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優しくキミは微笑んでいた

空の薬莢がアスファルトの上に落ちる。
警官の制服を着た茶と白の狼獣人の男が持つイングラムM11短機関銃の使用する、
.380ACP弾の薬莢が一発。
銃口の先にいた、小学生にも見える少女の左のこめかみの辺りから、血が流れ出る。

「……」

少女――飯島遥光は、傷の痛みに僅かに顔を歪めつつも、まだ自分の命が失われていない事に驚く。
自分と目の前の狼男との距離は、五メートルも無い至近距離。
男はこの距離で外したと言うのか。

「勘違いすんな、今のはわざと外したんだ。この距離ならお前の頭なんて確実に撃ち抜けるぜ」

狼男は銃口を向けながら言う。
にやりと口元を歪めて笑みを浮かべる様子は絵本の一シーンを見ているようだと遥光は思う。
同時に、狼男の態度が明らかに自分を馬鹿にしているものだったので、遥光はやや剣呑な様子で口を開く。

「……何でわざと外す必要があるの? あなたは殺し合いに乗っているんでしょ? 無駄な事せずに、さっさと殺せば良かったのに」
「ああ? お前、自殺志願者か? ……まあいい、確かにお前の言う通りだ。
まあ、俺流の挨拶って感じだな。どっちにしたって……お前は逃がさねぇけど、な」
「……」

狼警官の持つ短機関銃の銃口は相変わらず遥光の方を向いたまま。
一度は死を覚悟して、その死は一旦は回避出来たが、安心など全く出来ない。
むしろ、この狼警官に命を握られている状況はちっとも変わっていない。
やはり自分はここで――――。

「つーか、お前一人か? 他に仲間とかいねぇのか」
「……関係無いでしょ」
「……」

狼警官は突然遥光に近付き。

ガスッ!!

「げうっ」

その腹部に強烈な右足の蹴りをぶち込んだ。
遥光の小さな身体は簡単に吹き飛び、六メートル程飛んだ所で止まる。

「げほっ! ごほっ……ごふっ……」

呼吸困難に陥り、咳き込む遥光。
僅かに血の混じった吐瀉物も口から出ていた。
アスファルトに身体が叩きつけられたせいで擦過傷も出来てしまっていた。

「おまわりさんの質問にはちゃんと答えろって、母ちゃんには教わんなかったか?
ええ? 生意気なガキだなぁオイ」
「ぐぅ……うっ」

狼警官は地面で苦しむ遥光の髪を掴んで力任せに持ち上げる。
そして屈んで無理矢理視線を合わせるようにした。
その時、遥光は狼警官の制服、右胸ポケットの上の辺りに名札らしき物があるのを確認する。
所属している警察署と思われる警察署名の下に「須牙 襲禅」の四文字。
これがこの狼男の名前だろう。

「で? お前一人か。それとも仲間がいて別行動してんのか。どうなんだ」
「……一人、だよ」

間違いでは無い。
遥光は今、単独で行動している。「今」は。
少し前までは、共に行動している人達がいた。
だが、自分は、そのグループから抜け出した。
弱い自分が皆の足を引っ張るのが嫌で、怖かったから。
自分がこの殺し合いにおいて一番最初に出会い、保護してくれて、
そして抜け出そうとした自分を必死に引き止めようとしてくれた少年をも振り切って。
自分一人になったのだ。
間違いでは無い。

「ふぅん、で? この殺し合い始まってから一人なのか? それとも途中まで誰かと一緒だったが、何らかの理由で別れたのか?」
「……最初から、一人、だよ」

遥光は、嘘を吐いた。
この狼警官が殺し合いをやる気になっている事は明白だ。
わざわざ同行者――今は「元」が付くが――が危険に晒される事をする理由など、どこにも無い。
わざわざこの須牙襲禅に、元同行者達――須藤凛達の事を言う理由はどこにも無いのだ。

「最初からね……ふぅん……」
「……」
「分かった」
「あぐっ……」

襲禅は遥光の髪を離した。
それと同時に地面に伏す遥光。
長い間髪を掴まれ頭が痛んだ。
先程蹴られた腹も酷く痛む。もしかしたら内臓に傷が付いたかもしれない。
目から涙が滲むのが分かった。
だが、何とか、凛達の事は言わずに済んだ。
もう迷惑を掛けたくないと思い、自分を気遣ってくれた少年に痛烈な言葉をぶつけてまで、
抜け出してきたのだから、何が何でも言う訳にはいかなかった。

「さあてと……」

頭上から襲禅の声が聞こえる。
いよいよか。
聞きたい事も聞いたようだ、もう自分を生かす必要も無いだろう。
元々この男は自分を殺す気満々だったのだから。
顔をアスファルトの方に向けた状態でうつぶせになっていて上方の様子は見えないが予想は付く。
間も無く、今度こそ、銃弾が自分を貫くだろう。
最初にこの男に銃で狙われた時と同じで、怖くは無かった。
ただ、心残りな事はあった。
須藤達の事もそうだが。


(ごめんね、潤ちゃん)


熊本潤平。遥光の彼氏。
この殺し合いの舞台のどこかにいる筈だが今何をしているのか、まだ生きているのか。
まだ生きていると信じてはいた。
ここで死ねば、放送で自分の名前が呼ばれる。
そうなったら潤平はどうなるのだろう、と。
それだけは気がかりだったが、もうどうする事も出来ない。


(ぼくがいなくなっても、あまりずっと悲しまないで)


脳裏に、はっきりと艶やかに浮かんだ。

愛する人の底抜けに明るい笑顔。

この笑顔が好きだった。

出来るならもう一度この笑顔が見たかった。


(頑張ってね、絶対死なないでね)


もう一度、あの声を。

もう一度――――。






――――大好きだよ、潤ちゃん。






五発の銃声が響いた。






【飯島遥光@数だけロワ  死亡】







襲禅は、イングラムM11のセレクターを、セミオートからフルオートに切り替える。
そして、遥光の持っていたデイパックを漁る。

「……チッ」

舌打ちをする襲禅。
武器になりそうな物は何も入っていなかったらしい。
立ち上がり時計を取り出して時刻を確認する。
そろそろ、第一回目の放送の時間が近い。
どこかで休み、放送を聞いた方が良さそうだ。

「真紀の奴は、まだ生きてんのかねぇ……」

安否不明の知り合いの事を考えながら、襲禅は休めそうな場所を探し始めた。



(……あのガキ、この殺し合いで最初から一人だとか言っていたが……。
本当なのかどうか、分からねぇな、もしかしたら案外近くに、あのガキ知ってる奴がいるかもな……)



【C-6/市街地/一日目/昼】

【須牙襲禅@俺のオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康
[服装]:警察の制服
[装備]:イングラムM11(26/32)
[道具]:基本支給品一式、イングラムM11のマガジン(2)、ランダム支給品(2)、照り焼きバーガー入りタッパー(残りわずか)@四字熟語ロワ
[思考]
基本:人を撃つ事を楽しむ。
1:どこかで休憩し、放送を聞く。
[備考]
※ロワ死亡後からの参加です。
鬼一樹月天王寺深雪の外見のみ記憶しました。また、鬼一は死んだと判断しました。
※被検体01号を化物と判断、そしてそれに伴い被検体01号並の敵も倒せるもっと強力な武器があると判断しました。


※飯島遥光の死体及びデイパック(武器になるような物は無し)はC-6市街地の一角に放置されています。



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068:疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』 飯島遥光 GAME OVER
068:疾走する思春期のパラベラム『みんな大好き戦争』 須牙襲禅 :[[]]

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最終更新:2012年12月22日 20:43