆上し、のどかを殺した。
  ムギがお前を殺そうとしたのも、同じ理由だ」

律「お前の話は、それで終わりかよ」

澪「だいたい終わった」

律「そんな嘘話を言って、私に何を聞きたいんだよ!」

澪「この話が――先生が言った話と、
  私の推測が正しいのか、教えて欲しい。
  お金に困っていたのに、私に相談してくれなかった理由も」

律「話すことなんか何もない!  そんなのは嘘っぱちだ!
  どうして私を信じてくれないんだよ!
  信じて欲しいのに!
  澪にだけは、私を信じて欲しいのに!」
170. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 03:32:37.05 ID:HjolGcz20
唯「うー……」

憂「どうしたの、お姉ちゃん?」

唯「走ったら暑くなっちゃった……」

憂「それは大変だよ!  汗疹ができちゃうかも!
  お姉ちゃんのきれいな肌に汗疹ができたら、
  私泣いちゃう!」

唯「憂……」

憂「お姉ちゃん、早く着替えないと!
  確か、バッグに制服が入っていたはずだから」

唯「こ、ここで?」

憂「汗疹ができてからじゃ遅いもの!
  私が水で身体を拭いてあげるから、
  早く服を脱いでよ!」

唯「う、うん、分かった。
  でも、この衣装、一人じゃ帯を外せないんだけど……」

憂「そんなの、私が外してあげるよ!」

唯「あれー?
  何か別の大切な話をしていたような気がしたんだけど……。
  気のせいかな?」
176. 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 03:42:52.26 ID:HjolGcz20
澪「(私だって、信じたくないよ。律がそんなことをしていたなんて。
  先生に言われたときだって、信じていなかった。
  でも、あのとき――私はムギに襲われている律を助けようとしたのに、
  律は私を撃った。
  律は、ムギのマシンガンで、私を殺そうとした。
  おまけに、寝ている私の首をピアノ線で絞めようとした。
  これでどうしろって言うんだよ……)」

澪「本当のことを言ってくれ」

律「うるさいうるさい!  それを言ったら、澪だってどうなんだよ!」

澪「え……?  私?」

律「そうだよ!  私、知ってるんだぞ!
  学校裏サイトには、秋山澪は朝鮮人だって
  書き込みがたくさんあるじゃないか!
  私に隠していたんだろ!」

澪「お前、あんな便所の落書きを信じてるのか!?
  私は正真正銘、生まれたときから日本人だ!」

律「証拠を見せてみろよ!」

澪「そんなもの持ち歩いているわけないだろ!」

律「それを言ったら私だって同じだ!
  この場で自分の身の潔白を証明することなんかできないじゃないか!」

澪「いや――できるよ」
最終更新:2009年09月12日 18:28